TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい! 作:魔法少女マジデ☆ドコダ
誰もいない喫茶店。ここに凛さんが来ようとしてたんだ。
にしても、急に勢いで行くし、かと思えば急に倒れるから本当にビックリしてしまった。
本当に、めちゃくちゃな人だ。
それよりも、大丈夫なのかな。この喫茶店の人に連れていかれてしまったけど。
「ねえ」
不意に声をかけられて、顔を上げた。
篠森晴さん、だったかな。凛さんの、知り合いの人?
私たちは、この喫茶店の中で適当に座って待っている状態だ。
……店員の人とかいないけど、いいのかなこれ。
っていうか、あまり知らない人と二人になってるからちょっと気まずい。凛さん、ヘルプしてほしい。
「えっと、何ですか?」
「……なんで敬語なの?俺とはたぶん、タメでしょ」
「えっ、そうなの?私は14なんだけど」
「俺も14」
ああ、そうだったんだ。偶然だけど、まあでも言われてみたらそれぐらいなのかも。
「えーっと、その。篠森さんは、凛さんとどういう関係?」
なんとなく、そう聞いたら篠森さんは、うーんと考え込んでいる。
「……憧れの人が、面倒を見てる人?」
と思えば、よくわからない答えが帰ってきた。
憧れの人が面倒を見てる人?
凛さんの、親代わりみたいな人に憧れてる、みたいなこと?
なんか、思ったよりもよくわからない関係かも。友達って空気でもないとは思ってたけど。
少しだけ考える素振りを見せてから、篠森さんがこちらをじっと見据えた。
「あんたこそ、凛と友達……でいいんだっけ?」
「うん、そうだよ。……っていうか、なんかそうなってたというか」
「なにそれ」
「初めて会ったときは、たまたまぶつかっただけなんだけど。その後もう一回会ったときに、そのまま友達になった、みたいな」
普通に説明すると、これ変だったりしないかな?
かっこいい人がいると思って、そのまま近づいていった私がそもそも、変なだけかも。
「凛のやつ、勢いで動くとき多いから、そのせいかもね。って言っても、俺も最近知り合ったんだけど」
「へえ、そうなんだ」
「あんたも、これからなんか苦労すると思うけど頑張って」
「苦労って何!?」
と、聞いても答えづらそうにして、目を伏せた。
えっ、なにその感じ。私、凛さんとこれから何かあるの?
「はーい、二人ともお待たせ」
喫茶店の奥から、一人の女性が出てくる。
ここの喫茶店の人だ。あまり、表情が変わらないから、ちょっとだけ怖い。
凛さんを連れていっていたけど、大丈夫だったのかな。
「待たせてごめんね。凛の様子を見てたら少し時間がかかって。いきなり倒れるもんだから、本当にもう」
はあ、と深くため息をついている。確か、詩織さんだったっけ。
凛さんはこの人に用事があるみたいだったけど、何があったんだろ。……勝手についてきた身だから、知ろうとするのも変な話かもしれないけど。
「で、凛の友達の沙彩ちゃんだっけ?」
「は、はい」
急に呼ばれて、びくりと跳ねそうになる。
「あの子、変な子でしょ?でも、悪いやつじゃないから、仲良くしてやってよ」
と、言いながら詩織さんの頬が少しだけ緩んだ。この人は、きっといい人なんだろうなというのが、すぐにわかった。
「わかりました」
「そ、よかった」
さっきまでの、僅な笑みがスッと消える。普段の雰囲気はちょっと怖いかもしれない。
「まあ、凛は奥で寝てるからさ、ちょっと寛いだら帰りなよ」
そういう詩織さんの奥から、誰かが歩いてくる。
喫茶店の制服をつけた女の人。
ぎこちない笑みを浮かべている。均整の取れた顔立ちの綺麗な人。
隣の篠森さんも、ボーッとその人に見惚れてるみたいに、動きを止めてる。
「あっ、この子は今日の店員ね」
「ど、どうも……」
ぎこちなくぺこり、と頭を下げられた。……なんか、ちょっと見覚えがあるような気がするんだけど。
「その、ご注文が決まったらお呼びください」
おずおずと言い出しては、すぐに奥の方に引っ込んでいく。恥ずかしがり屋なのかな?
