さて、ホグワーツ魔法魔術学校入学も残すところあと1日となった。なんて長い1ヶ月だったんだろう。……いや、そこまで長くはなかったか?色々あったしね。
まずアンナリーゼ様にもう1回頭を下げに行ったでしょ?(流石にアンナリーゼ様もそんなにお金があるとは知ってなかったみたい。後悔はしてなかったけど。曰く''ありがたいと思うなら……まあ、言わなくてもわかるだろう?貴公、期待して待ってるよ。''との事。怖い。)
そして買ってきた真っ黒のふくろうに名前をつけた。ひどく悩んだが、彼(オスだった)の名前は''ローラン''だ。……嫌な記憶が蘇るけど、黒獣……まぁ獣……でしょ?
え?パール?あんなカスよりは強い名前がいいでしょ。そのうち青い雷光を宿してくれることを期待する。
……使者たちがローランを羨ましそうに見てたけど君達はお留守番だよ。普通の人たちは君たちを見れないし、万が一見つけちゃったら啓蒙を得ちゃうかもだからね。……まあもしかしたら頑張ってもらうけど。
買ってきた本は全部読み切ることはできなかったけど、教科書に関しては完全に暗記できた。しかし……意味がわからない。いや、教科書の文言の意味はわかる。つまり、''何をすればいいのかはわかる''が、''どうしてそうなるのか''が分からない。
……素晴らしい。全くの未知を探求出来る日々が始まるんだから。
そうそう、人形ちゃんと一緒に''ホグワーツの歴史''を読んで一体私たちがどこに組み分けさるのかを想像した夜もあった。……人形ちゃんは''狩人様と同じ寮に行きます''の一点張りだったけど……
私は多分レイブンクローだ。マクゴナガル先生もそんなことを言っていた。
''計り知れぬ英智こそ!われらが最大の宝なり!''
……なんて良い言葉なんだ。ロウェナ・レイブンクローとは良い友達になれる。いや、先生になって欲しいかな。
と、それで今日なんだけど、やっとオリバンダーから杖が届いた!ふくろうが持ってきてくれた包みを解き、中の杖を見る。
……外見は変わっていないけど……うん。確かに変質している。持ってわかった。手に冷たさを感じる。神秘とより相性が良くなったことを感じる。杖を振ると光を放ち、部屋がとても寒くなった。
人形ちゃんが微笑んで拍手してくれた。人形ちゃんににっこりと笑うと改めて杖を見る。
……青ざめた月の色の光だ。''私の''月光を纏うとはね……
同封されていた手紙を読む。
〜〜~
ブラウンさん。
ご依頼いただいていた杖が完成いたしました。
寸法は以前より変わっておりません。ただし、芯にセストラルの心臓の琴線を使っております。
この仕込み杖の中心に据えられたワイヤーを、セストラルの心臓の琴線を編み込んだものに交換し、魔法によって耐久性を非常に強化させております。
この改良(いえ、元の作成者に敬意を表し、改造としましょう。)により、通常の杖と同じように魔法が使用出来るようになっているはずです。もちろん、仕込まれた機構も正しく稼働します。
さて、私はこの仕込み杖を貴女が何のために持ち歩いているかを問う気はありません。この杖の事を学校や誰かに報告する気もありません。
私は以前、''例のあの人''に杖を売りました。彼はその杖を使い、恐ろしい虐殺を成しました。そう、悲しいことですが、私は彼に殺戮の道具を売ったのです。
ですが、私は過去に戻ったとしても、あの人に杖を売るでしょう。私は杖が求める魔法使いに杖を売るのみです。
そして、私は貴女にも同様に杖を売ります。
言わんとしていることは伝わるでしょうか。
どのような事に使われるにしても、この杖は偉大を成すでしょう。
"例のあの人''がそうしたように。恐ろしくとも確かに、偉大であったあの人のように。
願わくば、大衆に益をなす、偉大な魔法使いの杖として使われるように。
この杖が折られることのないように。
敬具
[オリバンダーの店]
ギャリック・オリバンダー
追伸
代金は17ガリオンとなります。
フクロウに持たせて送り返してください。
ありがとうございました。
〜〜~
……うん。ありがたいことだ。
バレたらバレたで仕方ないとは思ってたけど、その心配は杞憂だったね。
しかしはっきり言うねぇ。オリバンダー。ヴォルデモートと同じと考えてもらっちゃ困るよ。今のとこそんなことをする予定はないさ。
便りを持ってきてくれたふくろうに17ガリオンを持たせて送り返す。
これでようやく、人形ちゃんに続き私もホグワーツ入学の準備が整った。あとは明日を待つだけだ。
''必要なものリスト''をもう一度確かめ、トランクを閉める。
明日が待ち遠しい。
〜〜~
朝。待ちに待った9月1日。
人形ちゃんの作ってくれた朝ごはん(ベーコンエッグとトースト、それに目が覚めるブラックコーヒー)を食べていざ出発!忘れ物は……無いね!
