スズミの幼馴染はクソガキ   作:けいあお

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第5話 黒猫

 ヘルメット団のリーダーを釈放した後に、アビドス高校の一つの教室で、会議が行われていた。

 

 その会議の内容は正にアビドスが抱える問題の心臓部と言っても過言ではない。

 その問題はカイザーから借りているアビドス高校の借金だ。

 

「私たちが借金してる会社が、何でヘルメット団なんか支援してるのよ!!」

 

"ちょっと待って。まず借金って何?"

 

 その借金の事など露も知らない様子の人間が一人いた。

 

 先生は少し困惑を見せながら、そう問う。

 

「あ……」

 

 セリカがまるで自身の発言が失言であったかのように、冷や汗が出そうな顔をする。

 

 そんなセリカの横から、ホシノが口を開きセリカに言う。

 

「おじさんは先生たちには話してもいいと思うよ~」

 

「ちょっホシノ先輩!?」

 

「おじさんたちに手を貸してくれたし、おじさんたちも先生のが居なかったら危なかったでしょ?悪~い大人たちと違って信用できると思わない?」

 

 驚きが隠せないような表情を見せるセリカと対照的に、ホシノは涼しい顔でそう言った。

 

 続けてシロコがセリカになだめるように説得をする。

 

「ん先生は信用できると私も思う。あ、勿論マサト達のことも。」

 

 先輩二人の説得の言葉に、先生に感謝や不信とそれ以外の様々な感情も混じった複雑な視線を向けるも、次の瞬間には、踵を翻し会議室から飛び出してしまった。

 

"あ……"

 

「私、追いかけてきます!」

 

 セリカの行動に先生が呆気に取られてると、ノノミが飛び出していったセリカを追いかけて会議室を後にした。

 

「ごめんね~先生。おじさんたちアビドスは【助けて】って声を上げてもだ~れも助けてくれなかったから、今更誰かの助けを受けるのに、セリカちゃんはきっと抵抗があるんだよね~」

 

 その口調に見合わない鉛の如く重い話を聞いた先生は、軽率だったと自責の念を抱いた。

 

"謝った方が良いかな……"

 

 そう、呟いた。

 その呟きを拾ったマサトは、何ともない様なすまし顔でセリカを放っておく事を勧めた。

 

「いや、やめた方が良いぜ。」

 

"でも……"

 

「でももだっても無いぜ。ああいう手合いは一旦感情を落ち着かせるためにも今はほっとくのが正解だ。

 俺達が今、(やっこ)さんと話しても良いことは無いぜ。」

 

 その言葉からは自分自身の経験に則った(のっとった)【それが正解】という自信を感じる。

 

「確かに、あの子の気持ちを考えると納得しにくい部分があるのはその通りだし、少なくとも今は僕たちの言葉は響かない気がするね。」

 

 コウセイもマサトの考えに納得の色を示した。

 

"……それじゃあ借金の事、教えてくれる?"

 

「うへーそれじゃあ、アビドスの事でも説明しちゃいますか。」

 

 会議は続いていった。

 

 

 

 

 

 会議の後、マサト、コウセイ、スズミの三人にわざわざ何で優男の仮面を被っているのかと聞かれた。

 

 理由としては、ここ数週間キヴォトスで生活してみて分かったことが関係している。

 

 その分かった事とはこのキヴォトスの生徒は大人を中々信用していないことだ。

 

 先ずは基本、大人たちの言う事を疑う生徒が多い。

 それでも信じてくれる生徒もいるが、日本と比べて大人を信用しなさすぎだ。

 

 その理由も数週間生活していて分かったが。

 

 

 そんな大人を信用しない生徒達が感じる第一印象を少しでもマシにするためにこんな優男のふりをしてるのだ。

 

 

 

 

 

 そして会議の後、俺達シャーレのメンバーはアビドスの校舎に一旦泊めてもらうことになった。

 

 

 先生は広い教室のど真ん中に寝袋を敷いて横になりながら物思いにふけっていた。

 眠りたくても眠れない。教室で寝るという非日常にすっかり呑まれてしまった為である。だからこそ、考え事が止まらない。

 

 

 俺は聖人ではない……【人間】だ。

 他人に善意だけで行動できるほど、優しくはない。

 実際に、シャーレの立場が揺れていなかったら、アビドスには絶対に来なかった。

 が、そんな、ただの人間だからこそセリカの気持ちも分かる。痛いほどに。

 自分をセリカの立場にトレースして考えてみると。

 

 

 自分たちのことを助けにきてくれた人を突き放すのは、良いことでは無いのは分かる。

 しかし、その助けてくれた人は、今まで散々助けを求めても相手にもしなかった人間なのだ。

 

 とてもじゃないが良い感情は抱けない。

 それに加え、自分達には解けなかった問題を解決したのだ。

 問題を解決できずに、とんぼ返りしたほうが彼女の心情的には幾分かマシだろう。

 何故なら、自分たちの価値の証明になるからだ。

 

【力を持った第三者の介入で解決できなかった】だから【私達は無能ではないし頑張っている】そう思える。

 

 我ながら捻くれた考え方だが、本気でそうは思っていなくても心のどこかでそう思っていても可笑しくはない。それほどまでに【ベストを尽くせなかった】というのは心に重くのしかかるのだから。

