TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
体が重い。すぐに解けるはずの拘束をそのままにして、一度負けた相手だから様子を伺ってたせいで、怪人に痛め付けられて、妙に疲れてしまったからかな。
いやーまあ、自力で脱出できんのかいってなると思うんだけどさ。この敵拠点の中とかはよくわかんなかったしな。言い訳みたいになるけどね。
だって、知らない場所うろついてさ。一回負けた相手いるのに、そのまま行くのもリスキーってことにする。
ダクトを通り追えて、普通の道にまで出てきたけど……まだ、基地の中っぽいな。
早く外に出たいんだけど。やっぱり、体が痛いしさ。
「凛、大丈夫?」
「何、心配してくれんの?」
「するだろ、アホ」
「あだっ」
軽く小突かれた。ちょっと、だる絡みぐらいしてもいいじゃん。
「……ありがとね」
「何、急に」
「私だって、たまにはこういうこともあるから」
「あっそ」
かわいくないやつ。
……にしても、怪人のやつって俺を狙ってたんだよな。
やっぱり――俺の知らない何かが俺にあるんだ。
……俺って一体、なんなんだろう。わかんないから、いいか。
でも、やっぱり疲れた。
少年の後を追っていくと、少しずつ光が見える。
……少年に助けられたんだなあ。あんなに生意気なガキだったのに。かっこよくなったね、少年。
あはは、普通の女の子だったら好きになっちゃうぞ。
――なんて、内心で冗談で言うぐらいにぐらついていたからだろうか。
体の中が酷く熱い。じくじく、と嫌なものが広がっていく。
「凛、そろそろ外に……凛?」
少年がこっちを振り向いた。何か言おうとするけど、うまく言葉にできない。
ああ、そういえばあいつらが言ってたっけ。封印がどうとかって。頭がぐらぐらする。
「凛!」
肩を掴まれて、揺さぶられると俺の中から何かが飛び出そうになる。
『まずいな、封印レベルを上げる』
「かんと、ほるつ……」
掠れた声が喉が出てしまう。腹が熱くて、そこから何かが飛び出そうなときに――すっと熱さが引いた。
少しだけ、体が軽くなった。……カントホルツが調整してくれたのかも。
……でもなんだろう、変な感覚がある。体の内側から、何かが溢れてきそうで。
ああ、きっと……これが俺の元々持っていた力なんだなと気付いて。
「凛、ちょっと……凛!?」
ぐらり、と揺れて少年にそのまま体を預けたことだけは覚えている。
◇◇◇
「ああ、もう……敵が多い!」
空から落ちてきた災厄獣。凛さんを助けに行った篠森さんの邪魔をさせないためにそれを引き受けたけど。
急に三体出てくるもんだから、すぐに倒せない。
蜂のような個体、人のような形の個体。それから、うねうねとスライムのように変化していく個体。
蜂の針を避けて、覆おうとしてくるスライムの体を蹴り飛ばして。後ろから迫ってくる人型から距離を取る。
……やっぱり、やりにくい。でも、魔力の制御を考えて動くと、普段よりも体が軽い。マギア☆リンリンだったときの凛さんのお陰でこれでも、余分な力を抜いて動けてる気がする。
魔力を込めて人型を軽く殴って、スライム型に飛ばした魔力を飛ばして牽制していく。
……戦えてはいるんだけど。
「でも、やっぱり多いってば!」
さすがに、3対1は卑怯だよ。
……どうしよ、これだと凛さんたち戻ってきても危ないんじゃ。
「ルビーブロッサム、大丈夫?」
「雪那さん!」
よかった。これで、災厄獣たちを一気に倒せるはず。
「さっき連絡が来たわ。百日紅凛が見つかったって」
「えっ、本当ですか!?」
……じゃあ、早く倒さないと。
「雪那さん、手伝ってもらえます?」
「いいわ……と、言いたいところだけれど。その必要もないと思うわ」
「……それってどういう」
と聞き返そうとしたとき。
何かが向こうからこちらに来てるのが見えた。
――一瞬、光が通りすぎた。
三体の災厄獣がすべて、切り刻まれて消えていく。
本当に、一瞬の出来事で反応できなかった。……何、今の。
何、これ。あんなに苦戦したのに、そんなすぐに倒せちゃうの?
「少しだけ助けを呼んでいたの。魔法少女が関係するなら、それぐらいの助けを呼んでもいいかもしれないって」
銀色の光と共に、何かが歩いてきた。
白銀の魔法少女、剣を携えて優雅に歩いてくるそれが誰かが、なんとなくわかっていた。
「魔法少女ダイアモンドカメリア……」
今、最強の魔法少女。……正直助かった。早く、凛さんの方に行きたかったし。
かつかつ、と歩きながらダイアモンドカメリアがこちらに向かってきた。少しだけ威圧感があるというか。
「すまない、遅れただろうか?」
「い、いいえ……助かりました」
……意外と普通に挨拶してきたけど、もっと近寄りがたいタイプだと思ってたから意外だ。
孤高の最強、みたいなイメージだったけど。
まあいいや、それよりも。
「早く、凛さんのところに行かないと」
「そうね」
「む、凛?ああ、あの魔法少女疑惑の」
え、凛さんってそういう風に思われてるの?
