スズミの幼馴染はクソガキ   作:けいあお

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【主人公はスズミの強さに脳を焼かれている!!】


過去編 第2話 俺の憧れ

「"烏城マサト"ねえ」

 

「いいなまえだとおもうけど?」

 

しょうきょほうでいいなまえなんだよ。つまり、ほかのこうほがダメすぎるんだよ。」

 

 

 幼い少年と幼い少女が、夕日が差し込み、オレンジ色に染まった孤児院の廊下を歩いていた。

 

 

ゲレゲレいいとおもったのに。」

 

「ダメにきまってんだろアホか。」

 

 

 少女が名残惜しそうに呟いたのは、名無しだった少年へ贈った名前候補の一つだった。

 "ゲレゲレ"そのおよそ人の名前とは思えないような響きの名前が、候補の一つだった。

 勿論、名前を付けられる側の少年からしたら、そんなふざけた名前がつけられるのは堪ったものではない。

 よって、却下されたのだ。

 

 

「むう」

 

「むうじゃねえよ"じんめい"。ひとのなまえだぞ。」

 

「でも~」

 

「でもじゃねえよ。ダメなもんはダメ。」

 

 

 少女は、自分のネーミングセンスに自信があったようで、速攻で却下されたことをまだ引きずっていた。

 足取りが重くなった少女を見かねた少年マサトは少女スズミの手を引っ張って、足取りを急かす。

 

 

「はよいくぞ。」

 

「わっちょっと」

 

 

 オレンジ色の廊下を二人分の小さな影が、駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 廊下を駆けていた二つの影はやがて、玄関へとたどり着いた。

 

 スズミはこの孤児院の子供たちではなく、院長の親族だ。

 忙しいスズミの両親が、孤児院を運営している院長を信頼して、自分達の仕事が終わるまでの間この孤児院に預けているらしい。

 

 つまりは、しばしのお別れだ。

 

 

「とっととかえれ。」

 

「もう!………………またね!!」

 

 

 マサトは強めの口調で、追い払うようにスズミに言葉を贈り、スズミはその追い払うような口調を一言咎めると、今度は優しい表情で手を振りながら、マサトに別れの言葉を贈った。

 

 

「またな。」

 

 

 扉が閉まりきる直前にマサト少年も、釣られたように別れを告げた。

 夕日に照らされたスズミの顔は、とても晴れやかで、美しく感じた。

 

 

……

 

 

「はあ、つかれた。」

 

 

 スズミの帰りを見送ったマサトの内心には、疲れと未だ納まらない衝撃が満ちていた。

 

 昼間の不良とのチェイスに続き、名前決めに、この孤児院の案内。そのすべてにスズミとの会話が挟まる。こんな慣れない場所で慣れない事をしたら、疲れるに決まっている。

 

【守月スズミ】この少女との出会いは衝撃だった。

 

 浮世離れした可憐な外見を持つ少女で、なおかつ大恩人でもあり、初めての友達だ。

 そして一番の特徴であり、この納まらない衝撃の震源は、彼女の強さだ。

 この身に味わったから分かる。今まで出会った自分の中での強者たちが、全員束になっても相手にならないであろう。天下無双とも言える圧倒的な強さが。

 

 憧れた。

 

 その一言に尽きるだろう。

 ただ憧れた。並ぶ者が居ない天下無敵の彼女の強さに憧れた。

 

 泥水を啜っても、誰にも頼らず生き残って来て、その中で芽生えた【誰の手も借りずに生きたい。そして今は一人で生きていけている】という、一種のプライド。他人には無い自分だけのアイデンティティー。

 

 それを根っこから崩された。

 初めて見た、誰よりも強いその強さに。

 

 ちっぽけなプライドなんかよりも、憧れに少しでも近づきたかった。

 だから初めて他人を頼った。プライドを投げ捨てて。

 今思うと、スポーツ選手やヒーローに憧れて、自分もそうなりたいと思う気持ちと同じなんだろう。

 

 ただ。

 一つ他と違うのは、その憧れの人が、自分とそう年の離れていない人で、しかも友達なのだ。

 つまり、悔しいし、羨ましい。そして妬ましい。そういう感情を自然と抱いてしまう。

 

 人間、やっぱり自分と年齢だったり、自分との距離が近いと、すごい!と手放しに思えなくなる。

 

 そりゃそうだ。例えば友達が全教科で100点取ってて、自分は60点程度だった。それがずーーーーーーーーーーーーーッと続く。しかも、自分は徹夜で勉強していて、その友達はノー勉だったとしよう。

 

 【アイツとオレで何が違う!!】と嫉妬に狂ったり、【所詮オレは凡人なんだな。】といつまで経っても目標に追いつけない自分に見切りをつけて、頑張れなくなる。

 実際。少しばかり腕に覚えのあるだけの凡夫は、スズミの強さを前にして彼女を【天才】と優しくありきたりな称賛……いや自分自身への言い訳を口にする。

 彼女の圧倒的強さを、自分の中で絶対に届かない【例外】と設定するのだ。

 

 

 こうなったら、もう友情が崩壊していくわけだが、それから10年後。現在高校2年生の俺とスズミは友達……それどころか親友と言ってもいい。

 

 

「あーあ、あのジジイももう歳だな。」

「ちょっと、自分の父親に向かって、流石に言い過ぎですよ!」

「でも、醬油と麵つゆ間違えるのは、ヤバくない?」

「…………確かにそうですね。」

「だろ? もうムリできない歳なんだから、変に意地張んなくてもいいのにな。」

 

 

 こんな取り留めのない話を二人でしたり。

 

 

「オラァー!!待ちやがれコンビニ強盗!!!!」

「待つかよバーカ。」

「ムッ閃光弾投擲!!!」

【バンッ!!!!】

「グエ!!!」

「ふう、手こずらせやがって。」

「任務完了ですね。」

「だな。」

 

 

 二人で戦ったり。

 

 

「うえー。ひ、人が多いぜ。」

「休日ですからね。仕方ありませんね。」

「あッジェットコースターは結構空いてんじゃん。行こうぜ。」

「わっちょっと、なにか嫌な予感が……

 ……

「け、結構怖いヤツだったな。」

「うう……」

 

 

 二人だけで遊びに行ったり。

 とまあ、親友っぽいことを沢山している。

 まあ、ここまで対等な友達でいられる理由はやっぱり

 

 一回スズミに戦いで勝てていることが大きいだろう。

 

 これがなければ、今のように自信を持ってスズミの隣には立つことはできないだろう。

 

 

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