TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
頭がぐらぐらとする。すべてを思い出してしまった。
百日紅凛、というのは私の作り出した虚像で、本当はこんな明るいやつじゃない。だって、本当の私はじめじめしてるから。
今までの自分とは違う自分であった方が都合がいいと思ったから、どうせなら……と明るいキャラを自分に被せていた。
そういう風に生きていけたなら、私はもう少しましだったかもしれなかったから。
私――
……ついでに、転生前は男であることもあるけど、これはいいか。
だから、小さい頃はヒーローものだとかそういうものに、ちょっとだけ惹かれてたんだなって納得もしたけどね。
……友達はろくにいなかったから、そこら辺の話をすることもなかったけど。見た目は悪くない気がするけど、鏡を見るたびにどことなく負のオーラが見えてんのかもしれない。
気付いたら女の子になってたからなのか、転生したからなのか。同年代の子供たちとうまく馴染めなくて。仲良くなっても、ちょっとしたことで崩壊してしまう。
人間って難しい。
そうなると、逆に今の自分は女の子だって意識が強くなって……じゃあ、逆に魔法少女とかになれるのかな、なんてことを考えるようになってしまった。
結局、その通りに魔法少女になってしまうんだけど。
「クルクル!やっぱり、魔法少女の素質があるクルね!」
黒くてもふもふしたものが、プカプカと浮かんでいる。
それをつつくと、やっぱりもふもふしてるから、触り心地がいい。
これが私の契約精霊、クルル。災厄獣に襲われていた時に、急に出てきたマスコットみたいなもの。
本当にこんな展開があるんだなと思いながらも、契約したことを覚えている。
「なんで触るクルか!?」
「ダメ?」
「……沙夜が楽しそうだからいいクル」
本当に触り心地はいい。こうしてると落ち着く。
「クルクル!沙夜、これからよろしくクルね!」
「声でかい」
「冷たいクル!?」
「ごめんね、つい」
とまあ、そんな風に急に魔法少女になってしまったけど。内心はちょっとだけ楽しかった。
ずっとぼっちだったからこそ、クルルとの生活も楽しかったから。
自分が、そんな特別な存在になれるとは思わなかったし。
……でも。結局そのまま、うまくはいかなかった。
どうやら、私は強いらしい。クルルがそう言ってたから。
「沙夜は、魔力の操作がうまいクルね!」
一度、そう言われたことがある。普通、魔法少女は変身したばかりだと、元の体とは違うせいかそのスペックを使いこなすことができないんだとか。
でも、私はそれをうまく使うことができていた。
たぶんだけど、これは転生者だから。今でさえ、この体が本当かわからなくなるときがあるんだから、魔法少女の体も自分の体じゃないような意識がある。
だからこそ、他の人が普通感じるギャップがなくて。そのせいでうまく、力の制御ができている。
「沙夜、普通はそんなすぐに魔力使えないクル」
「へー、そうなん?」
「これだけ使えるなんて、魔法少女の才能があるクル!」
なんて褒められたっけ。
まあ、それはいいんだけど。強すぎたせいか、他の人の援護とかもいらないし、一人で全部倒すことができていた。
なんなら、倒したあとに誰かがやってきてたみたいで。去り際だけ見られていたりとか、そういうこともある。
怪人だろうが、災厄獣だろうが全部一人でなんとかした。この地域はどうやら、そいつらがよく出てくるみたいだったけど、全部叩きのめせた。
そんなことをしてるせいか、黒い魔法少女が勝手に敵を倒してて正体もわからない!となってしまったらしい。
そういや、魔法少女協会とやらにも届けを出してなかったっけな。
それに、私は人見知りだったから。他の魔法少女とも、ちょっと会いにくくて。
そんなことをしてるうちに、漆黒と呼ばれるようになっていた。
「通称が付くなんて、すごいクル!」
「魔法少女ってありそうなもんだけど」
「銀閃以外はあんまいないクル」
「へえ……」
意外とそんなもんなんだなー、ぐらいにしか思わなかったけど。
見知らぬ最強の魔法少女。別に、ちょっと強くて人見知りなだけなのに。……まあ、他の魔法少女にはあんまり負ける気はしなかったけど。
そうして、孤独な魔法少女――オブシディアンローズが生まれたってこと。
そんな私にも、三回だけ魔法少女として人と話したことがある。
一人は、怪人に襲われていた女の子。
「こんなところで女の子襲ってるなんて変態かよ」
