ハリー・ポッターと上位者の娘   作:アーマウニー

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ハリーポッターと上位者の娘 2 マクゴナガル先生

……来た!ほんとに来た!やっぱりやるだけやってみるもんだ!交信も諦めて眠気に身を委ねようと思ってたけど、声上げるだけで来てくれるんだ!

 

「……あー、こんばんわ!初めまして!クリスティーナ・ブラウンです!お呼びしたのはもう色々と聞きたいことがいっぱいあって、ホグワーツってなんですか?この''必要なものリスト''を揃える為にはどうすればいいんですか?ふくろう便ってなんなんですか!?」

 

やばい。興奮して抑えらんない。

 

「おやまあ、ふふ。好奇心ですか?それとも知識欲?何にしても元気そうでよろしいことです。」

 

おっと。顔を見た時の第一印象は厳格な老魔女って感じだったけど。驚きと微笑みの表情は柔らかい人だな。

 

「狩う……クリス様、まずはお客様に上がって頂きませんか?」

 

「あっそうだね。マクゴナガル……先生?どうぞお上がりくだ……さ……い。」

 

まっずい。今気づいた。この家全く使ってなくてホコリ被ってる。しまった。思ったより私浮き足立ってたな?新しい智慧を前にするといつもこうだ。

 

「あー……ちょっと……っていうか……散らかっていますけど……っていうか?ホコリ被ってますけど……あぁ、すいません……」

 

「いいえ、どうぞお構いなく。」

 

マクゴナガルはそう言って中に入った。

 

「すいません……しばらく家を開けていて……帰ってきてすぐ、えっと、そのホグワーツ?からの手紙に気付いて、いてもたってもいられなくて……掃除とかお茶の用意とか無いんです……」

 

はぁ、後から後からああすれば良かったこうすれば良かったと頭が回る。落ち着けクリスティーナ。後知恵より切り替えてアドリブだ。

 

「そのようですね、ミス・ブラウン。差し支えなければ私が綺麗にしますが?」

 

「そんな!申し訳ないです!」

 

「いえ、全く手間ではありませんよ。」

 

マクゴナガルは優しく微笑みながら杖を取り出し、ひと振りした。

 

みるみるうちにホコリが消え、家が輝きを取り戻していく。

 

「……うっそ」

 

唖然とする私を前にマクゴナガルは微笑みながら聞いてくる。

凄い。なんて便利なんだ''魔法''。神秘だとこうは行かない。多分同じことしようとしても出来ない。星の小爆発が起きるかネチョネチョのぐちょぐちょになるかナメクジが湧くだけだろう。神秘ってこういうとこあるよね。嫌いじゃないけど。

 

「余計なお世話でしたか?」

 

「そんな!めちゃくちゃ凄いです!こんなの見たの初めて!ねっ!」

 

人形ちゃんに振り向くと、人形ちゃんも口を開けて驚いていた。……今日は人形ちゃんの色々な表情が見れるな?

 

「……凄いです。こんなことができたなら家ももっと綺麗に……」

 

家って言うのは夢のことだろうな。

 

「あぁそうだ。綺麗にしていただいてありがとうございます!何も無いですけど……どうぞお掛けください。」

 

マクゴナガルを席に促す。私はもちろん人形ちゃんの押す車椅子だ。

マクゴナガルはそれに触れていいものなのか悩んでる顔してる。ちょっと申し訳ない。体が悪いとか言う理由じゃないんだけど……そうだよね……こういうのって触れずらいよね。

 

「……ふふ、こんなに驚いて貰えるとは嬉しいですよ。……失礼しますね。

さて、まずは質問に答えましょうか。

ホグワーツ魔法魔術学校とは、イギリス魔法界を代表する7年制の魔術の教育機関です。

次に、学用品を揃えるには後で説明しますが、基本的にみなが訪れるのはロンドンの''ダイアゴン横丁''という場所で、そこで揃えられます。ええ、全てです。

最後に、ふくろう便とは魔法族の用いる連絡手段ですね。そこら辺のマグルとともに生活しているふくろうに手紙を持たせてもどこにも届きませんよ。

ふふ、分かりましたか?」

 

おお……いっぱい新しい情報が出てくるぞ。これは楽しくなりそうだ。

 

「さて、それで……失礼ですがご両親は?」

 

っと……そうか、そうなるよなぁ。ホコリ被った家の中で女の子二人だけ(マクゴナガル先生は人形ちゃんを私の母とは思わなかったみたい)で居るなんて普通じゃないもんね。

 

「両親は……少し前に亡くなりました。ついこの間まで……えっと……両親の知人の……ゲールマンという方に世話をしてもらっていたんです。」

 

嘘だ。でも明けない夜にて獣狩りに明け暮れてました、なんて言っても信じてもらえる訳無い。

 

「それは……辛いことを聞きましたね。申し訳ありません。では彼女は……」

 

嘘ついてるのに申し訳なさそうにされると、こっちが申し訳なくなるなぁ。

 

「はい。彼女はゲールマンさんからつけていただいた、にんぎ……えっと……」

 

名前!さっきといい、なんて行きあたりばったりな!