ああでも、ディープバーストしてるのと魔力が似てるとか言ってたっけ。
なんて、考えてる場合でもないや。凛さんのところに行かないと。
「にしても、本当は魔法少女かもしれない変身ヒーロー、か。やはり、あの子はもしかして――」
何か考え込むようにダイアモンドカメリアさんが言ってたけど、それを追求してる暇もなくて。とりあえず、私たちは喫茶店に戻ることにした。
「よかった、あんたがいてくれて」
喫茶店に向かう途中だった。
物陰から急に音がして、そこを見ると何かが急に飛び出してきたから少し警戒してたんだけど。
そこから出てきたのは篠森さんで。さらに、何かを背負っているのが見えた。
青白い顔で、ボロボロの布切れを纏ってる、知ってる顔がそこにいた。
「……凛、さん」
ホッとしたように、篠森さんが息を吐いた。
「凛のやつをなんとか見つけて、一緒に逃げたんだけどさ、途中で急に倒れたから」
「そう、だったんですね……」
私も、助けたかったけど助かったのならいいかな。こんなに、ボロボロになってしまって。
「……これは、酷いわね」
「早く治療した方が……ん?」
ダイアモンドカメリアさんが、急に凛さんの体を擦る。すると、ぼとりと何かが落ちた。
「ビデオテープ?なんでこんなものを、凛さんが」
「凛のやつがたぶん、基地から取ってきたんだと思うけど」
……あの基地から取ったものなのかな?
だったら、何かありそうだけど。でも、今気にしてる場合じゃないのかな。
とにかく。
「早く凛さんを連れていきましょう」
「そうだね」
篠森さんが背負ってる凛さんを、一緒に運んでいく。
そのときに、篠森さんの横顔がふと、何かを考えているみたいで、急にぽつりと溢し始めた。
「……凛を捕まえたっぽい怪人がさ、いなかったんだよ。拠点まで行ったのに。……だから、それがちょっと気になってて」
凛さんを捕まえた、怪人。ぎゅっと、手を握りしめる。まだ、敵は残ってるんだ。今度は絶対に、凛さんを捕まえさせないけど。
◇◇◇
喫茶店の奥、詩織が普段いる空間に、凛が横たわっている。
そして、そこを見ている人間が複数。
魔法少女側から、沙彩と雪那……それからダイアモンドカメリアこと、真白。
アビスハンターズ側からは、詩織と晴……それからアキラ。
ボロボロになった凛の元に、みんなが集まっていた。
さらり、とアキラが凛の髪を撫でた。何も言わずに、そのまま見下ろしている。
「にしても、災厄獣と怪人が同時に複数出現か」
ぽつり、と真白が呟いた。
「そうだね。だから、もしかしたら関係があるのかもしれないし。凛の件はまた別にして、協力が必要かもしれないね」
「そうだな。もちろん、そこの倒れている子のことも気になるが……」
「にしても、ダイアモンドカメリアまで出てくるとはな」
「そうか?どうやら、その子には魔法少女の疑惑があると聞いているが」
アキラはその言葉を聞いて黙り込んだ。それがますます疑わしくて、真白の視線も鋭くなる。
それでも、アキラは特になにも答えない。
「……あの、ちょっとだけきになったことがあってですね」
不意に話し始めた沙彩の声に、全員がそちらを見る。
「その、凛さんを捕まえた怪人がいると思うんですけど。拠点とかにはいなかったらしくて、放置しておくのはいけないと思うんです。だから、そのビデオテープは何かのヒントになったりしないかな、と」
沙彩が指差したのは、真白の持っているビデオテープ。たまたま、凛が落としたのを拾ったもの。
「これが、か。確かに、それはそうかもしれないが」
「……凛さんとは、友達になったばかりなんです。だから、今度は守りたい。そのヒントになるなら、見たいと思って。だめ、ですかね?」
その言葉に反対する人はいなかった。
基地の中には、映像を再生する機器がある。そこに、ビデオテープが入っていく。
怪人を作っている組織の正体は、あまり知られていない。ただ、アビスハンターズがその不透明な存在と敵対してる、というだけ。
もしかしたら、これでなにかわかるのかもしれない。そんな期待にも包まれながら、映像が再生された。
まず、そこに映っているのは――一人の女の子だった。
『何、ここ……』
くくりつけられて、動けないまま呆然としている。
『動けないし、なんか体が重いんだけど』
ぶっきらぼうに吐き捨てる。
「この声……」
ぽつり、と沙彩が呟く。
聞き覚えのある声だった。
よく見ると、姿も誰かに似てる。
『この素体は素晴らしい、ディープバースト済みじゃないか』
『何、あんた……いたっ』
『これなら、異能をいくつか植え付けても問題ないか』
『何言ってんの?』
「……凛?」
話し方や態度は丸々違うのに、その姿と声は凛そのもので。
その場に全員がそこで固まっていた。
『な、なにそれ。ちかづけんなって……がぁっ』
呻く声がする。
『な、に……それ。あっ、あああっ』
『やはり、素晴らしい。あれだけのコストをかけた意味があった』
『あ、う、があっ』
『ははは、もう何言ってるかよくわかりませんね』
機械でいじくられて、寝かされてる女の子が苦しそうに悲鳴を上げている。
『や、めて……』
『いいえ?まだまだこれからですよ』
『な、んで……ひぐぅっ』
もし、これが凛だとしたら。その考えが、晴や沙彩の脳内に過る。
『たすけ、て……』
『いたい』
『……もう、いや』
徐々に力なく、言葉を漏らすその少女の映像に、誰もがなにも言えずにいた。
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