スーパー上位者パワーにてキングス・クロス駅の近くに転移する。やっぱり便利。できるようになって良かった。
人形ちゃんにトランクを持ってもらっていざ構内へ。
やっぱり人で混み合ってるね。時間は10時半。ちょっと早かったかな?
未だに信じられないけど、人形ちゃんがマクゴナガル先生に聞いていてくれた方法で''9と4分の3番線''に向かう。
……改めて思う。なに?''9と4分の3番線''って。これに比べれば地底で隠された道を探す方が簡単だ。全力でカートを押して壁にぶつかるよりかは、それっぽい壁を殴ればいいだけの地底の方が痛くない。
さて、ちょっと早いけど……カートを押して壁を通り抜けよう。……ほんとにこれで上手くいくんだよね?
「いくよ!マリアちゃん!」
「はい。クリス様。」
意を決してカートを走らせる。
……否が応でも予想してしまう激突の衝撃は無く、無感動にカートは走り続ける。
……通り抜けた先には、深紅と黒の汽車が待つプラットフォームがあった。……笑ってしまうほどすんなりだ。……あぁ、なんて事だ。これからはいつかの地底初心者だったあの時と同じく……全ての壁を殴っていたあの時の私と同じく、全ての壁にカートでぶつかりに行くという、選択肢が脳裏に浮かぶようになってしまった。……ああ、全てが隠し道に見えるあの現象に悩まされることになるのか……
そんな取り留めの無い思考、ここの他にもカートで通れる壁が存在するかもしれないという悪魔の証明を隅に追いやり、周りの景色を見る。
……もう人で賑わっている。……いや、ここにいるのは全て魔法使いか。改めて今まで住んでいた世界とは違う世界にいることを実感する。
ハリーやドラコももう既にいるのだろうか。彼らとも交流を深めたいね。
「クリス様。早めに汽車に乗りませんか。座れないとなるとクリス様はもたないでしょう。まだ赤ちゃんなのですから。眠れるようコンパートメントを取っておきましょう。」
……もうそろそろ赤ちゃん卒業できたと思うんだけどなぁ……この形に戻ってからひと月も経ったんだよ?
「何か言いたいのであれば、まずは汽車の中で、です。」
まあ人形ちゃんの言う通りなんだけどね。じゃあさっさと乗っちゃおう。
楽勝で空いているコンパートメントを取ることができた私たちは発車のときを待つ。
……なんだけど……
「ねぇ?マリアちゃん。このコンパートメントに入るまでさ、すごく視線を感じたんだけど、気づいた?」
「はい。クリス様。視線は確かに多く感じました。……私に向いているものもありましたが、多くはクリス様に向けられておりました。」
……まったく原因がわからない。なんかあったっけ?
と考えているとコンパートメントのドアが開く。
「ここに居たか。久しぶりだね、ブラウン。」
「あれ?ドラコ!久しぶりだね。覚えていてくれたなんて。それに、そちらから会いに来てくれるなんて嬉しいよ。」
「はは、忘れるわけが無いだろう、ブラウン。それでだが……前回会った時の暴言を撤回する。すまなかった。」
……?あぁ、血の裏切り者とかなんとかって話か。一体どうしたんだ?あまり謝罪なんてするタイプじゃなさそうだったけど。
「その謝罪、受け入れるよ。というか、あまり気にしてない。君の家は純血主義なんでしょ?人の主義主張にとやかく言う気はないしね。」
「感謝するよ。ただ……君も人が悪い。アンナリーゼの関係者だったなんて。日刊預言者新聞を読んで血の気が引いたよ。それで……父上にとても怒られた。」
「日刊予言者新聞?」
なんのことか分からないと言う顔をすると、ドラコが後ろに着いている太ましい2人のうち1人から新聞を受け取って私に向けてきた。
「これさ、あの日の翌日の分。1面を飾ってるじゃないか!アンナリーゼの口座の後継者ってね。……まさか君、新聞取ってないのかい?」
〜〜~
都市伝説の''あの''口座ついに開かれる!
