TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
目の前で、怪人が砕け散った。凛があっさりと倒してしまった。
「なあ、少年。お前は私を殺してくれるのか?」
不敵に凛が笑う。
あの怪人を引きずり出したような力だとか。目の前で弾丸が止まった力だとか。そんな能力を持っていたんだ、みたいな疑問が止まらない。
けど、そんなことを考えている場合じゃない。
凛は、俺たちに倒してほしいらしい。
でも、俺はそんなことはしたくない。だって、凛も被害者だから。
元々、俺も同じように怪人に襲われて。その時に家族が巻き込まれて大怪我をした。
今はもう無事だけど、怪人が俺を狙ったのは異能を埋め込んで新しい怪人を作るための素材にちょうどいいから、だとかそんな理由で。
それを助けてくれたのがアキラさんで、それに憧れた。
俺は、俺みたいな存在を出したくなくてヒーローになったから。
懐中時計を取り出して、ボタンを押した。
『解析開始』
「戦闘モード」
『了解しました。戦闘モードに移行します』
「変身」
変身した俺の姿を見て、凛がフッと笑う。
「やる気になったか?」
「そうだな、やっぱり凛を助けたいと思ったよ」
「そりゃ、素晴らしいヒーローマインドだな」
失望した、と言わんばかりにハッと鼻を鳴らす。
「で、アキラは?」
縋るみたいに、アキラさんに問いかける。
アキラさんは軽く息を吐いてから、懐に手を忍ばせた。
取り出したのは、スマートフォン。それを見て、凛が少しだけ目を見開いた。
「……それは」
「ああ、俺たちは全員お前を始末するつもりない。それでも、お前はそれを認めずに殺してほしい、とこっちを攻撃してくることになるだろう」
「よくわかってんね。こっちはもう自棄だぞ」
「だから、止める必要がある」
スマホに指を滑らせた。
「変身」
それと同時に、アキラを光が包み込んで。
戦闘スーツに包まれたアキラが姿を現した。
でも、その姿はどこか軽装で。俺や凛の変身した姿に比べると少しだけ、ショボいというか。装備が貧弱に見えてしまう。
それもそうだ。あのスマホは専用の変身アイテムじゃない。汎用型のデバイスだ。
俺や凛は、制御が難しいところもあって専用のデバイスが作られてるけど。多くのヒーローは汎用型のデバイスを使ってる。
でもそれは、あまり活躍してないようなヒーローが多いはずで。アキラは、怪人たちが警戒するぐらいには強いのに。
「アキラもそろそろ専用のデバイス作ってもらえば?」
「そういう話もあったが、最近は凛のカントホルツの製作に集中してもらっていたからな」
「……そりゃ、こっちが悪かったね」
まるで日常会話みたいに話してるけど……お互いの目は笑ってない。アキラは本気で止めるつもりだし、凛は本気で殺してもらうつもり……なんだと思う。
「さて――そろそろ始めるか」
ぱちん、と凛が指を鳴らした。
すると――かちゃり、と音がする。
上を見上げると、空中に錠前が出現していて。それが外れて落ちてくる。
それと同時に、錠前があった空間にひびが入って――そこから何かが姿を見せる。
「まさか、
焦るようなダイアモンドカメリアの声と同時に、災厄獣がそこから姿を見せて、ぽとりと落ちてくる。
「こいよ、ヒーローと魔法少女。災厄獣を呼べるような存在を、野放しにしていいわけないだろ?」
……これは、凛が自分を始末してもらうための理由付けなんだろうな。そこまでして、倒してほしいのか?
