ハリー・ポッターと上位者の娘   作:アーマウニー

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ハリーポッターと上位者の娘 7 獣狩りの夜

「あらお目覚め?眠り姫さん。」

 

……ん?私のこと?

 

起きたら知らない天井だった今朝。周りに何個かベットのある部屋で起きたけど人形ちゃん以外誰もいなかった。

 

待っててくれた人形ちゃんと一緒に大広場に朝食を摂りに来た私たちにパンジーが話しかけてくる。

 

「パンジー、眠り姫って」

 

「あなたよあなた!クリス!あなた以外にいないわよ。」

 

笑いながら私を指さすパンジー。

 

「私が?」

 

「組み分けの後爆睡してマリアにおんぶにだっこ。挙句着替えさせられても起きないんだから。」

 

……あー。

ぼんやりと昨日のことかと理解する。……確か起きてらんなかったんだよね。……ん?

 

「着替えさせられてもって、なんでパンジーが知ってるのよ?」

 

「そこに私もいたからよ。あなた全く起きないんだもの。寝室のメンバーで眠り姫って名付けたのよ。」

 

笑いながらスクランブルエッグとトーストを頬張るダフネ。

 

「おはよう眠り姫さま。私、ダフネ。ダフネ・グリーングラス。もしかして初めましての方がいいかしら?」

 

人形ちゃんが彩り良く食器に朝食を取り分けてくれる。受け取りながら話しかけてきた女の子を見る。

 

綺麗な金髪の少し目の鋭い……かわいいよりカッコイイと言う言葉の方が似合うね。

 

「……そうだね。初めまして、ダフネ。あなたも寝室の?」

 

「そう。あんなにも周りが大笑いしてるのに起きないって……凄いわね?そんなに疲れてたの?」

 

「脱がされてもなされるままに寝続けるのは……少し危険だと思うぞ?ブラウン嬢。」

 

男の子程にガタイのいい子が心配そうに声をかけてくる。

 

「マリアちゃんがいるから大丈夫……じゃなくて、あなたは?」

 

トーストをかじりながらその子に話しかける。やっぱホグワーツご飯美味しいな……

 

「ミリセント・ブルストロートだ。でだ、いつもマリア嬢がいるとは限らないだろう……」

 

呆れながら眉を顰めるミリセント。

 

「いえ。私はいつでもクリス様の隣におります。ミリセント様。」

 

少し苦笑しながらミリセントは''様はよしてくれ。ミリセントでいい''と人形ちゃんに向く。

 

「大丈夫よミリィ。有名で''超''お金持ちなクリスに手を出すバカは、少なくともスリザリンにはいないよ。」

 

元気はつらつって感じの短髪パーマの子がミリセントに声をかける。

 

「しかしなトレイシー嬢……談話室までもたずに眠り始めたと聞いたぞ?」

 

うっ……だいぶ詳しく噂になってる……

 

「あぁ……そういえばそうだった。ねぇ眠り姫様。ほんとに耐えられなかったの?そしたらミリィの注意、聞いた方がいいと思うよ?」

 

「そう言われてもなぁ……そういう体質としか……あなたは?」

 

「トレイシー!トレイシー・デイビス!よろしくね!」

 

よろしくと返しているとパンジーが席を立ち上がる。

 

「ほら!あなたたち早く食べちゃいなさいよ。最初の授業が始まるわよ。」

 

 

〜〜~

 

 

初めてホグワーツに来て、組み分けされたのが月曜日。今日はそれから2日たって水曜日。

 

ホグワーツの授業はとても楽しい。魔法についての知識が増える度に脳の瞳で見えるものが増えていく。

 

先生も個性豊かで面白い人たちばっかりだ。不評みたいだけど、淡々と授業をしてくれる''魔法史''のピンズ先生は味の濃い教師陣の中でとても安心する。

 

……あのクィレル先生だけはちょっとどうかと思うけど。寄生虫にだいぶ好き勝手されてるし……そもそも授業自体あまりレベルが高くない。''闇の魔術に対する防衛術''と謳っているにしては教えられる知識だけで''闇の魔法使い''なるものに襲われた時に生き延びることが出来るとは思えない。

……もっと実践的な知識が欲しいんだけどなぁ……んまぁ、1年生に教える知識だからってことかもしれないけど。

 

