未来視のスタンド使いは幸せな夢を見るか? 作:モリーの評価者様
12,000の表示が置かれたコース上、涸れた川。
その場にたどり着くまでに、ディエゴ・ブランドーはジャイロ・ツェペリを追い抜いていた。
フォルクヴァンには何が起こったのか全くわからなかった。
しかし。
(美しい者には美しい勝利を……それこそが正しい芸術だ)
そう心の中で呟いてしまうほど、フォルクヴァンは冷静だった。
追いつくのはゴールしてからで構わない、ただ今はその姿を見ていたい。
フォルクヴァンは思わず少しだけスピードを出し、先頭集団の中から一馬身前に飛び出す。
その時だった。
大きな音を立て、川にかかった橋が崩れた。
『どおしたんだーーーッ 橋板が砕け落ちてるうううーーーー!!』
ジャイロ・ツェペリの馬が踏みしめた橋板が砕け、ディエゴ・ブランドーは崩れる橋に残された。
後続馬は橋を避け、川底を走り抜けていく。フォルクヴァンはディエゴ・ブランドーが視界からいなくなることに一瞬躊躇ったが、1頭、また1頭と抜かされ、悔しそうな顔をして川底に降りた。
長く走り続けた先、ジャイロ・ツェペリは再び行動を起こす。
コースを外れ雑木林を走り抜けることでショートカットを図ったのだ。
後続馬たちは二手に別れ、ジャイロ・ツェペリの後を続くか、通常ルートを進むかの賭けに出る。
フォルクヴァンは鞍のホルスターからハーモニーを取り出し、腰につけた弾帯から50口径110グレインの重量弾をチャンバーとサイドゲートに滑り込ませた。
たった9発。それだけを携え、フォルクヴァンも雑木林へ走行する。
「さぁ……美しく始めよう」
ドカンッ!!と大きな音がなり響き、雑木林の中にフォルクヴァンとウルトラが走行できるだけのスペースが次々と生まれていく。行く手を阻む太い枝が枯葉のように粉々に破壊され、ウルトラが進むべき道が切り開かれる。
弾を消費しすぎないよう、フォルクヴァンはなるべくウルトラに道案内を任せ、迂回する必要がある枝だけを破壊していく。
50口径の弾丸がウルトラや他の参加者に当たらないよう、フォルクヴァンは大胆に見えて繊細な射撃を行った。
やがて圧倒的な破壊力を持つハーモニーで障害となる木を打ち砕きながら走り続け、ジャイロ・ツェペリ、そのすぐ後ろを抜けたポコロコの少しあとに続いたのだった。
ゴールまで残り4,000メートル。
フォルクヴァンは先頭集団に紛れ、悪魔の下り坂をこらえながら降り続ける。
ここに来てまだ、ディエゴが一切視界に映らない理由をフォルクヴァンは考えた。しかし、少し先で起こった崖の落下に意識が向き、再び目の前の勝利を思い出す。
ここで1位を獲る必要はない。1st.STAGEはあくまでも様子見と情報収集の場であり、ウルトラの足を潰してしまうような危険はおかせない。
フォルクヴァンは何度も自身に目的を言い聞かせ、焦りがウルトラに伝わらないよう心を落ち着かせた。
50口径110グレイン弾(50-110WCF)_M1886で扱える最大級の口径。対人用としては過剰な破壊力を持つ。グレインは詰められた火薬の量で当時の個人携行火器の中では最高峰の火力を誇る
フォルクヴァンのレバーアクションライフルであるM1886(ハーモニー)はストック部分を切り詰めたソードオフ状態になっている。
肩で反動を受けられず、手首や肘に負荷がかかりやすいが、馬上で取り回しやすく、片手でコッキングできるというメリットを重視したものとなっている。