TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!   作:魔法少女マジデ☆ドコダ

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静かに佇む、サファイアネモフィラ

 はあ、とため息をつく。

 

 凛みたいに、外で怪人とか出てないか見回りをしてるけど、意外と暇だ。

 アキラさんも、あまり喋らないのもあるけど。

 

 というか、最初の方はずっと凛がいたせいで騒がしすぎたんだと思う。あいつは今、まだ調整があるとかで、あの詩織って人のところにずっと行ってるんだとか。

 

 そのせいで、あいつのいない時間が意外と静かに感じる。

 

 なんか、そう思うと振り回されてるみたいで嫌だな。あの魔法少女の人だって、たぶんそんな感じだし。

 

 そもそも、急にあの人――緋色さんだっけ?が、一緒に来て。そのまま凛は喫茶店に残ったから、二人きりになるのがすごい気まずかった。

 

 どういう状況なのって思ったら、用事があるからとか言ってどっか行くし。嫌がられてんのかなと思ってたけど、普通に災厄獣(オレトロス)が出たかららしい。

 なんでもいいけど。

 

 あいつ、人を振り回しすぎじゃない?

 アキラさんが変に過保護なのも、危なっかしくて放っておけないとかありそうだから。実際、そうだし。

 

 にしても、あいつは大丈夫なのかな。やっぱりおかしい。

 

 人の体にあんなたくさんの異能があるなんて、普通発生するわけない。人に耐えられるものじゃないし。

 

 ――まるで、異能を植え付けられたみたい。

 

 いや、もしかしてそういうこと?ああでも、そんなことはないか。

 かなりのレアケースだし、そんな目にあった人は、あんなテンション高くないだろうし。

 

「出てこい、デッドボルト!!」

「ああもう、うるさいな」

 

 と、ぼんやりと考えていると耳障りな声が聞こえた。

 

 全身を変な機械で身に包んだ、カマキリみたいな体の存在。

 

 ――怪人だ。本当にほぼ毎日出るんだ。これを全部、凛に任せてたってのも、アビスハンターズがどうかしてない?

 

 懐中時計を出して、ボタンを押した。

 

『解析開始』

「戦闘モード」

『了解しました。戦闘モードに移行します』

「変身」

 

 にしても、毎日怪人が出てくるなんて。そりゃ、凜もあれだけボロボロになるわけだ。

 

『アナライザー、戦闘開始』

 

 変身が完了したし、さっさと決めるか。

 

「変身ヒーロー?デッドボルトか!?」

「違うよ」

 

 デッドボルト、か。凜の変身状態の名前だっけ。あいつ、めちゃくちゃ狙われてるじゃん。

 

 ぐるり、と懐中時計の長針が6時を指した。攻撃モードへの移行。

 

 まあいいや、とりあえず。

 

「デッドボルトを出せ!!」

 

 このうるさいのをなんとかするか。

 

 長針に続いて短針も回り、六時を指した。こっちは攻撃方法の指定。

 

『攻撃シーケンスに移行』

「面倒だし、あんたのは解析を待たないよ」

 

 にしても、怪人はやたらと喋る。人間でもないのに。

 

 ああでも、人が素材なのもいるんだっけな。

 

「ごちゃごちゃと!」

 

 鎌のようになっている手が、風を切ってこっちに向かってくる。

 

 それをくぐって、放った拳を鳩尾にめり込ませた。

 

「ぐぅッ!」

「まだだよ。これで終わり」

 

 内部にぐりっと、拳をねじ込んだ。

 

 手のひらから、バチバチと火花が飛ぶ。

 

「ばいばい」

 

 手から放たれた熱が、怪人を内部から焼き尽くした。

 

「がぁぁぁぁっ!!!」

 

 断末魔とともに、焼けて朽ちていく。

 

 別に、普通に倒す分には問題ないな。

 

「……たまには凜の方の様子でも見に行こうかな。暇だし」

 

◇◇◇

 

 ぐぬぬ、連日喫茶店の制服を着せられてる百日紅凛です。

 

 カントホルツと一緒に、俺の体の調整が結構かかってるんだなあ。俺の体そんなにやばかったの?っていうのをずっと体感してる。

 

 っていうか、ずっとこのまま喫茶店で働かされてるんだけど。なんなん、この状態。

 

 マジで恥ずかしいんだって。いや、鏡で見たら意外と似合ってんだけどさ。

 

 ってか、少年も沙彩も気付けよ。そうしたらもう、他人のふりしなくてもいいじゃん!

