ちょっと読みにくいかも。許して許して……
過去編 第1話 10年前
幼馴染と聞くと、みんなは何を思い浮かべるだろうか?
相棒のように互いに固い絆で結ばれている親友たちのことだろうか?
それとも、ただの仲の良い友達のことだろうだろうか?
いや……やはり、恋仲になりかけようとしている少年少女のことだろうか?
この【烏城マサト】には異性の幼馴染がいる。それもとびきり美人の……
ここだけ見ると、甘さアリ酸味アリの絶賛恋愛中の幼馴染と思える。
……だが、俺達二人の間にはそういった雰囲気は全く漂わない。
幼馴染!! 異性!! 超美人!! と来て、全く青春らしくない関係性だ。
双方ともに、互いを親友とは思っていても異性として意識していない……少なくとも今の俺目線ではだけど。
これから語るのは、そんな俺の幼馴染【守月スズミ】との出会いの一幕だ。
~~~~10年前~~~~
その頃の俺ことマサト少年は、いわゆるストリートチルドレンってヤツで、今と比べてもザコだった俺は、強いヤツに目を付けられないように、コソコソと日陰で野良犬生活をしていたわけだ。
で、その日は強めの不良に目を付けられてよ……あの日は厄日だったぜ。
【ダンッ】
乾いた銃声が狭い路地に響き渡った。
その音源は一つのショットガンで、それを握っているのは不良生徒達だ。
「あ~あ、イイ感じに当たりが来てたのに……お前のせいで台無しだよ!!」
軽薄な口調で、足元に向かって銃弾を一つ打ち込む。
「が"ッ」
「いや~惜しかった。
お前もそう思うよな?【ダンッ】」
「ガ"ハッ」
不良生徒の足元に転がっているのは一人の灰色の少年……まだ幼き烏城マサトである。
銃弾を受けた灰色の少年は肺の空気を吐きだす。
身体は数多の銃弾を受けて、痣だらけで傷だらけだった。
銃弾を撃ち込まれたダメージで少年の意識が遠のいていく。
「……こりゃダメそうだな。コイツ気絶してやがる。」
「あ~あ……もう行こうぜ。」
次々と興味が失せたように、さっさと不良生徒達は傷だらけの少年を置いて路地裏から立ち去った。
路地裏を吹き抜ける風が体のあちこちにある生傷を刺激する。
騒がしい不良達がいなくなり、静かになったことで痛みが頭の中を占める割合が余計に増えた。
「ちくしょうが……」
壁に寄りかかり、生まれたての小鹿のように震える足を奮い立たせ、なんとか立ち上がる。
そのまま壁伝いに足を一歩一歩と進める。
「……へっ、つめがあまいんだよ。あのクソアマども。」
鼻血やら涙やらでぐちゃぐちゃな顔でまんまと自分の気絶の演技に騙された不良達を嘲笑う。
「へへ……」
一歩一歩、歩みを進めた少年だったが、
「あ……」
ダメージが蓄積した足は一足先に限界を迎えてしまい、地面に倒れ込む。
硬く冷たい地面に倒れ込む感覚が少年に訪れる…………ことは無く、倒れ込んだ先は硬く冷たい地面ではなく、柔らかく温かさのある誰かの腕の中だった。
「だいじょうぶ?」
少年を受け止めたのは、自分とそう年の離れていない幼い少女だった。
「!?」
こんな路地裏に少女がいる事に驚きを隠せず、少年は目を見開いた。
「ッ!?」
「だいじょ……きゃ!」
少年は 死にかけの野生動物の最後の足掻きの如く一瞬だけ素早く動き、自身を受け止めた幼い少女の腕の中からすぐさま離れた。
「だ……だれだ? オレに……なんのようだ?」
「え、えっとわたしは、〈スズミ〉っていいます。あ、あなたは?」
「なまえなんざ…………もってねえ。」
警戒する少年にテンプレのような自己紹介をする〈スズミ〉と名乗る少女に、少年は自身は名無しだと吐き捨てる。
「え?」
スズミの今までの人生で聞いたことの無い『名前が無い』という返答に素っ頓狂な声を上げると、名無しの少年は自分の名前が無い理由をたった十数文字で言い表した。
