ハリー・ポッターと上位者の娘   作:アーマウニー

3 / 10
ハリーポッターと上位者の娘 3 カインハースト

廃城、カインハースト。

かつてビルゲンワースを裏切り、禁断の血をもって血族を起こした女王の居城。

教会と敵対し、特に処刑隊と争い、遂にはローゲリウスにより秘匿された血の女王の居城。

 

その秘匿は破られた。私が破った。

 

血の女王、アンナリーゼに跪き、その血液を拝領し、私は血族に名を連ねた。

 

ここはその場である。

 

そして。

私はまた、アンナリーゼ様の前で跪いている。

 

理由は簡単だ。

 

 

借金をしに来た。

 

 

あぁ、とっっても肩が重い。アンナリーゼ様……お金貸してって言ったらどんな反応するんだろう。……まっっったく想像つかない。

 

「久しぶりだな。貴公、月の香りの狩人よ。……いや?月の魔物の後継よ。」

 

「お久しぶりです。アンナリーゼ様。」

 

ほんと、長い間あってなかった。長い間ナメクジになってたし、その間は人形ちゃんに完全に介護されてたから狩人の夢の外に出ることすら中々できなかったんだよね。上位者になってからだと数える程しか会えてない。

 

「ふふ……人の形に戻るとは。ようやく念願が叶ったようだな。……自ら人をやめておいて、しかし人の形を求めるとは、酔狂だと思わんか?」

 

「はい。アンナリーゼ様。……好奇心に身を任せるとどうなるか、身をもって味わいました……」

 

ほんとにね。……まあこうして人の形を得ることができた訳だし、後悔はしてないけど。

くつくつと笑うと、アンナリーゼ様は少し期待の滲む声で問いかけてきた。

 

「それで?何用で来たのだ。もしや……私の話を飲んでくれる気になったか?」

 

それきた。アンナリーゼ様隠しきれないほどソワソワしてる。うー……これがあるからなぁ……

 

「……アンナリーゼ様……申し訳ありませんが」

 

「……なんだ!また断るのか!!貴公!初めて会った頃は貴公の方から求婚してきたではないか!婚約指輪まで!忘れたとは言わせんぞ!」

 

いやぁ……それはまだ諦めてないですけど……

 

「それに!私の願いを貴公は知っているだろう!」

 

あー……そこが問題なんですって……

 

「……私は、血の赤子を望んでいるのだ……何度も話しただろう……貴公、貴公ならばできるのだろう?月と邂逅し、月に認められ、月に成り代わった。上位者である貴公ならば……」

 

「……アンナリーゼ様。何度も申し上げますように、私も赤子を求めています。そう、上位者は赤子を求める。これは本能です。……しかしそれは尋常では得られないからなのです。私は上位者の赤子を孕んだ女性を見ました。その出産も、その末路も……」

 

アリアンナさん……

 

「私は貴女に、あのような目にはあってほしくないのです。……そう、子を成すのであれば、絶対に成功出来る確信を得てから……そうしたいのです。」

 

「……そうだな、いつもそう言って断るのだ。貴公は。しかし、私は貴公を諦めるつもりはないぞ。永く待ったのだ。その果てで夢に指がかかったのだ。無理やりにでも振り向かせてやるさ。」

 

そういう所がほんとに好き。

 

「そういう所がほんとに好きです。」

 

「なら抱け!」

 

「ほら私まだ赤ちゃんですし。身体は11歳です。」

 

「あぁ!……まったく……都合のいい時だけそれでは……あの人形も苦労していると見えるな?」

 

わがままは子供の特権なんですよ。

 

「もう良い。さっさと要件を話すがいい。」

 

……いやー、はっはっは……この流れだと余計に言いにくいよね。

 

「……あー……それでですね。アンナリーゼ様……お…ねを…か…ほしい…です。」

 

「?どうしたのだ?いつものように、はっきりと言えばよかろう。子をくれんのには思うところがあるが、血の穢れを献上しに来てくれるだけでも、貴公には感謝しているのだ。なんでも言ってみよ。」

 

「……その、あー…お金を……貸してほしいんです。」

 

……しーんってやつだね。

 

「金」

 

「はい。」

 

「貴公が」

 

「はい。」

 

「金が欲しいと」

 

「はい。」

 

……行けるか?

 

「……あっはははははっ!きっ貴公が、金をっふふふふ」

 

「……そんなにおかしいですか。」

 

まぁ、分かるけど、そこまで笑われちゃうといい思いはしないよ?