逆に特に面白かった授業は''変身術''と''呪文学''だ。既にナメクジから人の形に変身している私だが、神秘による変身だけじゃなく、魔法による変身もしてみたい。

マクゴナガル先生に聞くところによると制約が多いが、動物の姿になる''動物もどき''変身術というのがあるらしい。非常に高度で、複雑な魔法らしいが会得する価値のある魔法だと思う。

 

呪文学は魔法力と杖と呪文の関係性について教えて貰える。それを様々な呪文を実践することを通して、体に経験として染み込ませながら智慧を得ることができる。……これはいい教育の仕方だね。机に向かっているだけではなかなか身につかないものだ。理論と実践と反省を繰り返さなければ進歩は起きない。最初のヤーナムで得た教訓だ。

 

……話は変わるが、みんなには見えないらしいが、啓蒙を得た私には、魔法力や杖と呪文が起こす事象を瞳を通して見ることができている。そのお陰で非常にスムーズに呪文の習得が出来るうえ、もっと仕組みを理解すれば新しい呪文や、本で見た''無杖呪文''、''無詠唱呪文''もできるようになるだろう。

 

そして授業以外も素晴らしい。新しくできた友達、パンジー、ダフネ、ミリィ、トレイシーも良い子たちだ。これからも学徒の輪は広げていきたい。

……まあ、未だ慣れない環境のせいで時間が作れず他の寮には接触できてないが(合同授業を除き)……

 

総合的に見て……充実している。非常に。

 

……だがしかし、私の好奇心はもう抑えられない。

 

今日こそは……そう、今日こそは……

 

''探検''する。

 

そう、探検だ。未だ未知なホグワーツを開拓し尽くすのだ。

ゆくゆくはメンバーを増やしていく。長期休みに入ったら魔法界そのものを冒険したいところだ。

今日のメンバーは私を含めて2人。着いてくるのはドラコだ。

パンジー達は減点を恐れてるし、そもそも探検欲がない。

人形ちゃんに至っては寝かしつけて来たしね。なんとか説得して探検を許してくれたけど。ただ、代わりに約束をした。

 

「遅くなるのであれば連絡してください。良いですね?」

 

……ということであまり乗り気じゃないドラコを少し挑発して探検隊メンバーに引き入れた。

 

「そろそろ時間かな……来た来た。」

 

談話室から出てきたマルフォイは若干機嫌が悪い。

 

「来たね、ドラコ。」

 

「……ブラウン。昼のあの言葉、忘れるなよ。こんな馬鹿げた事をやるのは、君が僕の全く知らない力を見せると言ったからだからな。」

 

そう。ドラコを焚きつけるため、そして彼の信頼を勝ち取るため。ヤーナムの業、もしくは神秘を見せてあげる事にした。

秘密の共有。信頼を築くには1番の方法だ(と思う)。

 

「ふふ、大舟に乗ったつもりでいてよ。誰にも見つからないし、危険も全部退けられる。私たちは今日、4階の禁じられた扉を開くのさ。」

 

〜〜~

 

……こいつに着いてきたのは間違いだった。重い後悔が足取りを遅くしている。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。

我ながら心底呆れる。目的地すら聞かずに参加とは。そのせいでさっきは目的地を聞き直してしまった。

 

「ドラコ!今の見た?2日目だけどやっぱり何度観ても意味がわかんないや!絵画が動いて喋って他の絵画に遊びに行くなんて!」

 

ルーモスによって明かりを灯された中々見ないスタッフ型の杖を振り回しながら、ブラウンがはしゃぐ。

……頭が痛くなる。こいつはさっきから何にそんなに目を輝かせてるんだ?何も面白いところなんかないだろう。

 

「そうだな、ブラウン。頼むからもっと静かにしてくれないか。フィルチやほかの教師に見つかったらどうするつもりなんだ!」

 

「大丈夫だよドラコ。言ったでしょ?誰にも見つからないし危険もないって。」

 

その自信は一体どこから湧いてるんだ……

目くらましの魔法を覚えてる訳でもなし、ましてや透明マントなんて魔法界を知ったばかりのブラウンが持っているとは思えない。……つまり、簡単に見つかってしまうこの状況では静かに行動することが大切だと言うのに。

何度目か分からないため息を着く。

 

「……なあ、本気で4階のあそこに行くのか?ダンブルドアの言うことを真に受けるのは癪だが、あそこは絶対に危険だぞ?」

 

実力のある魔法使いの警告を聞かないのは愚か者のすることだ。例えそれがダンブルドアの言であろうと。奴は嘘をつくが、その言葉にはある程度の真実が混ざっている。多分今回の4階の部屋が危険というのは、真実の部分だろう。