 

 また来たときに、知らない人ですよーってやらないといけないんだけど?

 

 そもそもなんだけど、沙彩ちゃんも少年もまあまあ来るんだよね。これはそもそも、俺に会いに来てるだけなんだけどね。こう、基地の奥にいるときはいつもの俺だから。

 

 ちょっとだけ、沙彩ちゃんと仲良くなりました。いえい。

 向こう側から、ちょっとお話ししましょうみたいな感じで、少しだけ友達っぽいことをしている。

 

 順調だね。

 

 まあいいや。

 

 にしても、この前は魔法少女がたくさん来ててすごかったなあ。

 

 明るく元気で可愛いトパーズちゃん。大人びた美人のサファイアネモフィラさん。

 

 ――それから、ダイアモンドカメリア。

 

 現役最強の魔法少女から、サイン貰えるの普通に熱すぎるよね。最高だわ。

 

 どうせなら、みんなの変身とかも見たかったけど。

 

 っていうかさ、魔法少女についてちょっと思うんだけどね?

 

 変身バンクが存在してるのに、生身がバレたらやばいのって惜しいよね。みんなに変身見せてほしいぐらい、キラキラしてるのとかありそうなのに!

 

 まあ、迷惑かかったら嫌だからいいけど。にしても、俺は知っちゃってるんだよね正体。名前まで聞いてしまったし。

 

 ……知りたくないオタク心があって、複雑。

 

「なーに、考えてるの。凛」

 

 ふにっ、と頬をつつかれた。

 

「詩織さん、急に何?」

「可愛い後輩を眺めてるの」

 

 あまり表情が動かないまま、じっと見てくるので怖い。いや、なんか口角が微妙に上がってる。些細な変化すぎてわかんないって。

 

「ねえ、詩織さん。ここでまだ働いてないとダメ?」

「んー、でもあんまり凛を外に出すのはまずいし。じゃあ、働いてもらった方がいいかなーって」

「……それだけ?」

 

 そう聞くと、こてんと首を傾げた。

 

「もちろん、凛に可愛い服を来てもらうためでもあるよ?」

 

 そして、そう当然のように言う。やっぱり。

 

 俺は着せかえ人形じゃないんだけど。見るなら、魔法少女の衣装でも見ててください!

 

 普段から、あんまり女の子っぽい感じの服着てないけどさあ。

 

 っていうかね、この喫茶店まあまあ人来てびびるんだよね。詩織さん一人でやってるのマジ?ってなる。

 他にバイトとかいんのかな。

 

 ――からんからん、と扉が開く音がした。

 

「いらっしゃいま、せ……」

 

 くるっと、そちらを向いてから、思わず止まった。

 

「あら、ファンの方」

「さふぁ……じゃなかった。雪那さん」

「ええ、どうも。空いてるかしら?」

「はい、こちらへどうぞ」

 

 柔らかく目を細めた。

 

 魔法少女サファイアネモフィラ、ここの担当の魔法少女じゃないはずだけど。話を聞くかぎり、ルビーブロッサムを手伝うみたいだから来てるのかな。

 

「ねえ、あなた」

 

 席に座った雪那から、不意に声をかけられる。

 

「なんですか?」

「少し聞きたいことがあって。……真白の言ってた沙夜って誰のことかわかるかしら」

 

 急になにかと思ったらそれか。確かに気になるけど、知らないんだよな。

 

「いいえ。私に似てるってのは気になりますけど」

「そう、そうなのね」

 

 それは残念だわ、と言ってからメニューを開いた。

 

 結局誰だったんだろうな、沙夜さん。

 

「ああそういえば。それ以外にも、緋色沙彩って子は知っているかしら」

 

 じっと、雪那が俺を見た。なんでここで沙彩ちゃんが?

