TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
あーあ、魔法少女ルビーブロッサムさんは私を救ってくれないらしい。
つまんね、私はさっさと消えたいのに。
「そうね、私もあなたを助けたいわ」
雪那が一歩踏み出して、腕輪に触れた。
光に包まれて、魔法少女――サファイアネモフィラへと変身する。
「お前ら、人の話を聞かないな」
そう吐き捨てると、視線を逸らす。
次に向けるのは――ヒーロー側にする。あっちの方が、たぶんシビアな世界で生きてるだろうからな。
――それに、アキラとは約束したから。
◇◇◇
あの日、私が怪人の組織に捕まって。体の中にずっと異能を入れられ続けて。
体がぐちゃぐちゃに張り裂けそうだった。
私はずっと一人ぼっちで、それでもそこに魔法少女としての生活が生まれて。クルルとも一緒にいたはずなのに。
クルルはディープバーストの影響で消えてしまって。
本当にもう、一人ぼっちになってしまった。
そうやって、うねるような熱が体の中で暴れているときに。
「エネルギーが急上昇してるぞ」
焦るような声が聞こえてきて。
「怪人アンロッククラッカーの誕生も近い」
それでも、高笑いする嫌な声に変わって。体から溢れ出してるエネルキーが周囲に拡散して、一瞬の暗転と共に瓦礫の山にいて、必死にその場から逃げ出した。
もう、痛いのは嫌だから。……でも、体がおかしいのは変わらなくて、あいつらにいじられて、もう限界まで来てることを察してしまった。
ああ、私ってこんな風に死んでしまうんだ。二度目の人生なのにさ、なんて自虐的に笑ってたっけ。
でも、消えるにしても。少しだけ休みたい。もう疲れてしまった。
このまま、帰るまでに寝てしまいそうで、夜の町をそのまま歩いている途中で夜の影に溶け込むみたいに、電柱の側に座り込んだ。
もう、誰にも気付かれないかもしれないけど。このままここで寝てもいいかな、なんて時に。
不意に、人が通った。少し、無愛想に見える男の人。
疲れたから、最後に一眠りはしたくて。でも、この体はきっともう限界だから、最後の時なんだろうなと思って。
じゃあ、まあ。そういう誘い方すればとりあえず、食いつくだろと思ったから。
「ねえ、私の体好きにしていいから泊まらせてくんない?」
と、軽く笑ってそう言うと、優しく手を掴まれて。
それだけで、ああこの人は悪いやつじゃないんだろう、ということがわかってしまった。
だからきっと、悪いこともされないだろうけど。私はただ、一休みしたかっただけで。その後にはきっともう未来がないから。
無言のまま、そのまま連れられて。気付けば、知らない地下室まで来ていた。
そう、あのアビスハンターズの基地に。そこで、あいつ――アキラが変身ヒーロー側の人間だと知って、じゃあちょっとぐらいぶちまけてもいいかな、と事情を話した。
「この体も、もう持たないだろうけどね」
と、最後にそう溢すと。アキラのやつが顔を上げた。
「俺たちは、いつもあいつらと戦ってる。そのときに、こういう胸糞悪いことはたまに起きる」
そっか、変身ヒーローは怪人と戦ってるし。そりゃあ、あいつらのことはよく知ってるわけだ。
「だから、異能を埋め込まれて改造された人間は何人かいる。俺たちは、そいつらのことを絶対に見捨てない」
「それって……」
「お前のこともだ」
どくん、と鼓動が跳ねた。生きたい、と叫んでいるみたいに。
「……なにそれ、私を救ってくれるってか?」
「そう言っている。お前に埋め込まれた異能はとてつもなく多い。これだけの前例は見たことはないが……それはなんとかする」
……こいつ、本気で私を助けようとしてくる。なにそれ、まるで期待してしまいそうになる。
別にもう疲れて、これ以上何もしたくないのに。
「ディープバーストも、異能もすべて不活性化させる」
「そんなんできるの?」
「危ない異能を制御することもあるからな。だが、お前の体と深く結び付いている力だ。何かしら、影響はあるだろう」
「ふーん、そっか」
別に、なんでもよかったけど。どうせ、クルルももういないし。
ディープバーストしたときに契約精霊がどうなるのかなんてわからない。完全に消えてしまったのかもしれない。
でも、もう少しだけ話がしたい。
生きていたら、そのチャンスがあるのかな。
ああでも、この体はとてつもないリスクがある。こんなものを、生かしてしまってもいいのかな。
「それって、絶対にうまくいくの?」
「それはわからない。それに、完全に封じられることもないだろうな」
「じゃあさ、また暴走しそうになったら――私を殺してくれよ」
まあでも、こいつはいいやつだし。事情を知ってそうだから。介錯ぐらい頼んでもよくないかな。そう思って、そんなことを口走ってしまった。
「わかった、俺がお前を止めてやる」
「約束だぞ」
それが、あの日に交わした約束。
それから、私は異能を封じられて。ディープバーストの症状も含めてすべて封印されて。
その結果、私はこの記憶も一緒にすべて封じることになった。
それは、完全に封じられる前になんとなくわかっていたから。