 

「何が出てこようとだいたいどうにかなるよ!危なければ部屋出ればいいんだし。」

 

「ふん。……そうだろうな!君には僕の知らない魔法以外の''スーパーパワー''があるんだからな!」

 

「その通り!任せておいてよ。」

 

これだ……この強すぎる自信。この自信のせいで何故か余計に怖くなる。

……はぁ、随分と投げやりになっていることは自覚している。''君の知らない力を見せてあげる''なんて稚拙な焚き付けにマジになってしまった自分に対しての苛立ちも原因だろう。

……まあ、何が起きても良いよう、父上への言い訳は用意してある。

もし、この探検中に僕が怪我を負えば、マルフォイ家はブラウン家に対しとても大きな貸しが出来る。なんて言ったって言い出しっぺはブラウンな上、身の安全の保証すらやつはしているんだからな!

それに何も起きなかったら父上に報告することはない。

……万が一奴が僕の知らない何らかの力を持っていたのであれば、父上は僕をとてもよく褒めてくださるだろう。

 

……はぁ、我ながらなんて雑な理論武装だ。父上ならもっと上手くやる事だろう。しかしどう転んでも痛くは無いはずだ。……多分。

 

「ドラコ?もうそろそろ4階の例の部屋だよね?」

 

「?ああ、そのはずだが。」

 

「……前からミセス・ノリスが来る。」

 

「!なにをボケっとしてるんだ!早く逃げるか隠れるかしないと!フィルチなんかに捕まれば……何されるかわからない!最悪罰則で殺される!」

 

アーガスフィルチは狂っている。生徒に拷問道具を使用したいとか言ってるのは有名な話だ。そんな奴に夜間徘徊がバレたら何をされるか……

というかミセス・ノリスだと?こいつには何が見えてるんだ。一寸先は闇というレベルだぞ?ルーモスで照らしているとは言え、少なくとも僕には影も形も見えない。

 

「大丈夫だって。えっと?ちょっと待って。どこやったかな?……あったあった、ほらこの薬飲んで。」

 

「何だこの青い液体は?」

 

「いいから!見つかりたくないでしょ?」

 

……あぁクソ。このマルフォイが言われるがままとは……

渡された薬を飲み干すと頭が痺れる感覚が少ししたが、ブラウンが僕の頭に向かって手を振ると霧が晴れたように思考がクリアになった。

 

「大丈夫?変な感じしない?」

 

「……ああ、少し……麻痺したような感覚があったが……今は何も。」

 

「良かった。やっぱ狩人以外には……」

 

何かしらつぶやきが聞こえた気がするが続く言葉でなんと言ったか聞けなかった。

 

「さて、気づいてる?ドラコ。今君、ほぼ透明になってるよ。」

 

は?何言ってるんだ?……待ておい!

 

「ブラウン!クソッ後ろだ!ミセス・ノリスが!……え??」

 

……通り過ぎて行った??

 

「言ったでしょ?大丈夫だって。今の君はとっても……なんていうか、影が薄いんだ。薬のおかげでね。」

 

「?さっきの言葉と違うぞ?僕は今……透明……なんだろ?……うん?いや……僕の目からは自分の手も足も……見えるが?」

 

「えっとね……透明ってのは言葉の綾で、実際は透明にはなってない。他の人の目からだと、君の体は確かに見えてるんだけど、目が滑るというか、見えてると認識できないようになってるんだ。」

 

……影が薄くなってる……的を射た表現に思えるな……

 

「いやまて、君は今の薬を飲んでいない。なのにどうやってミセス・ノリスに気づかれずにすんだんだ?」

 

「あぁ、私の場合はもうこの薬は必要ないからね。詳しく話すと長くなるけど……まあ、ちょちょいと見える人にしか見えなくなる秘匿をね。」

 

「?……ハァ……それが君の言う僕の知らない魔法以外の力だと?」

 

確かに魔法を使ったような素振りは見せなかった。これが魔法によるものではなく、全く違う力によるものだとしたら、それは……確かに凄いことだ。そもそも、魔法以外の力なんてのがあるとすら信じていなかったんだが……その全く新しい力をマルフォイ家が独占出来れば……

……いや、とは言え魔法には完全に透明になる呪文や道具がある。それほど有用だとは思えない。……というか、さっきからずっとブラウンに都合のいい流れのままだ。このまま流されるがままになるのはまずい。

 

「そう!その一端だね。今の薬は青い秘薬、というものでね。他にも色々あるけど……とりあえず到着だね。」

 

