TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
昨日、なんと変身前の魔法少女ちゃんに会うことが出来ました!
あの後は、戦うことはなかったみたいなので惜しいね。
次はちゃんと、本物の変身バンクを見るんだ。
というか、あの子と会った後にちょっと怪人いたせいで、あんまり追えなかったんだよね。
今のところは、光と音でそれっぽくはやってるんだけどねえ。本物を見て、研究したいよね。
いや、昔に何回かは見たことあるんだよ?
でもさ、最新のトレンドを追っておかないとね。
「ふんふんふーん」
「……なんでそんな機嫌いいの?」
「昨日、魔法少女のね」
「ああ。その話ならいいや」
こいつ、そっちから話を聞いておきながら……!
今日も今日とて、アビスハンダーズの基地で休憩してるんだけど、最近はこの少年がずっと来ている。いじれる対象がいるので、ちょっと楽しい。んだけど、ここって一応ヒーロー組織の基地なんだけど、こんな和気あいあいとしていいものか。
俺がいるので今更だけどね。って、誰が色物枠って??
にしても、少年の異能ってなんなんだろうね。
異能というものは、簡潔に言うと不思議パワーなんだけども、それだけじゃない。
異能を持っている人は、常人とは違う不思議なエネルギーを体に蓄えていて、それを使うことで異能を発揮することができる、みたいなやつなんだよね。
ちなみに、変身はそのエネルギーを使っているよ!
それを制御することで、本来は扱いが難しい異能を使えるようにしよう!っていうのが変身デバイスだしね。
だから、俺の異能もそのエネルギーを通してやってるってわけ。変身も、その異能の力を制御した状態でちゃんと使えるようにしよう!ってものだからね。
逆に変身してない状態だと、制御できなくなると困るから使える力は制限されてる。生身だと、二つ同時にアーツ解放が限度かな、俺は。
変身時もそんなに同時に使えないので……実は光と音を操作して変身バンクとか、魔法少女風にしてる時って、制限されてるんだよね!
やばいかな。
『あまり、力を制限して戦うのはよくないと思うが』
おかしい、頭の中を勝手に読まれてる。
「何の話してんの?」
当然、基地内にいるので少年もいる。
「んー、魔法少女について」
「……またそれか。あんたも飽きないね」
呆れるように、目を伏せられた。なんなんだ。
というか。
「なんか少年さ、態度柔らかくなってない?」
「えっ、なんの話?」
「最初は、お前なんか認めないけどなーみたいな感じだったじゃん?だけど、最近はそうでもないし」
「……俺が冷たいとか前言ってなかった?」
確かに言われた気がするけどさ、それとこれとは別だよね。
冷たくあしらわれてもダル絡みしたいからするよってことですけどね。
「でも、態度変わるとなんかあったっけってなるでしょ」
「……あっそ。別に、お前が思ったよりも、ちゃんとやってそうだったからってだけだけど」
ぷいっ、と顔を背けてきた。ツンデレか?
「ツンデレか?」
あっ、声に出た。すぐさま少年が振り向いて、じろっと何か言いたげな視線を向ける。
「何言ってんの?」
「思っただけだけど。そういえばさあ」
「勢いで話を変えようとするな!」
「少年の異能ってなんなの?」
はあ、と大きくため息をつかれる。
「じゃあ今度、怪人との戦闘を俺に任せてよ」
「あー、そういうね?」
そういえば、少年はやる気がだいぶあるらしいしな。正直、俺もずっと戦ってて疲れたしな。
でも、アキラが許してくれんのかな。俺もさ、アキラに許可されないと動けないからね。外に出るのにも、なぜかアキラからちゃんと許されないとダメなので。あれ、おかしいな。俺の人権軽視されてる?
