ハリー・ポッターと上位者の娘   作:アーマウニー

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ハリーポッターと上位者の娘 10 ウィゼンガモット

魔法省。

イギリス魔法界のまとめ役。

……そしてアンナリーゼ様に唾を吐いたニンゲンがいる場所。

 

その入口に私はダンブルドア学長と共に立っている。

 

「外来の方には杖を登録してもらいますので、守衛室にてセキュリティ・チェックを受けてください。守衛室はアトリウムの一番奥にございます。」

 

受付から受け取ったバッチには【クリスティーナ・ブラウン 懲戒訊問】と書かれている。

 

無言でそのバッチを胸につけ、学長の後ろを歩く。

 

「ここじゃ。」

 

''守衛''と書かれた部屋には日刊予言者新聞を読んでいる男性が1人。

 

「杖。」

 

言われるがままに杖を守衛に渡す。すると守衛は若干めんどくさそうな顔をしてなにやら真鍮の道具の上に置いた。

 

「……今どきスタッフか……ん?……この材質はなんだ?セストラルの心臓の琴線と……」

 

道具から出てきた羊皮紙を読みあげようとするが、どうやら文字化けしているらしい。材質が分からないみたいだ。

 

「私が元々持っていた杖をオリバンダーに魔法の杖に改造してもらいました。セストラルの心臓の琴線が芯として入った金属製の杖です。」

 

守衛は物珍しそうに仕込み杖を見続けるが、興味が無くなったようにすぐ杖を返してきて、''そのように登録する''と言ったっきりまた新聞を読み始めた。

 

「さて、クリスティーナ。我々は2階、ウィゼンガモット最高裁に向かう。……約束は覚えておるの?」

 

「ええ、もちろん。短気は起こさない、質問にはハッキリと正直に、ですね。」

 

「ああ、あとはわしが弁護する。」

 

……約束は守りますよ。

 

「では、入ろうか。」

 

 

〜〜~

 

 

そこは円形の法廷だった。

中央に立つのが被告人。つまり私だろう。

その周りを囲って何十人もの人間が座っている。そして全員が胸の左側に銀色の''W''の文字が入っている赤紫のローブを着用している。

……皆が入ってきた私を見る。何人かの魔法使いや魔女は後ろの学長にも視線が走る。

 

「……着席したまえ。」

 

目の前の男……多分議長、いや、裁判長かなにかだろう。が声をかける。……思っていたより声が柔らかい?いや、緊張?……ともかく、威圧感がない。

 

……この男じゃないな。

 

「失礼。」

 

そう言って席につく。

 

「……よろしい。被告人が出廷した。早速始めよう。」

 

書記らしき男が羽根ペンを走らせる。

 

「懲戒訊問。9月4日開廷。

新法、''魔法銀行の口座に関する法令''の違反、及び窃盗などの犯罪行為事件。

被告人、クリスティーナ・ブラウン。」

 

「被告側証人、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。

尋問官、コーネリウス・オズワルド・ファッジ魔法大臣。アメリア・スーザン・ボーンズ魔法法執行部部長。ドローレス・ジェーン・アンブリッジ上級次官。

法廷書記、エリアス・ティアナン・マコーミック。」

 

ダンブルドアの名前呼びあげの時だけだいぶ声が震えてたな。

 

「被告人罪状は以下の通り。

被告人は、アンナリーゼの所持する口座を引き継ぎと称して不法に奪い取り、その中の財を所有者の許可なく使用した。これらは全て、アンナリーゼの同意無しに行われたもので、被告人は何らかの方法でアンナリーゼの杖を奪取した。相違ないか?」

 

……ここまで来ると笑えてくるなぁ……

 

「……いいえ。全て間違っています。」

 

ざわめきが走る。野次が聞こえる。

''デタラメを言うな!''

