TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
凛さんの前に、ようやく出てこれた。災厄獣の群れの突破は、私には大変だったから。
魔力を手に込める。最初に比べると、滑らかに魔力が巡るようになった気がする。
これも、凛さんのお陰でできるようになったこと。それで戦う相手が凛さんってのもおかしな話だけど。
「ルビーストライク!」
「なめるなよ」
地面を踏みしめる力を強くして、思いっきりパンチしたつもりなのに。凄まじい音を立てて、凛さんに受け止められている。
「やっぱり、一筋縄じゃいかないですね」
「お前、手加減してんのか?殺す気でこいよ」
「……これでも、結構本気でやってるんですけど」
ちょっとだけ凹むなあ。新人だけど、魔法少女として全力でやってはいるのに。
……相手してるのが、漆黒なら仕方ないって話もあるけど。
「何捕まってんだよ!」
「ごめんなさいっ!」
電撃が、私と凛さんの間を通る。
パッと手を離されて、軽く突き飛ばされる。すぐに体勢を立て直す。
……晴さん――アナライザーに助けられてしまった。一人だと、やっぱり無謀かな。
「生身のお前に攻撃したのに、普通に出てくるお前もどうかしてるよ」
はんっ、と凛さんが鼻を鳴らす。
「確かに、攻撃はされましたけど。あれって、たぶん他の人が守ってくれるのわかっててやりましたよね?」
確かに、あの瞬間に攻撃はされたけど。ダイアモンドカメリアさんが簡単に防いでくれたけど。
きっと、凛さんには銀閃と呼ばれるあの人のスピードとかを理解していたからこそだと思う。
「やけに都合のいい解釈だな」
「だって、凛さんは確かに災厄獣をばらまいていますし。他の人と戦ってはいますけど。あくまでそれは、殺してほしいからであって。私たちを倒してしまったら、意味ないじゃないですか」
「――」
ぴくり、と凛さんの眉が上がる。
そう、私たちに殺してほしいなら、私たちを全滅させてしまったら意味ないから。
「殺してもあげませんけどね」
「そうかよ。じゃあ殺さなきゃ殺してやる」
「凛さんは、きっとそんなことしませんよ」
「もう、私は凛じゃない」
凛さんが、チッと舌打ちをした。
ぞわり、と背筋に嫌な感覚が走る。凛さんから溢れる、魔力が急に溢れ出す。
「なんでそんな煽るようなこと言ってんだよ」
「凛さんは素直じゃなさそうなので。言いたいことは言った方がいいかなって」
「あんたも大概雑じゃない?……なんて、言ってる場合でもないか」
ぶんっ、と私たちの横に何かが通りすぎていく。これは、凛さんの攻撃だ。喋ってたせいで、しびれを切らして攻撃してきたみたい。
「おしゃべりだなんて余裕だな」
「かまってあげれなくて、ごめんなさい!」
なんて、軽口を言うけど。たらり、と背中に汗が流れていく。見てるだけで、凄まじい魔力の圧を感じるから。
あんまりゆっくりしてる場合じゃない。凛さんだって、エネルギーが迸ってていつ暴発するのかもわからないみたいだし。
さっさと、止めないと。
詩織って人が言っていた。凛さんに付けられたデバイスのカントホルツを起動すればいいって。
そのためには、とにかく凛さんをぶっとばせばいいらしい……んだけど。
「そんなもんかよ」
接近して、近接攻撃でとりあえず凛さんに当てようとするけど……全然当たらない!
凛さん、ちょっと強すぎる。隙を見せたと思ってそこを攻撃してるはずなんだけど。全部うまいこと弾かれてる。
……ずっとこの地域を一人で守ってたみたいだから、私とは戦闘の経験値が違うだろうけど。それでも、なんとかしないと。
って言っても、どうしよう。私と凛さんのレベルが違いすぎる。
『回避シークエンスに移行、スピードレベル2』
電子音が響くと同時に、残像が視界の端に映る。
「……マジでどうなってんの」
目を瞬かせたその瞬間――アナライザーのパンチが、凛さんの腕に防がれている。
同じ魔法少女である私の動体視力でも捉えられなかったのに。……凛さん、どうなってるの?