 

「いやいや、ふふ、そうだな?貴公は、今まで金なぞなくてッ、も、遺志だけで良かったのだものな。ふっふふ、珍しくてつい、貴公が、私に金の無心をっふふ、するとはっははっ」

 

アンナリーゼ様はひとしきり笑ったあと、話を続けようとしたが思い出し笑いが長引いて全く話が進まない。

 

「っふっふふ……はー……すまない。っ……それで?お前が金を欲しがるなんて何がっふ、あったのだ?」

 

「いい加減いいでしょもう!」

 

っと言葉遣い言葉遣い、クールにクールに

 

「すいません、アンナリーゼ様。……私の元にホグワーツ魔法魔術学校という所から入学許可証が届きまして、まあつまり私は魔法使いらしいのですが、」

 

「っっふふっふふふふっはは」

 

……クールにクールに

 

「……そのホグワーツに入るための学用品や生活費を払うためにお金が欲しいのです。もちろんしっかりとアンナリーゼ様に私のできる形でお返しはさせていただきます。どうかお金を貸していただけないでしょうか。」

 

「っふふふっ……ふぅ……あぁ、そういうことか……っ、いや魔法使いっ……貴公がか?……随分とっ、ふ可愛い魔女がっははっ''魔法少女''がいたものだっふはっ……いたものだな。」

 

……

 

「……アンナリーゼ様の伴侶は''小さな可愛い魔法少女''です。良かったですね?長い年月の果てに赤子を授けてくれる伴侶の正体が分かって。」

 

アンナリーゼ様のこんな大声の笑い声……というか大笑い?初めて聞いたよ。もういいよ。笑ってください。

 

〜〜~

 

やっと落ち着いた。

 

「……すまなかったな。あぁ、良いとも、というか、あぁ、今、思い出した。私の血族の中にも何度かいたのだ。そう、魔法使いと言われる者たちが。ちょうど貴公のように、我が子が学校に招待されたというのもいた。私に、なんだ……魔法界?魔法使いの金を献上してきたやつがいたのを覚えている。銀行口座を献上された時は流石に驚いたよ。とはいえ血の穢れをこそ欲していた私としては、その後手をつけはしなかったのだが。」

 

……なんて事だ。と言うことは本当に無作為に、マグルの中で突然変異的に魔法使いが生まれることがあるのだろうか?それとも古い祖先に魔法使いがいると、子孫も魔法使いとして覚醒したりするのだろうか。

いや、アンナリーゼ様をしてその永い人生の中で数人しか知らないというのだ。突然変異にしても古くからの遺伝にしても極低確率なのだろう。考えても私が招待された理由には届かなそう。

 

「さてその金庫の鍵と……彼から譲り受けた杖を貴公に与えよう。」

 

えっ。与える?

 

「そんな!アンナリーゼ様。貰うなんて」

 

「受け取れ。そもそも今の今まで忘れていたものだ。なくても同じだよ。魔法界だったか?その金なら尚更だ。有効に活用できる者に渡す方がよかろう。」

 

それに貴公にはいくらでも貸しを作って置いて良い。返すのであれば子種で頼むぞ?と笑いながら言うアンナリーゼ様に苦笑を向ける。だからまだ赤ちゃんなんだって。しかも子種て、私の性別わかってますよね?

 

「分かりました。ありがたく頂戴します。」

 

 

 

 

〜〜~

 

 

「お帰りなさいませ。狩人様。」

 

「ただいま。人形ちゃん。」

 

人形ちゃんの準備してくれた車椅子にドスンと座る。……なんだかこれ慣れてきちゃったな。ますます依存度が上がってる気がする。

あーそれにしても人形ちゃんほんとに落ち着く。安らぐんだよねぇ。疲れてると人形ちゃんに近づくだけで眠くなる。

 

「お疲れですね。アンナリーゼ様とのお話は上手く行きましたか?」

 

「……うん。まあ、だいぶ疲れたけど。アンナリーゼ様のお陰で、魔法界でのお金は困らなそうだよ。なんだかすごい量のお金が入った……口座ごと貰っちゃった。」

 

「……貰った?借りたのではなく、ですか?」

 

最初は借りるつもりだったもんね。驚くよね。

 

「そうなの。だからほんと、感謝しないと。」

 

「……そうですね。私も、当初の予定と異なり狩人様の学友として、生徒として、''そして''お世話係として、入学することになりますから……アンナリーゼ様には私からもお礼をお伝えしなければなりません。」

 

そう、マクゴナガル先生と入れ替わりに届いたふくろう便で人形ちゃん宛の入学許可証が届いたのだ。めっちゃびっくりした。手違いなんてことは多分ないと思うんだけど、だとすると理由がわからない。人形ちゃんも主人たる私に影響されて魔法使いの適性が生えたとか?

