TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
どうも、百日紅凛です!
性別がバレてなんかややこしいことになってしまいました。
まずは、事情を全部知って平然とその場で佇んでいる雪那さん。何してくれてるんですかね。
そして、こっちでずっと下を向いたままなのが沙彩ちゃんです。
おーい、生きてますか?
……なんかそこまでショックなことあるかな。いやまあ、騙してたみたいな感じになって悪いけどさ。
っていうか、もっと変身解除とかでばらすつもりだったのに!
一方、少年はどうかな?
一度固まった後だから、ちょっとだけましそうだね!
なんとか現実を受け入れている、みたいな空気感で。たまにこっちをチラチラと見てる。すけべめ。
っていうか、少年はもうちょっと早くに気付いてほしかったな。そうだったら、着替え中ちょっと覗かれたのとかだって、いじれるのにね。
……ん?そもそも、これから少年はいじれるのでは?
じゃあいいや
まあ、そんな感じで。すごくなんとも言えない空気のままで、助けてほしいです。
よし、注文取るか。
「ご注文は何にしますか?」
「あなた、そのままの感じでいくの?無理じゃない?」
「雪那さんのせいでバレましたけど!」
「人のせいにしないで。そもそも魔法少女ごっこしてたくせに」
「あっ」
沙彩ちゃんが、急に顔を上げた。少年も、不思議そうにしてる。
っていうか、やっぱりこの人気付いてる。冷静に考えて、顔同じだからね。普通はバレる。
「魔法少女ごっこ……?」
「沙彩ちゃん?とりあえず注文の方を」
「いやあのちょっと待ってください?えーっと、凛さんは女の子、なんですよね?」
「そうだよー、凛ちゃんは女の子ですっ!」
ぶいっ、と決めポーズしてそのまま軽く笑うと、やっぱり沙彩ちゃんは固まったまま。なんで?
「ねえ、凛。その、魔法少女ごっこって何?」
「もー、少年もいいから。早く注文言ってよ」
「……ただでさえ、男のふりしてたんだから。まだ隠してることがあるの?」
「もー、めんどいなあ」
パン、と手を叩いてこっちを見せさせる。
「凛って名前は普通、女の子ですよ!」
「それはそうね」
冷静に、雪那がそう返してきた。だよね。
「で、それは置いておいて。魔法少女ごっこの話をしましょう」
「なんで戻ってくるの」
もう、その話までするとややこしいでしょ。っていうか、少年とかよくわかってないじゃん。
「えーっと、凛。どういうこと?」
「少年、いい女には秘密があんの。そう、例えば……変身ヒーローが魔法少女ごっこをしていた、みたいなね」
意味ありげに視線を少年に向けると、何か察したように顔を伏せる。
「……えーっと、そういうこと?」
「そういうこと。よくわかるね、少年」
「まんまのこと言ってただろ」
「そうだけどさー」
と、盛り上がっていると沙彩ちゃんだけがずっと混乱したままで、きょろきょろと視線を彷徨わせている。
もうしょうがないから、白状するかな。
だって、雪那がどうせばらしちゃうだろうから。
「沙彩ちゃん」
「え、はい……なんですか?」
「私が、マギア☆リンリンだよっ!」
ぴしり、と沙彩ちゃんが固まる。
「……あなた、それ自分で言うの?」
「だって、バラされそうだし」
「何、その名前」
なんか少年に引かれてる。もうしょうがないなあ。
一から説明しますか。
「全部話すんだけど――」
◇◇◇
かつかつ、と基地の中で誰かの足音が響く。
内部で、モニターを見ているアキラが、そちらに視線を向けた。
「……詩織か」
「そうだよ」
抑揚のない声で返しながら、詩織がゆっくりと顔を見せた。
「あの子、もうそろそろ限界じゃない?」
「……」
アキラは黙り込んで答えない。そっと、詩織は近づいてそのモニターを覗き込む。
モニターには、いくつかの数値が記載されていて。そこには、百日紅凛
「ふうん、数値的にはまだセーフか。でも、アビスハンターズとしては、あれはさっさと処分すべきだと思ってる。そうでしょ」
「まだ、あいつは崩れてない」
「何それ?」
「約束だからな。このままなら、あいつを傷つけさせない」
「……そう。私も、できる限りはするけど。覚悟は決めておいた方がいいよ」
と、詩織が呟いた後は、二人とも黙り込んでしまってそれ以上話すことはなかった。
◇◇◇
「えーっと、つまり。凛さんは……アビスハンターズのヒーローで」
「……魔法少女に憧れてるから魔法少女ごっこしようってなったってこと?」
「そう!」
マギア☆リンリンのくだりをちゃんと話して見ると、二人とも呆けたようにして顔を見合わせている。
雪那はというと、何もせずにそこに座り込んでいる。
っていうか、なんか知らん間に詩織さんどっか行っててさ。注文とっていい感じに誤魔化すとかもできないから、そのまま話していくしかないんだよね。
逃げ道が塞がれてるなんて、おかしいよ。
戸惑ったままの二人は、そのまま黙り込んでいる。
なんかおかしいところありますか?
