TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!   作:魔法少女マジデ☆ドコダ

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21.バトンタッチは鬱陶しい

 さて、アキラは殺してくれるかな。とりあえず、相手の出方を見るか。

 

 アキラが剣を構えた。その時に、不自然な揺らぎが見える。

 手に魔力を込めて軽く手を振るうと――ばちっ、と手に何かが触れて弾けた。

 

「なんだよこの異能、変なことしやがって。頭上になんか置いてたな?」

「力押しはできないからな、こういう戦い方で済まないが」

「よく言うよ」

 

 アキラの異能は斬擊ってことは知ってる。それと、あんま動いてないのに、災厄獣の首を落としてるのも見たことあるし。

 

 斬擊をただ飛ばすわけじゃない。変なアクションの後、それをどこかから発生させているとか、そういうやつだと思う。

 

 ――例えば頭上に設置して落としてるとか。

 

 手を上にかざして、魔力を収束して発射させる。轟音と共に、弾けるような音がした。当たりだ。

 

「さっさと専用デバイスを作ってもらってたら、私なんかに手こずることもなかったんじゃない?」

「さあな」

 

 アキラの姿がぶれた。直接攻撃に切り替えたな。

 

 アキラはあくまで、汎用的なデバイスだ。だから、特殊な能力とかもそんな使えないはず。

 

 その証拠に、持っている剣でそのまま切ってくる。足運びとかの問題なのか、目で追いにくい。でも、まだ目で捉えられる。

 

 単純な攻撃。なのに――

 

「ぐっ」

 

 剣を拳で受け止めた瞬間、そこから衝撃が伝わる。

 思わず、後ろに飛び退いた。

 

 これ、斬擊か?どっかに固定して落とすだけじゃやくて、剣からも飛ばせたのか。

 でも、ちょっと痛いだけだな。

 

 ――試しに、食らってみるか。

 

 ぐっと踏み込んで、アキラの方へと接近する。振り払うように飛んできた斬擊に対して――なにもせずにそのまま受け止めた。

 

 体が浮遊感に包まれる。全身に、びりびりと痛みが走る。

 

「――あはっ」

 

 やっぱりだ。アキラは殺してくれない。手加減してるから、直撃しても痛いだけだ。

 魔法少女の体も頑丈だから、多少痛め付けても無事だけど。それでも、本気でやったならちゃんと死ねるぐらいには、なっただろうに。

 

「……沙夜」

 

 体を起こすと、心配するようにアキラがこちらをじっと見ている。明らかに、隙だったはずなのに。

 

 アキラに、沙夜って呼ばれるのも久しぶりだ。いや、呼ばれたことがあったかどうかも覚えていない。

 

 こっちから漆黒だって話したことはない。あくまで、ディープバースト済みの魔法少女でしかないだろうけど。詩織に調べられたらどうせわかってるだろうし。

 

 まああいつにとっては、結局ずっと凛だったようなもんだし。変に過保護で、甘いやつ。

 

「バカ、追撃するところだろそこは」

「俺はお前を殺したいわけじゃないと言っているだろう」

「――不合格だよ、お前は。オブシディアンスパイラル」

 

 黒い花びらが、風に舞う。

 

 それと同時に収束した魔力が捻れて、旋回したそれが一気にアキラの方へと向かう。

 

 アキラが、剣を構えてそれを切り払おうとするけど――そんな簡単に防がせるかよ。

 

 こちとら、最強と噂の魔法少女。お前は強くても汎用デバイスのヒーローだ。

 

「これは……」

「止められないだろ。ディープバーストした私は、バカみたいにエネルギーが溢れてるようなもんだ。出力勝負ではお前らには負けないよ」

「……ぐっ」

 

 剣と魔力がぶつかる。アキラを押し潰そうと襲いかかるそれを剣で押し返そうとするが、力に押し負けて後ろに後ずさる。

 

「バイバイ、アキラ」

「沙夜、俺は……」

「もういいよ」

「――」

 

 黒い渦に飲まれて、アキラの姿が見えなくなった。倒したわけじゃない。ちょっと吹き飛ばしただけだ。

 

「――はあっ!」

「あぶなっ」

 

 銀色の何かの光る。反射的に魔力を纏わせた拳で、迫ってくるのを防いだ。

 

 バチバチ、魔力同士がぶつかって、エネルギーが拡散する。

 

 さっきまでどっか行ってただろ……って思ったけど、周囲に災厄獣の破片みたいなのが転がってる。

 

 ああ、勝手に沸いてきてたのを倒してたのか。確かに、ポコポコ出してたからな。

 

 さすがに、アキラと一緒にこられたらまずかったか。

 

 ――じゃあ、また増やしてやるか。

 

 ぱちん、と手を鳴らすと――ぬるり、と何かが蠢いて、ダイアモンドカメリアと私の間に飛び出る。

 

 蛇のようなそれが、ダイアモンドカメリアに絡まって、遠くの方へと移動していく。

 

