女神様に転生させてもらった僕 異世界行ったら世界を堪能したい 作:華々
どうもこんにちは。
女神様に転生させてもらった――けど、前世ではとことん運のなかった男です。
転生してから早十年。
今世ではスキルのおかげもあって、信じられないくらい健康な体を手に入れました。
山の中にある、何の変哲もない小さな村。
そこで木こりの息子、ユウトとして生まれたのが今の僕です。
山奥育ちだけど、今のところ困ったことは何もない。
両親は優しいし、体は丈夫。好きなだけ外を駆け回れる。
――最高か?
「いっやふぅ〜〜〜!」
そんなわけで、今の僕は野原を全力で走り回っている。
この体、本当にすごい。
どれだけ走っても息が切れないし、疲れもしない。
しかも走れば走るほど、次の日には足が速くなっている気がする。
前世では、両親は見舞いにも来てくれないほど関係がこじれていた。
それに比べて今世の両親は、見ているこっちが恥ずかしくなるくらい仲がいい。
正直、砂糖を吐きそうだ。
でも、仲が悪いよりずっといい。
それに――今世には、友達もいる。
「待ってよ〜、ユウト〜!」
背後から聞こえる声に振り返る。
追いかけてきているのは、リーリャ。
家の隣に住んでいる幼馴染で、金色に輝く淡い髪と、澄んだ薄青の瞳をした女の子だ。
前世では学校にもまともに通えず、友達なんて一人もいなかった。
だから、こんな可愛い幼馴染がいる今の生活が、ただただ嬉しい。
「遅いよ、リーリャ」
「ユウトが速すぎるのよ!」
ぷくっと頬を膨らませて、ポカポカと胸元を叩いてくる。
もちろん全然痛くない。
子猫にじゃれつかれているみたいなものだ。
「ごめんごめん。次はゆっくり走るよ」
そう言って頭を撫でてやると、リーリャはすぐに機嫌を直した。
「むふ〜」なんて声を出しながら、額をぐりぐり押し付けてくる。
……可愛い。
その感情が頭いっぱいに広がりそうになって、慌てて首を振った。
「リーリャ、今日はもう帰ろう。走りすぎて、村からだいぶ離れちゃったし」
そう言うと、彼女はぱっと僕から離れ、数歩走ってから振り返る。
そして、太陽みたいな笑顔を向けてきた。
「じゃあさ、ユウト。どっちが先に村に着くか競争しよ!」
胸が、ふわっと軽くなる。
――ああ、本当に良かった。
女神様に、そしてリーリャに出会えたこの世界に。
今日は帰ったらちゃんとお祈りをしよう。
そう心の中で決めた。
「ちょっとユウト〜! 早く〜!」
「分かった、今行くよ〜!」
女神様には魔王を討伐してほしいって言われていたけど、まだ子供だし、今はただこの素晴らしい世界を堪能しよう。
……だけど。
この時の僕は、すっかり忘れていた。
幸運が続けば、その反動もまた大きくなるということを。
そして――
十年分も積み重なった幸運が、どれほどの“代償”になるのかを。
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