TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
魔法少女に憧れたきっかけはなんだっけ。ああ、そうだ。一人の魔法少女を見たことだったかな。
そこら辺以前の記憶はないから、逆にそれだけ衝撃的だったんだと思う。
アキラに拾われていたことだけはわかってたんだけど、経緯とかはよくわからないけど、たまたまアキラに見つかってよかったとは思う。
いつかの日に、アキラに連れられて歩いていた時に魔法少女に出会った。
その時の魔法少女が格好よかったから、憧れてしまった。
俺がこのまま、魔法少女になれないと知った時はかなり落ち込んだけど。
それでも、せっかく女の子になったのなら魔法少女になってみたかったし、あの魔法少女みたいになれたら……とずっと考えてしまう。
全てを切り裂く、白銀の魔法少女。ダイアモンドカメリア。
慣れるのなら、あんな魔法少女になってみたかった。
――ぴちょん、と水滴が落ちる音がした。意識が覚醒していく。
うっすらと目を開ける。どこだ、ここ。……あー、なんか体が痛いな。頭の痛みはなくなってるけど。
「ルビーブロッサム、あれはまだ魔法少女になったばかりだから向いていない」
何かの声が聞こえる。あー、なんかボーッとしてたな。
……なんでこんなところいるんだっけ。
腕が動かない。固定化されてる。あれ、拘束されてる?
ああ、そういやそうだっけ。記憶が曖昧だ。
「サファイアネモフィラは、隙がなさすぎる」
また、変な声が聞こえた。ノイズ混じりの奇妙な声。
……なーんか、ネガティブになってて、やけくそで負けたんだった!
あー、もう。ムカつくなあ。急に頭が痛くなってたせいで、判断鈍った。
確か、変身したときに相手が銃持ってるのが見えたんだよね。それで、バインドロックで出した鍵を撃ち落とされて、ロックチェーンで攻撃する前に倒されちゃった。
……なんか一瞬だったんだけどさ、強すぎない?こっちの手の内理解されてる気がする。
まあ、三桁の怪人倒してたらそうなるか。作りすぎだよ、お前らは。
にしてもなんだここ、独房みたいな感じ。……このくだり、一回やったな。
確か、カントホルツが怪人作ってるところの組織って言ってたっけ。
……元気がなかったせいであんまり覚えてない。
「トパーズガーベラは……もう少し様子を見たいな。ダイアモンドカメリアも、捕まえるにはガードが固すぎる」
まだ、何かの声が続く。独房らしきところには誰もいない。外にいるのかな。
にしても、なんで頭痛がしてたんだ。あれか、ディープバーストだとか、なんか色々なこと聞いてて。思い出そうとしたんだっけ?
いや、違う。俺の体のことか。たぶん、思い出しちゃいけないこととかなんだと思う。だから、頭痛かったんだ。
さて、これどうしようかな。なんか捕まったばっかの時は、気持ちが沈んでたから。
「オニキスダリアは、漆黒の疑惑があったが。色が同じだけで平凡な魔法少女だったか。別に使えそうな要素もない」
にしても、この声はなんだ?
かつかつ、と何かが歩いてくる。かちゃかちゃ、と金属同士がぶつかるような音がする。
無機質なレンズがこちらを覗いた。全身を、機械で作られているような怪人。俺を倒したやつ。
「やはり、貴様以上の逸材はいない。待っていたぞ、デッドボルト」
「……あっそ。出してくれない?」
「貴様を出すときは、もはや今の貴様ではいられない時だろう」
くつくつ、と笑う声が機械で覆われたその下から響いてくる。
「災厄獣を参考にして、獣のような怪人だとか色々試してみたが。やはり、最高の素体を改造するのが一番だ」
「……改造されんの?痛いのは嫌なんだけど」
そういや、少年も改造とかできる異能だったな。
こんなときに思い出すのが、そんなことだなんて。
……これ、自力でたぶん拘束は解けるんだけど。その後どうしたらいいかわかんない。
少しだけ、怖い。
いっつもは、空元気みたいなところもあったし。
魔法少女になりたくて。魔法少女ごっこをして。
男装して、変身バンクを作って。魔法少女と友達になって、正体もバレて。やりたいことを全部やってしまったから、ちょっとだけ揺らいでるのかもしれない。
「改造する必要はないな。貴様のはもう終わってる」
「……は?」
今、なんて?