……あぁそうか、着いてしまった。正直ここに辿り着く前に帰ると思っていた……

 

「おい、本当に入るのか?」

 

「だいぶ慎重だね?ドラコ。さっきの薬の効いてる間ならどんな化け物が来ても、よっぽどじゃなきゃ私たちに気づきすらしないよ。」

 

……いまいち信用しきれないが……たしかにミセス・ノリスをやり過ごすことはできた。

 

「……わかった。入ろうじゃないか。」

 

「そうこなくちゃ!」

 

ブラウンが意気揚々とドアを開ける。

 

 

 

 

ああ……やはり僕は気付かぬ間に舞い上がっていた。

 

「……!お……ブラウン……!」

 

目の前の化け物……三つ首の巨大な化け物……

 

何とかなると思い込んで、自分と歳の変わらない1年生の言葉を信用してしまって……ミセス・ノリスなんかをやり過ごせただけで……舞い上がっていた。

 

見通しが甘かったんだ……何が起きても言い訳できるなんてのは最悪の場面に対する想定とは言えない!何があっても自分の命だけは助かるように準備する必要があった!

 

……こんな化け物が学校内にいるなんて……!

まともに声が出ない。……防衛本能?直感か本能か、なんでもいい。とにかく頭蓋の内側で脳が叫んでいる。ここに居ても、大声を出しても、目の前にいる化け物に殺される!と。

 

「……ブラウン……!はや……く!」

 

クソ!扉を開けてこの部屋から出ればいいだけなのに!体が……

 

「……」

 

何してるんだコイツは!黙ったまま停止しやがって!ブラウン!お前のせいでこんな所で命の危険に身を晒す事に

 

「……はは……ははははは!!」

 

あぁクソ!ブラウンめ狂いやがった!こうなったら僕だけでも

 

「はははは……はぁ……初めて見るな?頭が3つ着いた犬か……狩りがいがありそうだ。」

 

……は?……なんだって??

 

「嬉しいよ、三頭犬くん。ココ最近充実してはいたけどね……やはり身体は獣狩りを求める。……杖のこともあるしねぇ……新しい杖の使い心地を確かめよう……」

 

そう言いながら目の前の化け物に向かって悠然と歩いていく目の前の女。

……こいつほんとにブラウンか?一体何が……

いやそんなことはどうでもいい!こんな所でお前に死なれたら僕にあらぬ疑いがかけられる!早くお前も一緒に逃げ……あ

 

目の前の三頭犬が一気にブラウンに喰らいついた。体の1部どころか血の一滴すら残さずブラウンは消えた。……いや、喰われたという方が正しいか……

 

腰が……完全に抜けてしまった。もう……もう僕以外ここには誰もいない。

……早く、早く早く……早く早く早く!逃げなければ!あのクソブラウンと同じ末路だクソッ!

 

「っクソ……クソ……クソ!」

 

声にならない悲鳴が口から漏れ出る。頼りにならない足腰を引きずってドアに向かう。

 

瞬間、背後から化け物の鳴き声がする。……耳がおかしくなったのか。僕を喰おうとしてあげた声には思えないほど、悲痛な叫びだった。

……何にそんな声を挙げたのか。もしかしたら先生が居るのか。一縷の望みをかけて化け物に目を向ける。

 

 

 

「あぁ……匂い立つ……たまらないな……血の匂いだ……ふふ、えずくじゃないか……濃厚な血液……瞳が……蕩けそうだよ……」

 

 

 

ブラウンが……立っている。さっき食われたんじゃないのか?何が起きている?

 

「……ブラウン?」

 

さっきと同じだ。ブラウンが喰われたさっきと……ブラウンが……ゆっくりと三頭犬に近づく……そして三頭犬が噛み付く……!その首をすり抜けるように斜め前に……なんだ?ステップした?……冗談だろう?あんなの、少しでも距離感を間違えば……直ぐに胃の中行き……そうでなくても腕や足の1、2本……

 

「もっと味あわせてくれ。お前の血を……」

 

ブラウンが杖を三頭犬に叩きつける。うっ……嫌な音が……なんて膂力だ……三頭犬のその左の首から……血が……頭蓋が今ので割れた?嘘だろう……

三頭犬が吠えながらブラウンに噛み付こうとするが、全てギリギリで躱される。

 

「ハハハハ!!もっと頑張れ!3つもある首が勿体ないぞ!?」

 

ブラウンが杖を大きく振ったと思うと、杖が……なんだあれは?

