TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
「何してんの、沙彩」
「ううん、なんでもない」
教室でボーッとしてると、明莉から不意に声をかけられた。
いけないいけない、何かあると考えてることに没頭してしまう。
それもこれも全部、あの凛さんのせい。
中性的で綺麗な人。たまたま見つけてしまったときに、勢いで近づいてみてもそのまますんなりと受け入れられてどうしていいかわからなかったし。
なぜか、そのまま友達になってしまった。
今の私の手元には、凛さんの連絡先がある。
……なんで私、ここまで狂わされてるんだろ。
それにしても、女の人みたいな名前で。一人称も"私"だし、本当に女の人だったりして。……それはそれで違和感ないよね。
「なんでもないって、ずっとボーっとしてない?」
「え、そう?」
「うん、そう。沙彩も一旦走ってみる?すっきりするよ」
「んー、それもありかも」
「ついでに、そのまま陸上部入ってよ」
「それが目的?」
「だって、ちょいちょい手伝ってくれてるんだから。もうそのまま入っちゃえば?って」
明莉と話してて、力が抜ける。やっぱりちょっと、考えすぎだ。
凛さんのことは、友達になったんだし。また後から考えよう。
仲良くなりたいのは本当だし。
……それに、魔法少女のこともあるし。
サファイアネモフィラさんと会ってから、ちょっとだけ魔法の特訓とかもしたいし。
ううん、あんまり考えても仕方ない!
「……よし、じゃあ今日はテニス部とサッカー部手伝ってくる!」
「何個手伝い掛け持ちしてんの?」
「え、5個ぐらい?」
「……この学校、沙彩がいないと回らなくなってたりしないよね」
「そんなことないって。私って器用貧乏なだけだし」
「万能と器用貧乏を間違えてない?」
「言いすぎだってば」
あれ、もしかして私ってめっちゃ忙しいことしてる?
魔法少女のこともあるから、最近はちょっと控えてたんだけど。頭をスッキリさせたいから、久々に軽く体を動かさないとね。
「でも、沙彩はちょっとやりすぎなときあるから、たまに困るんだけどね」
「えっ、やりすぎ?」
「部員全員に差し入れ配り出そうとしたり」
「いやその、つい……」
「男にやると勘違いするから、やめときなよ」
「もうやらないってば!」
……私、ちょっと常識からずれてるのかも。
まあいいや。頑張るぞ。
放課後になると、ちょっとだけ裏山に移動する。人にはあんまり見つかりたくないし。
ここに来るまでに、5個あったお手伝いも終わったし、たぶんもうみんなも用事とかないはず。
「マジカルジュエリーアップ」
指輪に手を滑らせる。光と共に、私の姿が魔法少女になっていく。
「沙彩、別に災厄獣は出てないナノ。なんで変身するナノ」
「昨日もしてたでしょ、特訓だよ」
魔法少女の使う魔法に使われるエネルギー、魔力。
サファイアネモフィラさんは、私がこれをうまく制御できてないって言ってた。
だから、これをちゃんと使えるようにしたい。魔法を使うときをイメージして、体に力を巡らせる。
所々、力が暴れだしそうになって、それをなんとか押さえつけていく。
これを自由に動かせるようになれば……って思ったんだけど。
「むぐぐぐぐ」
いつも、あやふやに使ってるだけだったから、やっぱり制御が難しくなる。
「沙彩、暴発しそうになってるナノ」
「わかってるってば!」
もう、急に話しかけないでよ。びっくりして、魔力が飛んでいきそうになるでしょ。
……やっぱり、難しい。
フッと、力を抜いた。体に溢れていた魔力も霧散していく。
「難しいな」
魔法少女も、意外とうまくいかない。器用貧乏って言ったけど、私も苦手なことはあるんだな。
――と、ぼんやりと考えていたときだった。
「グハハハ!」
何か奇妙な声が聞こえてくる。
どしどし、と軋むような足音も。
「妙な反応を検知したぞ、これはきっと最近暴れ回ってるアビスハンターズ……かと思えば違うな!この反応は異能じゃない!」
やけにメタリックな装甲を纏っている、人型の何かがそこにいた。
機械的な戦闘スーツのようなものを着用していて、少しばかり大きな体をしている。
「災厄獣……?いや、違う」
災厄獣が出てくるときは、背筋に嫌な感覚がする。
でも、今は違う。
だから、これは災厄獣じゃなくて。
「――怪人!」
「魔法少女め!」
怪人。
私たちの町で、たまに暴れてるらしいのを耳にする存在。
本来、魔法少女の管轄外だけど。見過ごせないし、私がやっつけないと。
っていうか、怪人ってそんな感じなの?