「後は鍵が開くのを待つだけだ」
「ちょっと待って、さっきの話……ぐぅっ!」
ぴりっ、と全身に刺激が走る。体が痙攣する。
「貴様の封印をこじ開ける必要がある」
ああ、ちょっと油断したな。やっぱり、モチベって大事かも。
そんな緩い考えも、痛みの中に消えていった。
◇◇◇
凛さんが急に様子がおかしくなって、そのままどこかへと行ってしまった。
急いで追いかけたのに、全然追い付けなくて。挙げ句の果てには見失ってしまった。
……なんで、こんなことに。
混乱で頭がぐるぐるしてる。……まだ、凛さんが女の子ってことをあんまり受け止められてないのに、どっかに行ってしまったから。
にしても、マギア☆リンリンが凛さんだったなんて。確かによくよく考えると、似てるんだけど。
その時は、男の人だと思ってたから。
……凛さん、男装も普通に女の子の格好も似合うのちょっとずるいな。ってそんなことを考えてる場合じゃない。
どこに行ってしまったんだろ、追い付けるかな。
息を切らして、その場で休んでいると後ろから追いかけてきたらしい雪那さんと合流する。
「すみません、凛さん見失いました……」
「しょうがないわ、何か様子がおかしかったもの」
「……凛さん、大丈夫でしょうか」
「大丈夫、とは言いにくいわね」
私のせいだ。……変身してでも追いかけていたら追い付けてたかもしれないし。
「あまり考え込んでも仕方ないわ。一度戻りましょう。どうやら、あそこの喫茶店はアビスハンターズの基地でもあるみたいだから。どこに行ってるのとか、わかるかもしれないし」
……すごく気になる情報だけど仕方ない。もし、アビスハンターズの人なら、連絡手段とかあるかもしれないし。
それに、少しだけ外に出ていっただけだから何もないとは思うけど。……今の凛さんは、酷く不安定そうだから。
なんで、凛さんの様子はおかしくなったんだろう。あのときは確か、魔力の話をしていたような。
そのときに、雪那さんが気になることを言っていたかな。
そうだ、確か――ディープバースト、だったかな。聞いたことのない言葉だけど。変身ヒーローに関連するような話とか?
「雪那さん、ディープバーストってなんなんですか?」
「……ああ、その事。言ったでしょう?魔法少女の暴走形態みたいなものって」
「暴走、ですか?」
確かに、そんなことは言ってたけど。暴走?
それに、魔法少女の……ってことは。凛さんには関係ないはずで。
「魔法少女は、契約精霊とリンクしているの。契約することで力を使うことはできるけれど、ある程度激しい戦いになると、その負荷が契約精霊にもかかる」
「……そんなことが」
「普通は起こらないわ。でも、それだけ激しい戦いになることもある。それこそ、長時間の戦闘とかね。そのときに、負荷がかかりすぎると契約精霊がそれに耐えきれずに、とんでもない力の暴走が発生する」
淡々と告げられる魔法少女の秘密、きっと知られるとみんなが混乱するから秘密にしてるんだろうけど。私に言ってしまってもいいのかな。
「でも、それが凛さんと関係しないですよね」
「……どうかしらね」
じっと、雪那さんの瞳がこちらを見つめる。真剣な表情のまま、口を開く。
「言ったわよね、あの子から魔力を感じるって」
「でも、変身ヒーローですよね?」
何かで聞いたことがある。異能と魔法は共存することはない。
だから、変身ヒーローが魔法少女になれたりすることもないんだって。
凛さんは、異能を持って生まれてきてしまった。その場合、絶対に魔法を扱うことはできないはず。
凛さんは魔法少女になれない。だから、魔法少女ごっこしてる。きっと、そういうことだと思ってたんだけど。
「そう、異能は魔法とは共存しない。異能と魔法の両方を扱うと、体が耐えきれないから。……でも、あの子は歪だわ。少年さん……篠森晴が言ってたわよね、複数の異能の才能を持っているなんて、おかしい話だって」
「それは、そうですけど……」
複数の異能を持ってる変身ヒーローなんて、見たことがない。……解放してるとは言ってたけど。
いや、解放?才能を解放って言ってたけど……それは、封印されてる方が近いんじゃ?