読者の魔法使い並びに魔女の皆さんはご存知だろう、あの有名な都市伝説。
[アンナリーゼの口座]
随分と昔から存在し、時折山のような量のガリオン金貨及び財宝がその口座に振り込まれ、遂には魔法界随一の預金額となった謎の口座。
今までただの1度も引き降ろされたことは無く、口座の名義である''アンナリーゼ''という者の顔を見たものはいない。さらには口座の開設人も''アンナリーゼ''という人物ではなかったらしく、その人物の実在すら怪しいとされてきた、謎の宝の山だ。
8月の1日。グリンゴッツ魔法銀行にて魔法界を震わすイベントが起きた。
そう、あの口座が遂にガリオン金貨を吐き出したのだ。引き下ろしたのはクリスティーナ・ブラウン。今年ホグワーツに入学する11歳の少女だ。彼女は背の高い侍女?らしき女性を控え、グリンゴッツに来たという。
さらに注目すべきことは、金をおろしたことではない。なんと、この少女は''アンナリーゼの口座''を引き継いだのだ。その場にいた魔法使いやゴブリンに取材したが、全くもって完璧に正しい手順で口座の引き継ぎをしたそうだ。
遂に''アンナリーゼ''はその姿を衆目に晒すことなくその名を消した訳だが、いまや彼女の素顔を知るのは新たな魔法界随一の大金持ち、クリスティーナ・ブラウンただ1人だろう。
我々はこれからも取材を行い、この都市伝説の全容を解明しようと思う。
〜〜~
……なんてこった……
いつの間にやら撮られていた''写真の中の私''が私に向かって笑顔で手を振っている。写真が動いてる!?……いや、そんな事には今頭のリソース割いてらんない。
「……ああ……それは悪いことをしちゃった。ごめんね?ドラコ。前に言った通り、わたしは魔法界のこと、何も知らなくて……アンナリーゼ様の口座のことも、そんなに注意を引くことだったなんて知らなくてさ。」
さっきまでの視線もそういうことだったんだろう。
「"そんなに''!?''注意を引く''だって!?それどころじゃない!
はぁ、……本当に君は知らないんだな……とにかく!僕も君とは良い関係を築いていきたいと思ってる。席、ご一緒してもいいかな?」
溜息をつきながら聞いてくるドラコ。でも悪いね。
「あー……ごめんね。マリアちゃんがいるし、君には……2人着いてるみたいだし、5人はこのコンパートメントには狭いかな……?」
ドラコは断られたのが信じられないといった顔で口を開く。
「あーこいつらは外で待たせてればいいさ。1人なら座れるだろ?」
「それは可哀想だよ。残念だけど、また今度の方がいいと思う。」
あまり釈然としなさそうな顔をしてドラコは渋々下がる。
「……それで、そちらのお2人は?」
「こいつらはクラッブとゴイルだ。彼女は?新聞では侍女と書いてあったが、上級生か?」
そう思うよね。
「彼女はマリアちゃん。私の……お世話係。」
「初めまして。ドラコ・マルフォイ様。私はマリアと申します。クリス様のおっしゃる通り、クリス様の身の回りのお手伝いをさせていただく、ホグワーツ魔法魔術学校の新入生です。」
「新入生?君が?冗談よせ。どう見たって11歳以上いってるだろ。」
「ドラコ。本当だよ。彼女は私と一緒に入学許可証を貰ったんだ。今年からホグワーツに入る、私や君と同じ、同級生だ。……そして、レディの年齢に対してその発言はマナー違反だよ?マリアちゃんは私の大切な人だからね。ドラコだって許さないよ?」
バツの悪そうな顔で人形ちゃんに小さく謝罪をしたドラコは気を取り直したらしく、''じゃあ僕らは別のコンパートメントに向かうよ。ホグワーツに着いたらまた会おう''とキザったらしく言って去っていった。
「……クリス様。今の方は」
「うん。面白いでしょ?友達になろうと思ってるんだ。良くしてあげてね?」
分かりました。とだけ言った人形ちゃんにありがとうと伝えて時計を見る。10時50分。あと10分か。
ふぅ……まさか新聞に乗るなんてね。……いや、マクゴナガル先生が言ってくれてたっけ。とはいえそんなに注目されるなんて。今度からはその……日刊預言者新聞?っていうの、取らなきゃいけないな。
ん?あれ、今通ってったのって。
「ハリー?」