……まったく、それは私のセリフだ。

 

「……被告人。全てとはどういうこと?」

 

尋問官、多分アメリア・ボーンズかな?が聞いてくる。

 

「私は正しい手続きでもって、グリンゴッツ魔法銀行の手順をクリアし、アンナリーゼ様の口座を譲り受けました。これはアンナリーゼ様と、確実な意思疎通を行った上での行動です。……私は一切不法な手段を用いてはいません。犯罪行為も行っていません。」

 

そう強く断言する。実際何も間違ってないのだから。正義は我にありって奴だ。

 

だが、ファッジはこの言葉だけでは止まらない。

 

「……しかし、被告人。君が行った手順だけでは……杖を提出するだけでは足らないのだよ。アンナリーゼの意思確認ができる書類が……又は、アンナリーゼ自身に確認できなければ、君の言ったことは証明ができない。」

 

「これはおかしなことを言うのう、ファッジ。」

 

ファッジの顔が急に青白くなる。法廷も急に静まり返る。

 

「それは新法成立後の話じゃろう。クリスティーナが口座を引き継いだ7月31日当時では、たしかに正当な方法での移転であった。必要とあらばグリンゴッツの小鬼達に聞いてみるかの?」

 

だいたい3分の1程の人間は頷いて聞いている。アメリア・ボーンズもだ。思うところがやっぱりあったんだろう。

 

「グリンゴッツの小鬼たちには私の部下が話を聞きに行った。その日ブラウンを担当した小鬼は手順に間違いはなく、不正も無かったと証言していたよ。……この質問が小鬼たちから要らぬ怒りを買ってしまったよ。とはいえ、盗人落としの滝にも反応はなかったという話だった。」

 

……この人は多分敵じゃない。というかボーンズ……聞いたことあるんだよね。確か同学年に同じ苗字の子が居たはず。……いやまあそれを言い出したらブラウンだって私の他に居たんだけど。

……んで、他の奴らは……そう、残りは買収済みって話かな?

 

「アメリア・ボーンズ……はぁ……ダンブルドア……確かに……そうだ。しかし、そう、言ってしまえば、新法はこの事件のために作られたんだ。……分かるだろう?''アンナリーゼの口座''のともなれば、それは個人の口座のやり取りという規模では収まらない!

……しかも引き継ぎ時にもアンナリーゼは姿を現さなかったという話だ!これでは……不正を疑われても仕方の無い話だろう!」

 

おいおい、この魔法大臣大丈夫なのか?その発言はアウトでしょ。もう私をここに拘束しておく法的根拠が無くなったんだが?

 

そんなことを思っていると、急にファッジの隣に座っていた女がこちらに乗り出してきた。

……この女……なんて言うんだ?豚?カエル?太り過ぎてて首がないし……

 

「……あぁ、ドローレス・ジェーン・アンブリッジ上級次官に発言を許す。」

 

ファッジがそう言うと、その女は喋りだしたのだが……まあその声の女の子らしいこと。その顔でその声は嘘でしょ。声だけならだいぶいい線言ってるよ君。……でも、そこまでビジュを豚に寄せてるなら声も豚にして欲しかったな……

 

「ダンブルドア先生?私もその意見に同意しますわ。たしかにその娘は正当な手段で口座を手に入れた''かも''しれない……でもね?ここにいる魔法界の有力者、そのほとんどがこの事件をきっかけに新法の布告に同意したのよ!」

 

ほとんどって部分でそれなりに何人かの魔法使いが首を振ってたけど……まあでも大多数がうなづいている。

 

「つまりコレは、皆気づいたのよ。このままでは!どこかにいるアンナリーゼのように、杖を奪われてしまったら!すなわち口座ごと財産を全部盗って行かれるということに!」

 

……極論のような気がするけど、まあ実際出来んことは無いだろうね。

 

「それに気づけば……次の疑問が浮かぶわ。''もしかしてアンナリーゼも杖を奪われて口座ごと何もかも失ってしまったのではないか!?''とね。」

 

法廷はいつの間にか活発さを取り戻して野次が飛ぶ。

 

「そう!これは、窃盗にあってしまった、全財産を盗られてしまった可哀想な1市民を!1人の魔女を!助けるための裁判なのよ!!」

 