漆黒と呼ばれた魔法少女オブジディアンローズ――黒金沙夜は、人とうまく話せなくてこっそり活動してる暗いやつだった。
本当は、キラキラした魔法少女になりたかったのに。
だから、すべて忘れてしまったら。
底抜けに明るくて、キラキラした魔法少女になろう。
そうして、百日紅凛が生まれた。
◇◇◇
約束したから、アキラならきっと私を消してくれるはず。
確かに、凛として過ごした日々は楽しかったけど、余生みたいなもんだし。もう十分楽しんだ。
それに、今の私は怪人もどきの時限爆誕だから。
「なあ、アキラ」
「そうだな、お前とは約束した」
そっと、懐にアキラが手を突っ込んだときに。
「待ってよ、凛」
間に――少年が割り込んできた。
「……もう、凛じゃない」
「うるさいな。男装だとか魔法少女ごっこだとか。散々わけわかんないことをしてて、そのまま敵に捕まってたから助けたら、今度は殺してくれって何?」
「だから言っただろ。この体はもう」
「嫌だね、凛のことを殺させてなんてやらない」
どいつもこいつも、人の話を聞かない。
そこに解除できる爆弾があるなら、解除するべきなのに。
「それに、お前を痛めつけた怪人を倒してすらないのに、そんなことなんてできるわけないだろ」
「ああ、確かに」
言われてみればそうだ。あいつに、一矢報いるどころか、倒してしまってもいいな。
なぜ、それを最初に考えなかったんだろう。
ああでもきっと、怖かったんだ。やっぱり、散々拷問紛いなことをしてきたやつのことは、あんまり顔を見たくなかったのかもしれない。
でも、やられっぱなしは癪だし。
「だったら、倒しとくか」
スッと手を動かした。体に巡る魔力が手の先に集まる。
ぐるぐる、とそれが回って放たれた。
すると、空中で弾けて――その空間にひびが入る。
そこから姿を見せたのは、全身が機械で作られているような人型の存在。
「全く、引きずり込まれてしまうとは。どうにも、君は規格外のようだ」
電子音みたいな声が響く。
「怪人!?」
「こんなところに潜んでたの?」
「……普通の怪人とは違うな、組織の一員か」
みんなが注目してるけど、こっちが先に憂さ晴らしがしたいんだよ、ごめんね。
「久しぶり、クソ野郎」
「口が悪いな」
みんなを移動させたこの場所は、かつて私の暴走で崩れた空間と同じだ。
あいつは、私を痛め付けるだけで、少年が助けに来ても邪魔すらしなかった。
その理由もなんとなくわかる。この体は爆弾と同じだ。あの日、あいつらの基地を瓦礫の山にしたときにみたいに、いずれ体が耐えられなくなって周囲を破壊してしまう。
だから、わざと私を助けさせて、アビスハンターズの基地を爆破しようとしでもしたってことだ。
この暴走してる体を簡単に封印なんてできないんだから。
だからきっと、そんな私を見るために追ってきてると思ってた。こっそりとね。
みんなが構える。
少年も懐に手を忍ばせて、懐中時計を取り出した。
魔法少女も変身ヒーローもたくさんいる。まあ、私がなんとかしなくてもこいつは終わりか。
「ははは、私はどうやらゲームオーバーのようだ!組織でも、この近くにいるのは私だけ!これ以上増援もない。だが――」
全員が、あいつをなんとかしようと足を進めようとしたときに。
銃口がこっちに向いた。いつの間にか握っていた銃が、私を狙っている。
「散々刺激を与えた君に、ここでさらに衝撃を受けさせたら――それこそ、暴走するんじゃないか?」
誰かが動くよりも早く、銃弾が放たれた。
別にこれをくらっても死にはしないし。痛いだけなんだけど。確かに、暴走はするかもしれない。
「凛さん!?」
「凛!」
焦った沙彩と少年の声が聞こえる。
――かちゃり、と音がした。
私の目の前で、銃弾が止まる。
「
そしてそのまま、銃弾が地面に落ちる。
「ディストラクションローズウィップ」
しゅるり、と黒い鞭のようなものがしなって。
「ああ、やはり――君は最高の怪人候補だ。もうこの目で見られないのが惜しい」
その機械の体を叩き壊した。
ばらばら、と部品が地面にぶちまけられる。本当に機械でできてたのか。そんなことを思いながら、一瞬でそいつの場所へと移動して。その部品を踏みつけた。
「さて、復讐も終わったしさ。話の続きだ」
しゅるり、と私の周囲に茨の鞭が生えていく。
「そろそろ私を殺してくれよ」
不敵に笑うと、少年が息を飲んでこちらを見つめているのが見えた。
今更だけど、魔法少女はみんな名前に魔法少女カラーと同じ色が入っています
緋色沙彩→ルビーだから赤の緋色
蒼崎雪奈→サファイアだから蒼
橙野ひまり→トパーズってなんか黄色い気がするから橙
銀城真白→ダイアモンドって銀っぽいから銀
黒金沙夜→黒曜石だから黒
文字数どれぐらいがいいですか?
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3000以下
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3000~5000
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