「アキラ、少年に怪人退治させてもいい?」
「……まあ、構わないが」
「だって」
そう言うと、少年が得意げに口角を上げて。
「じゃあ、今度は俺の強さを見せてやるよ」
なんて言うもんだから。
「生意気なガキ」
って返してみた。不満そうに眉が下がって面白い。
にしてもさ、どれぐらい強いもんなんだろうね。
アビスハンターズのメンツってあんまり会ったことないから強さがあんまわかんないんだよね。
俺ってなんか知らないけど、他支部とかに行ったらダメらしいし。
まあそれでも、星見ヶ丘が異常だからちょいちょい会うんだよね。なんか、この付近にあいつらの基地があるみたいで、そのせいで怪人がよく出るって話。
災厄獣がバカみたいに出てくるのも、それのせいって噂があるけど、本当かは知らない。
と、考え込んでいると服の裾をぐいっ、と引っ張られた。
「行くよ」
ガキって言ったせいか、少年が不機嫌そうだ。
「はいはい。裾引っ張ってくんのかわいいね」
「うざっ」
やっぱり、こいつをからかうと面白い。
ヒーローの先輩お兄さんにからかわれるの、どんな気持ちなんだろうね。
お姉さんなんだけどね!
まあ、俺がお姉さんってのも変な感じだな。
「着替えるから待ってね」
「早くしてよ」
「せっかちめ」
とりあえず、少年を連れて出るために着替えることにした。
ほら、気分でファッション変えたいとかあるだろ。今日は魔法少女ごっこじゃなくて、少年観察だからね。
◇◇◇
外に行く前だった。俺――
あいつのことは気に入らないけど、この前こっそり見に行ったらちゃんと強いのがわかったし。ちょっとぐらいは認めてやってもいい。
怪人を拘束して、一方的に叩きのめしていた。
あれだけ強いなら、確かにずっと怪人倒せるだろうし。
……でも、あいつのことはちょっとわからない。
確か、制限と解除の異能を持ってるんだっけか。
あいつの持っている異能の資質を引き出している、そういう異能を使っているらしい。
だから、使ってる能力も全部そういう資質ってやつになる。
もしかしたら、将来的にその才能が開花して使えるようになってるかもしれない。
――それはおかしい。異能は一つ持っているだけでも、制御が難しいもので。一つだけであっても、体の中にそのエネルギーが渦巻いて暴発しそうになるレベルだ。
それが、いくつもあるってことはあいつの体の中は常に力が荒れ狂ってるような状態になるはずなのに、けろっとしてる。
……アキラさんがわざわざ、こいつのとこにいるってことは秘密があるのかもしんないけど。
っていうか、遅いな。
少しだけ、上に羽織るような服装を変えたいらしくてそれを待った。……別に、何着ていっても同じだろ。
そう思って、急かそうとあいつのところに行くと、開きかけのドアからあいつが見えた。
上の服を脱ごうとしている。その時に、腹が見えた。なんか、やたらと綺麗な肌だった。……こんなこと言ってると変態みたいだけど、別に男だし。
確かに、女っぽくも見えるような綺麗な顔してたりとか。口調とか名前とか、色々と男っぽくはないけど。
――それよりも、そこに見えた奇妙なものが目についた。
肌がやけに綺麗だからこそ、そこにある何かの跡が際立っていた。
まるで、注射か何かを刺されていたような。そんな跡が複数ある。
……なんで、そんなものが。
「うわ、何見てんの」
そんな凛の声で我に返った。
「早くしろよ」
「うるさいよ、覗き魔。行こっか」
少しその跡が気になったけど、なんとなく触れないことにして。俺は凛の後をついていった。
◇◇◇
少年を連れて外に出てるんだけどさ、なんか弟と出掛けてるみたいな気分だな。
正直、ちょっと楽しい。俺の立場ってなんか知らんけどぼっちなんだもん。アキラは一緒来てくれないしさあ。
いや、ちょっと前は来てくれたこともあったっけ。
ああ、そっか。魔法少女を、ちゃんと見たときとかは、アキラと一緒だったっけ。
あの、銀色の魔法少女を見たとき。俺がきっと、魔法少女になりたいなと思ったひとつのきっかけ。
――不意に、手を掴まれた。
「余所見すんなよ、危ないだろ」
気付けば、少しだけ車道に寄っていたらしい。
やっべ、ボーッと考えてたから危なかった。
「ありがと」
「あんた、いつもこんな感じなの?」
「んー、たまに?」
「……」
呆れたように黙り込んでから、手を離された。
なんか、引かれてる気がする。別に、ずっとこんなんじゃないってのにさ。
と、たまたま前を向いたときに、視界に何かが入り込んだ。
赤い髪を肩ぐらいまで伸ばした女の子。
「あれ、あの子……」
「何、知り合いでもいたの?」