 

「はい。クリス様のお世話係を任されております……マリアと申します。よろしくお願いします、マクゴナガル教授。」

 

スラッと出てきたけどマリアって……

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。ミス・マリア。」

 

少し失礼。そう言ってマクゴナガルが杖を振ると、ティーカップと紅茶が出てきた。……マジか、ほんとにすごい。なんでもありだな魔法って。

 

「さて、ミス・ブラウンの置かれている状況は、

なんとなく分かりました。」

 

なんとなくって所で車椅子に目がいったね。

 

「……申し訳ありませんでした。マグル生まれの家庭に、それも……失礼、親を亡くされた方には、手紙を出すだけでは足らないということを失念しておりました。」 

 

「マグル?……えと、察するに非魔法使いみたいな?」

 

「その通りですミス・ブラウン。魔法力を持たない、非魔法族をマグルと呼びます。」

 

「ふーん……つまり魔法族?っていうコミュニティがあって、ホグワーツには魔法族が招待される。魔法力を持たない親の元にも魔法使いは生まれるけど、その子もホグワーツに招待される、と。珍しいんですか?マグルから魔法使いが生まれるのって」

 

「すばらしい洞察ですね。えぇ、ほとんどその通りです。しかしマグルから魔法使いが生まれるのは珍しいと言うほどではありません。

……話が逸れましたね。本題に入りましょう。私が来たのは、ミス・ブラウン。あなたがホグワーツへの入学を希望するかを聞き取るためです。」

 

疑問が解消され知識が増える事に悦びを覚えていたが、そういえば本題はそうだった。

 

「はい!入学したいです!」

 

まあもっとも、私が魔法使いだというのは未だに信じられないけど……

 

「マクゴナガル教授。失礼ですがクリス様は本当に魔法使い……なのでしょうか?」

 

ずっと黙っていた人形ちゃんが口を開く。

 

「私はクリス様をよく……お世話してきましたが、一般的な子供と……一部を除いて変わりありません。つまり、ふつうの人間だったと思うのですが。」

 

人形ちゃんの言葉に少しの驚きを顔に浮かべながらマクゴナガルは口を開く。

 

「……そうですか。えぇ……実は少々不思議な……というか、前例のない事なのです。今回のミス・ブラウンの入学許可は。というのも普通の魔法族であれば、ミス・ブラウンの年齢よりもっと早く魔法力を発現させます。

そう、普通であれば11歳になるよりも前に魔法力の発現を起こし、魔法族であるという証を立てます。しかし……ミス・ブラウン。あなたは今まで1度も魔法力の発現を経験していませんね?つまり、なにか不思議なことが身の回りでよく起きるとか、感情が乱れると何かが起きるとか。」

 

首を縦に振る。そりゃまあ、不思議なことはめちゃくちゃ起こってるけど、それは神秘だ。彼女が今言っている魔法というのが神秘の業とは違うということは、さっきのマクゴナガルの魔法を''瞳''で見て分かった。彼女の言う魔法なんていうのを使ったことは無い。

 

「……しかし、''ホグワーツ''は今年度の新入生としてあなたを指名しました。11歳までに魔法力を発現させない子がいないとは言いませんが、その子達のいずれも、まずは1度魔法力の発現を経験しなければ''ホグワーツ''に認められません。魔法力の発現を経ず''ホグワーツ''に呼ばれる。こんなことは初めてなのです。」

 

……これは多分というかほぼ確実に上位者になったことが関係してで私がふつうの人間と変わったところといえばそれしか思い浮かばない。

 

「……しかし、ミス・マリア。あなたの質問に答えると、''ホグワーツ''がその名を呼んだ事が、ミス・ブラウンが魔法を使える事の証明となるでしょう。ええ、心配しなくても大丈夫です。ミス・ブラウンは確かに魔法使いの卵です。」