あーあ……空気が完全に向こうのペースだ。

 

……そしてこの女、完全に自分に酔っている。

 

「静粛に!静粛に!」

 

ファッジが何度もそう叫んでやっとの事で歓声は収まる。

 

「……アンブリッジ上級次官の言う通り、被告人はアンナリーゼとの関係や、話し合ったという証拠等を出せなければ、我々はアンナリーゼの口座の引き継ぎを許すわけにはいかない。……なにか証拠は?」

 

「……私が示せる証拠はこれしかありません。」

 

そう言って提出したのは''血族名鑑''だ。

血の女王、アンナリーゼと契約を交わした血族たちの紳士録。

 

「それには私の名前の他、アンナリーゼ様と契約を交わした血族たちの名が乗っています。故に、その名鑑の中には、過去に''アンナリーゼの口座''に預金者として名を連ねた者たちがフルネームで記載されています。

……確か、預金者の名前は世間に公表されてなかったはずです。グリンゴッツにてその者たちの名を確認されてはどうですか?」

 

まあ言ってて思うけどホントに弱い証拠だよね。アンナリーゼ様との関係を証明するにも弱いし、そもそも……

 

「この程度が証拠になると思って!?数打てば当たると言うほど名前が載ってるじゃないの。第1これが証拠になるとしても、それは貴方がアンナリーゼから受け取ったものか、盗んだものか……確認のしようがないわ!」

 

この女ホントにムカつくな。なんだこの女。

いやまあ言ってることは正しいんだけど。

 

「これしか証拠がないとさっき言ったわね?皆様、聞きましたよねぇ?これはもう有罪でいいんじゃありませんか?」

 

……さて、思ったより状況が悪い。

学長先生は未だにあまり動かない。……諦めてないよね?……まあいいんだけどね。私としてはどちらに転ぼうとどうでもいい。

戻ってくる方法はいくらでもあるし……そう考えると1度アズカバンを体験してみた方がいい気さえしてくる。ちょっと吸魂鬼に対して好奇心が湧いている、というのは人形ちゃんには内緒だ。

 

……じゃあ今何やってるのかっていうと……犯人探し。

 

あの夜でも言ったけど、別に''馬鹿で噛み付く相手を選ばない犬''が殺したいほど嫌いって訳じゃない。教育してやればいいんだから。

 

……だが、悪意を持って私と敵対するつもりなら容赦しない……つもりなんだが。

 

これ多分ここに居ないな?

 

……まあそりゃそうか。わざわざ敵に見つかるような場所に出てくることもないか。

となると、ほんとにここにいる意味が無くなってしまった。

 

有罪!アズカバン!閉廷!でいいんだけど……

 

というかそろそろ、この裁判どうでも良すぎて眠くなってきたんだよね。……この裁判の話を聞いた時は頭に来てて眠気も吹っ飛んでたけど……ここに敵がいないのがわかると、ホント……眠気君がまたやって来る……いつもご苦労さまって感じだよ。……いやそりゃそうか、寝てないもんね。

 

「黙ってないで何か言ったらどうなの!?謝罪でもすれば刑期が短くなるかも……なんて!」

 

……とはいえ、このババアだけはちょっとキツめに教育しないと。

 

「……もういいですよ。私が……はぁ!?」

 

ちょっと待ってちょっと待って。

何で!?なんで?え?

どうしてここに?

