TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!   作:魔法少女マジデ☆ドコダ

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18.痛めつけられたことは、やり返したい

 あーあ、魔法少女ルビーブロッサムさんは私を救ってくれないらしい。

 

 つまんね、私はさっさと消えたいのに。

 

「そうね、私もあなたを助けたいわ」

 

 雪那が一歩踏み出して、腕輪に触れた。

 

 光に包まれて、魔法少女――サファイアネモフィラへと変身する。

 

「お前ら、人の話を聞かないな」

 

 そう吐き捨てると、視線を逸らす。

 

 次に向けるのは――ヒーロー側にする。あっちの方が、たぶんシビアな世界で生きてるだろうからな。

 

 ――それに、アキラとは約束したから。

 

◇◇◇

 

 あの日、私が怪人の組織に捕まって。体の中にずっと異能を入れられ続けて。

 

 体がぐちゃぐちゃに張り裂けそうだった。

 

 私はずっと一人ぼっちで、それでもそこに魔法少女としての生活が生まれて。クルルとも一緒にいたはずなのに。

 

 クルルはディープバーストの影響で消えてしまって。

 

 本当にもう、一人ぼっちになってしまった。

 

 そうやって、うねるような熱が体の中で暴れているときに。

 

「エネルギーが急上昇してるぞ」

 

 焦るような声が聞こえてきて。

 

「怪人アンロッククラッカーの誕生も近い」

 

 それでも、高笑いする嫌な声に変わって。体から溢れ出してるエネルキーが周囲に拡散して、一瞬の暗転と共に瓦礫の山にいて、必死にその場から逃げ出した。

 

 もう、痛いのは嫌だから。……でも、体がおかしいのは変わらなくて、あいつらにいじられて、もう限界まで来てることを察してしまった。

 

 ああ、私ってこんな風に死んでしまうんだ。二度目の人生なのにさ、なんて自虐的に笑ってたっけ。

 

 でも、消えるにしても。少しだけ休みたい。もう疲れてしまった。

 

 このまま、帰るまでに寝てしまいそうで、夜の町をそのまま歩いている途中で夜の影に溶け込むみたいに、電柱の側に座り込んだ。

 

 もう、誰にも気付かれないかもしれないけど。このままここで寝てもいいかな、なんて時に。

 

 不意に、人が通った。少し、無愛想に見える男の人。

 

 疲れたから、最後に一眠りはしたくて。でも、この体はきっともう限界だから、最後の時なんだろうなと思って。

 

 じゃあ、まあ。そういう誘い方すればとりあえず、食いつくだろと思ったから。

 

「ねえ、私の体好きにしていいから泊まらせてくんない?」

 

 と、軽く笑ってそう言うと、優しく手を掴まれて。

 

 それだけで、ああこの人は悪いやつじゃないんだろう、ということがわかってしまった。

 

 だからきっと、悪いこともされないだろうけど。私はただ、一休みしたかっただけで。その後にはきっともう未来がないから。

 

 無言のまま、そのまま連れられて。気付けば、知らない地下室まで来ていた。

 

 そう、あのアビスハンターズの基地に。そこで、あいつ――アキラが変身ヒーロー側の人間だと知って、じゃあちょっとぐらいぶちまけてもいいかな、と事情を話した。

 

「この体も、もう持たないだろうけどね」

 

 と、最後にそう溢すと。アキラのやつが顔を上げた。

 

「俺たちは、いつもあいつらと戦ってる。そのときに、こういう胸糞悪いことはたまに起きる」

 

 そっか、変身ヒーローは怪人と戦ってるし。そりゃあ、あいつらのことはよく知ってるわけだ。

 

「だから、異能を埋め込まれて改造された人間は何人かいる。俺たちは、そいつらのことを絶対に見捨てない」

「それって……」

「お前のこともだ」

 

 どくん、と鼓動が跳ねた。生きたい、と叫んでいるみたいに。

 

「……なにそれ、私を救ってくれるってか?」

「そう言っている。お前に埋め込まれた異能はとてつもなく多い。これだけの前例は見たことはないが……それはなんとかする」

 

 ……こいつ、本気で私を助けようとしてくる。なにそれ、まるで期待してしまいそうになる。

 

 別にもう疲れて、これ以上何もしたくないのに。

 

「ディープバーストも、異能もすべて不活性化させる」

「そんなんできるの?」

「危ない異能を制御することもあるからな。だが、お前の体と深く結び付いている力だ。何かしら、影響はあるだろう」

「ふーん、そっか」

 

 別に、なんでもよかったけど。どうせ、クルルももういないし。

 

 ディープバーストしたときに契約精霊がどうなるのかなんてわからない。完全に消えてしまったのかもしれない。

 

 でも、もう少しだけ話がしたい。

 

 生きていたら、そのチャンスがあるのかな。

 

 ああでも、この体はとてつもないリスクがある。こんなものを、生かしてしまってもいいのかな。

 

「それって、絶対にうまくいくの?」

「それはわからない。それに、完全に封じられることもないだろうな」

「じゃあさ、また暴走しそうになったら――私を殺してくれよ」

 

 まあでも、こいつはいいやつだし。事情を知ってそうだから。介錯ぐらい頼んでもよくないかな。そう思って、そんなことを口走ってしまった。

 

「わかった、俺がお前を止めてやる」

「約束だぞ」

 

 それが、あの日に交わした約束。

 

 それから、私は異能を封じられて。ディープバーストの症状も含めてすべて封印されて。

 

 その結果、私はこの記憶も一緒にすべて封じることになった。

 