 

どちらにせよ''お世話係''として浮いてるよりは生徒の方がいいと思う。……魔法使いの平均身長がめっちゃ高いとかじゃないとマリアちゃんめっちゃ目立つだろうな……11歳なんて言えないだろうけど、手紙曰く1年生として入学だ。大丈夫なんだろうか。''お世話係''としているより寧ろ目立っちゃうのでは??

 

とはいえ、人形ちゃん的には、何よりも重要なのは私のお世話係というポジションらしい。わかる。私もそのポジションだけは人形ちゃん以外の誰にもやって欲しくないね。独り立ちは……そりゃしたいけど。

 

「マクゴナガル先生が来るのは……明後日だっけ?」

 

「はい。狩人様。」

 

「なら……ふぁあ……今度こそしっかりとおもてなししなきゃね。」

 

あくびが、もう疲れてしまったみたい。ねむい。

 

「……ふふ、ええ。そうですね。狩人様。」

 

「……うん。ちょっと……おやすみだね……」

 

「はい。狩人様。良い夢を。」

 

 

〜〜~

 

 

さて、お買い物当日である。めちゃくちゃ張り切ってます。私だけでなく人形ちゃんのも買うんだからね!つまり人形ちゃんとのお買い物デートとも言えるのだ!……いや、マクゴナガル先生もいるからデートと言うには厳しいか。

 

「狩人様。本当に狩装束のまま行かれるのですか?」

 

「うん。やっぱり気合いが入るから。」

 

「狩りに出かける訳ではないのですよ?」

 

そうだけどね。でもそれくらい張り切ってるってこと。

 

「人形ちゃん。マクゴナガル先生が来たら……というか、これからは2人きりの時以外はクリスティーナかクリスって呼んでね?私も人形ちゃんじゃなくて……えっと、マリアちゃんって呼ぶから。……前そう呼んだからなんだけど……ほんとにマリアでいいの?」

 

「はい。構いません。私も狩人様のことはクリス様とお呼びします。」

 

……人形ちゃんをマリアと呼ぶのは……ちょっと複雑だけど私がそう思うだけなのかな?

他に呼んで欲しい呼び名があれば言ってね?

そう言ったら''……今は思いつきません。''と言われちゃった。

 

なんてやってると瞳が客人に反応する。今回も急に現れた。それ毎回やるけどつまり、それやってること瞬間移動みたいなもんだよね?凄いね魔法。私だって上位者になって初めてできるようになった神秘なのに。

 

 

〜〜~

 

 

[コンコン]

 

早足で玄関に向かいドアを開ける。

 

「待ってました!マクゴナガル先生!」

 

「まあ、お待たせしました。ミス・ブラウン。それに、ミス・マリア。貴女も入学されるのですね?おめでとうございます。」

 

「……ありがとうございます。マクゴナガル教授。」

 

「……あの?マクゴナガル先生。マリアちゃんに入学許可証が届いたのってやっぱり手違いとかではないんですね。」

 

「……その通りです。間違いではありませんよ、ミス・ブラウン。私も……ええ、知った時とても驚きましたとも。あなたと同じようにミス・マリアも魔法を発現させていないのでしょう?それに、彼女が人形である、と知った後からでしたので、尚更です。」

 

……これはやっぱりイレギュラーだよね。私の神秘が何かしらイタズラしちゃったんだ。どう考えてもそれしかない。しっかり制御できるようにしないと……不安定な神秘なんてロクなもんじゃない。

 

「ところでマクゴナガル教授。ここからどのようにしてロンドンに向かうのですか?」

 

移動手段がないことを人形ちゃんが先生に話す。

そこは私も聞きたかった。そりゃ行こうと思えばどこにでも行ける。上位者パワーはなんでもありだ。……けど、先生が一緒だと流石に神秘をおおっぴらに使うことはできない。

 

「あぁ、心配いりません。マグルの交通機関は使いませんよ。今回はポートキーを使います。すぐにロンドンのダイアゴン横丁手前に着きますよ。」

 

「ポートキー?」

 

聞くに、魔法で作られた特定の場所に飛ぶことの出来るアイテムのようだ。ふーん?……つまり狩人の確かな徴みたいな?原理は全く違うだろうけど。

 

「……ところで、ミス・ブラウン。貴女の持っているその杖は?」

 

「……今日は、長く歩くことになりそうですし……ずっとマリアちゃんに車椅子を押してもらう訳にもいかないので……」

 