とりあえず、注文を考えるためにメニュー表を開いた。
「その、何か食べたりする?」
と聞くと、ようやく篠森さんはハッと我に返って動き出した。
「……ちょっと見る」
二人で、メニューを眺めることにした。
◇◇◇
……どうも、恥ずかしい
えーっとその。二人のところに行こうとしたんだけどさ。
なんかね、詩織さんがそのまま行かせてくれなくてね。
こんなボロボロになってる罰って言われちゃって、そのまま喫茶店の制服を着せられています。このまま給仕しろってさ。
ぐぬぬ、落ち着かない。いや、なんかひらひらしてるしさあ。
こういうかわいいのってさ、趣味じゃないっていうか。趣味じゃないんだよなあ。
詩織さんは、回復系の異能を持ってるんだけど、それで回復させられると、意識がふわってなるんだけどさ。
その隙に着替えされられてたとはね。詩織さんの早業にやられちゃったぜ。危ない、ついキャラ崩壊仕掛けてた。
というわけでね、少年と沙彩ちゃんの前にこの格好のまま着てる。
「……これでいいけど、そっちは?」
「あっ、じゃあ私はこれで」
でもさ、なんか知らんけど、バレてない。なんでなん?
いやさ、なんか少年にも沙彩ちゃんにも男として通ってそうだったんだよな。
だから、この思いっきり女の子ーって感じの雰囲気だから、性別バレかなー?って思ったら、なんか別人だと思われてるっぽい。
少年から、最初ガン見されたときは終わりを確信したものです、なんつって。バレてないならなんでガン見されてんだよ。怖いだろ、それは。
にしても、この二人は今日初対面だと思うけど、意外と話してるっぽい。……もしかして、これヒーローと魔法少女のカップリングが!?
まあ、そういうやつじゃないか。俺を話題にして、ちょっと話せてるとかかもしれないしさ。
まあいいか、ちゃんと仕事しよ。
「ご注文はお決まりになりましたか?」
テーブルに寄ってそう聞くと、二人が顔を上げた。……やっぱり、すごい見られてる。冷や汗がやばい、背中をつーっと伝ってる。
「えーっと、これとこれで」
「わかりました。ご注文は以上ですか?」
「はい」
沙彩ちゃんがパパッと済ませてくれて、なんとかなった。
そそくさと、詩織さんのところに行く。
「意外とバレないもんだね。新しい子って適当に言ったのに」
「詩織さん、これ本当にこのまま着ないとダメ?」
「当たり前でしょ。凛はちゃんとかわいい服も着た方がいい」
「うっ、苦手なんだって」
まあ、まだ緩めの制服でよかった。なんか他にも、黒いゴスロリみたいな服も用意してあってさ……さすがにね。
にしても、その服を見た時になんかぞわっとしたんだよね。なんでだろ。たまに、真っ黒な服とか見ると、そういう感覚がするんだけど。
新発見、俺は黒が苦手ってことか。いや、かわいい服もちょっと苦手です。こういうところは未だに男なのかもしれん。
そのまま、詩織さんに注文を伝える。
出来上がったそれを、二人の方へ運んで、とりあえず一仕事は終わり。一応、二人には俺がここに一旦残るって伝えてあるから、そのまま帰って貰うんだってさ。
……この罰ゲーム、他の客の接客もさせられるの終わりなんだけど。助けて。
「ごちそうさまでしたっ」
「……ありがとうございました」
元気な沙彩ちゃんと、珍しく敬語の少年にぺこりと頭を下げて挨拶。乗りきった!
