TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
私、
ちょっと不思議な女子高生……ではなく16歳の美少女!
なんか男だったのに、ある日魔法少女が活躍する世界に転生してしまった。いや、転生なのかな?
二年前ぐらいに気付いたらこうなってたんだよな。
……失速しちゃったけど続けるよ!
人々の平和を脅かす
ということで、魔法少女が活躍する世界に女として生まれ落ちたのなら、魔法少女をしたいのが自然だよな!
……と思っていたのに。
「アーツ解放、ボンバー」
『承認、
手のひらに鍵が生成される。奇妙な人型の異形にそれを投げ込むと、その異形の胸元に錠前が形成されて、そこに鍵が嵌まる。
――かちゃりと音がした。鍵が嵌められた錠前が勝手に回る。
それと同時に、轟音が響く。爆発した。
熱風が肌を撫でて、異形はバラバラに崩れていく。
俺の身を包んでるのは機械チックなバトルスーツだし、デバイスを通して能力を使ってるし、機械音声が聞こえてくるし。
どう見ても――変身ヒーローなんですけど。
あの……魔法少女は!?
ここって、魔法少女がいる世界ですよね?
見てくださいよ、この対面の敵。
「ぐっ、貴様ぁぁぁーッ!!」
でかい図体に、メカメカしい体。
……怪人なんだけど!?
「どうしてこうなったんだ……」
爆発する怪人を背に俺は一人、項垂れた。
◇◇◇
「魔法少女になりだがっだよ~!」
「そうか、コーヒー淹れたぞ」
無愛想な青年が、コトっとコーヒーの入ったカップを置く。
無視しないでほしいな、しくしく。
ずずず、と啜って見るとあっちぃ……そういや猫舌だったわ。
辺りを見渡すとコンクリートに囲まれたなんとも地味な場所。
椅子と机と収納ケースなどがあるちょっとした居住空間。それ以外は特にない。小部屋とかはあるけどね!
秘密基地だから仕方ないんだけども。
そう、ここは変身ヒーローの基地だ。
俺は今、変身ヒーロー組織であるアビスハンターズの秘密基地にいる。
――アビスハンターズ!
それは、怪人と戦うヒーローたちの組織!
不思議な力である異能に目覚めてしまった人たちが、人々を襲う悪の組織と戦っているぞ!
……という感じのやつね。
ちなみに、改造されてヒーローになった人とかもちゃんといるから安心してほしい。
俺はなんか路地裏に倒れてたらしくて、そこをこの目の前の青年、アキラに拾われてここに来たらしい。
転生してきたんかなって思ってたけど、突然別の体を持って放り出されるタイプだったみたい。
……鬼畜仕様やめてね!
んで、私も異能を持っていたのでこの組織にいるってわけ。
どうして魔法少女じゃないんだ!
いや、ヒーローが悪いわけじゃないんだよ?
でもさ、どうせなら女の子にしかなれない方できゃっきゃしてーよな!ってことです。
そろそろ冷めたかな。
コーヒーを飲む。苦味の後に残る酸味のような味わいが心地いい。
カップに口をつけて、顔を上げたときにアキラがこちらを見ているのに気づいた。
「アキラ、コーヒー淹れるのうまいね」
「知り合いがいる喫茶店で、たまに手伝ってたからな」
「ふーん」
ちなみに、俺はこの基地に住んでる。寝床がないからね。
なんか、アキラはアビスハンターズ内では結構な立ち位置らしくてここに住まわせることを許してくれたみたい。ありがたいね。
これ、ストーリー上だったらアキラが主人公で俺がヒロインっぽいんだけど、アキラって全然自分で戦わないんだよな。強いのに。
「っていうか、魔法少女になりたいんだけどなー」
「また始まったか」
「またって何!?」
「毎日言ってるだろ」
……まあ、毎日言ってますけども。
だーって、どうせなら魔法少女になりたいんだもん。
女になったなら女っぽいことしたいだろ!
なんか、こうキラキラしてるし。
そこで、俺は一つ思い付きました。
魔法少女じゃないなら、それっぽいことをしようぜ!
題して、魔法少女ごっこ作戦。
俺の飲み終わったコーヒーカップを片付けながら、アキラがこちらを見る。
「また何かろくでもないことを考えてるな」
「違いますけど」
「凛が敬語の時は、だいたいそうだからな」
「よくわかるね」
ろくでもないなんて、酷いなあ。夢について考えてるだけなのにな。
「今度はなんだ。この前は、魔法少女になるために契約精霊を捕まえるだとか色々言っていたが」
魔法少女になるためには、契約する精霊が必要だ。
だから、探して契約しよう!と思っていたんだけど、そんな簡単に見つかるものでもない。
あと、本来はピンチの時に契約精霊がやってきて、そこで魔法少女になるパターンが多いんだけど、俺は自力で戦えるのでそれもダメだった。
まあ、実は見つけても意味なかったりするんだけども、それは置いておく。
……なので、ごっこ遊びで満足しようかなってこと。
「魔法少女ごっこをしようかなって」
「……そうか」
正直に伝えると、アキラは呆れたように目を伏せた。言っても無駄みたいな扱いされてる?