……そう、嘘である。これは仕込み杖。私の狩りの道具だ。……やっぱり何が起こるか分からないし、武器を持たずに外に出るのは……なんと言うか、落ち着かない。

 

「そうですか……大丈夫なのですか?車椅子でなくて。」

 

「はい。これから学校生活を送るんですから、ある程度は慣れていかないと。」

 

そうですねと先生が言うのを見ながらバレなかったことに安堵する。

 

 

気を取り直して、''準備はいいか''と聞かれた私達は頷く。もううずうずして仕方がない。

 

「さあ、この長靴を握って。向こうに着くまで絶対に離してはいけませんよ。」

 

……何故長靴?''ポートキー''なる瞬間移動ができるアイテムを作ろう!形は長靴で。なんて発想になるのは、中々に……独創的?少なくとも常人はもっと違う形を選ぶでしょ。

 

聞いてみたところ……曰く「……なぜ長靴にしたのか?手頃なのがそれだったからでは?……あまり考えたことがありませんでした。」らしい。魔法ってのがほんとに身近にある人間の発想と思えば頷ける……のか?

狩人は様式美を大切にするし、あまり感性は相容れなさそう。

 

閑話休題。さっさと掴まってと目で急かされるので言う通り強く掴む。

 

「さて、飛びますよ。……いち、にい、さん!」

 

うっ。瞬間内臓が全部持ってかれたような、天地が逆さまになったような。そんな感覚ですごい勢いで引き込まれた。続いて細いゴム管の中を無理やり押し進められるような感覚。

 

……この感覚を魔法使いは毎回瞬間移動の度に受けてる訳!?辛すぎ!ってか酔う!

 

やっとの事で目を開けると急に脚に地面の感覚が戻った。そこはもう私の家ではない。路地裏のようだ。人はいない。

 

わお。

 

「うっそ……ほんとに……?」

 

実際体験してしまうとその無茶苦茶加減に口が空きっぱなしになる。……マジで神秘も使わずにほんとに成し遂げちゃうんだ……

 

「……クリス様?体調は大丈夫ですか?」

 

我に返って答える。

 

「うん!にん……マリアちゃんは?」

 

「私も問題ありません。」

 

「良かった……すごいね。ほんとに……ほんとに魔法ってあるんだ。」

 

……やっぱり私はこの力をしっかりと学びたい。本心からそう思う。より良い存在へなる為に。まだまだ得られる知識は多い。

 

「ふふ……さあ、感動しているところで悪いのですが、こちらへ。ダイアゴン横丁はこちらです。」

 

路地裏をぬけ、少し人の往来のあるみちへ。先生は汚れたパブの前で止まる。

 

「ここが魔法界とマグルの世界を分ける入口、漏れ鍋です。」

 

へぇ、通行人は全くこの店に興味を抱いていない。いや、多分……

 

「このお店。マグルには見えなくなってるんですか?」

 

「その通りです。……厳密には、見えない。ではなく、打ち捨てられた古い家。に見えているはずです。どうしてそれを?」

 

「勘です。……すいません。半分本当です。もう半分は流石に誰も見て無さすぎだから、違和感を感じました。ここだけ皆目が滑ってるように見えたので。」

 

「素晴らしい観察力です。」

 

そう言いながら先生は漏れ鍋に入っていく。後を追うと店内は騒がしかった。

 

「……マクゴナガル教授。いつもこれほど活気があるのですか?」

 

人形ちゃんが聞く。いっつも私との2人きりだからね……だいぶ騒々しく感じてるんだろう。

 

「……そうですね。いつもはこれほど騒がしくはないのですが。多分……」

 

思い当たる節がある様で、先生はカウンターに行く。

 

「トム。」

 

バーテンのおじさんが答える。

 

「おや!ミネルバ!懐かしいじゃないか!」

 

「お久しぶりです。この騒ぎは?一体どうしたのです?」

 

「あぁ!惜しかったねぇ。ついさっきまで''彼''が来ていたんだよ!」

 

随分自慢するような顔で話すじゃないか。

 

「"'彼''というのはもしかして」

 

「その通り!生き残った男の子!ハリー・ポッターだよ!彼が帰ってきてくれた!」

 

ハリー・ポッター……この騒ぎ方からしてだいぶんな大物みたいだね。

 

「……やはりそうでしたか。」

 

小さくそう呟いた先生の声はトムには届かなかったようだ。

 

「それで?彼女たちは?」

 

「新しい入学生です。つまり、ハリー・ポッターと同級生になる子たちです。」

 