 

ゆっくりと法廷の扉が開く。

まだ誰も気づいていない。

 

慌てて私は拝謁の姿勢を作る。

 

急な私の動作に虚をつかれたのか、喧騒が少し静まる。

 

「一体何を……!おい!この部屋はまだ、裁判が続いておる!すぐに部屋を出……」

 

法廷に入ってきたのは3人だった。鉄仮面をつけた女性、その後ろで控えるように立つ身長2メートル越えの女性、そして……

 

「……ルシウス?」

 

ファッジが困惑しながら尋ねる。

 

「大臣。裁判途中失礼する。」

 

全く失礼と思って無さそうな声色でルシウス・マルフォイはちょいと頭を下げる。

 

……あれがドラコの父君か。たしかに、ロンが嫌いになりそうなタイプってやつだ。

 

「い……いくら君でも、ここに入るのは……良くない。……ここはウィゼンガモットだ。」

 

それでさ、ダメだなこの魔法大臣。学長にもルシウスにもタジタジだ。弱すぎるね……

 

「その通りだ、ファッジ。だが私はここに、その娘、クリスティーナ・ブラウンの証人として立っている。」

 

皆が騒然とする。

 

「さて、お静かに。」

 

気取ったような話ぶりだが、ドラコよりとても上品な雰囲気を持っている。

 

「ご紹介しよう。私の隣に立つこの女性が……アンナリーゼだ。」

 

 

〜〜~

 

 

一体何が起きているというのか。

 

アメリア・スーザン・ボーンズの内心は乱れている。

 

私は別にダンブルドアの味方という訳では無い。しかし、姪と同じ歳の子供……11歳の子供を晒し者にして、我欲を満たそうという裁判。

……純血主義者の安っぽいプライドが始めた、''穢れた血''から魔法界の財産を取り戻す''聖戦''。なんともふざけた話だ。正直初めて聞いた時は耳を疑った。……そしてその話に迎合した人間の多さに呆れてものも言えなかった……

 

そんな、''聖戦''なんぞぶっ潰してやりたかったのだ。

……だが無茶な手段で始まったこの裁判は、無茶な方法をとっただけの事はあり、ブラウンの勝機など元々なかった。

 

誰も、1度だって顔を見たことの無い人間との関係など、簡単に証明できるものでは無い。

そう、もし、万が一アンナリーゼ本人が証人として出廷したとしても、誰も顔を見た事がないのだ。''本人では無い''とウィゼンガモットが決めてしまえばそれで終わり。

 

私は……多分ダンブルドアも、遺憾ながら、この裁判の勝負どころはホグワーツ退学処分を回避するところだと思っていた。……アズカバンなんてもってのほかだ。

……いや、そもそも謂れの無い罪だ。無罪が当然なのだが……金の力の前には無力だな……

 

だが、今無罪の道が開けた。

 

しかも開いたのは誰あろうルシウス・マルフォイだ。

……奴が主犯ではなかったのか?でなくてもどういうつもりなのだ。唯一と言っていいマルフォイ家を資金力で上回る存在なぞ、ルシウスからすれば潰したい相手のはず……この話には迎合したものと思っていたが。

 

……喧騒が戻ってくる。

 

「……アンナリーゼだと?」

 

「……本当に?」

 

「……どうするんだ!」

 

「では……その後ろの女は……?」

 

ざわめくが、誰1人否定を突きつけられない。

そう、誰1人大声でアンナリーゼ本人ではないとは言えないのだ。

 

「……あー、ルシウス・マルフォイさん?……ほんとうに……彼女が?アンナリーゼだと……?」

 

口の端をヒクヒクとさせたアンブリッジがルシウスに話しかける。

 

「そうだとも、アンブリッジ。」

 

 

 

〜〜~

少し前、ホグワーツにて

〜〜~

 

 

 

「……ああ、とても重大な問題がある。」

 

「それは一体なんでしょうか?ドラコ様。」

 

「……アンナリーゼの顔を本当に誰も見た事がない。つまり、本人だという証明が不可能なんだ。

……おそらく敵がこんな雑な方法を用いてきているのもそれが大きな理由だろう。」

 

「……あの、それって''真実薬''とかでの自白で証明できないの?私、本で読んだわ。法廷ではしばしば''開心術''や真実薬を使われるって。」

 

「残念だが……グレンジャー?だったか?開心術を知っているなら''閉心術''も知ってそうなものだが……つまり、それらの方法に対する対策も存在している。今回の場合は……自分がアンナリーゼだと思い込んでいる''錯乱呪文''をかけられた狂人として処理される可能性がある。もしくは適当に''コイツは閉心術師だからデタラメを言っている''なんて言ってもいい。」