『解析率50%に達しました』
「へえ、私をそれで倒してくれるってか?いいね、期待してるよ」
不敵に凛さんが笑う。それに、アナライザーも同じように軽く笑って返す。
「そうだよ、俺が凛を倒してやる。いちいち、振り回しすぎなんだよ」
「言うようになったね、ガキ」
凛さんの口角が、少しだけ上がる。倒してくれる可能性に、楽しくなったんだ。
「私もいますよ!」
「うるさいな」
雑にあしらわれて、少しだけ傷つくけど。凹んでる場合じゃない。
ぐるり、と魔力が全身を素早く巡る。
魔力を込めたパンチの間に、固めた魔力の塊を飛ばして攻撃。
これは、凛さんの真似だ。魔力の制御がうまくできているからこそできる、自分に纏う魔力と放出する魔力の操作。
それでも、凛さんには届かない。同じようにパンチと固めた魔力を飛ばされることで、すべて対応される。
でも、さっきよりはかなり食らいつけてる。
「……見ないうちに、ずいぶんうまくなったもんだな」
「期待の新人ですから!」
凛さんにアドバイスしてもらわなかったら、きっとできなかったけど。……まあ、あれをアドバイスと言っていいのかわからないけどね。
――力みすぎだから、自然にしていい感じに殴ろう。
そんな感じのことを言ってくれてたっけ。
「勝手にハブるなよ」
びゅんっ、と風を切る音と共に、アナライザーが急接近した瞬間の渾身の一撃。
「お前は解析進めてさっさと殺しにこいよ」
かちゃり、と音がした。アナライザーの手に錠前がつけられていて、手が空間に固定化されている。
「……これ、さっき銃弾を止めてたやつ」
「
スピード特化にしたアナライザーはその分攻撃力も下がってるからって、防がれてしまったってこと?
……でも、スピードを乗せた分の攻撃力もあるはずなのに。それだと、私の攻撃も全部弾かれてしまう可能性もある気がして。
「スカーレットフローラ!」
咄嗟に魔法で攻撃した。
赤い花弁が舞う。風に吹かれるみたいにして、注がれるけど――かちゃり、と音がした。
空中に花弁が固定化されて、止まる。そして、そのままパッと消えていく。
……やっぱり、ダメなんだ。これ、どうすれば。アナライザーの攻撃ならもしかして通るとか?
今更なんだけど。あの人の戦闘見たことないんだけど、そんな強い攻撃できたりするの?
ダメだ、弱気になってたらいけない。
ああ、もう。こんなったら……やけくそだ。
「凛さん!」
「凛じゃないって言ってるだろ」
まだ、アナライザーは動けないし。もう強引に行く。……強引に行ってもなんとかなるかわかんないけど。
言い足りないことばっかだから。
「私、凛さんのこと最初は普通に好きだったかもしれません」
「……は?」
ぽかん、と凛さんが口を開ける。
「だって、かっこいい人と急にぶつかるだなんて。少女漫画みたいじゃないですか」
「面食いかよ」
「あはは、そうかもしれないですね」
さっきまで戦っていたのに。
遠くでは、あの三人がまだ災厄獣と戦っているのに。
私たちは二人とも、脱力したようにして話す。
「でも、凛さんは女の子で。男装してただけで」
「そりゃ残念だったな」
「しかも、魔法少女ごっこをしてるよくわかんない人でした」
「あっそ。そのときの話を出してこられても、私は沙夜だからわかんないよ」
気まずそうに、凛さんは顔を背ける。
「そうかもしれないですね。凛さんにとっての凛さんは、偽物の日々って感じなんでしょうけど」
「……わかった気になるなよ」
「はい、だから教えてくれませんか?」
ゆっくりと、一歩歩き出す。少しだけ警戒されてるけど、すぐには攻撃してこなさそうだ。
「私、あんまり凛さんのことはわかりません。テンションが高くて、変な人だなとは思いましたけど。それでも、友達になったんですから」
「……教えるって言ったって」
「記憶がないときに、魔法少女ごっこをしようとしたきっかけとか。そういうの、軽いものからでいいですから」
「軽くないだろ。……元々魔法少女だったから、それが引っ掛かったんじゃない?」
少しずつ近づいていくけど。凛さんの警戒は解けていってる気がする。それに、普通に話してくれるし。
「じゃあ、その時ってどんな魔法少女を目指してたとかってありますか?」
「変なことばっかり気になるんだな」
「だって、私は漆黒と一緒に活動できるかもしれないって思ったから、魔法少女を続けてるところもありますから。そんな憧れの魔法少女に、憧れとかあるかなーって。記憶を失ってる時だからこそ、願望がでてるとかあるじゃないですか」
凛さんは、黒金沙夜から生み出された偽物……だなんて私は思えない。
魔法少女ごっこをしてたのも、こんなに違う性格になっていたのも。そこには何かありそうだと思った。例えば、理想の自分だとか。
「……お前」
「へ?」
「お前みたいに、明るい魔法少女になりたかった」
ぽつり、と呟かれた言葉は、やけに私の心の深くに突き刺さる。
私みたいな、魔法少女に?
