心操人使と無個性少女   作:Wii

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心操くんが好きなので書きましたが、セリフ回しとかキャラの解釈違いが起きたらすいません。



雄英入学前
心操人使&月見里一星:オリジン


 

世界人口の8割が"個性"と呼ばれる常人離れした異能を持っているこの超人社会で、何の力も持たない、"無個性"な人間がどれくらい生きにくいか、想像できるだろうか。

 

 

私、月見里(やまなし)一星(かずほ)は"無個性"だ。

 

 

周りの人がみんな何かしらの"個性"を持っている中、自分一人だけが何の個性も持たない。その疎外感がわかるだろうか。

 

「あいつだけ"無個性"だ」────その一言で、私は排除される。

 

私がいじめられるのは必然だったのかもしれない。

 

人付き合いが少ない方が気楽だとか、人をいじめる連中との付き合いなんてこっちからお断りだ、なんて性格ならまだよかったのかもしれないが……残念ながらそうでもなくて。

 

一緒に遊ぶ友達なんてひとりもできなかった。厳密には、友達と思える人がいなかった。

 

いじめ目的以外の理由で私に近づいてくる人はみんな私を哀れんでいる。

 

無個性でカワイソウ……

いじめられててカワイソウ……

いい子なのにカワイソウ…………

 

私ってそんなに哀れな生き物なの?"無個性"なのがそんなに可哀想?いじめられてるのが可哀想?

 

だったらどうして誰も私を助けてくれないの。

 

考えて、結論を出した。

 

あいつらはみんな可哀想な人に寄り添ってヒーローを気取ってるだけだ。

可哀想という気持ちが本物だとしても、自分には関係ないことだと心の底では思ってる。

"無個性"というわかりやすい社会的弱者に味方するふりをして、自分の上っ面を取り繕うための道具として私を消費しているんだ。

だってそういう奴らは決まってヒーローに憧れている。

 

……ふざけるな。何がヒーローだ。弱い人につけこんで自分だけ美味しい思いをして。ヴィランと何が違うんだ。

 

私がそんな風にひねくれていったのも、必然だったのかもしれない。

 

 

幸いなのかなんなのか…私の両親はまともだった。少なくとも、両親は真に私の味方でいてくれた。

 

でも───そんな両親を頼れなくなったのはいつからだったっけ。

 

いつからお父さんお母さんは何かと私に謝るようになったんだっけ。

 

最後に家族みんなで心から笑いあったのは…いつだったかな…………

 

 

私へのいじめが直接的な暴力を伴う段階になり、両親は引っ越しを決断した。ついでに法的措置もとって加害者の家族からそれなりにふんだくったらしい。引っ越し費用はそこから捻出された。

 

けれど町を出るとき、両親にも私にも笑顔はなかった。

 

「一星、ごめんね…」

 

両親の私を守りたいという思いは本物だと思う。それは伝わる。素直に嬉しいとも思う。ありがとうとも心から思う。こんな両親の下に産まれて私は恵まれてると感じた。

 

でも、それを言葉にしても両親は涙して私を抱き締めて、謝るばかりだった。

 

 

引っ越して、転入した学校でも私はまたいじめられた。そして哀れなものを見る目が注がれた。

正直期待はしてなかったのでショックはない。

…まあ、私をいじめる奴らが「将来はヒーローになる」とほざいていた時は、どうしようもなくムカムカして、全身をかきむしりたくなったけれど。

 

ともかく、私にできることなんてなかった。両親にこれ以上迷惑を、心配をかけたくなかった。

「無個性に産んでごめんなさい」というお母さんの顔も。

「頼りないダメな父親ですまない」というお父さんの顔も。

もう二度と見たくなかったから、私は何も言わずにいた。

 

私は勉強に力を入れて生きていくことに決めた。というよりも"無個性"にできる生き方なんてそれ以外に何もない。

"無個性"な上に頭まで悪いなんて、そんなのもう社会のゴミじゃないか。ヴィランとの違いは明確な犯罪行為をしてないだけ。それ以外は社会的に価値のない、いなくたって誰も困らない、むしろ喜ばれるような存在。

 

だから私は勉強した。ひたすら勉強した。周りが遊んでいる時も、笑いあっている時も、私はただただ机に向かっていた。せめて周りより頭は良く在るように心がけた。

 