分割されて……撓った?……!違う。杖が……鞭になった。鞭が……獣を……切り裂いている……

鞭が……切り裂く?杖が鞭に?

 

杖が鞭で……切り裂く獣を血が吹き出す……噛み付く避ける切り裂く血が出る血に塗れる杖が鞭が杖になる叩く血が出る血に塗れる……

 

もう……訳が分からない。

 

……幻覚か?いや……いや、違う。分からない。もう頭がおかしくなりそうだ……

 

なぜブラウンは死んでいない?

なぜブラウンが生きている?

なぜ……なぜブラウンがヤツを追い詰めている?

 

「ほら、もっと元気に私を喰いに来い!そんなものか?このままではお前はただの犬以下だぞ?」

 

ブラウンは……アイツは狂っている。

 

「ははは……これなら犬3体の方が怖いくらいだ。……もっと考えて牙を振るってみせろ!」

 

もはや三頭犬からの危機は去ったと理解した混乱しながらも熱の逃げた、冷めた頭でブラウンを見る。

 

アレが僕と同い年だと?なんて身体の使い方だ。なぜただの人間が魔法も使わず一方的に化け物を蹂躙できる?

 

「もっと……もっと血をよこせ!まだ出来るだろう。へばるな、犬。」

 

目の前の惨状を焦点も合わない目で眺める。

返り血で赤黒く濡れて、光を気持ち悪く反射させるローブを纏った目の前の女を。

 

……ずっと頭が回り続ける。体は動かない……その代わりに頭が動く……そして思い至る。

 

……もし、もし三頭犬が……終わったら……その次は?この部屋には……僕とアイツしか……

 

「……ここまでか、旧主の番犬より……よっぽど弱かったな。」

 

待て……待ってくれ。

 

「ああ、ドラコ。だ……」

 

来るな!!!

 

「うわああああああぁああぁああ!!!!!」

 

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

 

誰でもいい早く助けろ誰か誰か

 

「誰か!誰か、だれか……」

 

 

〜〜~

 

 

?なにか……声が聞こえる。それも生徒の。

 

マクゴナガルはため息を我慢できなかった。

 

久々の感覚だ。そう考えると共にまたため息が出る。新学年へと進む間の長期休暇の間、全く聞かなかった夜間徘徊をする生徒の声。

この新学年が始まって、そうそうに校則違反をするのは……あまりそうは考えたくないのだが……自らが担当する寮生の可能性が高い。即ち、グリフィンドール生だ。

 

痛くなる頭を無視して声の方へ急ぐ。都合のいいことに声の主は近寄ってきている。

 

……あまり聞いた事のない声である事に少しほっとする……いや、1年生の可能性もある……

 

!見つけた。

 

「こんな夜遅くに!何をはしゃいで……ミスター・ドラコ?」

 

これは驚きだ。''模範的''グリフィンドール生とは別の意味で問題児になるだろう彼には注意を払っていたが……

夜間徘徊の上叫び声を上げながらはしゃぐような……自ら罰則を受けに行くようなタイプの子供ではないと思っていた。そう、''スリザリン''的狡猾さを身につけた子だと。

 

取り留めのない思考を隅に避け、叱責の声を出そうとする。……が、なにか様子がおかしい。

 

「たす……っ、はっはぁったすけっ……うぅっはっ……」

 

一体何が起きたというのか。こんなに血相を変えて……逃げた?何から?このホグワーツで?

 

「はっ……はっ……はぁっ……まく、マクゴナガル先生!助けて……!ブラウンが」

 

……ブラウン。

これは良くない。非常に嫌な予感がする。

 

「どうしたのです、まず落ち着きなさい。ミス・ブラウンがどうし」

 

「ブラウンが僕を殺しにくる!!」

 

!なんという……いや、嘘……とは思えない。真に迫った声と表情に、より嫌な予感が強まる。

 

「っ……何を言っているのです!?なぜミス・ブラウンがあなたを」

 

「三頭犬をっ……よんか、4階の三頭犬を!っはっ……ブラウンが殺した今度は僕を殺しに来る!」

 

「……なんという……」

 

……これは私の手に余る。信じたくないが、彼の態度は尋常ではない。

 

……偽の記憶か何かで錯乱している?

錯乱呪文?偽記憶の呪文?子供一人にかけるくらいなら簡単だが……これをかけた魔法使いが学校内にいる……?どうやって……?ホグワーツに忍び込んだ?……それとも生徒同士の喧嘩?