いやだってさ、魔法少女になってみたくないですか。
その、元男って話とかはしてないけどね?
女の子になら、プリンセスになってみたい!みたいなのあるでしょ。似たようなもんだよ、現代版ね。
まあこっちは性別の変化のせいもあるかもしれないけど。
で、一応普通とは違う変身ヒーローなわけだし。そりゃあやるでしょ。
「それで、あの見た目はなんなのかしら。鎖のような武器を使ってたのは、確かに変身ヒーローらしいけど。戦闘スーツのような姿が基本じゃなかったかしら?」
「おっ、正解。みんな戦闘スーツだし、私もそうだよ。見た目変えてただけ」
「……見た目を、変える?」
「うん。光を操る異能を解放して、見た目をぽいっていじんの」
雪那が考え込む素振りを見せた後、もう一度口を開いた。
「あなたの異能は、光を操るってこと?」
「違うよ?制限と解除。色んな異能の才能を解放してるんだよ」
「……」
なぜか今度は雪那が頭を抱え出した。なんで?
「凛、普通はそんなに異能の才能とかあるわけないから」
おっ、少年が回復してる。
「少年だって、結構すごい異能でしょ。解析と改造だっけ?」
「でも、それだけで他に眠ってる異能の才能とかはないし。……そもそも、普通の人間に複数の異能は耐えられないから」
「えっ、そういうものなんですか?」
おっ、沙彩ちゃんも復活してる。ごめんね、何回もフリーズさせちゃって。
「うーん、そうかもなんだけど。なんか使えちゃってるからよくない?」
「凛、雑すぎ」
「そうだけども。てへへ」
舌をべっ、と出して誤魔化す。
……普通じゃないのはわかってるけど、なんかそうなってるんだから仕方なくない?
そもそも、理由とかあんの?
だって、異能って生まれ持った才能だし。それに理由とか求めても、よくわかんないじゃん。
……にしても、確かに不思議だな。この体が特別ななにかなんだなーぐらいにしか思ってなかった。
そもそも、二年より前の記憶とかないし。
……それより前は、どうだったんだろ。
突然、この世界に出現したようなものだと思ってたけど。アキラは俺のことを拾ったって言ってた。
だからきっと、何かの事情で外に捨てられるような状況になっていて、そのままアキラに見つかったとか。
そうなるなら、このたくさんの異能の才能も何かしらの理由がある?
ああそうか。異能って確か、怪人作ってる悪の組織が他人に植え付けるとかできるらしい。
そうなるのなら――俺に異能が植え付けられた?
……記憶にノイズがかかったみたいで、うまく考えられない。
ずきり、と頭が痛む。
「にしても、変身ヒーローだとかそういう話ってバラしてもいいんですか?」
「あんたが魔法少女ってことも凛は知ってるけど」
「えっ、そうなんですか!?」
みんなの言葉に答えようとして、うまく言葉にならない。頭の中が、揺れてる気がする。
痛い、痛い痛い。
何、この頭痛。
「まあ、アビスハンターズと魔法少女協会はあんまり仲は良くないけれど。でも、現場はあんまり気にしてないもの」
「どうでもいいよ、そんなことは」
「なんか、そこら辺難しそうですね」
なんか、みんな仲良くなってるみたい。それはそれでよかったのかな。
ああでも、酷く頭が痛む。割れそう。
何かが思い出せそうなのに。
体が、うまく動けない。
「……あなた、大丈夫?」
雪那に肩を掴まれる。少しだけ、痛みがましになった。
ずっと黙っていたから、心配されたのかも。俺って、お喋りだから。
「だい、丈夫……」
「そうは見えないけれど。休む?」
「別に、いい……」
覗き込む雪那の顔が、少しだけ暗くなる。
「……あなた、やっぱり魔力があるわね?」
「魔力?なんの話?……いたっ」
ダメだ、うまく考えられない。
「ねえ、凛。大丈夫?」
「凛さん、顔色が悪いですよ?」
少年と沙彩ちゃんも、心配そうにしてる。うまく言葉が出ない。
「……まずい、この魔力の質。ディープバーストと同じ?」
ディープ、バースト……?
