TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
さて、アキラは殺してくれるかな。とりあえず、相手の出方を見るか。
アキラが剣を構えた。その時に、不自然な揺らぎが見える。
手に魔力を込めて軽く手を振るうと――ばちっ、と手に何かが触れて弾けた。
「なんだよこの異能、変なことしやがって。頭上になんか置いてたな?」
「力押しはできないからな、こういう戦い方で済まないが」
「よく言うよ」
アキラの異能は斬擊ってことは知ってる。それと、あんま動いてないのに、災厄獣の首を落としてるのも見たことあるし。
斬擊をただ飛ばすわけじゃない。変なアクションの後、それをどこかから発生させているとか、そういうやつだと思う。
――例えば頭上に設置して落としてるとか。
手を上にかざして、魔力を収束して発射させる。轟音と共に、弾けるような音がした。当たりだ。
「さっさと専用デバイスを作ってもらってたら、私なんかに手こずることもなかったんじゃない?」
「さあな」
アキラの姿がぶれた。直接攻撃に切り替えたな。
アキラはあくまで、汎用的なデバイスだ。だから、特殊な能力とかもそんな使えないはず。
その証拠に、持っている剣でそのまま切ってくる。足運びとかの問題なのか、目で追いにくい。でも、まだ目で捉えられる。
単純な攻撃。なのに――
「ぐっ」
剣を拳で受け止めた瞬間、そこから衝撃が伝わる。
思わず、後ろに飛び退いた。
これ、斬擊か?どっかに固定して落とすだけじゃやくて、剣からも飛ばせたのか。
でも、ちょっと痛いだけだな。
――試しに、食らってみるか。
ぐっと踏み込んで、アキラの方へと接近する。振り払うように飛んできた斬擊に対して――なにもせずにそのまま受け止めた。
体が浮遊感に包まれる。全身に、びりびりと痛みが走る。
「――あはっ」
やっぱりだ。アキラは殺してくれない。手加減してるから、直撃しても痛いだけだ。
魔法少女の体も頑丈だから、多少痛め付けても無事だけど。それでも、本気でやったならちゃんと死ねるぐらいには、なっただろうに。
「……沙夜」
体を起こすと、心配するようにアキラがこちらをじっと見ている。明らかに、隙だったはずなのに。
アキラに、沙夜って呼ばれるのも久しぶりだ。いや、呼ばれたことがあったかどうかも覚えていない。
こっちから漆黒だって話したことはない。あくまで、ディープバースト済みの魔法少女でしかないだろうけど。詩織に調べられたらどうせわかってるだろうし。
まああいつにとっては、結局ずっと凛だったようなもんだし。変に過保護で、甘いやつ。
「バカ、追撃するところだろそこは」
「俺はお前を殺したいわけじゃないと言っているだろう」
「――不合格だよ、お前は。オブシディアンスパイラル」
黒い花びらが、風に舞う。
それと同時に収束した魔力が捻れて、旋回したそれが一気にアキラの方へと向かう。
アキラが、剣を構えてそれを切り払おうとするけど――そんな簡単に防がせるかよ。
こちとら、最強と噂の魔法少女。お前は強くても汎用デバイスのヒーローだ。
「これは……」
「止められないだろ。ディープバーストした私は、バカみたいにエネルギーが溢れてるようなもんだ。出力勝負ではお前らには負けないよ」
「……ぐっ」
剣と魔力がぶつかる。アキラを押し潰そうと襲いかかるそれを剣で押し返そうとするが、力に押し負けて後ろに後ずさる。
「バイバイ、アキラ」
「沙夜、俺は……」
「もういいよ」
「――」
黒い渦に飲まれて、アキラの姿が見えなくなった。倒したわけじゃない。ちょっと吹き飛ばしただけだ。
「――はあっ!」
「あぶなっ」
銀色の何かの光る。反射的に魔力を纏わせた拳で、迫ってくるのを防いだ。
バチバチ、魔力同士がぶつかって、エネルギーが拡散する。
さっきまでどっか行ってただろ……って思ったけど、周囲に災厄獣の破片みたいなのが転がってる。
ああ、勝手に沸いてきてたのを倒してたのか。確かに、ポコポコ出してたからな。
さすがに、アキラと一緒にこられたらまずかったか。
――じゃあ、また増やしてやるか。
ぱちん、と手を鳴らすと――ぬるり、と何かが蠢いて、ダイアモンドカメリアと私の間に飛び出る。
蛇のようなそれが、ダイアモンドカメリアに絡まって、遠くの方へと移動していく。