「お前もお呼びじゃないっての」

「……私は、バトンタッチの隙を作るだけだ」

「は?」

「そうね、今度は私の番」

「……っ」

 

 ばしっ、と小気味良い音が響く。反射的に受けの姿勢を取ると、拳を受け止めていた。

 

 でも、急だったせいでちゃんと受け止められなくて、ちょっとだけ痛い。

 

「私、あなたのことが憧れだったわ」

 

 サファイアネモフィラが、まっすぐこちらを見ている。

 

 そういう目が、嫌いだ。

 

 黒金沙夜は、下手に大人びた達観した嫌なガキだった。だから、人ともうまく馴染むこともできなくて。

 

 そのままこっそり、魔法少女として活動してただけの存在。

 

 それに、憧れる?ふざけた話だ。

 

「いつか、あなたが助けてくれたとき。あなたみたいに、強くて美しい魔法少女になりたいと思ったの」

「そうかよ。じゃあ、なれたんじゃないの?」

「ふふっ、そう思ってくれるとは光栄ね」

 

 ――頬を緩ませて、本気で嬉しそうにしてる。

 

 そんなことを話してる間も、サファイアネモフィラの拳が襲ってくる。風を切る音と一緒に、鋭いパンチが飛んできて。

 それをなんとか回避していく。

 

 やっぱり苦手だ。そういう、眩しい感情を持ってこないでほしい。

 

 私は、死ななきゃいけないのに。それに憧れたやつなんて、いらないだろ。

 

 こいつも、魔力の扱いがそこそこうまいな。パンチに、うまいこと魔力が乗ってるけど……それは私の得意分野だから。

 

「そこっ!」

「そんなもんかよ」

 

 渾身の一撃らしいものを、はたき落とした。

 

「なっ」

 

 驚いたサファイアネモフィラの動きが一瞬鈍る。

 

 その隙に、拳を鳩尾にめり込ませる。

 

「がぁっ」

 

 呻くような声と共に、その体が吹き飛んでいく。

 

「殺す気で来いってのにさ。まだまだ温いよお前ら」

「だったら、選手交代ですね!」

 

 真紅の軌跡が、私への道を作った。

 

「今度はお前か、ルビーブロッサム」

「だと思いますか?」

「……何を言って、っ!?」

 

 迫ってくるルビーブロッサムに対応仕様としたときに――火花が舞った。電流がまっすぐにこちらに飛んできて、それを思わず回避する。

 

「凛、お前を助けに来たよ」

「生意気なガキが」

「素の凛ってさ、結構口が悪いんだな」

 

 ルビーブロッサムの後ろから、少年が姿を見せる。

 

 ……雰囲気が少し違う。こいつらは、何か覚悟を決めているような。アキラも、ダイアモンドカメリアも、サファイアネモフィラも。全員、私をなんとか助けようとはしていた。

 

 でも、こいつらは。もっと具体的に何かをしようとしているような。

 

 まさか、殺してくれるのか?

 

 ……なんて、希望観測だけど。私はそう思いたいから。

 

「なんでもいいから、来いよ」

 

 くいっ、と指で合図する。

 

 二人がこっちに走り出した。

 

◇◇◇

 

 災厄獣たちが降ってくる。

 

 そんな中に白銀の閃光が走る。

 

 沙彩と晴の元へと向かおうとするそれらを、すべて一刀両断した。

 

「敵が多いな……」

「手伝おうか?」

 

 ダイアモンドカメリアの背後、突然降ってきた災厄獣の首が落ちる。

 

「……アビスハンターズの」

「アキラだ、銀閃」

 

 お互い、背中を合わせて沸き上がってくる災厄獣に剣を向けた。

 

「どうやら、沙夜の元へはあの少年とルビーブロッサムが向かったらしい。だから、ここで食い止めておきたい」

「同感だが、自分で助けなくていいのか?」

「確かに、沙夜と戦うのなら私の力が必要かもしれないが。私たちは沙夜に勝ちたいわけじゃないだろう?」

「それはそうだが――」

「ごめんなさい、私も混ぜてくれるかしら?」

 

 斬擊の嵐の中に、サファイアネモフィラが混ざる。

 

「いいのか?君も漆黒のことが気になってただろう?」

「ええ、いいわ。言いたいことは言ったし。それに、あの子たちの言葉の方が届くかもしれないもの」

 

 くすり、と笑って災厄獣を蹴り飛ばした。

 

「それに、この数の災厄獣をあの子たちに押し付けて、漆黒の相手をするよりは私たちが相手をした方が合理的でしょう?」

「……多数の敵は慣れてはいるが」

「なら、問題ないか」

 

 遠くで、沙夜に二人がぶつかっていくのを見ながら、周囲を覆う災厄獣を倒すために三人は気合いをいれることにする。

 

 あの二人が、沙夜を助けてくれると信じて。

 

 強さは足りなくても、きっと心が届くような気がしたから。




なかなか戦いが終わらなくて、申し訳ないなと思いつつもう少しお付き合いいただけると
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