 

「そんな!司法機関なんでしょ?ウィゼンガモットって。そんなずさんな裁判……」

 

「分からないのか?マグル生まれでも分かりそうなものだが……こんな雑な方法でブラウンを嵌めようとしているんだ。根回しも当然済んでいると考えていい。つまり、言い訳のできない証拠を示せなければ、出来レースの裁判は流れて……晴れてブラウンはアズカバン行きだ。」

 

「……だから、僕を連れて行け。僕なら……いや正確に言おう、僕の家、マルフォイ家の力なら、ウィゼンガモットにいる貴族を……黙らせることができる。」

 

「……そういう事ね、ドラコ。でも良いの?もしかしたらあなたの父君が……」

 

「大丈夫だパンジー。さぁ、どうだ?マリア。」

 

「……分かりました。ドラコ様、一緒にアンナリーゼ様の元へついてきてください。」

 

 

 

〜〜~

 

 

 

そう、どういう経緯があったのかは知らないが……重要なのは、''ルシウス・マルフォイ''がこの''アンナリーゼ''を本人だと保証しているという点だ。

 

ルシウスは影で魔法界を牛耳っていると言っても過言ではないほどの影響力と資金を持つ魔法使い……誰も彼から睨まれたくはないのだ。

特に、こんな場所で、買収されて、ちっぽけな''純血''とやらのプライドを満たしているような連中は。

 

まぁそれこそが今魔法界が抱える問題でもある……奴が白といえば黒でも白になるのだから……

 

「……ルシウスの言を信用し、貴方をアンナリーゼとしよう。……しかしその仮面と……君の後ろの女は?……一体君はなんなんだね?」

 

しかし、腐っても魔法大臣であるファッジ。

それに合わさり、野次がちらほらと飛び始める。

 

顔を見たところで何が分かるわけでも変わる訳でもないだろうとは思うが……

 

「……」

 

取り付く島もないと言った所だ。アンナリーゼは完全に無視している。

 

「……アンナリーゼ。せめて仮面を外しては貰えないだろうか……それが出来ないのであれば、その理由を教えて頂きたい。」

 

もはや尋問官としての、魔法大臣としての威厳などどこにもないタジタジなファッジ。

 

……対するアンナリーゼはあまりにも……自然体だ。

もはや威厳のようなものを醸し出している。

 

ファッジを一瞥した彼女は小声で一言放った。

 

「……無礼者。」

 

「なん……」

 

法廷が完全に沈黙した。……なんて冷たい声を出す女だ。

 

数瞬の沈黙を後にして、法廷は大きく怒声を上げた。

 

……私もファッジが魔法大臣として優れているとは思わないが、それでも階級には敬意を払うべきだと考えている。……無礼者は無いだろう。……いや、ファッジだけに言ったつもりでは無い?野次をあげる周りのウィゼンガモットのメンバーに対して?だとしてもだ。そもそも、何故法廷を敵に回すのか?ブラウンを救うつもりならここは穏便に済ませるべきだろう?

 

怒声を全方向から受けながら、なおもアンナリーゼの態度は変わらない。彼女の視線……いや、鉄仮面で分からないが、顔はブラウンへ向いている。

 

彼女はブラウンへ声をかける。先程の声の冷たさは無かった。

 

……アンナリーゼの声は怒声の中でもはっきりと聞き取れる声だった。

 

「クリスティーナ。彼らは私に対する礼儀がなっていない。」

 

「はい。アンナリーゼ様。」

 

「私の話を聞くにふさわしい態度になっていない。」

 

「はい。アンナリーゼ様。」

 

「……礼儀と話を聞く態度というものを教えてやれ。多少厳しくしても構わぬ。」

 

「はい。アンナリーゼ様。少しお待ちください。」

 

 

 

 

一瞬で部屋の空気が変わった。

 

明らかに危険だ。このブラウンという女は危険だ。

 

「これは……ダンブルドア!どこまでがお前の策略だ!」

 

「……」

 

……っクソ、謎の老魔法使いを気取るのを止めろ!