コンパートメントのドアを開けて声をかける。
「?……あっ!えっと、クリス!」
振り向きながら答えるハリー。
「久しぶりだね!空いてる席探してるんでしょ?いいよ。入って?あと2人は入れるからさ。」
「ありがとう!」
ハリーは見るからに重そうなトランクをコンパートメントに入れようと格闘するが、なかなか持ち上がらない。
見かねて人形ちゃんが手伝おうとするが、その前にハリーに声がかかる。
「手伝おうか?」
通りがかった赤毛の男の子がハリーに声をかける。
ゼイゼイ息を切らしながらハリーは声を出す。
「うん。お願い。」
「おい!フレッド!こっち来て手伝えよ!」
全く背格好も顔も同じ子が来て、ハリーのトランクをあげるのを手伝おうとしてこっちを見た。
「わお!おい!君って、ほら!新聞に乗ってたよな?えっと、クリスティーナ・ブラウン!」
赤毛のひとりが言う。
「あぁ、そうみたいだね。初めまして。」
「たまげたぜ!有名人のチョーお金持ちだ!なあ!どうやってアンナリーゼの口座、ゲットしたんだよ?」
もう1人の赤毛の子が言う。
「ふふ、ヒ・ミ・ツ。それよりほら、ハリーが置いてけぼりだよ。」
赤毛の2人がハリーを手伝う。
「おっとごめんよ。よっ、うお重!」
「それっ、うわ重!」
はは、なんだかこの2人面白いな。
やっとの事でハリーのトランクをコンパートメントに乗せたハリーと赤毛の2人。
汗びっしょりになったハリーが髪をかきあげるのを見て2人が言う。
「あれっちょっと待て。それ、もしかして。」
ハリーの額を指さして赤毛の2人は声をあげる。
「驚いたな……君、ハリー・ポッター?」
「そうだろ?」
ハリーは恥ずかしそうに顔を赤らめて言う。
「そうだよ、うん。僕、ハリーポッター。」
「おいおい!新聞の有名人と魔法界の英雄の2人は知り合いか?」
「こりゃビックニュースだな!」
騒ぎ出した赤毛のふたりに名前を聞こうとする。
「で?ねぇ、君たちの名」
「フレッド!ジョージ?何処にいるの?」
2人に聞こうとしたら汽車の外から声が聞こえる。
「おっと、ママ。今行くよ。」
赤毛の1人が答える。
「ということで、俺たちはフレッドとジョージ。よろしくな。」
そういうと赤毛の2人、改めフレッドとジョージは汽車の外に行く。
「あちょっと待ってよ!どっちがどっちなのさ!」
私が声をあげると2人の声が重なって返ってきた。
「「ヒ・ミ・ツ!!だぜ。」」
やばい。あの2人面白い。絶対仲良くなろう。
「……クリス。新聞に乗ったって?」
息を整えて私の向かいに座ったハリーが言う。(人形ちゃんはハリーを手伝おうとして立った後に私の隣に座った。)
「ハリーも新聞を取ってないんだね。私と同じ。……そうだよ。ある人から口座をね、譲ってもらったんだ。そしたらその口座がまさかの都市伝説になってる……滅茶苦茶な額の入ってる口座だったんだ。」
「え?どういう事?」
全く話してることが分からない。という顔で聞いてくるハリー。
「私もそう言いたいよ。知人から受け取った口座が魔法界随一の預金額で、しかも入金されることはあっても引き出されることは1度もなかった金庫。その口座の名義を変えて、そこからお金を引き出したら新聞に乗っちゃった。」
「……つまり急にめちゃくちゃ大金持ちになったってこと?」
「そういうことだね……」
「それ僕もだよ。僕のお父さんとお母さんの口座にも、お金が山のようにあってね……君とあったあの日に知ったんだ。それまで僕は1文無しだと思ってた。」
「はは、私もおんなじ。」
2人して笑いあった。
……ハリーは随分前に両親を亡くしてる。なのにあの日に両親の遺産の存在を知った?それまで何してたんだ?買った本には……近代魔法史とか他にも書いてあったけど、ハリーはヴォルデモートを滅ぼしてからは、ダンブルドアの預かるところで、誰もどこにいるのか知らないとあったけど……
「それで……あなたは?」
ハリーが人形ちゃんに声をかける。
「初めまして、ハリー・ポッター様。私はマリアと申します。クリス様の身の回りのお世話をさせていただく、ホグワーツ魔法魔術学校の1年生です。」
「1年生?えっと上級生……じゃなくて?」
これ毎度やるのかな?