その甲斐あってか、学年一位の座につけた。先生方には成績優秀者として記憶されている。だからといっていじめが止むことはない…というか嫉妬したヒーロー志望の彼らからのいじめは悪化したが、私も教師には期待していないのでどうでもいい。

いじめを相談したときのあのどうでもよさそうな顔。あれを忘れるには、私の心は狭すぎたから。

 

まあそんなことはどうでもいいか…

 

私の味方もいよいよいなくなってきた。学力一位の座は相応に嫉妬も買う。そして聞こえてくる。

 

 

無個性のくせに…

 

 

今さらダメージになんかならない。もう慣れた。哀れむ目を向けられるのも、蔑まれるのも。助けられないことにも慣れた。

別に勉強で見返そうという気はない。みんな死ねと思うこともあるにはあるが、正直どうだっていい。

 

ただ───やっぱり、つらいなと思う時もある。

 

「"無個性"のくせに!邪魔なんだよ!」

 

放課後の校舎裏。拳が飛んでくる。私はそれをそのまま受けて倒れ込む。下衆た笑い声が上がった。

 

「ぎゃはははは!女の顔にやりやがった!正志、やべーんじゃねえのー?」

 

「うるせえ!"無個性"がイキがるから悪いんだよ。そもそも、こいつを助ける先公なんかいねえだろ」

 

「がっ……!」

 

今度は蹴り。蹴っ飛ばすとまではいかないが、転ばされた私の体は既に砂ぼこりだらけだ。

 

「っぐ、は、っはは……はぁ」

 

「あ……?こいつ、何笑って……」

 

「さっきから、聞いてたら……はは、要は、私の方が頭がいいのが気に入らないんだろ」

 

私にできることなんかろくにない。抵抗なんてするだけ無駄だ。助けを呼んだって一時凌ぎ。こいつらはより巧妙に私をいじめるようになるだけだ。

 

だから、せめて、笑ってやる。

 

勉強という一点だけとはいえ"個性"があるにもかかわらず"無個性"に負ける、そんなこいつらを、笑ってやる。

 

笑顔ってのは結構大きい。別に楽しい状況じゃなくても、口角を上げたらなんとなく笑えてくる。

 

 

───苦しい時こそ笑顔でいる。かの平和の象徴、オールマイトからテレビ越しに教わったことだ。

 

 

「はははっ…まあ気にするなよ。いくら"無個性"より頭が悪くたって、誰も君を笑いなんかしない。そうだろ?…………勉強なんか意味ないってワルぶって、ゲームばかりの君が……私に勝てるはずないもんな。ははははっ……!」

 

「………この…クソ女っっ!!!」

 

拳の雨が降ってくる。マウントを取られた上で殴られるのはさすがにはじめてだ。

…痛いよ。泣きたいさ。なんで私だけって叫びたいさ。

でも私が苦しむ姿がこいつらにとって一番の娯楽なら……徹底的に抗ってやりたい。

 

「お、おい正志さすがにヤバイんじゃ……!」

 

「黙れっ!!てめえも何してんだよ!!この女ぶっ殺してやるから手貸せよ!!」

 

「ぶっ、ごぉ!……っはぁはは、殺すだって?いいねえ!あはっ!人殺しのヴィランでもヒーローになれる……その先駆けになるんだね正志くん!ぶははははははははっ!!」

 

「っ!!!コイツ……殺すッッ」

 

こいつの"個性"、なんだっけ……確か『トゲ』?だよな……たしか。

にしても、私は今日死ぬんだな。まあ全体的にそこまで悪くはない人生だったかもしれない。世の中私より苦しい目に遭っている人はたくさんいる。

 

ああ、でも……お父さんお母さんには、謝りたかった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って……………伝えたかった。

 

 

こういう時に限ってそんな後悔が脳裏を過る。だがもはやどうにもならない。

そしてそのトゲ付き鉄球みたいな拳が握り込まれて、私の顔に振り下ろされかけたその時。

 

「おい、何してんだ?」

 

「「っ!!?」」

 

すんでのところで拳が止まる。彼らと同じように声がした方に目をやると、紫髪のなんだか気だるげな男子が立っていた。

誰だったか……覚えがない。別クラスの生徒か。

 

「って、その子、例の"無個性"?でもまずいんじゃないか?さすがにライン超えてるぞ」

 

「なんだよ、誰だよてめえ。てめえには関係ねえだろうがよ」

 

「そう言われたらそうだけどさ。……にしても、あんたの"個性"、いいな。トゲトゲでかっこいいじゃん」

 

「あ?いきなり何、   ────」

 

……?