「気付いたみたいね」
雪那さんの声が、やけにはっきり聞こえた。……この人もたぶん気付いてたってこと?
「あの子はきっと、体内の異能を封印することでなんとか保っているんじゃないかしら。だったら、魔法少女の力も封印されてても、おかしくなかったりしない?……なんて、この話も突拍子がないけれど」
自虐的に雪那さんは笑う。……確かに、飛躍しすぎてる気もするし。
でも、納得はするかも。凛さんは、どこか普通じゃないイメージがあるし。
「でも、凛さんがおかしいってことはわかります」
「そうね。……少なくとも、あの子から微かに感じる魔力は、ディープバーストしたときのものに近いわ。だから、これは魔法少女側の問題かもしれない」
まるで、言い聞かせるように言葉にする。魔法少女側の問題ってどういうこと?
ちらり、と視線を向けると雪那さんが続けた。
「魔法少女協会としても、百日紅凛のことは調べてみた方が良さそうってことよ」
「ああ、そういうことですか……でも、調べてどうするんです?」
「もし、彼女が酷い状況に陥っている魔法少女なら。助ける必要があるからよ。アビスハンターズにいるのも、変身ヒーローになってるのも、変な話だけれど」
と言い終わったときに、ちょうど喫茶店に戻る。
「……大変なことになってるらしいね?」
奥の方から、喫茶店の女の人が出てきていた。……詩織さん、だっけ。
たぶん、この人もアビスハンターズの一員なんだと思う。
その奥から、篠森晴さんが出てくる。
「……凛は?」
「ごめんなさい、追い付けなくて」
「そっか……」
項垂れる篠森さんと私の間に詩織さんが入ってくる。
「落ち着いてね。……ちょっと、状況を整理したいからね」
ふー、と息を吐いて。全員を席につかせた。
「とりあえず、自己紹介するよ。アビスハンターズの裏方をしてる詩織だよ、よろしくね」
……抑揚のない声でびっくりする。
「私は蒼崎雪那、魔法少女サファイアネモフィラよ」
そこまでばらしていいの??
……でも、話を早く進めた方がいいだろうし。
「私は緋色沙彩、魔法少女ルビーブロッサムです」
と言うと、詩織さんはぱちくりと目を瞬かせた。
「魔法少女ってだけでよかったけどね。にしても、凛の友達って聞いてたけど、魔法少女の子だったんだ」
じーっと、こっちを確かめるように見てくる。……ちょっと怖い。
「俺は、篠森晴。変身ヒーローの一人」
最後に、篠森さんが軽く自己紹介を終えた。
思えば、こうして他の変身ヒーローだとか魔法少女だとかとちゃんと話す機会ってなかったな。凛さんは別だけど。
「結論から言うね」
結論?
凛さんの話でいいのかな?
どこに行ったかとかわかるんだろうか。
「――凛はたぶん、捕まったよ」
「え」
間抜けな声が、口から漏れた。
「ここに来る前に、アキラのところに行ったんだけどね。そこで、凛ちゃんの反応がどっかに行っちゃったことがわかってね」
急な出来事に、頭がついていかない。
「凛がいた痕跡があったところで、怪人の反応があってね。たぶん戦ったとは思うんだけど、そこで途切れてるの」
ガタッ、と立ち上がる音がする。
「晴くん、どこにいくの」
「言わなきゃわかんない?」
「どこかわからないでしょ」
「関係ない」
……凛さんを助けにいくんだ。
だったら、私も。
「いくの?」
険しい顔で、雪那さんがこちらをじっと見てきた。
「はい」
頷いて、篠森さんの後を追う。
じっとなんて、していられないから。
「……まあ、こういうのは若者の特権だね」
「私も若いけれど」
雪那さんと詩織さんがなにか話してるけど、気にしていられない。
ちゃんと情報を集めて探す方は、雪那さんたちに任せよう。
「篠森さん、待って」
「……あんたも来るんだ。いいよ、凛は俺たちが助ける」
その言葉に頷いて、喫茶店を出た。
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