 

 セリカの気持ちは本当に良く分かる。

 

 が、俺の予想ではセリカは【いいヤツ】だ。俺と違って。

 逆説的に学校の為に【ベストを尽くしていたい】と願っているんだから。

 だったら、互いに一旦距離を取って、セリカが良いヤツで、明日にでもなったら頭を冷やしてくれることに期待するのも悪くはない。

 

 

 揉め事の原因の借金。実はアビドスに来る前に、俺はもう知っていた。

 

 アビドス生徒からすると、自分達の事だけを隅から隅まで知られているのは、いい気分ではないだろうから、あえてあの場で惚けた。初めの印象が良くないのに、さらに印象を落としたくはない。

 何はともあれ、借金の他にも問題は多数存在する。

 つまり、それらの問題をある程度解決の目途が立たない限りアビドスを離れるつもりはない。

 

 シャーレの初仕事は、絶対に成功させたいからな。

 

 夜の暗闇に包まれたアビドス高校の校舎の片隅にある部屋で先生は、横になりつつ、そう少しの打算を含んだ考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜が……明けた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒見セリカは、無性に苛立っていた。

 原因はシャーレの先生たち一行である。

 

「なによ、みんな先生先生って……」

 

 いきなり介入してきた大人に対する苛立ちを隠せなかった。

 

 見慣れたアビドスの町を歩いていると、件の大人の仲間のシャーレの部員の一人に話しかけられた。

 

 純白の髪と赤い瞳がトレードマークの少女、守月スズミさんだ。

 

「あ……おはようございます。セリカさん。」

 

「す、スズミさんもおはよう……」

 

 シャーレの先生なら、文句の一つでも言ってやるところだが、スズミさんには罪はない。

 文句を言うのは控えた。

 

「学校とは逆方向のようですが……どこへ?」

 

「バイトですよバイト。スズミさんこそどこへ?」

 

 スズミさんの問いに正直に答えて、今度は私がスズミさんがここに居る理由を問う。

 

 スズミさんが、答えようとした直後に大きな声が割り込んだ。

 

「私はマサト君と「おーいスズミ!」」

 

 声を発した人の髪はシロコ先輩より黒に近い灰色で手にはトレンチコートを持っていた。

 声の主。烏城マサトは小走りで駆け寄った。

 

「そっちの収穫はどう?」

 

「私の方では特に……」

 

「そっか……まあ、目撃証言も本当か怪しいし、しゃあないな。」

 

「ちょっと! 二人揃ってアビドスでなにしてる訳!

 まさか、怪しい事じゃないわよね!」

 

 二人の会話を傍で聞いていて、怪しく思い二人を問いただす。

 

「もしそうだったら……」

 

「違う違うって。行方不明者の調査だよ。」

 

「行方不明者?」

 

 行方不明者……なにやら怪しい。

 そう思った私の心に、待ったを掛けるようにスズミさんが、詳しい事情を話す。

 

「ヴァルキューレ警察学校の刑事さんが行方不明になったんですよ。

 その刑事さん達がアビドスで目撃情報があったので、手掛かりになる証言が無いか聞き回っていたんです。確かニュースにもなっていたと思いますが……見ませんでしたか?」

 

 スズミさんの【ニュースになっていた】という言葉を頼りに記憶を探っていると……確かに数週間前に目撃情報を募るニュースが朝に流れていた。

 

「そうだったんですか。すみません!」

 

 完全に私の思い込みで二人を疑ってしまった。

 根拠も無いのに決めつけるように怪しんでしまい、申し訳ない気持ちで二人に頭を下げて謝った。

 

「いいっていいって、確かによそ者の俺らを警戒するのは悪いことじゃねえしな。

 こっちこそ委員長に一言入れるべきだったな。」

 

「ええ、そうですね。

 ちゃんと調査の許可を取るべきでした。すみません。」

 

 二人とも【むしろ自分が悪い】と逆に私が謝られてしまった。

 私が謝ったはずなのに何故?

 

 

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、バイト頑張ってくださいね。」

 

「頑張れよ~」

 

「そちらこそ調査、頑張ってくださいね!」

 

 少し歩いた先の十字路で二人は別れた。

 最初は怪しいと思ってしまったけど、優しい人たちだった。

 

 私も負けてられないと、やる気を漲らせてバイト先へ向かった……のだが。

 

 

 

「セリカちゃんってバイトの制服姿似合うね~おじさん感動で涙が出そうだよ~」

 

「ん確かにすごく似合ってるよセリカ。」

 

「わ~♠」

 

「うるっさいわよ!!」

 

 昼下がりの私のバイト先のラーメン屋に先輩たちが訪れたのだ。

 それに加え…………

 

「おいおい、お客さんには敬語だぜ~しっかり~」

 

「マサト君……」

 

「ちょっ薪をくべちゃダメでしょ! 止めて止めて。」

 

"あははは……"

 

 シャーレの部員たちまでやって来た。

 

 そしてマサト先輩の評価は落とした方が良いかもしれない。

 




やべー物語ぜんぜん動いてねえ……

でも書くの楽しいぞ。




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