TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
『攻撃シークエンスに移行』
無機質な電子音が、アナライザーへと変身した晴の胸元から響いた。
バチバチ、と晴の手から火花が散って。そこから電撃が解き放たれていく。
晴を目掛けて飛び込んできた災厄獣たち。
そのどれもが、そのままの勢いで自らその解き放たれた電撃へと突っ込んでいき、そのまま焼き焦がされていく。
まだ、晴の手元からは火花が散っていて、無数に空から降ってくる災厄獣たちへ、警戒心を強めていく。
「スカーレットフローラ!」
そんな晴の横にいる魔法少女は、赤い光を浮かび上がらせていた。
ルビーブロッサムが胸元の宝石をなぞって、赤い光が花弁へと形成されていく。
花弁がそのまま風に流されるように、宙に浮いて。花びらが舞い、正面の災厄獣たちの体を少しずつ削っていく。
「そっちは平気そうですか?アナライザー」
「余計なお世話だよ、ルビーブロッサム。っていうか、敵多くない?」
「この前、3体同時に戦ったのが正直限界だったんですけどね。ダイアモンドカメリアさん、なんでまっすぐ行けるんですか??」
「それよりも――凛のやつが、こんなことができるっていうのが驚きだけど」
パッと、晴が上を向いた。空には、大きな穴が空いている。
凛――黒金沙夜の異能によって空から開けられた穴から、災厄獣たちが出現していた。
「先にいくわ」
二人の攻撃によって足を止めた災厄獣の群れに突っ込んでいくのは、青い光。
「ちょ、ちょっと。先に行かないでくださいよっ」
「ごめんなさいね、私も漆黒にはまだ言いたいことがあるもの」
サファイアネモフィラは振り向いて、少しだけ申し訳なさそうにそう溢した。
そして、また沙夜の方へと向いて、災厄獣たちの背中を蹴って、遠くの方へと走っていく。
手前に残されたのは、ルビーブロッサムとアナライザーだけ。
まだ、空からは災厄獣たちが降ってくる。
「……ここでずっと、こいつらと戦うのはめんどくさいな」
「いや、そんな余裕ぶってる場合じゃなくないですか!?」
「うるさいな、そもそも俺は複数の敵苦手なのにこんなことやらされてんだから」
「えっ、そうなんですか?」
「だって、単体以外だと解析しにくいし」
軽口を叩きながら、災厄獣たちに向き直る。まずは、こいつらをなんとかしないと――と二人が考えているときに。
急に、目の前の災厄獣たちが、ぱたりと倒れた。
綺麗にすべて、首を落とされている。
「すまない、少しだけ調整に時間がかかった」
二人の前に出てくるのはアキラだった。その手には、一振の剣が握られている。
「アキラさん、無茶苦茶すぎない……?」
「そうか?」
少し引き気味の晴に、アキラは剣を構えたまま、声だけで返した。
再び、アキラの近くに降ってきた災厄獣が、アキラたちを見つけて口をあんぐりと開けて――またその首が、ぽとりと落ちた。
アキラが、軽く剣を降っただけで、その首が落とされている。
「なっ、なんですか?この無茶苦茶な力」
「アキラさんは、斬撃の異能だから。それをうまく動かして、ギロチンみたいにしてる」
「うわなんか、えぐいですね?」
と、話している二人のことも気にせずに、アキラも災厄獣の群れへと走り出す。
「……俺たちも、こんなところで止まってられない」
「そうですねっ」
と、二人が飛び出そうとしたときに。
「はい、ストップ」
とその足を止めるものがいた。
かちゃ、と何かの部品が落ちる。
それは、沙夜が倒した怪人のパーツで。それを確認するようにいじっている。
それを持っているのは、詩織だった。
詩織もあの基地にいたので、全員のワープのような現象に巻き込まれていて。今まで、ずっと隠れていた。
「……なんなの、俺たちになんか用?」
不自然な登場の仕方に警戒して、ぶっきらぼうに晴は尋ねた。それでも、詩織の表情はあまり変わらないままで、何を考えているのかも見ている二人からはいまいちわからない。
「そうだね、凛を止めるんだよね?」
「はい、凛さんをあのままになんか絶対にさせません」
ルビーブロッサムの返事に、少しだけ詩織は口角を上げた。
「それならよかった。君たちに、凛を助けてほしかったから」
「……それってどういうこと?」
「凛は、ここら辺に封じられてた魔法少女の力を取り戻した」
詩織は、自らの胸元をとん、と指で叩く。
