スズミの幼馴染はクソガキ   作:けいあお

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もうちっとだけ続くんじゃ。


第10話 能力の差

 

 DUの郊外の通りに一つの救急車が来ていた。

 

 それに搭乗させられるのは、如何にも不良な女子生徒。

 服は燃やされたようにボロボロである。実際には電流が流れたわけだが。

 

「救急車を呼んで正解だったな。」

 

 俺が仕留めたヤツは体には電線の電流が直接流れた。

 キヴォトスでも稀に見るぐらいの重傷だ。まあ、それでも死にはだいぶ遠いが。

 まあ人情的に救急車を呼んでおいた。

 

 まあ、それはオマケで実はクソ高い治療費を払わせたいだけだが。

 治療をする医者の利益なんかは、勿論マサトにはには関係ないため、ただの嫌がらせである。

 

 マガジンを家に置いてきて、装填されている分だけの弾丸で撃退できた、自分にちょっと酔っていたら、一つ思い出した。

 

「………………そういえば、予定有るんだった。」

 

 戦闘に集中していたおかげで、予定の事がすっかり頭から抜け落ちてしまった。

 

「ちょっと急ぐかな……」

 

 と、呟くとマサトは現場から足早に離れていった。

 

 その姿を、追って動く影が一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マサトが足早に去った現場から、ツクミはマサトを追っていた。

 

 

 意外なものが見れたな。ツクミはそうほくそ笑んだ。

 

 あの不良。他の二人と比べて数倍は強い相手だ。

 それを弾切れの状態から、たった一人で仕留めるとは……私が思っているより烏城は強いらしい。

 もしかしたら、単純な戦闘力では私より強いのかもしれない。期待できそうだ。

 

 私が烏城の事を分析しているうちにも、烏城は急いだ様子で道を走っている。

 

「遅れたら怒られぜ~」

 

 その姿はまるで遅刻しそう学生のようだ。今は夜だが。

 

 ふと気づいたが、どんどん郊外の方へ向かっている。

 足を進めるにつれて、街灯も人通りも少なくなっている。

 

 面倒事で無ければ良いが……

 一抹の不安を胸に烏城の後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと遅れたけど…………まあいっか。」

 

 烏城は足を急がせながら、ある建物に入っていった。

 その建物は、そこらの家屋と比べても大きい。洗濯物のタオル等が干されていて生活感を感じるが、外観からは何の施設なのか、イマイチ良く分からない。

 

「窓から覗けるか?」

 

 と思い、良さそうな窓が無いか探すと、明かりのついている明るい窓を見つけた。

 そこは幸い一階だから壁をよじ登る必要は無さそうだ。

 

 

「いやー遅れた遅れた。すまんスズミ、此処に来る道中で結構強いチンピラに絡まれてさ。」

 

「!?怪我はありませんか!」

 

 スズミと呼ばれた雪の様に美しい白髪を持つ少女は椅子からガタンと立ち上がり、烏城の上着をバッと脱がせる。

 

「ちょッ、別に大した事無いって。」

 

 烏城の身体はあのチンピラの散弾をもろに食らったため体の所々に痣ができている。

 スズミの顔が険しいものに変わる。

 

「何故…………私を呼ばなかったんですか!」

 

 スズミの表情はあまり動いていないが、その表情には確実に怒りがあった。そして何処か悲しさも……

 

「いやさ、俺が勝手に起こした騒ぎにわざわざ呼ぶのってちげぇよなぁって思ってさ…………」

 

 そんなスズミの様子を感じ取った烏城は、きつくものを言う事も出来ず、ただバツの悪そうに視線を背けて言い訳を語る。

 

「それに、実際こんくらい掠り傷の内だぜ。」

 

「掠り傷でも、身体は傷つきますし、痛いでしょう

 

 

 

 

 

 スズミは救急箱を開けて応急処置を施す。

 

 「何故私を呼ばなかった」か……未だ彼女の中で自分が庇護対象なのだと感じ、情けなさが胸からこみ上げてくる。

 いくら身体が大きくなっても、年を重ねても、力で彼女を超えることができない。

 才能の差…………いや努力の差、だろうか……

 

 何とも言えない悔しさが胸を刺す。

 

 あのとき(・・・・)から何も変わってない……情けない男だ、俺は。

 と、悪い考えが頭をよぎったが、すぐに振り払う。

 

 別に武力でスズミに並べなくたって、他で勝てばいいさ!

 

 今はスズミが黙々と傷口を消毒したり絆創膏を張ってくれる。

 俺は上裸で椅子に座ってるだけだ。

 

 なんとなく、この時間が気まずく感じ、スズミに話しかける。

 

 

「……あ~そういえばお前って、正義実現委員会?だっけか、そこに入ったらしいけど調子はどうよ?」

 

 ……少しの沈黙の後、絞り出したような言葉を発した。

 

「…………特に問題はありませんよ……皆さんとても良い人ですし……」

 

「……なんつーか、大丈夫か? 悩みあるんじゃねぇか?」

 

 スズミの言葉は字面だけ見れば、悩みなんて無さそうに思えるが……語り手のスズミの顔にちょっと憂いが浮かんでいるのが問題だ。

 

「いえ……別に……」

 

「いや~まあ何でもいいからさ、絶対あるだろ? お前この話を話してて全然楽しそうじゃないし。」

 

 今度は確証を持って問いかけてみた。

 

「え、そうなんですか。」

 

 スズミは自分の顔をペタペタ触って確認する。かわいい

 

「まあ、なんか大体予想つくけど話してみろよ。」

 