 

まるで''ホグワーツ"が白って言えば黒も白になる勢いだなぁ。今の話を聞いても魔法使いという自覚はちっとも増さないけど、まあ太鼓判を押してくれてるんだ。信じてみよう。信じる信じないに関わらず行くつもりだったしね。

 

「じゃあ!にん……マリアちゃん!もういいでしょ?私入学するから!」

 

「お待ちください、クリス様。私との約束を忘れていませんね?」

 

あっ。えでもその願いって通るのかな……

 

「ミス・ブラウン?ミス・マリア?どうされたのです?約束とは?」

 

マクゴナガルが少し困惑した顔で聞いてくる。私は少し顔を苦くしながら

 

「あのー……ホグワーツにマリアちゃんも連れて行けませんか?」

 

「……それは一体どういう理由で……ですか?」

 

あー……

 

「クリス様はまだ赤ちゃんですので、私の介……お世話がなければまともに生活できないのです。」

 

「にっ…マリアちゃん!言い方があるじゃん!」

 

あぁ……マクゴナガルが笑いを堪えてる。

 

「……ミス・ブラウン……貴方は……あー……1人では生きていけないと?」

 

ちょっと!?人形ちゃんだってそこまで言ってない!!

 

「つまり、その……車椅子と影響が?」

 

ここで触れてくるか……いやそりゃそうか。

 

「違うんです!いや全く違うとは言えないんですけど、そんな赤ちゃんとか」

 

「マクゴナガル教授、クリス様は諸事情あって長く起きていられません。眠気に全く抗えないという訳では無いのですが、必要な時以外は寝ていなければ満足に活動できないのです。それとは別に生活力もありません。」

 

ヘイ!人形ちゃん無しで生きられなくなったのは誰のせいだい!?……ほとんど私か?

 

「……つまり、その車椅子は、」

 

「はい。可能な限り安静にするため。どこで眠気を感じても良いため。その為に使っております。」

 

人形ちゃんの舌が回る回る。

 

「そういう事ですか……」

 

マクゴナガルが腑に落ちたような相槌を踏む。

 

「……しかしミス・マリア、学校生活を送る上で……いえ、これから大人になっていく過程で、ミス・ブラウンはひとりで生きていけるようにならなければいけないでしょう?ミス・マリアに世話をしてもらわずとも生きて行けるようにならねば……」

 

そうだよね!いやもちろん人形ちゃんはずっと私のだけど、それはそれとして過保護だよ!

 

「いえ、マクゴナガル教授、自力で、努力で、というもので何とかなるレベルではありません。厳密には違いますが、これは病と同質のものです。クリス様もこの際理解してください。私がお世話をしなければ、睡眠周期も食事も着替えもお風呂も何もかもどうにもならずに一日が終わってしまいます。」

 

……いや、病って……ほら、眠いのは……上位者として再誕したばっか……だから……仕方ないじゃん……幼年期幼年期……

それに生活力もこの身体なら……ほら……自分で出来る……はず……だって……

 

脳内でも言い訳がスラスラ出てこない敗北感が顔に出ていたのか。人形ちゃんと私の顔を交互に見て何を察したのか、マクゴナガルが先程の笑いをこらえる顔から一転、顔を手で覆った。

 

「……本当に、ひとりで生活できないのですね……いえ、ホグワーツには生徒も教員もいます。あまり宜しくはないですが、これからできるだろう学友の方に助けてもらうこともできるはずです!」

 

と、思うよね。

 

「クリス様は……PTSDを患っていまして、私がいるそばでなければ寝られません。体質で寝なければならないのに寝られないとなると心身に強い負担が発生します。ゲールマン様からクリス様を任されている身としても、クリス様に仕える身としても、クリス様から離れるのは許容できません。」

 

実はそうなのである。1日に何度寝るんだよって自分でも思うけどそれも人形ちゃんの傍でだけなのだ。

……上位者にまでなっておいてと自分でも思う……けど……そうなんだよね、私精神はさておき体は11歳なんだよね……やっぱり、11歳の身でヤーナムで様々な殺され方、殺し方、発狂を経験していればそうもなるでしょ。

 

「……こういうタイプの問題児はあまり慣れていないのですが……」

 

小声が聞こえた。問題児って……

 

「マクゴナガル教授。無茶を言うようで申し訳ありませんが、クリス様は非常に手のかかる赤ちゃんです。私のお世話がなければ……」

 

赤ちゃんやめて。

 

「あぁ……はぁ、しかし、大前提として一般的には非魔法族はホグワーツは疎か魔法界にすら入れないのです。ミス・マリアは魔法族ではないでしょう?連れていくことは出来ないのです。」

 

聞いた事のない単語が出たぞ?魔法界って?

