TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
暗闇の中を浮かんでいる。ここはどこだろう。
俺はなにをしてるんだっけ。
ああ、そっか。少年に助けられて気絶したんだった。
痛め付けられたショックのせいか、体の内側から何かが溢れ出してきていて。カントホルツが何かしたから、マシになったんだよね。
それでも、しんどくて倒れちゃった。やっちゃったね。
アキラにも迷惑かけたし、また詩織さんにも調整してもらわないといけない。
沙彩ちゃんとかも、話の途中で出ていっちゃったし。衝撃の話をした後だったのにね。
……なんて、おどけてみたけど。もうだいたいわかってる。
俺――いや、
かつて、何かに捕まっていた時の記憶。
少しずつ、蓋をされていた記憶が浮かび上がってくる。
『素晴らしい素体だ!』
『何、ここ』
確か……拘束されて注射のようなもので、何かをひたすら注入されていた。
『ぐるしい……もう、やめて』
体の奥が熱くなって暴れ狂いそうになる。忘れそうになった呼吸を思い出して、思いっきり息を吸った。
『あつい、痛い……痛い痛い!』
それでも、止まらなくて。ずっと何かが体の中に入り込んでくる。一度、止まったと思えば……また新しく別の何かがお腹辺りに刺されて注入されていく。
『あ、があああっ』
つんざくような叫び声が出てる。
……うるさいな、と思ってからこれが自分の口から出てることに気付いた。
体の中を何かがぐるぐる回っていて。耐えきれなくなって、何かがはち切れた。
がらがら、と何かが崩れる音がしてるときに……拘束が外れてることに気付いて、必死にどこかに逃げた。
そしてそのまま……アキラに見つかって拾われた。ここら辺は曖昧だけど。
そういった沸き上がった記憶がいくつかある。今の百日紅凛は恐らく虚像で、本当の私はどこかにいる。
何か、私には改造するためにちょうどいいような要素があって。それを狙ってあの怪人が俺を捕まえたんだ。
それでなんか改造されたけど脱出して、アキラに拾われて。
そこで記憶をなぜか失って、アビスハンターズのヒーローになっていたってことになる。
はいはい、本当に特撮の変身ヒーローみたい。
たぶん、記憶を失っているのは何かの処置な気がする。
だって、この内容はなんとなく思い出してはいけないような気がしているから。
おぼろげながら思い出してるが、何かダメなような気がしている。
それに、この異能を複数持つような体。たぶんこれも、改造されてこうなったんだろうね。少年が言ってたっけ、普通は複数の異能とか持てないって。
だから、たぶん植え付けられたんだ。それがたぶん、よくない状態で。アビスハンターズに匿われてからは、封印みたいなことされたんだろうね。
普通の人間の体に、複数の異能は耐えられないから。
ようやく、一つ疑問が解けた。デッドボルトの姿は、四肢や胸元に錠前がつけられていて、鎖が巻き付いている。拘束具みたいに。
これは、封印してるんだ。この暴走しそうな体を。だからこの前、倒れてしまって詩織さんに調整されないといけなかったんだ。
記憶と力を封印されて、そのまま魔法少女ごっこに興じてたのがこの私ってことになる。……意味不明だけど。
元の私のことはよくわからない。私って言ってるのは、なんとなくしっくり来るから。
あーあ、めちゃくちゃだ。よくわかんない。
にしても……一つだけ気がかりなことがある。
私を倒したやつのこと。
……なんか違和感あるな。心で私と呼んでいた記憶と、俺呼んでる記憶が混ざってるみたいだ。
どうなってんだろね、これ。
……やっぱり、一人称戻そ。俺を倒したやつ。あの銃撃してきて、そのまま痛め付けてきたやつは、俺を改造したものと同じ怪人だ。
なぜか、拷問紛いなことだけしてその後は遭遇もしなかった。一体何?