『凛、ごっこ遊びなら問題はないが、怪人退治に支障がない程度にしてくれ』
俺の両手につけている、鍵穴の空いたブレスレットのうちの、右側の方から電子音が響いた。
「うるさいな、カントホルツ。っていうか、怪人退治はずーっとやってるんだからたまには遊んでもいいでしょ」
『今日で、怪人登場記録は125日連続だ。おめでとう』
「激務だなあ」
この街は怪人がバカみたいに出る。
あっ、怪人というのは悪の組織が生み出してる人型の生物で、勝手に暴れまわってる。シンプルに迷惑。
そういうのをアビスハンターズの変身ヒーローたちは倒してるってこと。
こういう場所だからアビスハンターズも秘密基地作ってるのかもね。
ちなみに、俺がほとんど倒してる。おかしくないか?
しかもね、ここ一年ぐらい俺が倒してるんだよな。ありえない。他のヒーローは何してるんだか。
まあ、他の地域守ってるから許してやるか。
……にしても、魔法少女ごっこってことは魔法少女っぽいことをすることになるわけで。
魔法少女っぽいことかあ、どういう魔法少女になりたいかってところから決めないと。
どういうタイプの魔法少女になりたいかだよな。やっぱ無難にまっすぐな子になるか、クール系か。
ギャップを狙いたい気持ちもあるな。そっち方向で考えてみるか。
意外性と言えば、実は魔法少女でした!パターンでやりたいな。
いや、実は魔法少女ではないんだけど。
そういう意味ではインパクトがある方がいい。魔法少女っぽくないやつなのに!?っていう感じでいくなら何がいいかな。
……ひらめいた。男だと思ったのに魔法少女っていうのはどう?
よし、意外性バッチリだ。そういう方向でいこう。
つまり――男装だ!
「アキラ、服貸してくれない?」
「……一応聞くが、用途は?」
「服の用途とか着るしかなくない?」
「誰が?」
「私!」
何か疑わしいものでも見るような視線でこちらを伺いながら、アキラは何事もなかったかのようにコップを洗いはじめた。
「なんで無視されてるの?」
『急にわけわからないことを言い出すからだろう』
「いや、服借りようとしただけでしょ」
『いきなり人の服を借りる意味がわからないと思うが』
「男装しようと思って」
『……そうか』
おかしいな、機械音声に呆れられてるやつになってしまったんだけど。
「余ってる服ならいいが。そこら辺にあるだろう」
コップを洗い終わったアキラが、収納ケースの一つを指差した。
「えっ、いいの?」
「今回はな。次からは自分で買いに行け」
『アキラは甘いな』
「へへっ、やったね」
じゃあ、早速漁っちゃおう!
収納ケース内のアキラの私服に手をかける。これを着た自分を想像して、ふと思った。
「これ、アキラの借りたら彼シャツみたいになんのかな」
「すまないが、やっぱり自分で買ってもらえるか?」
「対応が冷たい。別にいいじゃん、ちょっとぐらい」
「待て待て、ここで脱ぐな」
あっ、そうだった。
今の俺は女であることをすっかり忘れていた。二年ぐらいこれで生活してるのに、意外と慣れないもんだ。
「ごめーんねっ」
「反省するときの態度じゃないな」
「美少女の着替えを披露して、思わずアキラをドキドキさせるところだったか」
「バカなことを言ってないて、服だけ選んで部屋に行け」
「つれないなー」
基地は地下にあるんだけど、小部屋もあって着替えとかはそこでしてる。
何個か服を勝手に見繕って、小部屋に入る。
正面には大きな姿見があった。
さらさらとした黒い髪、肌は血色はいいが少し白く感じる。
少女、と言うには大人びた顔立ち。可愛いよりは綺麗という言葉が似合う。
端正な輪郭、均整の取れた美少女がそこにいた。
……俺なんだけどね!
さて、かわいい系ではないのでかっこよく決めることはできるんじゃないか?そういう試みだ。
……普段からワイドパンツとパーカーとか着てるからこれあんまり変わらないんじゃない?