 

「魔法界とはマグルの住む世界とは違う、魔法族の住む世界の事です。えぇ、当然ながら住み分けていますとも。そしてその世界の入口は巧妙に魔法にて隠されています。非魔法族は見つけることの出来ないように。」

 

聞くとそう返ってきた。

……うーん。それって私の''瞳''でも見分けらんないのかな?もう魔法って存在を知って啓蒙を得た訳だし、多分暴けると思うんだけど。

んでさっきから人形ちゃんの視線を痛いほど感じる。上位者パワー求めてるんでしょ?味を占めないで……ちょっと待ってよ……

 

「あの、魔法界ってマグルの世界で作った物も持っていけないんですか?」

 

車椅子に添えた人形ちゃんの手がピクリと動く。任せてよ、下手に力使うより言葉で済めば1番なんだから。

 

「……?いえ、物などなら大丈夫です。マグルに対して認識されない、入れないようにできた結界です。ですのでミス・マリアは」

 

「あーそれだったら多分マリアちゃん入れます。」

 

「……はい?」

 

おっと、今のはだいぶ面白い顔だよマクゴナガル。

 

「私も驚いたんですけど、マリアちゃんは……人形なんです。ゲールマンさんが作った人形なんです。これ絶対みんなに秘密にしてくださいね?」

 

後出しジャンケンみたいな感じで喋らないよう釘を指したけど……いや、魔法界になら喋って動く人形とか……多分いるでしょ?あんまり珍しくないでしょ??知らんけど。

 

「……そんな、これ程精巧な……人形?冗談でしょう?」

 

あれ?

もしかして珍しい?他に全くなかったりするのかな?動いて喋る人形。

 

「……クリス様のおっしゃる通りです。わたしはゲールマン様より作られた人形です。」

 

「……そうは言っても……近くで見ても全く違いがありません……本当に……''ほんとうに''これが人形なのだとしたら……」

 

……信じて貰えないかぁ。まあ私が少し秘匿したり外見弄ってるからね……肌を触ってもらってもいいけどここは劇的に行こうかな?

 

「マリアちゃん、ここはちょっと血を見せてあげた方がいいんじゃないかな?」

 

ナイフを取りだして人形ちゃんに渡す。

 

ギョッとした顔をしてマクゴナガルはこちらを見た。抗議するように口を開きかけるが、

 

「分かりました。クリス様。」

 

人形ちゃんは戸惑いなく腕に刃を突き立て血を流す。

 

当然、流れるのは赤い液体ではない。白い、人のものではない色の血液。

 

「……なんてこと……」

 

マクゴナガルの驚愕は止まない。さすがに白い血液まで見せつけられたら人間ではなく人形だとわかるでしょ。

 

「お気になさらず。私は人形です。」

 

私が人形ちゃんに包帯を巻いてあげるのを、言葉も出さずにただ眺めているマクゴナガルに話しかける。

 

「今思えば、ほら、もしかしたら……ゲールマンさんは魔法使いだったのかも?」

 

そんなことはありえないけど。

 

「こん……こんな……!これ程精巧な人形の製作技術は魔法界にはありません!もしあるのだとしたら!成したのだとしたらそれは偉業です!ゲールマンという方はどちらに!?」

 

おお、やっと言葉が出てきたね。

でもここまで火が付くとは思わなかった。これ人形ちゃんのこと人形だって黙っててくれるのかな?

 

「ゲールマン様はお亡くなりになられました。長い眠りを終えられたのです。」

 

巻いた包帯を擦りながら私に向き礼を言う人形ちゃんにこちらも謝る。証明のためとはいえごめんね?