「''たち''?……つまり、この女性も?嘘だろう?ミネルバ。どう見たって11歳には見えないぞ!?」

 

「初めまして!トムさん!私はクリスティーナ!そしてこちらがマリアちゃん!よろしくね!」

 

「初めまして。この度ホグワーツ魔法魔術学校に入学することになりました。マリアです。」

 

マリアちゃんの身長と美しさに呆然としてるね?分かるよ……非常にね……でも私のだよ。

 

少し牽制するように人形ちゃんに抱きつく。人形ちゃんの顔が少し歪んでる。可愛い。

 

「あ……ああ、よろしくな。俺はトム。ここ漏れ鍋のバーテンだ。」

 

先生に小声で「今年のホグワーツはどうなってる!?」と言っていたが、先生は肩をすくめるばかり。はっはっは……ほんとにイレギュラーっぽいね。なんもしてないのに……多分。少なくとも意識的には。

 

「先生。ハリー・ポッターって?どんな人なんですか?」

 

「ハリー・ポッターを知らない!」

 

トムは驚いて大声で聞いてくる。

 

「トム。彼女たちはマグル生まれです。……ミス・ブラウン。魔法界でハリー・ポッターを知らない人間はいません。いえ、人間以外にもその名は広がっています。彼は……偉業をなしたのです。」

 

トムからすまないと謝罪を受けながら、先生に次を促す。偉業って?それに人間以外にも名を知らしめるとは、すごいじゃないか。

 

「数年前まで……この英国魔法界は混乱と死の溢れる世でした。[名前を言ってはいけない例のあの人]と、その信奉者たる''死喰い人''によって。」

 

"名前を言ってはいけない''ねぇ……

 

「彼らは、彼らに逆らう全ての人間に、痛みと死を与え、恐怖によって英国魔法界を支配していきました。そう、もうあと一息という所まで彼らは全てを手中に収めようとしていたのです。」

 

なかなか苛烈にやったんだね。その''例のあの人''ってのは。名前を呼ぶことすら恐怖させるレベルとは。

 

「彼ら、''例のあの人''と死喰い人に抗う者たちは、ダンブルドア校長を筆頭に強く、善の魔法使い達で団結した勢力でした。その中にはハリー・ポッターの両親もいたのです。」

 

たしか……アルバス。そう、アルバス・ダンブルドア。そして''生き残った''男の子の両親。ふーん?……話が見えてきた。

 

「……10年前ハロウィンの日。''例のあの人''はポッター家を……襲撃しました。」

 

先生の声が鼻声だ。目には涙も溜まってる。

 

「そう……例のあの人は……ハリーの両親、ジェームズ・ポッターと……リリー・ポッターを……殺しました。……あぁ、あのふたりは……そんな死に方をしていい人間ではなかった……彼らは……素晴らしい人だったのに……」

 

トムが先生に声をかける。わかるよ……とかその通り……とか。

 

「……すいません。……しかし、例のあの人は……当時1歳の赤ん坊であるハリー・ポッターを殺せなかった。わかっているのは……例のあの人が放った''死の呪い''が……原因は不明ですが、ハリーを跳ね返り……例のあの人に当たったと。」

 

……死の呪い……

 

「死の呪いは、当たれば命あるもの全てを即座に殺します。歴史上、この呪いが当たったものが死を逃れたことはありません!しかし……ハリーは生き残った。……そう。例のあの人は当時力のある魔法使い達をことごとく滅ぼしました。しかし!彼は、ハリー・ポッターだけは!打ち倒せなかったのです!……故に、ハリー・ポッターは英雄で、……そう、皆が知っているのです。」

 

……うん。なんというか……

 

「教えてもらってありがとうございます。マクゴナガル先生。……ハリー・ポッターは……可哀想……ですね。」

 

先生は頷く。

 

本心からそう思う。両親をなくした上、覚えてもいない赤ん坊の頃の出来事で賞賛されるなんてね……

うん。興味が出てきた。悲劇の主人公の話を聞きたい。見て、調べて、知りたい!歴史上前例の無いことを赤ん坊の時にやり遂げたその人に。……多分覚えてはいないだろうけど。

 

「先生。」

 

マクゴナガル先生の目を見る。

 

 

 

「私、ハリー・ポッターと友達になりたいです。」




可能であればサブタイ通りカインハーストだけにしたかった回です。もっと女王様とお話させたかった。
ただハリポタ要素皆無になりそうな上、話が進まないのでこうなりました……

次はダイアゴン横丁です。
またまだホグワーツには着きません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。