なんか目的があるのかな。
……っていうか、そろそろ起きるか。
気だるげな体を起こす。
うっすらと目を開けると……基地の中にいるな。
なんか、周囲にいっぱい人がいる。アキラとか少年と、沙彩ちゃんとか雪那とか。
……何も気付いてない振りでやるか。なんか、過去に改造されてました!とか言いにくいし。
ここら辺の事情って、アキラとかは知ってんのかな。後で聞いてみよ。
「おはよ、みんな。いやー、ごめんね。寝ちゃってて……」
ガバッと体を起こして、みんなに声をかけると――全員の視線が一気にこっちを向いた。
あまり見覚えがない人がいる。……ああ、ダイアモンドカメリアの。真白だっけ。
「……凛」
少年の眉が下がる。心配そうに、こっちを見てる。なんなんだよ。
「……やはり、そうなのか?」
かと思えば、ゆっくりと真白がこっちに近づいてきた。俺の体をじろじろと見て、そのまま手首を掴む。
「君は、沙夜なのか?」
「沙、夜……」
なんだろう、その名前には酷く聞き覚えがあった。
何かを忘れている。
ふと、視線を上げた。そこには何かが映ってる。ビデオ、か。
その映像には、女の子が拘束されていて。お腹に注射のような何かを刺されている。
酷い声を上げながら苦しそうに身をよじっている。
……これは、記憶の中の私と同じ。
――ああ、そっか。あそこで拾ったビデオテープだ。それが、こうやって映し出されてるんだ。何、敵の情報でも知ろうとしたのか?
なんて、ぼんやりと考えているうちに頭がずきり、と痛んだ。
何かが、思い出せそうで。きっと、思い出してはいけないんだろうと確信はあるけど。
それでも、内側から這い出てしまう。
ああ、すべて思い出した――
◇◇◇
凛が急に起き上がった。大丈夫だったんだ……という安心と、ビデオの映像が頭の中でごちゃごちゃになって、うまく何も言えない。
だから、うまく声をかけることができなかった。
先に、真白って人が凛に変なことを言い出した。
「君は、沙夜なのか?」
「沙、夜……」
……なぜか、凛の様子もおかしい。沙夜って誰なんだ。それが凛となんか関係があるのか?
そう思っていると、凛が顔を上げた。
その視線は、俺たちの見ていたビデオに向いている。
その瞬間に、目を見開いて。
口角が僅かに上がって、薄気味悪く笑った。
「そっちの名前で呼ぶなよ、ダイアモンドカメリア。マナー違反だろ」
その言い方はぶっきらぼうで、いつもの凛っぽくはない。
『まずい、凛。封印が剥がれている』
「うるさいな、封印アイテム。ここまできたらもう終わりだろ」
『凛?』
「強制解錠」
『それ、は……まず、い……』
電子音が途切れていく。
凛が、胸元をとん……と軽く叩いた。
すると、するする……とネックレスがどこからは出現した。ネックレスの先には、黒い鉱石のような何かがつけられている。
「凛」
「アキラ、約束を果たしてもらう」
「……それは」
――ぴぃぃぃん、とネックレスの黒い何かを弾いた。
「マジカルジュエリーアップ」
それと同時に、視界が急に真っ黒に染められていく。
思わず目を閉じてから、もう一度開くと――外に出ていた。
どこだ、ここは。基地の付近じゃない。
かつかつ、と足音が響いていく。
凛の体が、半透明のような何かに包まれていた。
そのままつかつかと凛が歩いていくと、足元がブーツに変わっていく。
手元は黒いレースの手袋に変わり、全身は黒いドレスのようなものに包まれた。全身に、茨の模様が入っていく。
黒い髪が伸びて、手元の手袋に薔薇のような印が刻まれた。
……これは、どう見ても。
「魔法少女……」
「そうだぞ、少年」
俺の言葉に、凛が満足げに頷いた。
「沙夜、これは一体」
「だからそれで呼ぶなよ。ああ、そうだ。改めて自己紹介してやる」
凛が手を軽く振ると、黒い薔薇の花びらが宙に舞った。
「――魔法少女オブシディアンローズ」
そして、聞いたことのない名前を名乗っていく。
ぴりぴり、と全身に圧を感じる。
「お前たちにはこう言った方がわかりやすいか?私が漆黒だよ」
アキラも、沙彩も、俺も。誰もその言葉に反応できなくて。
悲しげに笑う凛の顔が、目に焼き付けられた。
残業と体調の問題で遅れていて、文字数も今までよりも少なめですが、今後こうなりそうなのでご容赦ください
終盤みたいなものです
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