ガッツポーズをしてると、ポンと頭に手が置かれる。
「頑張ったけど、まだ働いて貰うからね」
「ハイ」
まだ逃れられないらしい。
「ってかさ、治療目的でここ来ただけなんだけど。これ今日だけで済むの?」
「んー、さっきの応急処置である程度持つけど、まだ危険だからもうちょっと治療が必要かな。異能の調整もしないとだし」
詩織の異能は回復系だけど、それとは別に基地の設備で異能を調整してるデバイスの修理とかもしてくれる。めちゃくちゃ優秀。
なんか知らないけど、カントホルツも結構ガタが来てるみたいだし。魔法少女ごっこしすぎて、死んじゃったら洒落にならないので、ここら辺は言うこと聞いとかないとね。
……これ、まだ着てないとダメかな。
ぴろん、とスマホが震えた。
少年から、『この人といるの気まずいんだけど』と文句のメッセージが来てる。ごめんね。
――からんからん、と扉が開く音がした。
「ここで問題ない?ひまりはよく食べるけど、満足できるかわからないし」
「いや、ちょっと!人をなんだと思ってるんですか。
「二人とも落ち着いてくれ。ひまり、足りないならもう一品とか食べていい」
「あの、真白さんまで??」
愉快な三人組が来た。黄色い髪、青い髪に銀髪。やたらとカラフルだ。
この世界、結構そんな感じなんだよね。沙彩ちゃんも赤いし。
「いらっしゃいませー」
と言うと、そのうちの一人――黄色い髪の子がこちらにバッと振り向いた。
「あっ、三人なんですけど。予約とかいらないですか?」
「大丈夫です。そちらの席にどうぞ」
うわ、なんか敬語でやってるとぞわっと来るな。違和感すごい。普段、アキラとかしか話してないからさ、そういう機会ないんだよね。久しぶりすぎ。
「二人とも、ここでいいそうですよ」
「ええ、わかったわ。さて、何にしようかしら」
「喫茶店も、久しぶりだ」
「真白さんは働きすぎ」
どうやら、黄色い髪の子がひまりって名前らしい。快活で元気、どこかで聞いたことのある声だ。
他の二人に敬語だから、後輩みたいな立ち位置なんだろうか。っていうか、どういう集まりなんだろう。
銀髪の人は働きすぎって言われてたし。
とりあえず、注文でも聞きに行くか。
「ご注文はお決まりですか?」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ。えーっと」
メニューを開いて、黄色い子――ひまりがどれにしようかと悩んでいるとき。
銀髪の人がこちらをじっと見ている。確か、真白って呼ばれてたよね。なんだろ、何かやったかな?
知り合いではないよね。……いやでも、なんか見覚えはあるようなないような?
ガバッと立ち上がって、俺の手を掴んだ。
「……君、沙夜だったりしないか?」
そっと、立ち上がって俺の顔を覗き込んでいる。煌めいた瞳が見える。意思の強さを秘めた目、綺麗な顔立ち。それが俺の視界を埋めている。
うわ、美人。それに吸い込まれそうで、少しだけ黙り込んでしまった。
他の二人も、急なことで固まっている。
「……あの、沙夜って誰ですか?」
と聞くと、ハッと我に返ったように、手を離された。
「すまない、ちょっと似ていたものだから」
似ている、か。俺に似てる人ってどんなんだろう、普通に気になるな。
「あはは、すみません。注文なんですけど――」
誤魔化すように、黄色い髪のひまりさんが、メニューを指差して注文を始めた。
「こんなもんですかねー、
この子、まあまあ声が通るタイプだ。にしても、顔面偏差値高いな、この三人。
「そうね、私はこれにしようかしら」
「私はこっちので」
と、注文もなんとかスムーズに終わって、そのまま詩織さんに伝えた。
「賑やかな面子だね」
注文をそのまま伝えると、そう返されてなんとなくまたその三人組に視線を向ける。
「真白、さっきのは一体何?働きすぎておかしくなった?」
「……昔の知り合いと似てた、それだけだ」
「あっそう。まあいいわ、元々の目的の話をしましょう」
どうやら、何か話すついでにここに来たのか。なんとなく、気になってしまう。覗きみたいで悪いんだけどさ、店員がいるのに話してるから仕方ないよね。
「あー、ルビーブロッサムちゃんの話ですねー」
ん?
「そうよ、あの新人の話。この前見た時は、まだダメだったわ」
「とはいっても、撃墜スコアはすでに8だ。トパーズはすぐに抜かれるんじゃない?」
「ちょっと、こっちも駆け出しなんですけど?とはいっても、この地域ですからねー、新人一人ってのはちょっと、心配ですね」
おかしいな、魔法少女の話をしてない?トパーズって言った?
「どうやら、この前はルビーブロッサムは怪人とも戦ったみたいだものね。心配だから、私が手伝うことにするわ」
「元々、アビスハンターズがこの辺りを守っていることもあるから、多少は問題ないと思うが、気を付けてくれ」
「現役最強からの激励痛み入るわね」
やばいやばい、魔法少女じゃんこの人たち絶対!っていうか、特定できそうなこと言ってない!?
いや、生の魔法少女が沙彩ちゃん以外にも!?ぐっ、会話に加わりてぇ~!
いやでもさ、うーん。オタクとしてはちょっと、眺めていたい。
「そういえば、ルビーブロッサムちゃんの話ですけど。ここら辺で、魔法少女を名乗る変な人が出てるらしいですよ?」
「ああ、確かに――マギア☆リンリンだったかしら」
ん?
ちょっと、会話聞くだけで満足するかと思ったら、あの……俺のことが認知されてますか?