 それは、完全に封じられる前になんとなくわかっていたから。

 

 漆黒と呼ばれた魔法少女オブジディアンローズ――黒金沙夜は、人とうまく話せなくてこっそり活動してる暗いやつだった。

 

 本当は、キラキラした魔法少女になりたかったのに。

 

 だから、すべて忘れてしまったら。

 

 底抜けに明るくて、キラキラした魔法少女になろう。

 

 そうして、百日紅凛が生まれた。

 

◇◇◇

 

 約束したから、アキラならきっと私を消してくれるはず。

 

 確かに、凛として過ごした日々は楽しかったけど、余生みたいなもんだし。もう十分楽しんだ。

 

 それに、今の私は怪人もどきの時限爆誕だから。

 

「なあ、アキラ」

「そうだな、お前とは約束した」

 

 そっと、懐にアキラが手を突っ込んだときに。

 

「待ってよ、凛」

 

 間に――少年が割り込んできた。

 

「……もう、凛じゃない」

「うるさいな。男装だとか魔法少女ごっこだとか。散々わけわかんないことをしてて、そのまま敵に捕まってたから助けたら、今度は殺してくれって何?」

「だから言っただろ。この体はもう」

「嫌だね、凛のことを殺させてなんてやらない」

 

 どいつもこいつも、人の話を聞かない。

 

 そこに解除できる爆弾があるなら、解除するべきなのに。

 

「それに、お前を痛めつけた怪人を倒してすらないのに、そんなことなんてできるわけないだろ」

「ああ、確かに」

 

 言われてみればそうだ。あいつに、一矢報いるどころか、倒してしまってもいいな。

 

 なぜ、それを最初に考えなかったんだろう。

 

 ああでもきっと、怖かったんだ。やっぱり、散々拷問紛いなことをしてきたやつのことは、あんまり顔を見たくなかったのかもしれない。

 

 でも、やられっぱなしは癪だし。

 

「だったら、倒しとくか」

 

 スッと手を動かした。体に巡る魔力が手の先に集まる。

 

 ぐるぐる、とそれが回って放たれた。

 

 すると、空中で弾けて――その空間にひびが入る。

 

 そこから姿を見せたのは、全身が機械で作られているような人型の存在。

 

「全く、引きずり込まれてしまうとは。どうにも、君は規格外のようだ」

 

 電子音みたいな声が響く。

 

「怪人!?」

「こんなところに潜んでたの?」

「……普通の怪人とは違うな、組織の一員か」

 

 みんなが注目してるけど、こっちが先に憂さ晴らしがしたいんだよ、ごめんね。

 

「久しぶり、クソ野郎」

「口が悪いな」

 

 みんなを移動させたこの場所は、かつて私の暴走で崩れた空間と同じだ。

 

 あいつは、私を痛め付けるだけで、少年が助けに来ても邪魔すらしなかった。

 

 その理由もなんとなくわかる。この体は爆弾と同じだ。あの日、あいつらの基地を瓦礫の山にしたときにみたいに、いずれ体が耐えられなくなって周囲を破壊してしまう。

 

 だから、わざと私を助けさせて、アビスハンターズの基地を爆破しようとしでもしたってことだ。

 

 この暴走してる体を簡単に封印なんてできないんだから。

 

 だからきっと、そんな私を見るために追ってきてると思ってた。こっそりとね。

 

 みんなが構える。

 

 少年も懐に手を忍ばせて、懐中時計を取り出した。

 

 魔法少女も変身ヒーローもたくさんいる。まあ、私がなんとかしなくてもこいつは終わりか。

 

「ははは、私はどうやらゲームオーバーのようだ!組織でも、この近くにいるのは私だけ!これ以上増援もない。だが――」

 

 全員が、あいつをなんとかしようと足を進めようとしたときに。

 

 銃口がこっちに向いた。いつの間にか握っていた銃が、私を狙っている。

 

「散々刺激を与えた君に、ここでさらに衝撃を受けさせたら――それこそ、暴走するんじゃないか?」

 

 誰かが動くよりも早く、銃弾が放たれた。

 

 別にこれをくらっても死にはしないし。痛いだけなんだけど。確かに、暴走はするかもしれない。

 

「凛さん!?」

「凛!」

 

 焦った沙彩と少年の声が聞こえる。

 

 ――かちゃり、と音がした。

 

 私の目の前で、銃弾が止まる。

 

「自動施錠(オートロック)」

 

 そしてそのまま、銃弾が地面に落ちる。

 

「ディストラクションローズウィップ」

 

 しゅるり、と黒い鞭のようなものがしなって。

 

「ああ、やはり――君は最高の怪人候補だ。もうこの目で見られないのが惜しい」

 

 その機械の体を叩き壊した。

 

 ばらばら、と部品が地面にぶちまけられる。本当に機械でできてたのか。そんなことを思いながら、一瞬でそいつの場所へと移動して。その部品を踏みつけた。

 

「さて、復讐も終わったしさ。話の続きだ」

 

 しゅるり、と私の周囲に茨の鞭が生えていく。

 

「そろそろ私を殺してくれよ」

 

 不敵に笑うと、少年が息を飲んでこちらを見つめているのが見えた。




今更だけど、魔法少女はみんな名前に魔法少女カラーと同じ色が入っています

緋色沙彩→ルビーだから赤の緋色
蒼崎雪奈→サファイアだから蒼
橙野ひまり→トパーズってなんか黄色い気がするから橙
銀城真白→ダイアモンドって銀っぽいから銀
黒金沙夜→黒曜石だから黒

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