「私は暗くて、じめじめしてる気持ち悪いやつだから。キラキラした魔法少女になりたかった」
その言葉は、すんなりと受け入れられた。だから、凛さんの性格はあんなに明るくて元気だったのかもしれない。
「……だからさ、どうせなら。お前が終わらせてくれたりしない?」
「なんですか、それ」
もう、凛さんの目の前まで来ていた。
「早く、私を――」
「終わらせてあげませんよ」
ぎゅっ、と凛さんを抱き締める。びくり、と凛さんの体が跳ねるけど。すぐに引き剥がそうとはしない。
細い体で、今すぐにても消えてしまいそうに感じる。
「私、今の凛さんも好きです」
「なにそれ、アホみたいなことを」
「傷ついてて、ハリネズミみたいにすごい威嚇してきますけど。だからこそ、支えてあげたいみたいな」
「光属性かよ」
ああ、そうだ。弱ってる時の凛さんを見てたときから思ってた。この人のそばにして、支えてあげたいなって。それは、最初に抱いた外見に対する好印象も関係してるかもだけど。
それでも、この気持ちは本当だから。
「夢と希望で戦うのが、魔法少女ですし」
「……あっそ」
「で、この距離だったら自動防御されないですよね?」
「は?」
それはそれとして、凛さんをぶっとばさないと助けられそうにないから。
胸元の赤い宝石が光る。
逃げ出そうとする凛さんを抱き締めて、頑張って固定させる。いや、力つっよ。
「いやお前っ!」
「大人しく自爆に巻き込まれてください!」
「さっきのしんみりとした空気はなんだったんだよ!」
「全部本音ですけど!?」
「あの後によくこんな真似できるな!」
「夢と希望で戦うのが魔法少女!」
時間切れだ。魔力が膨れ上がって、一気に放出される。
私と凛さんの力量の差はかなりあるけど。こうしたら関係ないよね!
赤い光が、視界を覆った。
◇◇◇
轟音が響く。それと同時に、凄まじい衝撃で体が放り出される。
体が宙に浮く感覚がする。
……はあ、バカな真似に引っ掛かった。別に、殺してくれるならそれでもいいけど。
体をなんとか起こす。沙彩のやつ、逆にあれで大丈夫なのか?
ダメだ、衝撃的なことをされたせいで、ちょっとだけ思考がぶれてる。これぐらいじゃ、倒されてやらないんだけどな。
「ようやく、さっき固定化されたのが解けたよ」
不意に、声がした。
体を起こして、そっちを見ようとするけど。
『凛、調子はどうだ?』
急に近くから電子音がして、体が固まる。
カントホルツが、どうして……?
いや、さっきの攻撃の衝撃で、起きたのか?
もしかして、あいつらこれを狙って?
『解析が完了しました』
カントホルツのせいで、うまく動けない。
『改造準備を開始しますか?』
「開始」
『了解しました。弱点を付与します』
ゆっくりと、少年が近づいてくる。
「……動けない私をいじめにでも来た?」
「いいや、俺はちゃんと凛を助けるよ」
ぐるり、と懐中時計の針が回っていく。それが、すべて12時で針が止まる。
『ウィークポイントブレイク』
少年の拳が、私の胸元に届いた。
殺してくれるんじゃないなら、何をするってんだよ。必殺技なのに。
そう思っていると、体がフッと軽くなっていく。
「俺の異能は解析と改造だ」
「……それが?」
「だから、凛を大丈夫なように改造してやる」
「は?」
体に溢れていた、迸るエネルギーが少しずつ霧散していく。全身に駆け巡って、暴走しそうだった力が鎮火していく。
体が、作り替えられている。……こんな異能ありかよ。
ああでも。
疲れたから眠りたい。
どうでもいいですが、カントホルツはドイツ語で角材という意味で、この名前にした理由も特にないです