「うんまあ……」
知り合いって訳でもないよね。たまたま前にぶつかっただけで、俺が一方的に魔法少女だって知ってるだけだから。
どうしたもんかな。
別に、用事はない。なんだけどさ。
……見たいなあ、変身バンク。どんな感じに変身してるんだろ。
直に見たい。それで、いい感じにこっちにも反映できたらいいなーってこと。
なんだけどね。
チラッと、隣にいる少年に目を向ける。
少年の戦いを確認するって言っちゃったからね。しゃーない、今回は諦めますか。
「何?」
見てることに気付いた少年が、不審そうにこちらを見上げてきた。
「いや?頼りにしてるよ、少年」
「あっそ」
不機嫌そうに、顔を背けられた。強いなら、俺の激務をちゃんと任せたいのに。
まあ、できるかどうか見てからだけど。
――と、物思いに耽っていた時に地響きがした。
「怪人……!」
一歩、少年が前に出る。その懐に手を突っ込んだ。
地面が割れて、大きな腕が出てくる。
装甲を纏った巨大な体躯。黒くて体毛のようにトゲが生えている。
言うならば――ゴリラの怪人。3メートルはあるぐらいに巨大な体が姿を現した。
怪人はおおよそ、人型が多い。何かの動物をモチーフにしてるけど。だいたいは人サイズだ。
だからこれは、かなり大きい。
「グゥオオオオ!」
けたたましい声が響いた。
……だいたいの怪人は普通に喋ってくるんだけどな。理性すらなさそうなんだけど。
そこら辺までパワーに振ってんのか?
「手をださないでよ」
心配そうに見る俺に、不敵に少年が笑って返した。
俺の前に、少年が歩いていく。
少年が懐から取り出したのは、懐中時計。普通の懐中時計ではなくて、ボタンだとか何かのメーターのようなものがついている。
そのボタンを少年が押した。
『解析開始』
「戦闘モード」
『了解しました。戦闘モードに移行します』
「変身」
機械音声と共に、少年がエネルギーのフィールドに包まれる。
懐中時計が、胸元について。そこから手足に機械的な少しずつ装着されていく。
デジタルな数字が、機械的なスーツの表面に走った後、その上に装甲が追加された。
『アナライザー、戦闘開始』
「行くよ」
少年の変身が完了する。
……正直、想像よりも強そうかも。
「カントホルツ、邪魔だから隠れるよ」
『助けないのか?』
「必要ないでしょ。アーツ解放、ハイド」
『承認、解錠』
姿を、背景に眩ませる。俺の姿は今、カメレオンみたいに透明化してて見えなくなってるはず。
こっそりと、見えない状態で移動して戦いが見やすいところまで移動する。
にしても、少年の変身アイテムは懐中時計か。
アビスハンターズに所属しているヒーローはみんな、変身デバイスを持っている。
でも、私みたいに専用のデバイスを持っていることは少ない。
だから、多くの人は汎用的な量産型のデバイスを持っていることが多い。っていっても、ある程度は個人用に改造されてはいるけど。
少年の持っているあの懐中時計は、専用のデバイスだ。だって、量産型のやつはだいたい端末型だから。
ってことは、よっぽど制御が難しくて専用で使わないといけないか。それとも、それだけ力を認められているのかってことになる。
これは意外と、期待できるかも。
――少年が、一歩前に進んだ。それと同時に、怪人も動き出す。
それに呼応するように、ゴリラの怪人も動き出した。
その巨大な腕が、少年目掛けて振るわれた。
風が薙いで、木の葉が飛ばされていく。
それを受け止めるように、少年が手を翳した。
胸元にある懐中時計の針が、ぐるっと回って3時を指している。
手に、デジタル数字が集まっていく。
光が集まり、少年の前に出現したのは盾。
『ショックアブゾーバー、レベル3』
がつん、と衝撃が周囲に拡散する。けれど、少年はその場で佇んでいて、微塵も動いていない。
このやたらとでかいゴリラの攻撃を、易々と受け止めている。
「……」
黙ったまま、少年が怪人を見据えた。少年のスーツは――俺のもだけど――顔までは覆われていないから、その表情が見える。
無表情のまま、相手を見ている。
『攻撃シークエンスに移行』
再び、懐中時計が回る。今度は、6時まで針が進んだ。
バチバチ、火花が散った。少年の手元に、電流が走っていく。
「……」
それが急激に膨れ上がり、一気に怪人へと放たれる。熱風が頬を撫でる。
「グゥウウウウ!」
ゴリラ怪人が呻いた。表面の毛のように生えているトゲが焼き焦げて、そのままのけ反った。
『解析率50%に達しました』
懐中時計の秒針が、ぐるぐると回転していく。
今更なんだけど、少年ってもしかしてデータ系だったりする?