でも、放っておけないのは本当だ。
不意に、横に視線を向けた。ルビーブロッサムと目が合う。
そして、お互いに頷いた。
「行きますよ、篠森さん」
「もう晴でいいよ」
「じゃあこっちも、沙彩でいいですよ」
「……名前で呼ぶのはマナー違反らしいけど」
「それなら」
落ちてきた災厄獣が、こっちに襲いかかってきた。
ぐるり、と懐中時計の針が回る。
「行くよ、ルビーブロッサム」
「わかりました、アナライザー!」
降りかかってくる災厄獣を吹き飛ばしながら、凛の方へと走り出した。
◇◇◇
上から降り注ぐ災厄獣。それに向かうルビーブロッサムとアナライザー。
それに続いて、他の者たちもオブシディアンローズ――黒金沙夜の方へと向かう。
その中で、先に飛び出していったのは銀の閃光。
煌めくその軌道は、落ちてきた災厄獣たちを蹴散らしながら進んでいく。
現役最強、銀閃――ダイアモンドカメリアが沙夜の前へと躍り出た。
その振るわれた剣が弧を描いて沙夜へと迫る――が。
ばちっ、と何かが弾けるような音がした。
黒いレースの手袋に覆われた、沙夜の手がその剣とぶつかる。沙夜の手のひらに纏われた魔力によって、防がれていた。
ぐいっ、と沙夜が力を込めると、ダイアモンドカメリアが後ずさる。
バックステップで一度距離を取り、剣の切っ先を向けてから再び、剣が舞う。
繰り出される斬撃の嵐を、沙夜はそれらすべてを手で弾いていく。
まるで、軽々と防いでるように見えるが、実際は一撃を受け止めるごとに衝撃が少しずつ伝わっていき、十も受け止めた頃には少しだけ顔をしかめていた。
「思ったよりも本気で来たな」
「そうしなければ、沙夜を止められないからな」
「いい加減、本名で呼ぶのをやめろよ銀閃――!」
不意に、沙夜の手がぶれる。それと同時に、手のひらから放たれた魔力の玉がダイアモンドカメリアを襲う。
一瞬の、予備動作もないそれをなんとか剣で受け止めるが――予想以上の衝撃に体が浮いた。
それを弾き飛ばすことはできたが、それでも軽く吹き飛ばされてしまう。
「スペックだけならさ、お前とは互角なんだよ。暴走状態の私にお前だけで勝てるかよ」
ぐっと踏み込んで、沙夜がダイアモンドカメリアへと迫る。
「ダイアモンドダスト」
「
周囲に急にきらきらとした光の粒が舞う。そして、それらがぴたり、と止まってから。一気に沙夜へと降り注ぐ――が。
かちゃり、と鳴る音と共に沙夜へと届く前に止まってしまう。
「厄介だな、その能力」
「異能持ち魔法少女ぐらい軽くいなしてみろよ、最強様」
「君はどうも、私を高く評価しているらしい。光栄と思うべきかな」
「記憶がない頃の私は、お前に憧れてたらしいってのが癪だな」
「……それは、素直に驚いてしまうな」
空中に固定化されて止まった光の粒が、そのままぽとり、と落ちていく。
それと同時に、二人は動き出す。
ダイアモンドカメリアの動きが、一段と速くなる。銀閃という異名の通り、彼女の動きは目で捉えられないほどに速い。
「お前はいつでも眩しいな、羨ましい限りだ」
「ぐっ……!」
それでも、漆黒を倒すには至らない。振るわれた剣を避けられて、そのまま懐に潜り込んだ沙夜がダイアモンドを蹴り飛ばす。
「どうしたよ、お前ってそんなもんか?」
嘲笑うように、ダイアモンドへと語り掛ける。
「……一つ思っていたんだが、私たちに殺してほしいと言うわりには、本気で抵抗するんだな」
「今のままだと、お前らはどうせ殺すまではいかないだろ。災厄獣をばらまいてる異能を埋め込まれた暴走寸前の化物なのにな」
そう吐き捨てる沙夜の表情は、ダイアモンドカメリアには少しだけ悲しげに映る。
「これはあまりやってほしくはないから言わなかったが、そう思うなら自殺もできたんじゃないか?なのに、それをしないってことは――」
「勘違いするなよ」
ダイアモンドカメリアの推論を、沙夜はぴしゃりと遮って止める。
「助かりたいとか、思うわけないだろ。もう私は疲れたんだよ。クルルもいなくて、無様に時限爆弾のまま生きろってか?バカが」
「じゃあ、なぜ私たちに殺してもらうことを願うんだ?」
「おいおい、怪人を作るときに自殺されたら困るだろ。普通は、そうさせないように頭をいじるもんだぞ」
「……まさか」
沙夜が、自虐的に笑った。
「元々、あいつらを攻撃できないようにもなってたらしいけど。そこら辺は一回目の暴走の時に壊れたんだってさ。でも――自滅だけはできないようになってんだよ」
とん、と頭を指で叩く。
「ここがそうなってんだってさ」
「……そこまで、怪人たちが下種だったとは」
「今さらかよ。それに、自殺できてもな。私の体はえげつないほどにエネルギーがぐるぐるしてんの。暴発するからこうやって戦って、エネルギー発散すんのもありだろ」
沙夜が、深く息を吐いた。
降ってきた災厄獣たちが、次々と倒されていく。
残りの者たちがここにたどり着くのももう少し。
ああ、やっと解放される。沙夜は、安堵したように笑う。
「さあ来いよ、魔法少女」
続きだ、とでも言いたげにダイアモンドカメリアへと足を進めた。
今更なんですが、男装性別バレ以降ちょっと急な気がしないでもない
あと、フォントとかをいちいちつけるの忘れるので、普通に後悔してる