……違う。この男子生徒がマルフォイ家の御曹司というのは周知の事実。まして入学早々の事だ。いじめを受けるような子でもない……

 

……いや……

……もし、彼の言葉が本当のことだとすれば……

それは……それはあまりにも……大事だ。私の手で制御できる範囲を軽く超える大事。

 

この前のアルバスとの会話が蘇る。

……イレギュラー……

もし、彼女が''例のあの人''の関係者だとしたら。いや、もし、何かしらの偽装魔法でミス・ブラウンを騙った闇の魔法使いがホグワーツ内に侵入していたら……

 

「【エクスペクトパトローナム】……今すぐにアルバスを呼び出して。ブラウンの件だと。」

 

守護霊の呪文で現れた白銀の猫は、言伝を頼まれすぐさま姿を消す。

そう、これは私の一存で判断できる問題ではない。

 

「校長を呼びました、ミスター・ドラコ。安心なさい。落ち着いて、何が起きたのかの説明を」

 

「あぁ、ここにいたのか。探したよドラコ。」

 

っ!

 

「……こんばんわ。ミス・ブラウン。夜間の出歩きは校則違反ですよ?」

 

……声を出されるまで全く気づかなかった。表情と声は最大の集中力で変化させなかったはず……

 

最悪の場合……そう、彼女が本当にミスター・ドラコの殺害を企てている……もしくは、謎の闇の魔法使いの擬態である場合……それを想定し、少なくともミスター・ドラコ、生徒だけは守らなければ。

 

''ルーモスを灯し、周りを明るくするため''を装ってブラウンにそれとなく杖を向ける。……何をされても直ぐに''失神呪文''を放てるように。……あるいは、より強力な魔法を……

 

ドラコが尋常じゃないほど震えている。

 

「こんばんわ、マクゴナガル先生。すいません、校則違反とは知っていたんですが……ん?」

 

「おやおや、こんな時間に3人も廊下にたっているとは珍しいのう。こんばんわ、ミネルバ。」

 

ああ、よかった……

少なくとも最悪の最悪は回避できた。

あとは対応を間違えないように……

何とか震えないように声を出す。

 

「ええ、こんばんわ、アルバス。」

 

「この2人の生徒はどうしてこんな場所にいるのかの?」

 

「あー私がドラコを誘ったんです。校内の探検に。」

 

……自分からドラコを誘ったと証言するのはどういうつもりなのか?

 

……そしてドラコの様子が心配だ。彼は先程からブラウンを見つめたまま全く動けていない。ただただ震えている。

 

「……ミスター・ドラコはどうしたのかな?酷く体調が悪そうじゃが……」

 

「彼は先程からこの様子なのです。」

 

どうするべきなのか。ここでドラコから聞いた証言をアルバスに話すべきか……?

 

「……ふむ、ドラコ。レモンキャンディはどうかな?」

 

ドラコに目線を合わせてアルバスが聞く。

 

「……」

 

ドラコは何も言わない。いや、言えるような体調や精神状況ではないというのが適切か。

 

「……そうじゃの。ミネルバ、ドラコをマダム・ポンフリーの元へ連れて行ってあげてくれ。彼は酷く疲れている様子じゃからの。」

 

「そうですわね。校則違反を犯したミス・ブラウンは校長にお預けしても?」

 

「うむ。ドラコ、安心して体をやすめなさい。」

 

つまりブラウンは自分に任せろという事だ。

ここで戦闘になるなどということが無さそうでほっとする。

……ドラコの目を覗いたアルバスの表情が硬くなった……気がする……のが気がかりだが……

 

「ミス・ブラウン。それではあなたのことは校長に預けます。私から寮点の減点はしないでおきましょう。校長先生にお任せします。今後は校則を守ることです。よろしいですね?」

 

「……ええ、分かりました。マクゴナガル先生。……ドラコ。またね。」

 

声をかけられたドラコがビクリと肩を動かす。……やはり尋常ではない……

 

このままここを離れて良いものかとマクゴナガルの脳内に疑問が浮かぶ。が、しかし足早にこの場を去ることに決めた。

 

他でもないアルバス・ダンブルドアがここから離れろと言っているのだから……

 




我慢できなかったみたいです。

やっぱり筆者の技量が無いのが光りますね。
もうすこし戦闘描写懲りたかったですし、セリフももっとこうあるだろって思いますね。
とはいえここから原作にはなかった展開です。
頭捻って書いていきますので今後もよろしくお願いします。
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