そう吐き捨てて、助けにいった気がする。
「あんまり夜に出歩くなよ」
とだけ声をかけて、そのまま帰った。……本当はさっさと倒して気付かれずに帰ってもよかったけど、ちょっとだけ見られてる状態で助けたかったから。
一人は、敵が多くて困っていた魔法少女。
災厄獣に囲まれていたときに、背後から襲われそうだったから、それを吹っ飛ばして。
「あなたは誰?」
とだけ聞かれたから。
「こいつらの死神、漆黒さんだよ」
とだけ返して、さっさと消えた。もう大丈夫そうだったし。……かっこつけすぎたかもだけど。
あの青い魔法少女は、今でも活動してるんだろうか。
もう一人は……たまたま私を助けにきていた魔法少女。
いきなり五体やってきた災厄獣に、ちょっとだけ困ってると――銀色の光が通りすぎて、すべて切り刻んでいった。
聞いたことがある、私以外に強いと有名な魔法少女。
確か、銀閃――ダイアモンドカメリア。クルルも言ってたっけ。
「……君は、魔法少女か?」
「そうだけど。あんたも?」
「ああ、そうだ。私は銀城真白。君は?」
「……黒金沙夜」
なんとなく、私を助けてくれたそのときがかっこよく見えて。ついつい本名を名乗ってしまった。
それに、なんか綺麗な女の子だったし。
「そうか、君がもしかして漆黒か?」
「そういうあんたは、銀閃でしょ」
なんて言い合ったりもしたっけ。そのまま、他愛ない話だけして。友達になろうと言われて、次会ったらね、とだけ返した。
――その二日後、それがなくなるとも知らずに。
◇◇◇
その日は、やけに胸がざわついた。
魔法少女は、災厄獣を感知できる。そのせいなのか、全身に伝う嫌な感じが止まらない。
そのまま、外に出ていくと……空が真っ黒に染まっていく。
大きく歪んで、そこから降り注いでくるのは災厄獣だった。
「沙夜、これはやばいクル!?」
「でも、やるしかないでしょ」
だって、ここら辺には私しか魔法少女がいないから。
だから、覚悟を決めてそこに飛び込んだけど――
「沙夜、怪人もいるクル!?」
「ああ、もう!」
ずしずし、とやたらと大きな足音と一緒に、機械で作られたみたいな怪人たちが大量にやってきた。
そらから降ってくる化物、地上を歩く怪人たち。それを一人で倒さないと。
手のひらに生成した魔力の弾で、遠くの怪人を破壊して。
獣みたいな災厄獣を、蹴り倒して。
街を荒そうとするそれを、全部なぎ倒していった。
これぐらいなら問題ない、だって私は最強の魔法少女らしいから。
……でも。
「沙、夜……」
「クルル!?」
私が戦えば戦うだけ、クルルに負荷が溜まる。それを、失念していた。
ディープバースト、魔法少女の暴走状態。
契約精霊が負荷に耐えきれなくて、そのうち契約している魔法少女も力が暴れそうになって、暴走してしまう。そんな呪いのようなもの。
やってくる敵たち、戦いをやめられない私。苦しんでいくクルル。
そうして、私は。
「ねえ、クルル。逃げなよ」
「で、でも沙夜を置いていけないクル!」
「いいから。このままだとディープバーストしちゃうからさ」
「嫌クル!最後まで一緒クル!」
「なに、それ。もう、犠牲になるのは私だけでよかったのに」
すべての敵を倒した後に、体が破裂しそうな嫌な感覚と一緒に。
「楽しかった、クル……」
目の前で消えていく、クルルを見て。それでも、なにもできなくて。
「素晴らしい!あのディープバースト済みの魔法少女を手に入れることができるなんて!怪人と、災厄獣発生というとんでもないコストを使う価値があった!」
意識を失う寸前に聞こえてくる、電子音のような声を聞いて。
そこからは、あいつらの組織に使って改造されてしまったという、それだけの単純な話だ。
もしかしたら、私が一人で戦う魔法少女じゃなかったら。仲間と一緒に戦って、こんな風に一人で消えていくこともなかったかもしれないのにね、なんて。
少なくとも、今の私の体には無数の異能が埋め込まれていて。さらに、ディープバーストの暴走しそうな状態になっている。
そのうち、私の体がこれにたえられなくて。破裂して消えていくだけの存在だ。
……未来がないんだから、さっさと死にたいだなんて思うのは、悪いことなのかな。
どうせなら、今の状態で死なせてほしいから。
それをお願いすることにした。
前回強制解錠のルビを振り忘れてた……
強制伏線回収状態だけど、ちょっと時間たちすぎたかも
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