「オレはすてられたんだよ……だからだ。」
強がるようにそう吐き捨てる少年の姿はどこか苦しそうだった。
だが直ぐに表情を戻して、少女にアドバイスを送る。
「〈あどばいす〉だ。ここは"あんぜん"じゃねえからな。とっととどっかにいったほうがいい。」
「え、で、でもキミは?」
「オレはいい。ひとりで……だいじょうぶだ。」
アドバイスと称して、この路地から離れることを伝えるも、少女も重症である少年を前にして、食い下がる。
「で、でもほっとけないよ。わたしがてつだうから、おいしゃさんにいこう?」
「かねなんぞもってねえよ。」
血だらけの少年を放っておけなかった少女は少年を刺激さないようににゆっくりと近づく。
まともに足が動かない少年は自身が無一文な事を伝えるも、少女は気にせず少年の今にも倒れそうな不安定な体を支えた。
「クソッもうかってにしろ。」
「うん。」
「チッ」
少年は少女の肩を借りて歩き出した。気は進まなそうだったが。
~~孤児院~~
その日、孤児院の院長である【烏城リョウスケ】の内心はは驚きに満ち溢れていた。
「まさかあんな怪我人をスズミが連れてくるとはのう。」
そう呟いた彼の視線は包帯でぐるぐる巻きにされてベッドで寝息を立てている幼い少年へ向けられていた。
昼下がりに、散歩に出かけたスズミがまるで鬼に追われているかのように焦った様子で、この少年と孤児院に帰って来た。
少年の身体は傷だらけで痣だらけで頭からは血が流れていて、顎からは血が滴っていた。
わしが大慌てで応急手当を施した結果、何とか血は止まって、今は安静にしている。
「ふう、焦ったわい。」
なにせあんな大怪我の処置をするのはわしの人生でも初めてのことじゃったからのう。
こんな幼い可能性溢れる少年を死なせでもしたら、わしがわしを許せなくなるところじゃったよ。
そう心の中で呟いていると、この少年を連れてきた張本人の声が聞こえた。
「あ、あのいんちょうさん。」
「どうしたんじゃスズミ?」
ドアの隙間から様子を伺うように、ちょこんと顔を出していたスズミが心配そうに声を震わせた。
「だいじょうぶ……だった?」
「うん、大丈夫じゃよ。今は疲れて寝ておるよ。」
「よかった……」
わしの大丈夫という声を聞いたスズミは胸を撫で下ろした。
たった一人で怪我した少年を連れてた挙句、本気で心配しとる。
全く、底抜けに優しい子じゃよこの子は。
幼い子供だが、確かな優しい心があるスズミに感心させられる。
「みても……いいですか?」
「別に止めはせんが、あんまり包帯には触らんでくれんかのう。」
「うん!」
ハッキリといい返事をすると、一直線に少年の寝ているベッドに駆け寄った。
が、その少年の姿を見たスズミは絶句した。
「ひどい……」
そう一言だけ言葉を発した。当然の反応じゃろう。
少年の顔の6割近くが包帯に覆われているのだから。
寝顔も安らかとは言えず、うなされていて時折顔を顰めて嗚咽をもらしている。
「でも、命に別状は無いし後遺症も残らんから、一安心じゃのう」
表情にすっかり影が差したスズミを元気づけようと、フォローを入れる。
だがしかし、スズミの表情に差した影が消えることは無かった。
「なおったあとはどうするの?」
「そうじゃのう。
先ずは親を探さんと「おやがいないんだって。」
「!?」
先ず真っ先に思い付いた【親を探す】という案がスズミの一言によって破壊された。
親がおらんじゃと!!
やけに貧相な身なりじゃと思っとったが、親すらおらんストリートチルドレンじゃと!!
「やっぱりおいだしちゃうの?」
潤んだ瞳で見つめながら、そう口を動かした。
……追い出せるわけないじゃろうが!!!!
そんなことをしたらわしは大人として失格じゃ。大悪人じゃ!!