「1年生だよ。マリアちゃんは私たちとおんなじ。先生にも聞いたんだけどね。間違いないよ。」
ドラコよりは驚いてないな。そっか、ハリーはまだ魔法界の常識をあまり知らないんだもんね。そういうこともあるのかって感じか。
「へぇ……あぁ、初めまして。ハリー・ポッターです。よろしく、お願いします。マリアさん。」
こちらこそよろしくと返す人形ちゃん。
「あー……ここ、空いてる?」
よく客人が来るなぁ。いや、ほかのコンパートメントが満席なのかな?
「運がいいね。ラスト1席だよ。どうぞ。」
「ありがとう。」
その子は赤毛のノッポだ。さっきの2人と同じ髪の赤さだな。さっきの子達、フレッドとジョージの兄弟かな?
「おい、ロン。」
噂をすれば。フレッドとジョージがやってきた。
「俺たち、真ん中の車両の方までいくぜ。リー・ジョーダンがでっかいタランチュラ持ってるんだ。」
見に行ってくると2人が言う。
「わかった。」
赤毛の子、ロン?かな。がモゴモゴと言った。
「ハリー。クリスティーナ。それと背の高い美人さん。こいつは弟のロン。よろしく頼むぜ。じゃ、また後でな。」
待ってよまだ聞いてない。
「ヘイ!フレッドにジョージ!どっちがどっちなのさ!」
「俺がフレッドで」「俺がジョージ!」
自分のパート以外口パクしたな。綺麗すぎだよ。わかんないじゃん。
「ははっ、ねぇロン。あぁ、ロンって呼んでいい?でさ、君のお兄ちゃんっていつもあんな感じなの?」
ロンは苦い顔をしながらポツリと言う。
「いいや。いつもはもっと酷い。僕はいっつもあの二人の冗談に振り回されっぱなしさ。……初めまして。僕はロン。ロン・ウィーズリー。よろしく。で、……君たちってさ、本当に……あのハリー・ポッターとクリスティーナ・ブラウンなのかい?」
ハリーと私はこくりと頷く。
「へー……僕、またフレッドとジョージに騙されたかと思った。じゃあ君、ほんとにあるの?ほら、あの……」
ロンはハリーの額を指さす。
ハリーは髪をかきあげて額の傷を見せる。
「わーお……じゃあそれが、例のあの人につけられた……」
ハリーは肯定しながら、しかし、何も覚えていないと言う。
「緑色の閃光が走ったのだけは、覚えてるんだけどね……」
「うわーっ……」
ロンは熱っぽくハリーの額の傷跡を見るが、今度は私に言葉を振ってくる。
「それで、君たちは?あの都市伝説の口座を引き継いだんだろ?クリスティーナ・ブラウン。日刊預言者新聞じゃ一面大見出しだ。」
「はは……どうもそうみたいだね。」
「……それじゃ君は……メイドを雇って、その上学校に連れてこれるほどお金もってるのかい?」
苦笑しながら私は答える。
「メイドじゃないよ。彼女はマリアちゃん。私たちとおんなじ、今年ホグワーツに入学する1年生。」
「えっ!?1年生!?じゃあ、君は……その、11歳だって言うのかい?」
目が飛び出るほど驚きながらロンは人形ちゃんに聞く。
「いえ、私は11歳ではありません。しかし、この度入学許可証を受け取り、クリス様と入学することになった、ホグワーツの1年生です。」
「……おったまげー。僕、聞いたことないや。11歳じゃないなら、基本的には歳に合った学年に入るんだぜ?それか、そもそも入学せずに個人で教師を雇ったりするとか……というかクリス様って。君たち一体どういう関係さ……」