昔、会ったやつはもうちょっと化物みたいな見た目だったような。
パッと見て、ロボットみたいな感じなのに、やたらと声は豪快だし。
なんて、考えてる暇もないか。
拳に魔力を集中させる。相手に先手を与えるのは、なんか性に合わないし。こっちから仕掛けないと。
「ルビーストライ……っ」
――拳に集めていた魔力が散らばった。
やばっ、さっきの訓練のせいで逆に制御がうまくいってない。
変に魔力を制御しようとしてしまったせいで、体の感覚が変になってしまってる。
今まで、感覚でできていたことが逆にわからなくなっちゃったんだ。
……まずい、このままだと。
「沙彩、危ないナノ!」
慌てたナノが私の周りを回ってる。
たらり、と汗が頬を伝う。
「グハハハ!なんだそれは!ハンデでもくれたのか?」
ずしずし、と怪人がこちらに歩いていくる。
魔力を飛ばすだけなら、今のままでもいけるかも。
だから咄嗟にそれで攻撃しようとしたときに――光が見えた。
星空のように、周囲が光が煌めいて。それと共に何か軽快な音楽が流れてくる。
「魔法少女マギア☆リンリン、推参です!」
どこからともなく、見たこともない魔法少女が姿を現した。
◇◇◇
よーし、割り込んじゃうぞ。
いやね、ちょっと見回りしてたんだけどね。
なんか、いやーな感覚がしたから追ってきたんだよね。
そうしたら、なんか向こうの方でルビーブロッサムと怪人が睨み合ってる。これはチャンス!
「カントホルツ行くよ!」
『また魔法少女ごっこか』
「別にいいでしょ、それぐらい。まずはデュアルアーツ解放、ライト&サウンド」
ちなみに、デュアルアーツっていうのは同時に二つの異能を解放するってことだよ。別に使い道はないんだけど、短縮できるから。
でも、三つ以上を同時に解放はできないよ。なぜなら負担が大きくて俺が耐えられないから。
そんなわけで、デュアルが限界ってこと。そもそも、変身前に使う異能って結構きついんだよね。
『あまりデュアルアーツを使うなよ』
だから、こうしてカントホルツに怒られるのもちょっと仕方ないかな~って気持ちはある。
ま、それに従わないんだけども。魔法少女ごっこしたいし。
「いいからやって」
『……承認、
「よし!」
これで、光と音の異能を解放してっと。
「チェンジキーセット」
『認証、セットアップ』
「変身!」
『デッドボルト、フェーズ1』
変身と共に、光と音を操って演出を追加して――怪人とルビーブロッサムの間に割り込む!
「魔法少女マギア☆リンリン、推参ですっ」
よし、決まった!
どう、これ。
あれ、ルビーブロッサムが固まってる。それに、怪人もポカーンとしてそう。
うーん、これは深いこと考えずに暴れちゃおうかな。
こっそりと、生成した鍵を左側のブレスレットの鍵穴に差し込んで、かちゃりと自動で回る。
『承認、
と鳴るカントホルツの音声はこっそりと音を操る異能で聞こえなくしておきます。
「えっ、魔法少女?」
「はい、魔法少女マギア☆リンリンです」
「……えーっと、その」
フリーズしてたところから復帰したルビーブロッサムに答えたら、また固まっちゃった。
「魔法少女が二人か!グハハハハ!」
「うわ、うるさ。よーし、拘束魔法だ」
「何、ぐっ!?」
生成した鍵を放り投げたら、それを弾こうとした手に当たる。
――かちゃり、と音がした。
それと同時に、怪人の腕がまるで勝手に重くなったみたいに、地面に叩きつけられる。
「う、動かんっ!」
「だから言ったでしょ、拘束魔法だって。バインドロックからは逃げられないよ」
「貴様、デットボルトか……!」
お、俺のことがちょっと知られている?