「……じゃったら、わしが預かるしかないのう。」
「いいの?」
わしがそう言うと、スズミはパアッと顔に差していた影が一気に晴れたような明るい笑顔を見せた。
その笑顔を見たわしは、自然と頬が緩んでしまう。
「いいんじゃよ。わしは目の前の子供も救えない情けない大人じゃあないからの。」
「ありがとう!いんちょうさん!!」
その日、少年が目を覚ますことは無く、ただ時間だけが過ぎて行った。
そして、次の日の朝……
【ガタン】
と何か大きな物が地面に落ちた大きな音が聞こえた。
何があったのか確かめるために、音源の方へ足を急がせると、その音源はあの少年を寝かせていた部屋だった。
扉を開けると、そこにはベッドから地面に落ちたあの少年がそこ居た。
「っててて」
「目が覚めたんじゃな!!」
昨日は全く動かなかった少年が動けているさまを見て、嬉しく思い声をあげる。
おそらくあの音は、目が覚めてベッドから降りようと地面に足を付けたはいいものの、怪我のせいで足に力が入らず、そのまま地面に倒れてしまったことで起きた音だろう。
「だれだテメェ?」
関節にまで巻かれたギプスが邪魔で手足の動きが上手くできていない少年は、ぎこちない動きでゆっくりと立ち上がり、警戒心たっぷりでわしに問いかけた。
「わしは、傷だらけのお主を治療した者じゃよ。見たところそこまでの異常は無いようじゃな。」
「オレからすれば"いじょう"だらけだぜこのじょうきょう。」
状況が呑み込めていないなりに、少年は勝気な態度でそう答えた。
「まあそう焦らなくともきちんとお主には説明するでな。」
それからしばらくは、少年に現在の状況と、これからの事を話した。
少年はは白色の少女【スズミ】によってここに連れてこられて、それからわしが治療したこと。
これからはわしの養子としてこの孤児院に住むのはどうかということも。
「なるほど、オレがあんたの"
少年は考えるような素振りを見せると、目を閉じて深く考えを巡らせ始めた。
そのときの少年の様子は、かなり真剣で、深く深く思考を掘り下げていった。
まあ、わしの事を信用できるかとか、今までの生活の事とか色々と考えた末に少年は答えを出した。
「……ことわらせてもらう。」
少年が長く思い悩んだ末の一言がそれだった。
「理由を聞いてもいいかの。」
「……なんとなくだ」
「な、なんとなく?」
断られる理由を少年に聞くが、まさかまさかの【なんとなく】だ。
【なんとなく】といっても、あそこまで考え込んだ末出した結論がただ適当に【なんとなく】だったことは無いだろう、と思い詳しく理由を問う。
「なんとなくとはなんじゃ?
ただただ、適当にそう答えたわけじゃなかろう?」
「……オレはなんとなく、ほかのひとのてをかりたくない。」
「なんじゃそりゃ。」
「べつにアンタとかあのおんなのこがきらいなわけじゃない。
だけど、オレはオレのちからでいきていきたい。」
「むう」
そう、真剣な眼差しで少年はそう言い放った。
確かに一人で何かを成し遂げるというのは楽しい。この子は【一人で生き延びる】ことに楽しさを見出したのだろう。
だが、こんな幼い子供が傷きながらで生き延びるのはあまりに可哀そうじゃ。
そう感じるのはわしの勝手な独善なんじゃろう。じゃが、それでもわしはその独善を貫きたかった。
「!?」
「この通りじゃ!!
もうこれ以上お主の様な幼い子供が傷つくさまは見とうないんじゃ!!
このジジイのワガママに付き合ってくれんか!!」
わしは全力で少年に向かって頭を下げた。
わしのことをみていた少年はいきなりの事で頭が混乱してたのか口をパクパクさせていた。
「え、ええ、ちょっとおちつけって。」
恩人ともいえるジジイが頭を全力で下げて頼みこんできたという事実に困惑しつつも、確実に少年の迷いは肥大していき、頭を唸らせる。
悩み、悩み、悩み抜く【やっぱり普通に生きるのが良いだろう】という考えと【今更、大人の手を借りるのか?】という考えが頭の中でせめぎ合う。
「………………でも、オレはきめたんだ。ごめんなじいさん。」
「じゃが……いや、そうか……なら何も言うまい。
じゃが、いつでもわしを頼っても構わんからな。」
「わかった。ケガがなおったらすぐにでていくぜ。」
結局、親のいない少年は、ひとまずは一人で生きることを選んだ。
果たして少年にとって後悔しない選択なのかはまだ分からない。
~~~数日後~~~
親切な爺さんの治療で、すっかり身体の傷が治った俺はまた、自分の力で生活していた。
「この
青空の下、自販機の下を堂々と漁っていた。
たま~に500円玉が落ちてたりするんだよな~~滅多にないけど。
「しゃーないか。」
収穫が無いことに、ため息をつきながら自販機の傍を後にした。
まあ収穫が無いのもつきものだな。
自分の力だけでこのキヴォトスを生き抜くのはかなり難しい。
だからこそ、生きている事のありがたみも大きいというものだ。
「
次の標的に向けて歩みを勧めようとしていたところ……
【バアン!】強い破裂音と共に頭に強い衝撃が響いた。
「!?」
いきなりの銃による射撃をもろに頭に食らい、フラフラと千鳥足になってしまう。
出来事に事態が呑み込めず、混乱しながら壁に寄りかかっていると、銃を撃った者の顔を見ると同時に答えが得られた。
「おいおい、久しぶりだなクソガキ。」
「すっかり治ってんじゃん。」
「また遊べるね。」
銃弾を放ったのはあのときの不良達だ。
品の無い笑みを浮かべながら、不愉快な声を響かせて、接近してきた。
数日前のように、もう一度ぶちのめされるのはごめんだ。
「へっへっへ、どう遊んで「にーげるんだよーん!!」
「は?」
「逃げた?」
勝ち目の無い争いなんてする意味はさらさら無い。とっとととんずらこくのが最適解だ!!