 

杖を抜き出しブラウンに向ける。法廷の何人かもそれに続くが、お構い無しにブラウンは謎の行動を続ける。

 

……ブラウンが両手を奇妙な形に掲げる。

 

左腕は真っ直ぐ天を指し、右腕は地面と水平に真っ直ぐ右を指す。

 

……目が……彼女の目は何を見ている?

 

アンナリーゼの後ろの女がパチパチと拍手を始めた。

 

クソッ!一体なんだって言うんだ!

 

ブラウンから目を離さず声を出す。

 

「……おいダンブルドア!これは本当に大丈夫なのか!?」

 

……頼むから全て策略のうちと言ってくれ。そうじゃなきゃとんでもないぞ。

 

……ッなんだ?

法廷が暗くなっていく……違う。黒くなって……いや……宙?夜空と星?……そう、宇宙だ。宇宙が法廷を満たしていく。

 

法廷が影も形も見えなくなった。うっ……平衡感覚が無くなる……上下が分からない……宙に浮いている気がしてくる。……もしかしたら本当に浮いているのかもしれない……

 

……!声が聞こえる。……女の……ブラウンの声だ。

 

「……アメンドーズ……アメンドーズ……憐れなる上位者の落とし子よ……私の可愛い眷属……」

 

……いかん。これは……何かわからんがこれは本当にまずい。

 

「……おいで。」

 

やがて星が消え、完全な暗黒になったと思うと、次はゆっくりと視界が元に戻っていく……

 

「……なんだ……アレは……」

 

議場の中央には変わらずルシウス、アンナリーゼ、ブラウン、そして拍手をする長身の女が立っている。

 

……問題はその後ろだ。

 

法廷の中心で狭そうにしゃがみこみ、その巨大な身体を屈ませて……7本の腕をゆっくりと揺らすように動かす……網目状の球体を頭に据えた化け物が……鎮座して……

 

「お静か」

 

「きぃやぁああぁあああぁぁぁああぁあ!!!」

 

ブラウンの声を遮って絶叫を上げた女が1人。

アンブリッジだ。

……これは……無理もないだろう……いや!何を呆けている!

 

「ステューピファイ!麻痺せよ!」

 

クソ!当たっているはずなのに何故麻痺しない!?

 

周りも呪文を放つが、化け物は悠々と何本もある手の1つを動かしてアンブリッジを握りあげた。

 

「助け」

 

「レラシオ!放せ!」

 

今度の呪文も効かない!何故!?

 

次々と放たれる魔法をものともせず、化け物はアンブリッジを握りつぶすように手を動かす。その握り拳は先程見た暗闇の中の星の光が溢れていた。

 

……アンブリッジ……が消えた。

 

ガン!ガン!ガン!

 

その事実を飲み込む暇もなく、ブラウンが杖を床に叩きつけ、大きな金属音を議場に響かせた。

 

「ソノーラス、響け」

 

息を大きく吸いブラウンが続ける。

 

「……お静かに!!このアメンドーズは私の支配下のもの。静かに、礼儀正しく、アンナリーゼ様の話を聞いていれば、この子は何もしません。」

 

信じられるわけがない!

 

「ブラウン!アンブリッジをどうした!彼女は……っ!」

 

化け物が私を見ている。奴の……空っぽだった網目状の頭部から……無数の……目が……

 

「もう一度言います、お静かに。」

 

……くそ……睨まれただけで私が……恐怖を感じるなんて……

 

「……目の前で人を消されて……黙って……いられるわけがないだろう……!」

 

「黙れとは言っていませんよ。''静かに、礼儀正しく''アンナリーゼ様の話を聞きなさいと言ったんです。……質問に答えましょう。あの女……アンブリッジは無事です。この子はわたしの支配下、無闇矢鱈に殺すことはありません。私の命令通り、騒々しい不敬な輩を……追い出すだけです。」