体のラインとかがわからないぐらいでいいか。
白っぽいインナーの上に藍色のオーバーサイズのパーカーでも羽織ってそれっぽくする。
……なんか、黒っぽいのは苦手だから。
下は、まあズボンでいいか。スカートは論外だし、足を出しすぎるとなんかバレそうだから。
あれ、アキラのサイズだと合わないじゃん。ごめん、借りたけどいらないわ。
キャップをつけるか迷ったけどスポーティーなボーイッシュにはなるけど男装っぽくないし、これでいいや。
なんか、男装の麗人みたいなのを目指そうとしてたのに、中性的なだけの人になってしまった……おかしいな。
中性的な美人って感じ。ほなええか。
……思ったんだけど、いつもの私の格好とそんなに変わらないんじゃない?
もしかして、前から自然とギャップ狙い魔法少女路線に向かっていたか。あんまり女の子っぽいの着てた記憶がないや。
「ねえ、カントホルツ。これどう?」
『いつもとあまり変わらないな』
「そうだよねえ」
カントホルツもそう思うよな。まあいっか!
「アキラー、服さんきゅ」
「後で返してもらうぞ」
「……私の匂いのついた服で楽しむみたいな話?」
「……」
もう反応してくれないじゃん。しょんぼり。
とりあえず、方向性は決まったから魔法少女ごっこを試しにしてみるか。
「んじゃ、見回り行ってくるね」
「いってらっしゃい」
「ついでに魔法少女ごっこしてくるー!」
「そうか」
ひらひらと手を振って、私は基地を後にした。
一抹の空しさを胸に抱えたまま。
◇◇◇
「クルクル、君は魔法少女になれるクル!」
「ふーん。じゃあ、なろうかな」
「え、そんな即決クル!?」
「だって、なれるんでしょ。いいじゃん、魔法少女。はよ契約してよ」
「そっちが言い出すこともあるんだクルね……いいクルよ!」
「これで、晴れて私も魔法少女ってわけか」
「ねえ、クルル。逃げなよ」
「で、でも██を置いていけないクル!」
「いいから。このままだと██████しちゃうからさ」
「嫌クル!最後まで一緒クル!」
「なに、それ。もう、犠牲になるのは私だけでよかったのに」
◇◇◇
さて、魔法少女ごっこをするぞ。何をするかと言われれば、それっぽいことをしよう!
例えば、そう。いつも通りの景色、道路を歩いているときに魔法を使ってみるとか?
「アーツ解放、ライト」
『却下だ』
「そんな」
変身ヒーローには異能と呼ばれる不思議な力がある。
それを使って魔法もどきをしてみようと思ったんだけど……俺の場合は、この俺専用のデバイスであるカントホルツから許可をもらわないといけないんだよね。
うーん、じゃあどうしようか。
――ぞわり、と背筋に悪寒がした。
例えばそうか。ここで化け物が現れたとして。
――空が割れる。どぼどぼ、黒い塊がそこから流れ出してくる。
……それを迎撃したら、ちょっとはそれっぽくなったりしない?
――降り注いだ黒の塊は、集まって一つの形を作る。
大きな鉤爪を持つ獣。まるで熊のようなフォルム。
『
――災厄獣、それはある日突然発生してはただ破壊を繰り返す化け物。
魔法少女たちが日々、戦っているモンスター。
相手としてはちょうどいい。
「いくよ、カントホルツ」
手を握りしめる。そして、パッと開くとそこには鍵が現れた。
それをスッと投げるとくるくると回り、不自然な軌道で落下して右手のブレスレットにある鍵穴に嵌まった。
「チェンジキーセット」
『認証、セットアップ』
勝手に鍵が回り、かちゃりと音がした。
「変身!」
『デッドボルト、フェーズ1』
ブレスレットからエネルギーのフィールドが発生して、俺を包み込む。
魔法少女と言えば変身バンクだよな。
手足から胴体へと、俺の体に機械的なスーツが少しずつ装着されていく。
その上から、両腕、両足と胸元に錠前が設置される。そしてそこからチェーンが出てきて俺の体に絡まっていく。
最後に、手を振り払うとエネルギーフィールドが消える。
……待てよ、こういう時って魔法少女だったら名乗るよな。
「魔法少女、マギア☆リンリン推参ですっ!」
『勝手に変な名前をつけるのはやめてもらえるか?』
「うるさいよ」
キラッと星マークでも溢れそうなぐらいに、弾んだ声で笑顔を見せたのに、茶々いれないでほしい。
災厄獣もこっちに気付いたみたいで、その巨大な体躯がこちらに向かって動き出す。鋭い鉤爪が、持ち上がった。
「アーツ解放、バインドロック」
『承認、
左手側のブレスレットに、勝手に鍵が嵌まって回る。
そして、手のひらの上に鍵が生成されて、それを迫ってくる災厄獣の手に投げつけた。
すると、手に錠前が出現してそこに鍵が嵌まり、くるりと回る。
――かちゃり、その音と同時に突然手が重くなったように災厄獣は地面に叩きつけられて動けない。
もがいているが、手だけは地面から離れない。
「言うなれば、私の拘束魔法ってやつね」
『魔法ではないが』
「ごっこだって言ってんじゃんね。アーツ解放、ボンバー」
『……承認、
左手の鍵穴にまた、鍵が嵌まって回る。
再び手に生成した鍵を投げつける。
今度は、首元に出現した錠前に嵌まり、かちゃり。
響き渡る轟音と肌に感じる熱気。黒く焼き焦げた災厄獣の姿がそこにあった。まあ、元から黒いけど。
そして、ぐずぐずと体が崩れて消えていく。
「うーん、魔法少女ポイント十分に稼いだね」
だって、変身して本来魔法少女が戦う相手を倒してるからな!