ロンはため息を吐きながら聞いてくる。
「自己紹介が遅れました。私はマリアと申します。今まではクリス様の身の回りの世話を行っていました。」
「マリアちゃんは……私の両親が亡くなってから、その後ずっと私の世話をしてくれてた、いわば親代わりだね。」
人形ちゃんに笑顔を向けながら言うと、何故か人形ちゃんの顔が少し赤くなった気がした。
「へー……ごめん。ちょっと意地悪な言い方したかも。君がアンナリーゼの口座を手に入れたって知ってさ。……羨ましかったんだ。僕んち、すっごく貧乏でさ。持ってきた教科書も、制服も、杖だってお下がりなんだ。」
ロンは上を向きながら''僕にもガリオン金貨が空から大量に降ってこないかな……''とぼやく。
「僕は君が羨ましいよ、ロン。僕、ずっと兄弟が欲しかった。……僕ずっとマグルのおじさんおばさんに預けられてそだってきたけど、酷いもんだったよ。だから……」
慌ててハリーがそうロンに言うと、ロンは顔を少し曇らせながら言う。
「君、僕んちは6人兄弟だ。元々貧乏なのにさ。だから、さっきも言ったけど何から何までお下がりなんだぜ?あんまりいいもんじゃないよ……」
ロンはため息を着きながらそれに、と付け足す。
「長男と次男の、ビルとチャーリーはもう卒業したけど、ビルは首席で、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった。それで次のパーシーは監督生。フレッドとジョージはイタズラばっかりやってるけど、成績はいいんだ。だからね、みんなより上手くできなきゃ期待ハズレ、期待に応えれてもみんなとおんなじって評価になっちまう。」
少なくとも監督生にならないと新しい物は買って貰えないのさ。といいながらポケットをまさぐった彼は、太ったネズミを引っ張り出した。
「スキャバーズってんだけど、役たたずなんだ。寝てばっかだし、そもそもパーシーのおさがりさ。」
「そんな!僕だってダーズリーの家ではお下がりしか貰ったことないし……誕生日プレゼントなんて貰ったこと無かったんだ。……それどころか、ひと月前まではお小遣いも貰ったことないんだから、文字通り一文無しだったんだよ。」
ハリーがロンをそう言ってフォローする。
……そういう事ね。さっきの遺産の話はつまり、ハリーには知らされてなかったと。魔法界について知らないってのもつまり、マグルとマグル同様に育てられてきたってことか。……ダンブルドアの意図が見えないな……次代の英雄として育て上げてても良かったんじゃないのかな?
「それをいえばクリス様も一文無しでしたね。というか、アンナリーゼ様の口座を受け取るまで、クリス様は新品というものを身につけたことがないのでは?」
「あー……そうだね?覚えてる範囲では無いかも。落ちてるの拾ったり……買ったのも多分……どっかから拾ってきたやつだろうし。」
使者たちが売ってるのって多分狩りの途中で倒れた狩人の持ち物だもんね。
それを聞いてロンは少し元気になったみたい。
いつの間にか発射していた汽車に揺られながら会話を続けていると眠気がやってきた。……揺られると眠くなるんだよね……
「……マリアちゃんごめん、ちょっと寝るね……」
小声でそういうと、人形ちゃんは分かりましたと答えて膝を貸してくれた。
〜〜~
んん……騒がしいなぁ……?何さ、どうしたの?