デットボルトは俺のヒーロー名みたいなものだ。魔法少女が魔法少女名があるみたいに、変身ヒーローには変身後の名前がそれぞれついているらしい。
んで、どうやら俺のそれはデットボルトっていうわけ。
まあでも、今は魔法少女してるからさ。
「魔法少女マギア☆リンリンですってば。ばーか」
「ぐっ、こんな卑怯な手を」
「ロボットみたいな見た目しやがって。最近までサイとかゴリラだったんだから統一して」
げしげし、と動けない怪人を蹴り続ける。
「な、なんだあの魔法少女ナノ!」
「ナノ、知ってる?」
「いや、知らないナノ!それよりも、あれから魔力をほとんど感じないナノ!」
「えっ、そんなことありえるの?」
なんか、後ろでこそこそ話されてる気がする。
「おーい、そっちの魔法少女さん」
「えっ、はいっ」
声をかけると、びくりと体を震わせた。もしかして、ビビられてる?
「早く倒そうよ、こいつ。おらおら」
「ぐぅっ!」
「えっ、もうそれ動けないのに二人でですか!?」
「いや、私疲れたので」
「自由すぎないですか!?」
いや、本当に異能三つ使ってるからだんだん疲れてきちゃった。
だから任せてもいいかなって。……って思ったけど、一緒に倒しちゃうのもありだな。
「じゃあ一緒にやろっか」
「え、本当にやるんですか!?」
「うん。ほら、早く。げしげし」
「くそ、動けん!」
「……わかりました」
怪人いじめ続けているせいか、ようやく決心してくれたらしい。こっちはどれだけでもいじめられるけども。
ルビーブロッサムの拳に、魔力が集中していく。拳が赤い光に包まれた。
「ルビーストライ……あっ」
けれど、なぜかそれが急に霧散していく。
……うーん、力みすぎだなーこれ。
「えーっと、ルビーブロッサムちゃんでいいよね」
「あっ、はい。そうですけど……名乗りましたっけ?」
「そういうのはいいからさ。ほら、力みすぎだから自然にしていい感じに殴ろう」
「えっ、そんな雑な!?」
「考えすぎだから、一旦フラットな感じで行こうよ。大丈夫、そっちが失敗してもこれ動けないし、私が代わりにボコるから」
「そんな無茶苦茶な……」
と、言った後にフッと軽く笑った。
「やってみます」
「そう来なくちゃ。フィニッシュアーツ解放」
『封印解放、レベル1』
右手の錠前が勝手に回る。
「な、なんか変な声が」
「あー、契約精霊の声みたいなものだよ」
『サウンドインパクト』
「これがですか!?」
「うんうん、きっとそう」
「あーもう、よくわからないですけどいいです!」
深く、ルビーブロッサムが息を吸い込んだ。力が抜けて肩が少し下がる。
そして、そのまま地面に縫い付けられたような状態の怪人を見据えた。
「――ルビーストライク」
拳に魔力が集中して、赤い光がまとわりついていく。
同時に踏み出した俺とルビーブロッサムが、それぞれの拳を怪人にぶつけた。
「グァァァァァァ!」
音の異能を乗っけた俺の拳と、ルビーストライクによって拘束されたままの怪人が木っ端微塵に消し飛ばされた。
「いぇーい、大勝利!」
「あはは……」
「というわけで、じゃあね!」
「えっ、もうですか!?」
魔法少女としての顔合わせと、怪人退治がしたかっただけなので、今回はもういいんだよね。
「じゃあね、魔法少女ルビーブロッサム」
「はい、魔法少女マギア☆リンリンさん」
パッと周囲を照らすと同時に、俺はその場からそそくさと離脱した。
「やった!魔法少女に名前呼んでもらったー!」
『だますのはよくないんじゃないか?』
「そのうちばらすからいいの」
『それはそれでよくないんじゃないか……?』
◇◇◇
「なんだったんだろう、さっきの人」
「怪しいやつナノ!」
「うーん、でも助けてくれたし」
光と共に急に現れて、かと思えば急に帰っていってしまった。
怪人を拘束して一方的に攻撃したりしてたけど、拘束魔法って言ってたからそうなのかな?