やっべ、ちょっとやっぱり話したくなってくる。
「名前が法則からずれてないか?」
「まあ、そうなんですけどねー?」
「ま、どっちでもいいわ。私はルビーブロッサムを手伝う。その上で、そいつを見かけたらなんとかするもの」
がたん、と思わず我慢できなくて三人のいるテーブルに手をついてしまう。
バッと、三人の視線が集まる。あ、やべ。勢いで来ちゃった。
ああ、もう!こうなったら!
「あら、聞こえてたかしら?私たちのこと、何かばらそうって言うんなら――」
「サインください!」
「は?」
青い子、
ぴたり、と銀髪の人――真白と
と思えば、ひまりはこの様子を見て、くすくすと笑い始めた。
「あはは、いいですよ。ほら、先輩たちも。ファンがいるんですから」
「……いやでも、こちらが迂闊だったとはいえ正体を晒すのは」
「もー、こんなところで話し出した私たちが悪いんですから!ほら!」
ひまりのごり押しによって、そのままサインを書いてもらうことが成立。
まずは一枚目。ひまりのものだ。
そこに書いてある文字は――
「トパーズガーベラ……やっぱりトパーズちゃん!?」
「おっ、知ってくれてましたか。広報担当、トパーズガーベラだぞ!なんちゃって」
「かわいい!!!」
「いや、声でかすぎるんだけど!?」
えっ、えっ。トパーズガーベラなのマジで!?
確かに、顔もそれっぽい!
で、こっちは。
少し目付きの鋭い人だけど、こんな感じの美人魔法少女もいたような。誰だろ。
「サファイアネモフィラ……撃墜スコアが確か180ぐらいの!」
「あら、意外と知られてるの?」
「魔法少女オタクなんで」
「そう。あまり触れ回るのだけはやめてね」
「はい!!!」
「元気がよすぎない?」
やったー!
サファイアネモフィラは結構、古参ってほどでもないけど、手堅い感じの魔法少女だ。無難に強い。
その魔法少女がここら辺をルビーブロッサムと一緒に担当!?やったー。
で、最後はー?
「――ダイアモンドカメリア、て」
「ああ、そうだ。期待はずれだったかな?」
ダイアモンドカメリア。通称、銀閃。
現役最強で、もっとも漆黒のスコアに近い存在。
……そして、俺が魔法少女に憧れたきっかけ。
「ありがとう、ございます」
何か言おうとして、その言葉だけがぽつりと出た。
なんか、泣いちゃいそうだったから。そのサインを仕舞って、テーブルから離れた。詩織さんには、後で叱られた。
◇◇◇
「やった、ダイアモンドカメリアの。……私の憧れのやつ」
「いやでも、なんで憧れなんだっけ」
「ああ、そっか。いつかの日見てて」
「でも、あれより
「……頭痛い、考えるのやめとこ」
◇◇◇
「にしても、変な子でしたね?」
「そうね、ここで真白が話そうと言ったときはどうしようかと思ったけれど。こんなところで、大事な話をするし」
「元から、この場所は気になっていた。だから、少しばかり私たちの正体を餌にちょっとつついてやれば、何か反応が出ると思ったんだがな」
そんな三人の脳裏にあるのは、先程の店員。
自分達の話を聞いて、すごい勢いでサインをもらいに来た少女。
元々、ルビーブロッサムやこの地域について少し話したいと元から思っていてそれで集まった三人だったが、真白のおすすめの店をそのまま選んだ。
この店は少しばかり怪しいと真白が感じていて、それを確認するためでもあったが、結果として釣れたのは魔法少女オタクだけ。
少なくとも、この存在からは、怪しい気配を感じることはなかった。
怪人を生み出す組織だとか、そういったものとは関係がなさそうで、とりあえず胸を撫で下ろした。
「あれだけ熱心なファンを見ることはあまりないわね。私は人気があまりないし――」
と、
地面からぼこぼこ、と災厄獣が姿を現す。
それに対処しようとして三人が身構えたところに、赤い光が見えた。
「ルビーストライク!」
空から降ってきたルビーブロッサムが、落下の勢いを載せて災厄獣へと拳を叩き込む。
「えっ、空から来ましたよ!?」
「早いな。これが例のルビーブロッサムか」
と、驚く真白とひまりの目の前で災厄獣は崩れて消えた。
「……へえ、前よりも魔力の扱いが良くなっているわね」
それを見て、ぽつりと
「うわ、急に飛び出していったと思ったら災厄獣かよ」
実は、今日知り合った相手と帰るという気まずい雰囲気の中、急に放っておかれた少年がいたとかいないとか。
文字数どれぐらいがいいですか?
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