まあ、この街だと災厄獣もバカみたいに出てくるから、めっちゃ倒してて今更なんだけどな。
「アーツ解放、リペア」
『承認、
焼き焦げた道路を元通りに修復させる。俺のせいで壊したままなの、普通に罪悪感あるし。
……そういや、思ったんだけど、カントホルツって実質契約精霊みたいなものだから、やっぱり俺は実質魔法少女なのでは?
『何かバカなことを考えていないか』
「……気のせいだよ。解除」
ブレスレットから鍵が抜けて、機械のスーツが消えていく。
ちょっとポイントは稼いだけど、魔法少女への道のりはまだ長そうだ。
『そういえば、遠くにも
「えっ、ガチ?」
変身解いた後に言う?
連戦ならもう一回変身するの面倒なんだけどな。
『幸い、魔法少女が倒したらしい』
「ん?ここら辺って魔法少女いなくなかった?」
『そうだな、だからこの付近に出現していた災厄獣は我々が対応していたわけだが』
「たまたまこの付近に移動してた魔法少女でもいたのかな」
『いいや、どうやら新しい魔法少女が誕生したらしい』
「えっ、マジで?」
本物がいたんだなあって思ったけど、この地域に誕生したの!?
『落ち着け』
「どこどこどこどこ」
『こいつもうダメだな』
いや、だって……確認したいじゃん。生で見たいだろ!
『……待て、こちらに近づいてくる』
「えっ、その魔法少女が?」
『恐らくは』
えっ、そういうのわかるの?
……ぴり、と肌に何かが痺れるような感覚が肌の上を走った。
確かに、何かがこちらに来ているような。
急いで物陰に隠れた。
『なぜ隠れる』
「実物とは接触したくないオタク心?」
『難儀だな』
パタパタと誰かが駆けてくる。赤い髪が揺れた。
艶やかに伸びた赤い髪を後ろで結んでいる活発そうな印象を思わせる、ポニーテールの少女。
胸元についている、赤い宝石とフリルやリボンであしらった衣装からするに、彼女が魔法少女で間違いないはず。
「あれ、反応があったはずなのになにもない……」
「そんなはずないナノ!確かに
よく見ると、その魔法少女の横にぷかぷかと小さい何かが浮かんでいた。あれが契約精霊か。
うーん、カントホルツじゃなくて俺もああいう契約精霊欲しかったかもしれん。
「でも、
「むむむ、ここら辺にいる魔法少女は漆黒ぐらいのはずナノ」
「漆黒……確か、二年活動してないっていう魔法少女だよね?」
ごめん、倒したの俺なんです。
「でも、連戦はきつかったからちょうどよかったかも」
「何を言うナノ!初変身であんなに戦えてるんだから、余裕ナノ!」
「そうかなあ」
……初変身だったの?
それなら少し見たかったな。惜しい。
「そろそろ帰るよ、ナノ」
「待つナノ、沙彩!」
光に包まれて、魔法少女の姿が解かれる。
沙彩さん、ね。次会うときは、変身バンクを直に確認したいぞ。
少し楽しみができた。
本物の魔法少女を次からは観察するぞ!
と、そんなことを考えていると少しだけチクリと胸が痛んだ。
「……?」
なんだろう、これ。何か、喪失感のようなものが渦巻いているような。
『どうかしたか』
「ううん、なんでも」
だから、俺はそれを見ないことにした。
魔法少女になれないとかは、今更だし。
[データベース]
・アビスハンターズ
変身ヒーロー組織
不思議な力である異能を使う変身ヒーローたちが所属する組織
異能を制御する変身デバイスを使って怪人と戦う
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