うつらうつらとぼやけた視界には来客が見える。……このコンパートメント賑わいすぎでしょ。
どうも女の子みたい。栗色の長い髪の女の子。
「……う、ん……おはよう……どうしたの……?」
「起こしちゃったかしら?でも、ちょうど良かったわ。もうそろそろホグワーツに着くはずだから、服、整えた方がいいわよ。」
寝ぼけながらありがとうと伝える。人形ちゃんに垂れた涎をハンカチで拭われる。なされるがままにしていると、ハリーとロン、特にロンがあまりいい顔をせず女の子を見ているのに気づいた。
「……どうかしたの?」
「ロン・ウィーズリーがネズミを黄色くする魔法を実践しようとしたのですが、正しく発動しなかったようです。その後、ハーマイオニー・グレンジャーが''私は、練習した簡単な呪文なら全て上手くできた''と。」
小声で人形ちゃんと話す。そういう事ね。可愛いじゃない、ロン。
「じゃあ、私もうそろそろ行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。あなたたち2人も着替えなさいね。」
そう言ってハーマイオニーは後ろにいた気弱そうなオドオドした男の子を連れて行った。
「どの寮でもいいけど、あの子の居ない寮がいいな。」
起きたかといいながら会話を再開する2人。
「君の兄さんたちってどの寮なの?」
「グリフィンドール。ママもパパもそうだった。もし僕がそうならなかったらなんて言われるか……レイブンクローならそう悪くない……いや、多分入れないけどね。勉強あんまり好きじゃないし。……ほら、スリザリンなんかに入れられてみろ。それこそ最悪だね。」
「それってつまり、ヴォル……ごめん、''例のあの人''がいた寮?」
頷きながら暗い顔をするロン。
「……スリザリン……私はいいと思うけどね。」
「えぇ?君、正気かい?あの寮からはとても多くの闇の魔法使いが輩出されてるんだぜ?」
闇の魔法使いの登竜門さ、といいながら私を見るロン。
「まあそうみたいだけどね。でも、スリザリンに入ったら闇の魔法使いにならなきゃならない訳じゃないよ。なにより、目的を遂げるために狡猾であれ。手段を選ぶな。ってのは私としては強かで好きだな。」
「……まあ君の言う通り。スリザリンのヤツら全員が闇の魔法使いになる訳じゃないけどね。でも、いけ好かないヤツらばっかだよ。」
ロンは釈然としない表情で言う。
「はは……まあ、私も第1志望はスリザリンじゃないよ。レイブンクローに入りたいなぁ。計り知れぬ英智こそ、我らが最大の宝なり。最高の名言だと思わない?」
ハリーもロンも苦笑いだ。あまり勉強好きじゃないのかな?
そんなこと言ってるとまた足音が。ん?あれ?
「やあ、さっきぶりだね、ブラウン。ちょっと用事ができてね。……それで、君がハリー・ポッター?このコンパートメントに有名人が2人居るって汽車の中じゃその話で持ち切りなんだが。」
「ドラコ」
「そうだよ。」
ハリーが少し苦々しい表情で答える。
「……あの日あった2人がね……しかも1人はハリー・ポッターと来た……」
ハリーはドラコの後ろの2人に目を向ける。確かクラッブとゴイルだったかな?……あーどっちがどっちか分かんないや。
ハリーも私と同じ顔をしていたのだろう。
「ああ、こいつがクラッブで、こっちがゴイルだ。そして僕がドラコ。ドラコ・マルフォイ。」
ロンが笑うのを我慢するように咳払いをした。
「……何かおかしかったかな?君の名前は聞かなくてもわかるよ。ウィーズリー。父上が言っていた。君の家の人間はみんな赤毛でそばかす。育てきれないほど子供が沢山いるってね。」
ロンの顔が怒りで赤くなった。
「ポッター君、それに、ブラウン。そのうち、家柄のいい魔法族と、そうでないのとが分かってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。その辺は、僕が教えてあげよう。」
ドラコはハリーと私に目配せをした。
私はハリーにそれとなく目配せする。あの時の一言、覚えてるかな?