「お前もお呼びじゃないっての」
「……私は、バトンタッチの隙を作るだけだ」
「は?」
「そうね、今度は私の番」
「……っ」
ばしっ、と小気味良い音が響く。反射的に受けの姿勢を取ると、拳を受け止めていた。
でも、急だったせいでちゃんと受け止められなくて、ちょっとだけ痛い。
「私、あなたのことが憧れだったわ」
サファイアネモフィラが、まっすぐこちらを見ている。
そういう目が、嫌いだ。
黒金沙夜は、下手に大人びた達観した嫌なガキだった。だから、人ともうまく馴染むこともできなくて。
そのままこっそり、魔法少女として活動してただけの存在。
それに、憧れる?ふざけた話だ。
「いつか、あなたが助けてくれたとき。あなたみたいに、強くて美しい魔法少女になりたいと思ったの」
「そうかよ。じゃあ、なれたんじゃないの?」
「ふふっ、そう思ってくれるとは光栄ね」
――頬を緩ませて、本気で嬉しそうにしてる。
そんなことを話してる間も、サファイアネモフィラの拳が襲ってくる。風を切る音と一緒に、鋭いパンチが飛んできて。
それをなんとか回避していく。
やっぱり苦手だ。そういう、眩しい感情を持ってこないでほしい。
私は、死ななきゃいけないのに。それに憧れたやつなんて、いらないだろ。
こいつも、魔力の扱いがそこそこうまいな。パンチに、うまいこと魔力が乗ってるけど……それは私の得意分野だから。
「そこっ!」
「そんなもんかよ」
渾身の一撃らしいものを、はたき落とした。
「なっ」
驚いたサファイアネモフィラの動きが一瞬鈍る。
その隙に、拳を鳩尾にめり込ませる。
「がぁっ」
呻くような声と共に、その体が吹き飛んでいく。
「殺す気で来いってのにさ。まだまだ温いよお前ら」
「だったら、選手交代ですね!」
真紅の軌跡が、私への道を作った。
「今度はお前か、ルビーブロッサム」
「だと思いますか?」
「……何を言って、っ!?」
迫ってくるルビーブロッサムに対応仕様としたときに――火花が舞った。電流がまっすぐにこちらに飛んできて、それを思わず回避する。
「凛、お前を助けに来たよ」
「生意気なガキが」
「素の凛ってさ、結構口が悪いんだな」
ルビーブロッサムの後ろから、少年が姿を見せる。
……雰囲気が少し違う。こいつらは、何か覚悟を決めているような。アキラも、ダイアモンドカメリアも、サファイアネモフィラも。全員、私をなんとか助けようとはしていた。
でも、こいつらは。もっと具体的に何かをしようとしているような。
まさか、殺してくれるのか?
……なんて、希望観測だけど。私はそう思いたいから。
「なんでもいいから、来いよ」
くいっ、と指で合図する。
二人がこっちに走り出した。
◇◇◇
災厄獣たちが降ってくる。
そんな中に白銀の閃光が走る。
沙彩と晴の元へと向かおうとするそれらを、すべて一刀両断した。
「敵が多いな……」
「手伝おうか?」
ダイアモンドカメリアの背後、突然降ってきた災厄獣の首が落ちる。
「……アビスハンターズの」
「アキラだ、銀閃」
お互い、背中を合わせて沸き上がってくる災厄獣に剣を向けた。
「どうやら、沙夜の元へはあの少年とルビーブロッサムが向かったらしい。だから、ここで食い止めておきたい」
「同感だが、自分で助けなくていいのか?」
「確かに、沙夜と戦うのなら私の力が必要かもしれないが。私たちは沙夜に勝ちたいわけじゃないだろう?」
「それはそうだが――」
「ごめんなさい、私も混ぜてくれるかしら?」
斬擊の嵐の中に、サファイアネモフィラが混ざる。
「いいのか?君も漆黒のことが気になってただろう?」
「ええ、いいわ。言いたいことは言ったし。それに、あの子たちの言葉の方が届くかもしれないもの」
くすり、と笑って災厄獣を蹴り飛ばした。
「それに、この数の災厄獣をあの子たちに押し付けて、漆黒の相手をするよりは私たちが相手をした方が合理的でしょう?」
「……多数の敵は慣れてはいるが」
「なら、問題ないか」
遠くで、沙夜に二人がぶつかっていくのを見ながら、周囲を覆う災厄獣を倒すために三人は気合いをいれることにする。
あの二人が、沙夜を助けてくれると信じて。
強さは足りなくても、きっと心が届くような気がしたから。
なかなか戦いが終わらなくて、申し訳ないなと思いつつもう少しお付き合いいただけると