全速力でその場を立ち去る、俺は暗い路地裏の出口を目指して全力で突っ走っていく。
が、そう簡単に逃げ切れるわけも無い。
「待ちやがれ!!」
「まつわけねーだろ、ばーか。」
「クソガキが!」
咄嗟に口から挑発の言葉が零れ出てしまった。完全に無意識にだ。
不良たちは6歳児の格安の挑発にもかかわらず、顔を真っ赤にして本気になっている。
捕まったら、数日前以上の悪夢が待っているだろう。
もしも自分が不良たちに捕まった時のことを考えると身震いする
【ダンダン!!】【ダダダダ!!】
「あぶねーなー!!」
オレを捕まえようとして、不良たちはついには銃も抜いた。
だが、この辺りの路地は直線が少なく、入り組んでいる。
流石の銃も、自動で対象を追尾することなんてできず、真っすぐにしか飛ばない。よって、多くの分岐路がある、この路地でのチェイスは俺の方がやや有利だ。
「ゆだんしすぎるのもよくないけど。」
だが、この優位にかまけるようなことはできない。単純な走力はあちらの方が上なのだ。いずれは追いつかれてしまう。
「だから!!」
少年が角を曲がり、不良たちの視界から消えた。
「何回曲がるんだよあのガキ。」
「お陰で銃が当たらないんだよね。」
不良達も少年を追って角を曲がる。
このまま追いかければ、自分達よりも足の遅い少年に追いつけない訳が無いと不良たちはほくそ笑む。
が、角を曲がると少年の姿は消えていた。
「消えた!!」
「いや奥に曲がり角がある。そっちに行ったんだ!!」
一瞬は少年が消えたと思い、動揺が走るが直ぐ奥に曲がり角があると気づいた不良たちは、直ぐに追跡を再開した。
【タッタッタッタ】
少年はゴミ箱の中に身を潜めてで耳をすまして、不良たちが去っていく足音を聞いていた。
(いったかな?)
(へへへ、あのマヌケどもめ。オレがゴミばこにかくれたことに、きづかなかったみたいだな。)
今度は、少年がほくそ笑んでいた。ゴミ箱の中で。
すっかり調子に乗った少年は汚いゴミ箱からオサラバしようと碌な警戒もせずにゴミ箱から飛び出した。
「まいたか――「いや、全然撒けてないね。」
【ダンッ!】
銃声と共に、とてつもない衝撃が頭に加わった。
(さっきのあしおとはふりだけかよ、ぜんぜんまけてねえじゃんか。)
少年は先程の自信の軽率な行動を呪った。
銃撃を至近距離でもろに食らった少年は、体のバランスを崩し地面に突っ伏した。
不良たちはニヤニヤと笑みを浮かべながら、銃口を少年に向ける。
【ダダダダ!】
火薬の破裂音が狭い路地に響き渡り、銃弾が飛ぶ。
少年は来たる痛みにこらえようと、目をつむって体をこわばらせる。が、痛みが体を貫くことは無かった。
「?」
絶体絶命だった自分に何故か銃弾が撃たれてないことを疑問に思い、恐る恐る瞼を上げる。
「クソッ何でこんなガキに負けてんだよ!!」
「知らないよ!!」
「クソッ撤退だ撤退!!」
真正面にいた不良たちは捨て台詞と共に、尻尾を巻いてどこかへ逃げていった。
まるで少年の背後に恐ろしいモノが居るように。
「……」
恐る恐る振り向いてみると、恐ろしいモノとは到底、思えないような光景が映り込んできた。
「だいじょうぶだった?」
「だいじょうぶだ…………って」
オレの背後に居たのは、数日前にさっきの不良に重症を負わされたオレを、じいさんの所に連れて行ってくれたあの白い髪の女の子だった。
「なんで、こんなところにいんだよ!」
「え……キミがしんぱいだったから……」
「べつにほっといていいってのに。」
少年は一つため息をつくと、手を地面につけて立ち上がる。
不良たちが尻尾を巻いて逃げて行った方向を眺めながら、少年は羨ましそうに、いや、恨めしそうに一つ呟く
スズミに助けられた少年の内心はぐちゃぐちゃだった。
またも助けられてしまった悔しさ。同じぐらいの年齢の女の子に守られてしまった情けなさ。
助けられたにもかかわらず釈然としない自分自身を軽蔑する感情。
それらの感情が別々に存在している。
「それにしても、テメエ……つよいな。」
「え?」