でも、ナノは魔力を感じないって言ってたよね。
「ナノ、本当にあの人から魔力を感じなかったの?」
「ほとんどそういうのはなかったナノ。一般人と変わらないぐらいナノ」
じゃあ、あの力は一体?
そもそも、そんな状態で魔法少女になれるの?
……よくわからない。
わからなくて頭がスッキリしないから、ちょっとだけ訓練しようかな。
全身に魔力を巡らせる。
「あれ」
今まで、急に暴れだしそうになっていた魔力がするりと流れていく。
「沙彩、うまく制御できてるナノ!」
「……力みすぎって、そういうこと」
肩の力が抜けたお陰か、うまく制御できるようになったみたい。
これだけで、うまくできるなんて不思議。
「沙彩、魔力の流れがおかしいナノ」
「えっ、うわっ!?」
油断してたからか、急に魔力が溢れて暴発しそうになって――思わず変身を解いてその場に倒れ込む。
そんなに急にできるようにはならないや。それでも、ちょっとだけうまくはいったけどね。
あの魔法少女のお陰、なのかな。なんて、きっと偶然だけど。
それにしても、忘れにくいぐらいには強烈なキャラだったかな。
マギア☆リンリンって名前とか、全部含めておかしい。
なんて、ボーッとしてると。ぽこん、とスマホから音が鳴る。
「うえっ!?」
「どうしたナノ?」
メッセージが送られてきたんだな、ぐらいに思ってたのに。
凛:沙彩ちゃん、遊びに行かない?
「凛さん!?」
急なメッセージに、私は思わずスマホを落としそうになった。
……そういや、交換してたんだっけ。こっちから、なかなか送れなかったから。
っていうか、そんないきなり遊びの連絡とかするの?
急すぎない?
……凛さんって、結構ぐいぐい来るタイプなのかな。
いやなんかそれだと、私が狙われてるみたいで。
狙われてたらどうしよう、どうしたらいいかな。
あーもう、なんか全部違う!
おかしくなる前に返さないと。
沙彩:わかりました!
もう、勢いでそう返しちゃった。何、わかりましたって。
予定とか普通聞くでしょ。
「悪い男に引っ掛かってるナノ?」
「いや、そういうんじゃないよ」
「でも、接近の仕方が急すぎナノ」
「……そうだけど」
「沙彩って面食いナノ?」
「うるさいなあ、もう」
……顔だけに惹かれてるわけじゃないはずだし。
とりあえず、おしゃれだけはして遊びにいかないと。
◇◇◇
「よし、なんとなく勢いで沙彩に遊びの予定をいれちゃった」
戦い終わった後、凛はステップでもしそうなぐらいに、楽しそうに歩き始める。
『そんなに魔法少女ごっこが楽しかったのか』
「魔法少女の子と、変身前と変身後で会ったからね!後は、中身バレてあちゃーって展開やらないといけないし」
『……そうか』
呆れたようなカントホルツの音声も無視して、凛は一歩進めようとして――少しふらついた。
「あれ……」
力が出なくて、倒れ込みそうになる。
『無理するな』
「なんで力が入らないんだろ」
『封印解放は負担がでかいか』
「……痛い」
凛の腹にある、注射痕のようなところから、どくどくと黒いものが吹き出ている。
そのせいか、凛の体全身に暴れまわるような痛みが蓄えられて――その瞬間にぷつり、と凛の意識は途切れてその場に倒れた。
『封印レベル上昇』
「……ここにいたか」
『アキラ、凛をあまり無茶させるな』
「今まではこれぐらいは問題なかったはずだが……連戦しすぎたか」
その場に現れたアキラが、凛の体を抱き上げた。だらん、と力なく揺れている。
さっきまで吹き出ていた、黒い何かは収まっている。
『メンテナンスの時間があった方がいいだろう』
「そうだな。せっかく前を向いたこいつを、またどん底に突き落とすわけにはいかない」
『過保護なやつだ。親でもないのに』
「だが、放っておけるわけもないだろう」
『そうか』
と、カントホルツが漏らした後、沈黙が辺りを包み込む。
沙彩からの返信に反応した、凛のスマホがブブブ、と震えた。
文字数どれぐらいがいいですか?
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3000以下
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3000~5000
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5000~7000