「それを封じてたのは、私たちアビスハンターズが作った変身デバイスのカントホルツ。あれはね、凛の暴走を見越してそれを封じていたの。異能をある程度制御しないといけなかったしね。ディープバーストの暴走状態と、複数の異能の制御両方ね」
「で、それを使えばいいってこと?」
「まあ、そういう感じなんだけどね……」
少しだけ、詩織が目を伏せた。
「今、凛の異能で強引に封印がこじ開けられているせいで、ちょっとだけカントホルツは機能不全になってるの。だから、凛の力をなんとか弱めれば、カントホルツも復活すると思う」
「それ、もしかして」
「うん、凛をぶっ飛ばそう。そうしたら、カントホルツも復活してとりあえずの暴走は止まるよ」
ルビーブロッサムとアナライザーは顔を見合わせた。正直、凛を助けると決意はしたものの、どうすればいいかはいまいちよくわかっていたなかった。
だが、どうすればいいのか、その道がはっきり示された。お互いに頷いて、詩織の方へと向く。
「わかった。死のうとしてるあいつをひっぱたいて、目を覚まさせてやる」
「そりゃ頼もしいね」
少しだけ、安心したように詩織は頬を緩ませる。
ただ、ルビーブロッサムはまだ納得していないようで、慎重に口を開く。
「……そうやって簡単に制御できるぐらいなら、凛さんがこんな暴走することもなかったんじゃないですか?」
「うーん、それはね。怪人から痛め付けられちゃったから、そのせいで凛の中の暴走を誘発させたんだと思うよ。実際、今封印しても、凛の状態は暴走一歩手前のまま固定化されるだけだし」
「……それでも、あいつをあのままになんかさせてやらないけど」
「じゃあ、頼むよ。最悪、止めてくれたら時間をかけてでもあの子を絶対に助けて見せるから」
今度こそ、詩織は二人の前から退いた。
軽く手を振って見送る。それに頷いて、二人は沙夜の方へと足を進めた。
◇◇◇
あーあ、本当にどいつもこいつも。
人の話を聞きやがらない。
「やはり、オブシディアンローズと呼ぶのは長いな」
剣の軌跡が、弧を描いてこっちに振り下ろされてるのを、手で弾いた。
ダイアモンドカメリアの攻撃は早いだけで、あまり重さはない。だから、弾くぐらいは余裕なんだけど。それはそれとして結構痛い。
「じゃあ、省略でもしたらいいんじゃない?お前はダイアモンドかカメリアでいいし」
「そうか、それもそうだが……やはり、君のことは名前で呼びたい」
「なんなんだよ、お前」
「次会うときは、友達になると言っただろう」
「――」
ああ、そんなことを覚えていたのか。
確かに、そんな話をした。私がディープバーストする、2日前ぐらいの話だけど。
でも、それはもう叶わないことなのに、いちいちそんなもんにしがみつきやがって。
「――私からもいいかしら?」
頭上から聞こえてきた声に、思わず上を向くと――青い魔法少女がこちらを見下ろしていた。
こいつも、昔会ったやつだ。
敵との戦いで、危なかったからつい助けてしまったやつ。やけに、縁があるやつばかりと会ってるな。
「ダメだね。ディストラクションローズウィップ」
「っ、フロストフラワー」
氷の華が咲き乱れる。それが私の頭上一面に展開されるけど、そこを襲う黒い茨の蔓が鞭のようにしなって叩きつけられる。
「きゃあっ!?」
氷の華の壁を砕いて、黒い茨がその魔法少女を弾き飛ばすけど……ダイアモンドカメリアに拾われた。仲間想いで結構なことだ。
……ダイアモンドカメリアは、やけに眩しいやつだ。私だって、こんなじめじめしたやつじゃなくて、お前みたいになりたかった。
サファイアネモフィラだって、堂々としていて綺麗だ。……自信がなくて、引きこもっている私とは全然違う。
やっぱり、魔法少女たちは私の憧れで。だから、記憶を失っても、それを目指すことになったんだと思う。でも、それも終わりだ。
もう少し痛め付けたら、ちゃんと倒さないといけない敵だってわかるかもしれないし。
そう思って、周囲に展開した茨の蔓を、二人の魔法少女へと向ける。
するする、と伸びていくそれが――一瞬にしてすべて切り落とされた。
「すまないな、沙夜。お前を止める」
「約束ぐらい守れよ」
「殺すと約束したつもりはない」
……そうだっけ。確かに、止めるとかぐらいだった気がするな。
まあいいや。
「じゃあ、殺さないといけないってわからせてやらないとな」
私はもう、止まれないから。