気だるげな男子が無理矢理話題を変えたと思ったら、さっきまで私を殴ってた男子が急に止まった。

動くことはもちろん言葉も発さなくなった。

 

「お、おい正志?……正志!?どうしたんだよ、おい!……て、てめえ、何を!?」

 

「別に何も?」

 

「嘘ついてんじゃ、   ────」

 

「……お前ら、帰れ」

 

先程まで私をいじめていたふたりは無言のままどこか生気を感じられない様子で本当に帰っていってしまった。

この不可思議な現象はおそらく、いや確実にこの気だるげな男子の"個性"だろうが…

 

「なあ、あんた大丈夫か?今からでも保健室行くなら肩貸すけど」

 

「いいの?」

 

「え?」

 

「"個性"の使用はヒーローじゃなきゃ犯罪だよ。たとえ子供でも、いやだからこそか、厳しく指導されるだろうね。……まあ私がチクったらの話だけど」

 

「いや……そうだけど……」

 

「…や、こんなこと言って悪かったね。助けてくれたのに。ありがとう、あのままだとたぶんホントに私は殺されてた」

 

手を貸そうとしてくる気だるげな男子の手をさりげなく払って、私は立ち上がり砂ぼこりを落としていく。

 

「一生の恩だね。このことは忘れないよ」

 

そのまま帰ろうとした私に、気だるげな男子は慌てたように声をかけてきた。

 

「お、おい。保健室、行かなくていいのか」

 

「帰りが遅くなると両親が心配するからね」

 

「でも血が出てる。早く手当てしてもらった方が…」

 

「大丈夫。明日保健室に行くから。ああ、君の名前は?こう見えても私は学年一位だからね。先生からの覚えもいいから、君もちょっと良い感じに見てもらえるようになるかも」

 

「あー、いや、いいよ。そんなつもりなかったし。それで、えっと……俺は心操人使。あんたは?」

 

「私?私は月見里。……それよりそんなつもりじゃなかったなら、なんでわざわざ私を助けたのかな」

 

「それは……女の子があんな暴力受けてたら、助けるのが普通だろ」

 

「じゃあ、私が男の子だったら助けなかったんだ」

 

「は?そういうわけじゃ……!」

 

「ああ、いいよ。わかってる。今のはちょっと意地悪だったね。ごめんね、命の恩人相手に。ところで時間も押してるし私は帰るよ。それじゃさようなら」

 

一方的に言いきって私は今度こそ帰ろうと背を向けて歩きだした。

……でも、この気だるげな男子……心操くんになぜか腕を掴まれた。

 

「何?あんまり女の子に触るものじゃないよ」

 

「それはごめん。でも、やっぱり…心配で。余計なお世話かもしれないけど。いじめられてたのを隠したいなら…俺もなんとかごまかすから。ちゃんと手当てを受けよう」

 

「────はぁ?」

 

心操くんがたじろいだ。

私自身、自分が発した声の低さに驚いた。

 

「助けてくれたことには感謝してる。でも何?私はもういいって言ってるんだ。それで話はおしまいだろ?ヒーローでも気取ってるの?君の言う通り余計なお世話だよ」

 

「……ヒーロー気取りなのは、そうかもしれない…」

 

「かもじゃなくて、その通りだろ。私は助けを必要としてないのに、そう言ってるのに、君はそれを無視してる。誰が言ったっけ、そうだオールマイトだ。『お節介はヒーローの本質』。それを悪いことだとは思わないけど私の気持ちを君は考えた?」

 

なんでこんなにムカムカするんだろう。なんでこんなにイライラするんだろう。なんでこんなに気持ち悪いんだろう。

わからない、わからない……でももう手遅れだということだけわかる。心操くんは何も悪くないのに、堰を切ったように心に溜まっていたどす黒い言葉が止まらない。

 

「話は変わるけど君の個性、たぶん"洗脳"だろ。発動条件は君の言葉に返事をすること。いいねえ、そんな強個性で。誰も傷つけず、何も壊さず、戦うことなく簡単にヴィランを捕まえられる優れた個性を持って。羨ましいよ。私には何もないけどね」

 

心操くんの目が見開かれた。理性がもう見苦しいから止めろと叫んでいる。でも止まらない、止められないんだ。何でなのかわからないけど、自分でも止められないんだ。

 

