TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:あまぐりムリーパー
基地の中で項垂れる。この前、真白と一緒に災厄獣を倒したけど。私もあいつも、すぐに敵を倒してしまうからすぐに終わってしまった。
にしても、真白と友達か。やけに、キラキラとしていて。ある意味、私の理想のような魔法少女。
凛として、目覚めた時にも目を奪われてしまった。あの、銀色の光はきっと、私の心をひどく揺さぶってしまうんだと思う。
……あいつと仲良くやれていたら、簡単に怪人に捕まったりはしなかったんだろう、なんて今さら考えても仕方ないけど。
でも、そうなったとしたら。きっと、私はここにいることもなくて。アキラたちとも出会うことはなかったんだろうけどね。
「どうかしたか、沙夜」
「……なんか、アキラにそう呼ばれるのは違和感ある気がしてきた」
「じゃあ、凛って呼んだ方がいいか?」
「別に、そういうわけじゃないけど」
私の正面で、心配するように見下ろしている。机に持たれたまま、そんなアキラの様子を見上げるけど。こいつも、大概お人好しだ。
夜に一人でいる訳ありな感じの女に、わざわざ近寄っていくんだから。まあ、ヒーローらしいといえばそうだけど。
にしても、気になることがちょっとある。アキラは、私が凛だったときにやたらと過保護だった。今の私にたいしては、どう思ってるんだろう。
「ねえ、アキラ」
「どうした?」
「……私よりも、凛の方がよかったりする?」
冷静に何聞いてんだろ、私。この聞き方、キモすぎるし。
そう思って、やっぱり訂正しようとしたら、さらりと髪を撫でられた。
「俺は、今ここで沙夜が生きてくれたらそれでいい」
「なにそれ」
思わず、頬が緩んでしまった。何を言ってんだよ、本当にさ。
そもそも、私はそんなアキラに何かを思われるほどの付き合いもないはず。
いや、ここで二年生活してたんだった。
……今思うと、服借りたりしてるの結構すごいことしてたな。凛としての私、やることおかしすぎ。
あーあ、もうぶっちゃけてしまおうか。お前が大事してた変な女は、元男なんだよってさ。
……大事にしてるってのも変か。まあいいや。
「にしても、アキラに拾われたせいで、魔法少女と変身ヒーロー両方やってる変なやつになっちゃったな」
「しょうがないだろう。埋め込まれたお前の異能を制御するためには、専用のデバイスが必要だ。だが、アビスハンターズがただそんなポンと、デバイスをくれたりはしない」
え、そういう経緯だったんだ。知らないんだけど、そんなこと。
確かに、アビスハンターズって組織自体はそんな優しいところじゃなさそうだし。私のことも、何回か始末した方がよくないか?って話も出たんだって。
そうしてくれてもよかったのに、とはもう言えない。
そんな意見から、アキラは守ってくれたってことか。
「お前、お人好しすぎ」
素直に、感謝を伝えた方がいいかなとは思ったけど。うまく言葉にできなくて、そう返してしまう。
「お前のようなやつを見捨てたなら、俺がヒーローである意味もない」
「だからって、見知らぬ他人をここまでして構うかよ」
「なんでだろうな。まるで夜に溶けていきそうなお前のことが、放っておけなかった」
「何その言い方」
私のことを気にしてくれるのも、あんまり悪い気分じゃないけど。でも、それには凛も含まれてるんだろうなって感じはする。
少しだけの、もやっとした。
……たまには、凛になってかき乱してやろうか。
やめとこ、そんな暴走するのも悪い癖だ。
私の素は、そんなにテンションが高くはないから。
――恋する女の子みたいに揺れてて面白いですね!
不意に、頭の中で凛の声が聞こえた気がした。
誰が女の子か。私はまだ、あんまりそういう見られ方に慣れてないってのに。……自分相手に何をやってるんだ、私は。
「何をそんなに百面相してるんだ」
「凛と格闘してる」
「……そうか。それは、強敵だな」
「アキラにとっても、凛は強敵なんだ?へえ?」
「テンションが独特だったからな」
「私は普通で悪かったな」
「それぐらいがちょうどいいだろう」
関わったやつの中で、実は凛の方がいいとか思ったやつはいんのかな。アキラはこう言ってるけどさ、最初は凛だったわけだし。
……なんか、凛と切り替わるみたいな感じでできたら、一番楽なんだけど。私が嫌なときに、あいつに押し付けたいし。
なんて、考えてても仕方ないか。
体を起こして、アキラの方へと視線を向ける。
「私ってさ、アビスハンターズだと今はどういう扱いなの?」
「……まあ、その」
「なんで言いにくそうにしてんの。ああ、さっさと殺せみたいな派閥もいるってわけか」
「お前を、怪人のような扱いしてくるやつもいるからな」
怪人ねえ、確かにそんな感じだけど。私を改造したあの怪人も、私のことを最強の怪人!みたいな感じで作りたかったのかもしれんけど。
そもそも、アビスハンターズは基本的に怪人組織の被害者たちだ。深淵に潜むのようなあいつらを狩る!という意思から、そんな組織名をしてるぐらいだし。
だから、それと近しいような私も、同じような対象なのかもしれない。とはいっても、改造されて怪人にされかけたやつはそこそこいて、何人もアビスハンターズに入ってるから、今さらだとは思うけど。
その中でも、あそこまで暴れたのは私ぐらいか。
じゃあ、仕方ないけど。……でも、私は元々討たれて消えるつもりだった。それを止めたのは、アキラたちなわけで。
「そんな私をさ、無理やり助けたんだ。アキラはどう責任取ってくれるっての?」
なんとなく、そう言いがかりみたいに吹っ掛けみた。
「そうだな。生きててよかった、とは思わせてみたい」
「……あっそ」
思ったよりも、真っ直ぐな答えでうまく受け止められなかった。
「別に、今も割と幸せだよ」
ぽつり、と呟くように言うと。アキラが少しだけ笑った気がした。
「それは、よかったな」
「……うん。まあその、感謝してるよ」
「別に、そんなたいしたことはしてないが」
「二年間寄り添ってくれて、家族ともまた会わせてくれたりしたのに?」
「それぐらい当然だろう」
「そんなわけないだろ。何、私のことを好きなの?」
「嫌いではないな」
軽口を言っていると、ことりとカップが置かれた。いつもみたいにコーヒーを淹れられたらしい。こいつ、詩織の喫茶店を手伝ったりしてるからちゃんと美味しいの淹れてきてずるいよ。
なんて思いながら、カップを手に取る。これぐらい、平和な日々でもいいか、なんて思いながら口をつけた。
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