ゴリラ怪人が、体勢を戻した。多少攻撃したとはいえ、まだまだ元気そうだ。
ぐっと地面を踏み込むと、みしりっと軋むような音がした。
そのまま、蹴るように跳ぶと地面に亀裂が走る。凄まじい勢いで、ゴリラが飛び込んでくる。
『回避シークエンスに移行、スピードレベル2』
懐中時計の針がまた回り、9時を指した。
「グゥオオオオ!」
ゴリラが少年を追いかける。
振るわれた右腕を横に避けると、空振って地面に拳がめり込んだ。
次に迫るのは左腕。それも、軽く地面を蹴って飛び上がって避けていく。
先ほどと比べると、スピードが早くなってる。たぶん、少年の異能というよりはこの機械スーツの力なんだろうけど。
多少は異能を元にしてるだろうから、いまいち想像がつかないな。
たぶんだけど、防御とか攻撃だとか、速度特化の状態に変化させて対応してるんだと思う。
それを表すのがあの時計の針なのかな?
なんて、考えている間も少年は攻撃を避け続けていた。一発もらったら、たぶんアウト。でも、表情は結構余裕そうに見える。というか、無表情だし。
『解析が完了しました』
この音声からすると、解析とかが異能なのかな?
一度大きくジャンプして、少年は距離を取った。
にしても、解析が完了したらどうなるんだ。
少年が、懐中時計の真ん中に指を添えた。そこに、ボタンらしきものがある。
それを、深く押し込む。
『改造準備を開始しますか?』
「開始」
『了解しました。弱点を付与します』
ぐるぐる、と懐中時計の針が回っていく。短針も長針も秒針も全て、壊れたようにひたすら回転している。
かと思えば、その針が一斉に止まった。すべて、12時を指している。
そして、懐中時計から光が流れて、それらがすべて少年の腕に集まっていく。
「グゥオオオオッ!」
その状態に危機を感じたのか、突っ込むようにしてゴリラ怪人が走り出した。
少年も、それに立ち向かうようにして走り出す。
再び、振るわれたゴリラ怪人の拳を少年が避ける。
そして、その懐に入り込んだ。
『ウィークポイントブレイク』
少年の拳が、その懐にめり込んだ。光が、怪人へと流されていく。
ゴリラ怪人の動きが止まる。緩やかに痙攣して……そして、ぴたりと止まる。
少年の腕が、引き抜かれた。
ゆっくりと振り向いて、動かなくなった怪人に背を向けてスタスタと歩き始める。
そして、懐中時計を掴んだ。それを強引に剥がすようにして、胸元から取り出すと――少年のスーツが少しずつ剥がれていった。
それと同時に――背後でゴリラの怪人の全身に亀裂が走って、砕けていく。
「……疲れた」
と、少年が溢した瞬間に、怪人は激しく爆発して、跡形もなく消えてしまった。
[データベース]
・怪人
悪の組織が送り込んでくる敵性存在
人工生物のようなものだが、生きているものを改造して作ることもできるらしい
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