 正直スズミの口から話してもらわなくても、なんかなんとなく(・・・・・)分かるけど、正確性を求めるなら……本人の口から話してもらう方が良い。

 

 俺の押しに折れたスズミが、ぽつりぽつりと言葉を発していく。

 

「……マサト君は、人と話しているときの沈黙(・・)を経験したことがありますか?」

 

「? 沈黙っていうと?」

 

「みんなと話しているときの不自然な沈黙。何か声を上げようにも憚られる瞬間の事ですよ。」

 

「あ~なるほど……何か不意に言った言葉で、すげー空気悪くなるヤツね。」

 

 スズミの言う沈黙(・・)とやらの事が分かった。

 それと同時に俺のなんとなく(・・・・・)確信(・・)になった。

 

「そうです。私のせいで彼女たちの楽し気な雰囲気の会話を壊してしまったように感じるんです。」

 

 作り笑いを作るスズミの顔には少なくない疲れの色が浮かんでいた。

 その疲れた顔からは痛々しいモノを感じた。

 

「なるほどね…………なんつーか別に辞めてもいいんじゃね?」

 

 俺がそう口に出した途端にスズミが「え?」と口を漏らし、俺の傷口を消毒中の手の動きがピタリと止まった。

 

「その場に居ない俺が言うってのも可笑しいかもしれないけど、自分の肌に合わないなら無理してそこに留まる必要も無いって思うんだよな。」

 

 居場所を作るのも大切だけど、その過程で深く傷ついてしまうなら無理をしなくてもいいと思う。

 勿論、そこにその傷に相応する価値を感じたなら、居場所作りに挑戦してみるのもいいと思う。

 

「そうでしょうか……そこから逃げても、私に居場所なんて……」

 

 俺の一旦、部活のコミュニティーから逃げてみる作戦だが。

 スズミは自分のコミュニケーション能力の低さを悲観して、表情に影を落とす。

 

「ったくよぉ…………お前って変なとこでバカだよなぁ。」

 

「え?」

 

 スズミはやけに自分の対人能力を低く見ている節があるが、俺は別にそうは思わない。

 スズミは空気を読めるし、対人恐怖症でもなければ、極端に思想が偏ったりもしていない。

 本人は気づいて無いかも知れないけどメッチャ可愛いし、ちょっと冷たい雰囲気だけど優しいし

笑うとメッチャメッチャ可愛いし、人と話すのだって実は嫌いじゃない。

 

 

 つまりポテンシャルは間違いなくある。自分から能動的に人と関わらないが。

 それでは、何故、スズミが人と関わりにくいのか考えてみよう。

 まず、スズミの見てくれである。

 表情が極端に少ない+つり目。この冷たそうな見てくれ(外見)……これの時点で関わる人が減る。それに、どこか自然と恐れられる。

 

 次に、不良と積極的に戦闘を行っている事だ。それに凄く強い事。

 面倒事の匂いを嗅ぎ分けれる奴なら、余り関わりたいとは思わないだろう。

 

 最後に、態度である。

 

 抑揚の少ない声+誰にでも丁寧な口調。これも、やや冷たい印象を受ける。

 

 

 

 つまり他人から見たときのスズミは、やけに強くて、他人に冷たい女の子だ。

 とても積極的に関わりたいとは言えない。

 

 じゃあどうするのか。

 

「まあ、友達を作ればいいじゃん?」

 

「え、友達?」

 

 友達と一緒に居るところ=自分の居場所って俺は考えてる。

 だから、友達さえいれば疎外感を感じることも無くなると思う。

 

 いきなりの俺の言葉にきょとんとした顔をしているスズミに、俺はこう言った。

 

「お前は今【私に友達作りなんて、できっこないのにいきなり何を?】そう思っている。」

 

「!!?」

 

 やっぱり図星だったようだ、スズミは表情の変化が少ないが、それとは裏腹に意外と分かりやすいヤツだ。

 

「だけど実際、友達のいないグループで活動するってメッチャ辛いだろ?

 それに!!…………お前の友達が俺だけだと、シンプルに物足りないだろ?」

 

「ですが…………」

 

「やる前から【出来ない】って思っちゃダメだぜ。

 人間なんて星の数ぐらい居るんだし、そう考えたら友達になれる人なんて数えきれないほどいるだろ?」

 

「確かに…………そうかもしれませんね。」

 

「そうそう、それにお前は【良いヤツ】だからすぐ友達ぐらいできるぜ。」

 

 スズミの表情から憂いが抜けたわけじゃないが、間違いなくその表情には光が灯っていた。

 

 

 

 その後、応急手当をし終えて、待合室から出て廊下を今は歩いている。

 廊下の床は木製で年季が入っているが、しっかりと手入れがされてる。光源も多く優しい雰囲気だ。

 

「まあ、友達作りの話は置いといて……俺たちの用事を済ませようぜ。」

 

「ええ、そうですね。」

 

 【スズミちゃん友達100人大作戦☆】の内容も決まって無いし。考えないとな。

 

 大きい両開きの扉を前にして、二人して固まる。

 此処からは相当な覚悟を持たねば、こちらがやられる。

 そんな、猛獣を相手にするぐらいの心構えでいざ、挑む。

 

「今日も疲れそうだぜ。」

 

 一つ溜息をつくと、扉を開けた。

 

 

 

 

 

「あ! マサトお兄ちゃんだ!!」

 

 

「今日はスズミお姉ちゃんもいる!!」

 

 

 目を輝かせた、幼い子供たちの熱烈な歓迎が二人を襲う。

 今日もどっと疲れそうである。

 

 

 

 




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