「さぞ気持ちがいいんだろうね。強い"個性"を持って生きるのは。自分だけの"個性"で弱い人を助けて回るのは。羨ましいよ本当に。"無個性"の私にはそんなことできない。人助けなんてしようものならむしろ怒られる。でも君はそんなことないんだろうな。強い"個性"だねって褒められる。どうせ君もヒーローになりたいんだろ?強個性という切符を生まれながらに持っている君なら簡単だろうね。たくさんの称賛を集めて、誰からも認められて、感謝されて、充実した人生を過ごしていけるんだろうね」

 

「ねえ、考えたことはあるかい?"無個性"の気持ちを……いや、『もし自分が無個性に生まれてたら』なんてこと。ないだろ?そうだろ?あるわけない。だって現実の君は"個性"があるからね。誰からも蔑まれて、哀れに思われて、いじめられて、いつも仲間外れにされて、日陰者として生きるしかなくて、実の家族にも心を開けなくて、ヒーローが助けた"善良な市民ABC"のひとりにすらなれない、ヴィラン同様の社会のゴミの負け組"無個性"のことなんて考えもしたくないんだろう!?」

 

「それは、」

 

「違うというなら答えてみろ!!オールマイトは何て言うと思う?エンデヴァーは?ホークスは?ベストジーニストは!?"無個性"の人のことをどう思うか、もし"無個性"に生まれてたらどうしてたかって聞いたとき、あの人たちがどう答えるのか、強個性仲間の勝ち組の君の意見を聞かせてくれよ!!!なあ!!!」

 

「私は君たちヒーローの実績作りの材料なんかじゃない!!君たちを気分良く生きさせるための道具じゃない!!否定したそな顔してるけど目を見たらわかるんだよっ、勝手に私を可哀想って決めつけて助けなきゃいけないって思ってるのがわかるんだよっ!!!ふざけんなよ!!ほんとに可哀想だって思うならなんで今まで助けなかったんだ。助けるべき人がいるってわかってるのになんで行動しないんだ。"無個性"の気持ちがわからないのに、一方的に無理やり引っ張ってるだけなのに、なんで救えるって、なんで救えてるって心の底から思えるんだっっ!!!!」

 

「─────」

 

「…………………………………助けてくれたことには、本当に感謝してる。だから、お願いだ。もし私のことを可哀想だって思うなら、もう、放っておいてくれ。………………ありがとう、さよなら」

 

 

所々痛む体を無視して私は走って帰った。

勉強で一日中部屋にこもることも珍しくないから晩御飯に出なくても両親は特に声をかけてはこなかった。

 

それが今はただありがたかった。

 

そして、ただただ、心操くんに申し訳なくて、私に泣く権利なんかないのに、夜通し泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月見里…今、いいか?」

 

「……放っておいてくれって、言ったのにな」

 

翌日。顔に傷があったことは両親にはなんとか隠し通し、学校では適当にごまかしつつ、例のいじめっ子たちはなぜかおらず、珍しく靴を隠される程度のぬるい嫌がらせだけで済んだ帰り、私は心操くんに声をかけられた。

今私は心操くんに背を向けている。文字通り合わせる顔がなかったからだ。心操くんはただ私を心配していただけなのに、勝手に私がストレスを爆発させて、一方的に怒って、怒鳴って、当たり散らして、答えられるわけもない質問を投げつけて、…………どんな顔をして話をすればいいのか、わからなかった。

 

「昨日、いろいろ考えた。もし自分に"個性"がなかったらどうしてたとか……オールマイトとかならどう答えるかとか」

 

「あんな、無個性女の戯言を真面目に考えたのか」

 

「ああ。飯の時も、宿題してる時も、風呂の時もずっと考えてた。………………でも、わからなかった」

 

「月見里の言った通り、俺はヒーローになりたいって思ってる。だから、やっぱり、オールマイトとかにも憧れてるんだ。でもわからなかった。オールマイトならどう答えるんだろうって考えても、ヒーローらしい答えを言ってるところしか思い浮かばなかった」

 

「そうだろうね。オールマイトって"ヒーロー"を擬人化したような人だし。何も気にすることなんかない」

 

「……でも一番考えさせられたのは、"無個性"の人の気持ちの話だったんだ。怒るかもしれないけど、正直、今まで想像したことなかった。相手の気持ちがわからないのになんで救えてると思えるのかって質問に、考えたけど答えが出なくて、そもそも俺がなりたいヒーローってなんなんだろうってとこから考え直した」