 

「たまに来てますよ、ここに」

「えっ、そうなの?」

「たまたまみたいですけどね。その、店長の知り合いに会いに来てる、みたいな感じです」

「……へえ」

 

 沙彩ちゃんとは、ちょっと友達みたいになってますからね!

 なんかこっちが強引に関係作ってて、仲良しかと言われると微妙だけど。

 

 普通にいい子だから、仲良くなりたいな。

 

「まあいいわ。注文はこの……」

 

 なにやら引っ掛かってるようだけど、そのまま雪那さんの注文を取ろうとした。

 

 と、その時――ぞわり、と背筋に嫌な感覚が這う。

 これは、災厄獣(オレトロス)

 

 あーもう、今出撃できないんだけど。

 

「ごめんなさいね、出ないといけないわ」

「わかりました」

「物分かりがよすぎ………ああ、そりゃそうよね。また来るわ」

 

 そそくさ、と店を出ていってしまった。

 

 気になるってー!うぐぐ、行けないしな。

 

「凛、どうしたの?」

「いやあの、この前来てくれた人が来たんだよね。魔法少女の人」

「ああ、それで?」

災厄獣(オレトロス)で出ていってしまったみたいってことだけど」

「そっか、じゃあ追いかけてみる?」

「え?」

 

 聞き間違いかと思って、思わず間抜けな返事が出た。

 

「そろそろ、君の調整も終わったからさ。見に行くだけならいいよ」

「マジすか」

「マジだよ」

 

 ガバッと、詩織さんの手を掴んだ。少しだけ詩織さんの眉が下がる。

 

「ありがとう!!!」

「うるさいよ、さっさと行って」

 

 制服を脱ぎ捨てて、店を出た。

 

「あれ、憧れって言えるのかな。歪だね」

 

 何か背後で詩織さんが言ってる気がしたけど。雪那を追いかけるのに専念した。

 

 

 

 

 

 ――パリ、パリパリ

 

 空が裂ける。ひび割れた空間から這い出てくるのは、丸くて巨大な体躯。

 

 ぬめりのある体表と、舌を伸ばすその姿はまさに。

 

「カエルね」

 

 そう、カエルだ。それと、雪那が向き合ってる。

 

『あまり近づくとバレるぞ』

「久々に喋ったね、カントホルツ」

『メンテ中だったからな』

 

「あれ、凛さん?」

「ん?」

 

 後ろを振り向くと、赤い髪が揺れるのが見えた。

 

 な、なんでここに。沙彩ちゃんがこちらを見て、大きく目を見開いた。

 

「沙彩ちゃん、奇遇だね?」

「いやまあ、その……凛さんこそ」

 

 と沙彩ちゃんが何か聞こうとした時に、雪那が災厄獣(オレトロス)と対峙していることに気付いたみたいで、そのまま固まっている。

 

マジカルジュエリーアップ

 

 腕輪に手を添えると、そこに填められていた宝石が青く光る。

 

 光が雪那を包み、服装が変わっていく。

 

 基本はルビーブロッサムと同じフレアワンピ。

 

 パン、と手を叩くとそこから白い手袋が填められていく。

 

 フリルのついたスカートと靴が、光が弾けて装着されて。フレアワンピが青く色づいていく。

 

 くるり、と回ると花びらが舞う。

 

 青い髪が長く伸ばされて。花のマークが刻まれた、青い宝石の填められた髪飾りがついた。

 

「――静かに佇む、凍てつく花弁。魔法少女サファイアネモフィラ

 

 最期に腕を振るうと、彼女を覆っていた光がすべて弾けて、よく見えるようになる。

 

 青を基調とした魔法少女が、カエルの災厄獣(オレトロス)の前に立った。

 

 生のサファイアネモフィラだ!