 

「っ……そうですか……残念でなりません。……しかし、そういうことであるならば……そうですね……校長と相談したい案件ですが……そもそも、''学校に人形を持ってきてはいけない''という校則はありません。……まぁ、屁理屈というものですが……それに、人形という一言で済ませていいシロモノでは無いことは確かですが……ええ、ミス・ブラウンがしっかりとした学校生活を送れるよう、認めましょう。」

 

''不用品を学校に持ってきてはいけない''とかは無いのかな?人形ちゃんは不用品なんかじゃ絶対ないけど。つまり、学業に不必要なものを……ってね。

 

「ありがとうございます。マクゴナガル教授。」

 

丁寧なお辞儀をマクゴナガルへ行う人形ちゃんを見ながら、私は話を振る。

 

「あー……色々と迷惑をおかけしますけど、よろしくお願いします。マクゴナガル先生。ところで人形ちゃんのことほんとに内緒にしててくださいね?」

 

多分魔法による制作物だと思ってくれてるけど、どちらにせよ神秘に繋がる技術は可能な限り秘匿しないとね。口約束で済ませようとしてるあたりガバガバだけど、多分マクゴナガルは信用してもいいタイプの人間だ。

 

「……わかりました。しかし私は校長への報告義務があります。実質''生徒の付き人''がホグワーツへ入校するという''特例''を許可したのです。こういったことは風紀を乱します。今後の対策、対応などを行うためにも校長や他の先生方には共有させてもらいます。」

 

おっ、やっと調子が戻ったかな?多分本来はこういう人なんだろう。でも、

 

「ん〜……ほかの先生方はちょっと……校長先生までならいいですけど……」

 

どれだけの人数が教員としているのか分からないのに、認めることはちょっと難しい。

 

「諦めなさい。ミス・ブラウン。''特例''を認めるということとは、非常に大変な事なのです。貴方がミス・マリアが人形だということを隠したいということは理解しました。配慮も致します。が、共有はさせていただきます。よろしいですね?」

 

……まあ仕方ない。どうせ秘匿はもうガバガバだ。人の口に戸は建てられない。それに、実際(どんな形で授業が行われるのか知らないが)教室の中にまで人形ちゃんが来るのであれば、他の先生達はそれを無視することはできないだろう。

 

「……分かりました。」

 

「よろしい。それでは次は学用品を揃えるところですが、もう夜更けです。日を改めましょう。1週間後の8月1日に迎えに来ます。その後、ロンドンのダイアゴン横丁へ向います。そこで学用品を買い揃えましょう。」

 

「分かりました。大丈夫です。……っと買い物ですか?」

 

おっと?これはまずいかもしれない

 

「ええ、その通りですが。あぁ、マグルのお金は魔法界とトレード出来ます。心配しなくても大丈夫ですよ?……あぁもしかして、」

 

「そうなんです……そもそもお金が無いんです。」

 

今まで夢の世界に慣れすぎたせいで、血の遺思しか持ってない。なんならコインなんか拾ったそばから捨てていた。

 

「……申し訳ありません。ご両親がお亡くなりになっていたのでしたね。気が回りませんでした。そうですね……お金に関しては私の方で何とかしておきましょう。申し訳ありませんが、借金という形になりそうですが……」

 

おっとー……そっかそうなるかぁ……非常に申し訳ないなぁ……親に関してはもうなんとも思ってないのに……お金の工面までしてもらうなんて……でも実際何ともならんよね……いや?

 

「お気遣いありがとうございます。マクゴナガル先生。そうして貰えると助かります。でもこちらでも何とか出来ないかちょっと頑張ってみます。」

 

「いえ、気にしないでください。生徒とはいえ、お金は学ぶ為だけに使う訳では無いのですから。もちろん私もある程度なら協力しますが。」

 

優しい人だな。この先生はやっぱりいい人だ。

 

「はい!分かりました。では次は8月1日にですね。」

 

マクゴナガル先生は優しく微笑み首肯すると、挨拶をして姿をくらませた。

 

凄いな。ほんとに消えちゃった。魔法ってすごい。

……マクゴナガル先生が来てからずっと感じてた視線も少し前に消えた。魔法族にも恥ずかしがり屋はいるみたい。

 

 

 

「人形ちゃん。これで晴れて私も学徒の一員だよ!」

 

「お疲れ様です。狩人様。……ですが、わたしの正体を、人形であることを知らせても良かったのですか?せっかく狩人様が偽装してくださったのに。」

 

「うーん……多分大丈夫だと思うけどなぁ。言われるまで気づいてなかったし。結局私が人間じゃないことにも気づいてなかったし。人形ってことも向こうの都合のいい解釈をしてくれると思う。神秘には辿り着けないよ。」

 

「狩人様がそういうのであればよろしいのですが。」

 

「それよりほら!人形ちゃんも喜びなよ!今日初めて夢の世界から出たら、次はすぐさま学校生活だよ?新しいこと、新しい智慧がいっぱいだ!」

 

「私は狩人様がいれば、あとは定期的に夢に帰れるだけで満足なのですが……」

 