「あー、親切にありがとう。参考にするよ。ただ、誰と付き合うかは自分で決めたいかな。まだどの寮に入るのかも分からないうちから……敵を作りたくもないしね。」
ドラコへの印象は最悪だろうに、上手いことオブラートに包んだなあ。
「ありがとう、ドラコ。アンナリーゼ様の名前を背負ってるにしては、私はまだまだ世間知らずだからね……君と会った日から私なりに勉強はしたけど、分からないことばっかだし、 是非とも''魔法界''について教えて欲しいな。そのうえで、自分の利益になるように考えたい。よろしくお願いするよ。」
「……わかったよ。2人とも、そこのウィーズリーは置いておくとして、僕も一応家名を背負ってるからね。無闇矢鱈に敵を作りたくない気持ちはわかる。けど、前にも言っただろう?大抵の人はその人ではなく、一緒にいる人間を見て人を判断する。僕のアドバイスは、素直に受けとっておいた方が利口だよ。」
顎でロンを指しつつもっと良いのと付き合うべきだと言い放つドラコ。
「なんだとぉ!」
怒れるロンだが、
「あと五分でホグワーツに着きます。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください。」
アナウンスが響き、それを聞いたドラコはロンを無視して、それじゃあ、またホグワーツで。と、そう言いながらコンパートメントから去っていった。
''一緒にいる人間を見て''うんぬんかんぬんは多分ドラコの父親から口酸っぱく言われてるんだろうな。
「……クリス。今の僕は及第点だった?」
ハリーは大きく溜息を着いて聞いてくる。
「充分!よく覚えてたね。あんな感じでいいよ。仲良くしたくない相手でも、良い距離感ってのはあるからね。他人か、敵か。自分の対応で敵にならないように出来るなら、そうするべきだよ。」
……あのヨセフカ診療所を教えたらオドン教会に来てくれる、全く私を信じてくれなかったおじさんも、別に敵ってわけじゃ無いんだからね。助けられるなら助けたいし、敵対せず済むならそれが一番いい。
「ハリーも!クリスティーナも!なんだよ……マルフォイなんかに良い顔してさ!」
ロンは顔を真っ赤にして怒ってる。
「僕だって嫌いだよ……でも、クリスに教えてもらったんだ。あー……うまい……いなし方?ってやつ。」
「そう。ハリーは私に言われたからそうしただけ。それで、ロン?君、ドラコ……っていうか、マルフォイ家の事を知ってるみたいだったけど、何かあったの?」
「……はぁ、パパから聞いたことがあるんだ。''例のあの人''が消えた時、マルフォイ家は真っ先にこっち側に戻ってきた奴らだって。魔法をかけられてたって言ってね。パパはあいつらは嘘をついてるって言ってた。マルフォイの父親なら闇の陣営に味方するのに理由はいらないだろうってね。」
……まあ、私が調べた範囲のでわかったこと以上の情報はないか。……いや、得た情報の確度が上がったと喜ぶべきかな。
「……つまりだ。ハリー、クリスティーナ。マルフォイの親は''死喰い人''だったんだよ!''例のあの人''率いるあいつらに魔法界がズタボロにされたんだぜ?何もしなくてもアイツは敵だ!」
ハリーは聞き入っている。でも、
「……ロン、君の言い分はわかった。確かに、マルフォイ家は酷いやつらだ。……でもね、マルフォイ家は酷いやつらだけど、彼は、''ドラコ''はまだ何もやってないんだよ。彼はただ、マルフォイ家に生まれてきただけなんだ。……何かしてたとしても、私にはまだ何もしてきてない。だから……まだ私の敵と判断するには早いね……」
ロンは信じられないという顔をした。
「嘘だろ……これ以上マルフォイの肩を持つなら……僕たちは友達じゃない。」
ハリーはどうすればいいのか分からないみたいだ。
「……少し冷静になるまで、あまり顔を合わせない方がいいかもね。ただ、覚えておいてね。ロン。私は……まぁ、できるなら誰とも友達になりたいんだ。……うん、友達は無理でも敵にはなりたくないな。」
もちろん必要であれば敵は作るしどんな手段だってとるけどね……
トランクを少し開けて私と人形ちゃんのローブを取り出す。
ちょうど汽車もホグワーツに着いたようだ。
「行こう。マリアちゃん。」
「はい。クリス様。」
「じゃあ、また後でね。ハリー。出来れば君とも友達になりたい、ということだけ覚えててよ。ロン。」
やっとホグワーツ到着です。
そして仕込み杖が青ざめた月の光を纏うようになりました。とはいえこれで何しようかはまだ考えてません。だいぶ適当です。すいません。
原作と違ってハリーとドラコが完全には仲違いしないように意識してます。上手いことこの微妙な関係を物語に絡めたい。