 

 なんて言ってる場合じゃないよね。目の前に沙彩ちゃんいるしさ。

 

 不意に手を掴まれる。真剣な沙彩の視線がこちらを貫いた。

 

「凜さん、危ないです。あれは――」

災厄獣(オレトロス)でしょ」

「わかってるなら早く逃げてください」

「いやあ、まあ。うーん」

 

 まあ、魔法少女だもんね。これは俺に見られたくないはず。

 いやでもさ、見たいし。

 

「凜さん!」

 

 ずいっと、沙彩ちゃんが顔を近づけてきた。目が合う。

 

 あっ、これは違うなと直感でわかる。魔法少女であることを見られたくないとかじゃなくて。

 

「私、凜さんのことはあんまりよくわかりません。なんとなく、見た目がいいなーって思ったことはあるぐらいですし。でも、急に連絡先渡してきたりとか。遊ぶ約束を付けてこようとしたりとか。なのに、急に体調悪くなって断ってきて、真っ青な顔で目の前に出てきたりしていて」

 

 この子は普通にいい子だから。

 

「放っておけなくなりました。私、凜さんとは友達……って言ってもらいましたけど。まだそんなに仲良くないはずなんですけどね」

 

 俺のことを巻き込みたくないんだ。

 

「だから、これからもっと仲良くなりたい人を、危険に晒したくないんです」

 

 参ったな、そんなこと言われたら引き下がるしかないのに。

 

 不意に、災厄獣(オレトロス)と向かい合っているサファイアネモフィラの方を見る。あっちも、こちらを一瞥していた。やべ、バレてるかなあれ。俺があの店員とかさ。

 

「だから、凜さん。逃げてください」

「仲良しとか言われたら照れちゃうね」

「もう真面目に聞いてくださいって!もういいですっ!」

 

 沙彩ちゃんの言葉を聞いて離れようとして、その前に軽口を叩いていると。沙彩ちゃんが覚悟したように、災厄獣(オレトロス)の方を向いた。

 

 そして、指輪に嵌められた宝石を指でなぞる。

 

マジカルジュエリーアップ

 

 赤い光が沙彩を包み込む。光が弾けて、沙彩の衣装を形作っていく。

 

「――強く煌めけ真っ赤な花弁! 魔法少女ルビーブロッサム!

 

 沙彩ちゃん――魔法少女ルビーブロッサムが、こちらに振り向く。

 

「……凛さん、そこで待っててくださいね?」

 

 と、そのまま災厄獣(オレトロス)へと突っ込んでいく。

 

 ……どうしよ、これ。

 

◇◇◇

 

 カエルの災厄獣(オレトロス)が、地面に着地する。どしん、と少しだけ地響きがした。

 

 数メートルはある大きさ、その巨体が落ちるだけで相当の衝撃が発生するらしい。

 

「さて、どうしようかしら」

 

 サファイアネモフィラは、一人呟く。少しだけ強い程度の災厄獣(オレトロス)に見える。

 

 一人でも問題ないはずだが、後ろには一般人……もとい魔法少女オタクの店員がいる。

 

 そこには、もう一人魔法少女がいるから意外と問題ないかもしれないが。

 

 と考えているそばから、巨大なカエルが口を開いて、何かを飛ばしてきた。

 

 それは、唾。水滴を散弾のように飛ばしている。

 

 普通の水滴ならいい。でも、これは災厄獣(オレトロス)の出したもの。災厄獣(オレトロス)は、異空間から現れる未知の存在。

 そんなものが出した唾が普通のものじゃない。

 

 狙いを逸れた唾が付近にある塀に当たって、じゅくじゅくと溶けていく。

 

「フロストフラワー」

 

 花びらが舞う。サファイアネモフィラの正面に幾つもの花が咲いた。ひんやりとした空気を伴ったその花に唾が付着すると同時に――凍りついて、重力に従って落ちていく。

 

「防ぐぐらいはいけるけれど。それでも、向こうに飛んだら面倒ね」

 

 あの店員の方に飛んでいく前に拘束してから倒すか――と考えている時だった。

 

 深紅の光がサファイアネモフィラを横切って、災厄獣(オレトロス)に突っ込んでいく。

 

ルビーストライク

 

 真っ赤な光を纏った拳が、災厄獣(オレトロス)を捉えた――

 

「あれ、うわっ!?」

 

 ――はずだった。カエルの体表にある、粘液のようなもの。ぬめり、としたそれのせいで拳が滑ってうまく入らない。

 

「――ッ!」

 

 それでも、その魔力を伴った攻撃による衝撃はあったらしく、災厄獣(オレトロス)を少しのけ反らせた。

 

「すみません、遅くなりました」

 

 すたっ、とサファイアネモフィラの隣に――魔法少女ルビーブロッサムが降り立つ。

 