うれしいこと言ってくれるけど、その引きこもり気質は宜しくないなぁ。いっぱい外に連れ回そう。

 

そう心に決め胸をふくらませていたが、さすがに眠気がやってきた。手紙を受け取ってから数時間でこれだ。激動すぎる。疲れたし、そもそも寝ようとしてたことを思い出して余計に眠くなってきた。次は買い物か……あぁ、お金の問題を思い出した。

 

うーん多分お金もってると思うし……貸してくれると思うけど……お金貸してくださいって言いに行くの、なんだか悪いなぁ……でも……起きたら……やんなきゃ……

 

「おやすみなさい。狩人様。良い夢を。」

 

 

〜〜~

 

 

 

様々な用途不明の魔法道具が置かれている円形の部屋。ホグワーツ魔法魔術学校、校長室。歴代の校長の絵画は皆眠っている。

先にあの家から帰っていた白い髪と髭を伸ばした老人は魔女の帰りを待ちながら思索に沈む。すぐにここに報告に来るであろう魔女の目から見た感想を聞きたいのだ。

しばらく後、煙突飛行で帰ってきた魔女に微笑みながら声をかける。

 

「おかえり。マクゴナガル先生。どうじゃったかな?かの者は。」

 

マクゴナガルは何処から話せば良いかと頭を整理する。

 

「アルバス、わたしは……貴方が言うほどミス・ブラウンは……危険……ではないと感じました。たしかに不思議な娘ではあります。少々……危うい気はしますが……寧ろ彼女に着いている者、マリアの方が……なんというか……正しい表現ではない気がしますが……得体がしれない……と。……そうですね、悪人とは思えません。……いえ、善人悪人という物差し以前のところです。衝撃ですよ、彼女が人形だなんて……あのような人形は見たことも聞いたこともありません。」

 

「あぁ、あぁ、ミネルヴァ。ワシはミス・ブラウンのことを危険とは言っておらんよ。君の言う通り、不思議な娘じゃと言っておった。全く予想外の場所から、想像だにしておらんかったところから突如生まれた……言わばイレギュラーじゃ。」

 

その老人、アルバス・パーシヴァル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアは不断の警戒をしていた。

例の男は確かに敗れた。生き残った男の子、ハリー・ポッターの母。リリー・ポッターの愛によって打ち砕かれた。しかし例の男は完全に滅んだわけではない。ヴォルデモート卿は今度こそハリー・ポッターを殺し、魔法界を征服するだろう。そうさせない為に警戒し、準備をしてきた。しかし、その警戒をすり抜け、ひとつも逃さないと見張っていた情報から急に新入生として生まれたのがクリスティーナ・ブラウンである。この娘がなぜ''ホグワーツ''に選ばれたのか、どうやって選ばれたというのか。魔法力を発現させてすらいない娘が。いまだ審判をくだせないダンブルドアは警戒対象として彼女を観る。

 

「あぁ、ミネルヴァ。たしかに君の言う通り、あの人形、いやミス・マリアと呼んだ方がいいかな?あちらの方が気にかけるべき対象なのかもしれん。いやはや……マクゴナガル先生、貴女も言ったように、あのような人形……いや、人形という領域を越しておるものを作れる者などわしも知らぬ……彼女らの言う通り、ゲールマンという者が亡くなっているのなら……悲しいことじゃ。少しでも話してみたかった。……なんとも、まだまだ分からんことだらけじゃ。警戒は怠れん。……だが、しかし、わしも彼女らからは悪意を感じなかった。それがわかっただけでも収穫じゃろう。」

 

「それでは……」

 

「うむ、ミネルヴァ、ミス・マリアは君の判断の通り、ミス・ブラウンの付き人として入校を許可しよう。」

 

その時、ダンブルドアに''ホグワーツ''の古い魔法が伝わる。

 

「いやはや……なんということじゃ……まさか''ホグワーツ''すら騙す程の精巧さとは……いや、人形だと知っていて尚も資格があると判断したのかのう……」

 

ミネルヴァはダンブルドアの独り言の意味がわからない。分かる時の方が少ないくらいだ。

 

「アルバス?それはどういう……」

 

「たった今、ミス・マリアも''ホグワーツ''に選ばれた。''生徒''として入学するようじゃ。」

 




書き貯めしてるのが何個かありますがすぐに尽きるので、ペースはとても遅くなります。

……書き始めると全部書きたくなるから、どこをスキップしてどこを書くかって選択ができなくて全く話が進みません……
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