 

「……追い出すだと?」

 

「ええ、この法廷から。……まあ追い出した先は知りませんけど、生きてはいますよ。……そんな顔しないでください。危険な場所には飛ばしてないですし、魔法使いには姿表しという便利な魔法があるでしょう。」

 

……だとしても……あまりにも……常識から外れすぎている……

 

「よろしいですか?……アンナリーゼ様。お待たせしました。」

 

よろしいかだと?……よろしいとしか言えないだろう!……いや、そもそも誰も反応なんてできない。寧ろこんな化け物の前で、よく叫び出さないものだ……

 

「さて、ウィゼンガモットの皆、私がカインハーストの血の女王、アンナリーゼだ。私のクリスティーナが世話になったようだな?」

 

後ろの化け物のことをアンナリーゼは知っているのだろうか?……全く一体なにがどうなっているんだ……

 

「私のグリンゴッツの金庫をクリスティーナに与えたのが問題なのだろう?一体何が問題だったのか、教えてもらおうか。」

 

……続きを促されていると理解したファッジが恐る恐る声を出す。

 

「……あー……そうだ。いや、その通りです。私……いや、我々は……貴女の財産が……あー……クリスティーナ・ブラウン……さんに……その、盗られたのではないかと……」

 

今までにない程どもりながら、ファッジは青い顔をしながら言葉を紡ぐ。

 

「ふむ……私は、金庫の鍵となる杖をクリスティーナに持たせた。その上で、正しい手順で引き継がれたと、そうマリアからは聞いているが?」

 

マリアと呼ばれたアンナリーゼの後ろの女が頷く。

 

「え、えぇ。その……通りなのですが……」

 

「ならばこの話はここで終わりだ。そうだろう?どこに問題がある?」

 

「あぁ、いや、しかし……」

 

ファッジめ、この計画に賛同していたヤツらからの圧力で引くに引けなくなっているのだろう。……もはやほとんど全員が口も聞けぬほど震えているというのに……

 

「……私は今までにないほど憤りを感じている。ふふ、私と、私のクリスティーナにここまで舐めた態度をとるとは……ここにいる連中は頭に虫でも湧いているのかね?」

 

「い、いや……そういう訳では……あぁ……」

 

ファッジが声にならない声を上げながらどうしようかとしているその時、化け物が小さく足を動かし身をよじった。

 

「!えぇ!えぇ!その通りです!貴女の意思も確認できた!我々の懸念は杞憂だったということだ!!」

 

絶叫混じりにファッジが1呼吸でそう話し切る。

 

「ふふ、その様だな。貴公、それでいい。さて、問題もなくなった。お互い時間は大切にしたいものだ。早々に帰らせてもらうとしよう。行くぞ、クリスティーナ。」

 

満足そうに頷きながらマリアとブラウン、そしてルシウスを伴って帰り出すアンナリーゼ。

 

「……ブラウン、待ってくれ。」

 

「?なんですか?あー、アメリア・ボーンズさん。」

 

「この……この化け物は?」

 

こんなものをここに残されてはたまったものじゃない。

 

「あぁ、そうだった。あめんぼくんもお疲れ様。帰っていいよ。」

 

すると化け物はゆっくりと姿を透明に変え、跡形もなく消えてしまった……

 

「では、お疲れ様でした。アメリアさん、また今度。」

 

……今度とは……

 

!いや、そんな事よりダンブルドアに問いたださねば!私の姪はアイツと同学年だろう!?無事なのか!?何も起きてないだろうな!!?

 

奴らの背中が見えなくなった法廷は今までで1番の熱気に包まれた。




狩人くん盛りすぎたかな……
これどうやって狩人くん倒そうかしら。
と悩んでいます。

ルシウスやら色々な人を出したいと思う一方、このキャラ全部使い切れるのか甚だ疑問です。

これでストックが消えました。
もう投稿ペースは落ちる一方です。

……盛り上がりに欠ける気がする。
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