「別に待ってないわ。一人でやるつもりだったし」

「そう、ですか……」

 

 サファイアネモフィラは冷たく言い放つ。実際、たまたま通りがかった時に倒そうと思っただけで、ここがルビーブロッサムのいる地区だと知っていても、期待はしていなかったからだ。

 

「まあでも、さっきの攻撃は悪くなかったわね。魔力の制御も、前よりもよくなっていたし。一緒にあれを倒しましょう?」

 

 ふふっ、とサファイアネモフィラは軽く笑う。

 それを見て、ルビーブロッサムは少しだけ口元を緩めた。

 

「よかったです!魔力の制御については、マギア☆リンリンさんに少し教えてもらったので」

「……ああ、そう」

 

 なんでそこまで魔法少女を名乗ってるらしい存在が出てくるのか、と思いつつ口には出さない。

 そのまま、二人の魔法少女が災厄獣(オレトロス)と相対する。

 

 カエルの災厄獣(オレトロス)が、跳び跳ねた。

 それと共に、舌を鞭のようにしならせて叩きつける。

 

スカーレットフローラ!

 

 ルビーブロッサムの胸元の宝石が赤く発光した。

 赤い花弁が吹き荒れて、いくつもの花びらがカエルの舌に当たってそれを退けていく。

 

 空中で攻撃を受けて、カエルの姿勢が崩れる。

 

「ここね」

 

 サファイアネモフィラが、髪飾りの宝石に触れた。青い光が放たれて、それが手に纏わりついた。

 そして、それを空中のカエルに向けて、翳す。

 

サファイアシューティングスター

 

 青い光線が、カエルの体を貫いた。

 

「はい、終わり」

 

 フッと、手を振り払った瞬間に――空中で災厄獣(オレトロス)がバラバラと崩れていく。

 

「えっ、一撃?」

「そんなものでしょう」

 

 涼しい顔でそう言ってのけるものだから、ルビーブロッサムとしては「あはは」と苦笑いするしかない。

 

「さて、新人を一人でこんな地区に放り出すのは、同じ魔法少女として本意ではないわ」

「……それは、どういう?」

「言ったでしょう?近々この辺りに来るって。私も、ここを担当するわ」

「……それって」

 

 サファイアネモフィラが、手を差し出した。

 

「魔法少女サファイアネモフィラ、蒼崎雪那。あなたと一緒に戦ってあげるわ」

「……はいっ!」

 

 その手を、ルビーブロッサムが握りしめた。

 

「それで、あなたは漆黒のことを知りたいんだったかしら」

「あっ、そうです!」

「漆黒ね……私の知ってることは」

 

 ――その時に、急に光が辺りを包み込む。それと同時に発するのは、軽快な音楽。

 

 そして、現れるのは一人の少女。

 

「面白そうな話をしてますね?混ぜてくださいっ!」

 

 急な登場に、二人は固まる。敵ではないことはわかっていても、味方かどうかもよくわからないからだ。

 

 いや、あくまでそれを知らないのはファイアネモフィラ――蒼崎雪那だけ。

 

「マギア☆リンリンさん……」

「はい、魔法少女マギア☆リンリン。推参です!」

 

◇◇◇

 

 その頃、喫茶店は閑散としていて客はいない。

 

 ――がちゃり、と裏口が開く。

 そこから顔を出したのは、晴だった。

 

 それを、出迎えた詩織が表情を動かさないまま、軽く手を振る。

 

「あれ、凛いないの?」

「魔法少女追いかけていったからね」

「あっそ。元気になったんだね」

 

 呆れたようにそう呟くと、詩織はその様子をじっと眺める。

 

「晴くん、凛のことどう思うの?」

「どうって?」

「何か、疑問に思うことってある?」

 

 ぴくり、と晴が固まる。

 

「……それって、どういう」

「やっぱり、思うことあるんだね。まあいいよ。とりあえず、こっちで待っててよ。そのうち戻ってくるし。晴くんも、デバイス調整する?」

「……別に今はいいよ」

 

 言葉の真意を確かめたかったが、詩織の雰囲気からして教えてくれそうにもない。諦めて、晴は椅子に座って待つことにした。

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