助けられたハズなのに暗い表情を宿し、暗い口調でそう呟いた少年に、驚きを隠せない様子の少女は反射的に驚きの声をあげる。
懐から拳銃を取り出した少年は
「オレとたたかえ。」
そう言い放った。
だが……
「わ、わたしはキミとたたかいたくないよ……」
少女は少年との戦いに乗り気ではないどころか、少年に銃すら向けたくない様子だった。
だがその優しさが少年の胸をキリキリと締め付けていた。
少女の優しさを受けた時点で、この場から立ち去るという選択肢は胸の奥でぐちゃぐちゃに乱れる感情を放置するということなっていた。
結果、自身を救った少女に戦いを挑むという選択が正しくないことは分かっていて、内心では自分を軽蔑していても、この気持ち悪さを一刻も早く取り除きたいという衝動に駆られ、それに従った。
「……じゃあかったヤツはなんでもめいれいできる。わるくないじょうけんだろ?」
「……………………」
まあいわゆる【八つ当たり】である。
「……わかった。ほんとになんでもきいてくれるの?」
「できるはんいなら。」
そうして、少年のゴリ押しにより少女との戦いが始まった。
……が
「クソが……」
超速で終わった。
少年の力で歯が立たなかった不良たちをたった一人で撤退させる実力を持つ少女に敵うはずが無い。
まさに、天と地ほどの力の差があった。そりゃあ一瞬で終わる。
地面を這いつくばっている少年は完全に敗者だった。
八つ当たりで戦闘を仕掛けて開始10秒でノックアウト。情けなくて自分自身にイラつくほどだ。
少女の射撃は適格だった。それはもう恐ろしいほどに。
腕を動かそうとしたら関節を撃たれ、次には頭を打ちぬかれた。
それぞれの動作が恐ろしく精密で素早い。そりゃあ不良達数人がかりでも勝てない訳だと思った。
何もできなかった、銃弾一発撃つ事さえできなかった。完敗どころか勝負にすらなってない。
そして絶対に少女は全力ではなかった。
「え、えっとだいじょうぶ。」
「おかげさまで。」
少年は皮肉を交えた一言と共に体を起こした。
不良たちのようにいたぶることはせず、最小限のの射撃で効果的に戦闘不能にされたので、余計な傷も無いため、痛みに悶えることも無くスッと体を起こして立ち上げれた。
銃を使った戦闘に負けたのに、痛みも無く体を動かせる奇妙な感覚を味わうと同時に、その技量に舌を巻く。
「マジでつえーなおまえ。」
「えへへ、それほどでも。」
少年の称賛をうけて、誇らしげに胸を張る少女に、少年は少しばかりのイラつきを感じ目を細めた。
「やっぱさっきのナシ」
「ええ!!」
先程の称賛を撤回した少年は、自らが少女と戦うために提示した【なんでも言うことを聞かせられる】権利をどう使うのかを投げやり気味に少女に尋ねる。
「で、どーすんだよ、オレにできることなんてたかがしれてるぜ?」
少女はあらかじめ、その問いの答えを決めていたかのように、迷いなく即答した。
「えっとね、いんちょうさんの"
「は?」
少女の口からハッキリと迷いなく告げられたその回答に、少年は自分の耳を疑った。
「マジでいってんの?」
「うん、ほんきだよ。」
「ちょっとまえに"やめとく"っていったのに"やっぱりそっちがいいです"っていわなきゃいけないの?」
「うん。」
「ふつーにいや――「"やくそく"まもって」
少年が拒否しようとすると、食い気味に少女が割り込んだ。
むすっとした顔で少年に詰め寄る少女には、流石の少年も観念したようで、両手を上げて降参した。
「わーった、わーったよ。やくそくはまもるよ……」
「よしよし。」
「さわんな!!」
シャーっと爪を立てて猫のように、少女に威嚇する少年と、それでも撫でる手を止めない少女という愉快な二人は同じ目的地を目指して歩き始めた。もっとも、歩く意欲には天と地ほどの差があったが。
今はクールなスズミもこれくらい子供らしい時期があったらなあ、と考えて書いてみました。
今は名無しの主人公くん、めっちゃめんどくさい性格してますね。
性格が針金みたいにねじ曲がってる。
主人公のカッコいいところも、いつか書くつもりなんで、許してください何でもしますから。