 

「怒らないよ。それが普通だ。"無個性"の気持ちなんて普通は考えない。これは嫌味じゃないよ、事実だ。現にそうなんだから、私は気にしてないからさ。だから……」

 

「それで、俺は月見里を救けたいんだって気づいた」

 

「………………」

 

「勝手に助けた気になって勝手に終わらせるようなヒーローにはなりたくない。だから……その、うまく言葉にできないけど………誰かにとっての"本当のヒーロー"になるための方法は月見里が知ってるんじゃないかって思った」

 

「………………つまり君は、私を救けたいのに、その私に教えを乞うのか?」

 

「………話変わるんだけどさ、月見里。俺の"個性"予想してたよな。あれ、全部当たってるんだ。名前も発動の仕方も。……月見里は、俺の"個性"のことを『戦わずにヴィランを捕まえられる』って言ってくれたけど。……初めてだったんだ…誰かからそんなこと言われたの」

 

背を向けたままでも、心操くんが力なく俯いていることがなんとなくわかった。

 

「万引きとかいろいろ、犯罪し放題だって今まで言われてきた。ヒーロー向きなんてお世辞でも言われたことなんかなかった。でも月見里の言葉で……周りが勝手に言ってるだけなのに、勝手に腐って、それでもヒーローを諦めきれない自分が……すげえ小さく感じた」

 

そんな自分を恥じるように、そして決意を固めるように、心操くんが拳を握りしめて、顔を上げた気がした。

 

「あんたは嫌がるかもしれない、けど俺にとっての"本当のヒーロー"は月見里なんだ。…月見里みたいに言葉で、心を救けられるヒーローになりたいって気づいた」

 

「………………心操くん…」

 

「それと、ごめん。勝手に月見里のこと、可哀想だって決めつけて。月見里の気持ちを考えなくて。安っぽい同情なんかしてごめん。だから、今度こそ月見里のことを救けさせてほしい」

 

 

「………っふ」

 

「ふふ」

 

「ふ、はははっ……!」

 

「な…何笑ってんだよ……!」

 

「はは、あははっ…!いやごめん、ごめんね、でもさ、"救けさせてほしい"ってさ、お節介が本質のヒーローがさあ、そんなセリフ言うかなぁ……!くくくっ…!」

 

「それは………ああ、クソ、悪かったな!」

 

「はあ、いい、いいんだよ、心操くん、本当にいいんだ。うん、わかったよ。昨日の恩もある」

 

ひとしきり笑ってようやく、私は(顔を赤くしている)心操くんと真正面から向き合って話ができるようになれた。

 

「まずは、こっちこそごめん。君は何も悪いことなんかしてないのに、勝手にキレてぶちまけて。ワケわからなかったよな。本当にごめん。……それで、そんな私でよければ、心操くんが"本当のヒーロー"になるためのお手伝いをさせてほしい。それが私の恩返しで、君への謝罪だ。いいかな?」

 

「……ああ!」

 

私の言葉に、心操くんは力強く頷いてくれた。

 

 

 




その後の帰り道…

「ねえ心操くん、君のことを人使くんって呼んでもいいかな。私のことは一星でいいから」

「え?別にいいけど…ってあんた一星って名前だったのか」

「ああ、それじゃ改めて。私は月見里一星。"無個性"だよ。これからよろしくね人使くん」

「…俺は心操人使。個性は"洗脳"。こっちこそよろしく、一星…さん」

「……ふ、君、女慣れしてないな」

「……うるせ」



・月見里一星(やまなし かずほ)
無個性。学力は抜群にいい。地頭が良いのは間違いないが決して天才ではない。努力で食らいつく。人付き合いは悪くはないものの心を開いているのは心操だけ。
濃藍色のロングヘアーと隈のあるタレ目、それなりのスタイルを持つ、ややくたびれたダウナー系の美少女。瞳にハイライトがないのがデフォ。

・心操人使
この頃からすでにヴィラン向きだなんだと言われて若干スレている。しかし月見里の八つ当たりに混じった純粋な羨望が心に響いてヒーローになるための心構えができた。これから強化されていく。
月見里のことは可愛いと思ってはいるがそういう対象として見てはない。

・一星の両親
ほんとにめちゃくちゃいい両親。娘のためなら命も差し出せる。ただどっちも個性持ちなぶん、無個性の娘の心を真に開くことは叶わなかった。
娘のことで不安が絶えない。
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