なんだっけ、それ。ずきずきと、痛みが響いていく。
「ディープバースト……?」
「魔法少女の、暴走形態のようなものよ。……ねえ、この子は本当に変身ヒーローなのよね?」
「目の前で変身してるのを見たから、そのはずなんだけど……」
バチバチ、と頭の中で何かが弾けてる気がする。わからない。
「ごめん……」
ふらつく体を起こして、店を出る。
「凛さん?待ってください」
「……一人にしてくれる?」
ひとりでに、勝手に錠前に鍵が差し込まれていた。
人の話をまともに聞けない。どうなってるの、この状況。わからない。体が変だから、早く一人になりたい。
「ちょっと凛。待って」
勝手に体が加速していく気がする。
「何、あの速度。生身の速さじゃない……じゃなくて、とりあえずその……少年さん?」
「篠森晴」
「なんでもいいから、保護者とかに繋げる?」
「……わかった」
なんか、遠くでみんなが話してる気がする。
でも、なんでもいいか。頭がいたくてよくわからないし。
「待って、凛さん!」
ああ、追いかけてきてるけどごめんね。
そのまま、適当に走った。
風が気持ちいい。少しだけ、痛みが引いていく気がする。
このまま、どこかに行ってしまいたいな……とそう思ってたとき。
「こんなところでめぐり合わせがあるとは」
ノイズ混じりの気持ち悪い声が聞こえてくる。
ざっざっ、と歩いてくるそれが目につく。
かちゃかちゃ、と金属同士がぶつかるような音が聞こえた。
全身が歯車やら何やらで作られてる、人型の何か。
『凛、怪人だ』
「……チェンジキーセット」
『認証、セットアップ』
「変身!」
『デッドボルト、フェーズ1』
ちょうどいい、戦った方がすっきりする。いきなり武器で倒しに行こ。
『解放、ロックチェーン』
鎖を持って、それを握りしめる。頭痛を誤魔化すように、それを振るう。
「ああ、やはりデッドボルトか!」
怪人の袖から、銃口が覗いて。
「アーツ解放、バインドロック」
『承認、
拘束しようと投げた鍵が、撃ち落される。
むしゃくしゃして振るった鎖が届く前に、銃撃が俺の体を捉えて、その後のことはあまりよくおぼえていない。
◇◇◇
ぴちょん、ぴちょん……と水滴の音がする。
湿っぽいじめっとした空気が、漂っている。
うっすらと目を開けると、薄暗いどこかにいた。
どこだろう、ここは。頭がまだ痛い。
なんか、独房みたいなところにいるな。
『起きたか、凛』
無機質なカントホルツの声が聞こえる。
「かんと、ほるつ……?」
手を動かそうとして、かちゃりと音がする。
鎖か何かを嵌められてる。手錠、かな。
「ふー……」
少しだけ息を吐く。頭がすっきりしてきた。
あー、そうか。なんかむしゃくしゃしてて、そのまま戦って負けちゃったか。
……どうしようかな、これ。なんかもう、疲れてしまった。
『凛、ここはおそらく怪人を作ってる組織の基地内だ』
「ふーん、そっか……」
『通信もできないから、連絡は取れないようだが』
「……へー、じゃあ困るね」
元気がうまく出ない。……みんなに迷惑かけちゃうかな。
……まあいいや、なんでも。
ああでも、アキラとかが助けに来てくれたりするのかな。
沙彩ちゃんとかも、助けてくれようとするかな。
でも、失踪したのとかよくわからないか。じゃあ、いいかな。
出ようと思えば、出れるかもしれないし。というか、たぶんいけるけど。なんだか、やる気がでない。
ああでも、助けられるなら。
憧れの魔法少女とかだったらよかったかな、なんて。
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