スズミの幼馴染はクソガキ   作:けいあお

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第4話 先生

 …………意識が朦朧としている。視界が不明慮だ。鼓膜は全く揺れていない。何の匂いもしない。

 眼前に広がるのは、おそらく列車の車内だろうか?

 俺以外の乗客はいない。

 車窓の先に広がる景色を見る。

 

 淡い桃色と淡い紫のグラデーションの空が広がっていた。

 明け方だろうか? それとも、夕方なのだろうか? 少なくとも夜や昼間ではないだろう。

 

 視線を下げてみると、地平線が見えた。

 驚くほど平坦な大地が広がっている。

 草木は一切生えていない。この白い大地は塩湖と言うものだろうか?

 

 人工的な空間とも自然で出来た場所とも思えず、何とも不思議な場所だ。

 そもそも、こんな所に列車は走るものなのか?

 

 草木も道路も無い。見渡す限りすべてが白い程に巨大な塩湖を走る、無人の列車。

 俺以外のすべての人間が、消えたような錯覚すら覚える。

 

 一目見ても色々とおかしい列車だ。

 滅茶苦茶な列車を見ていると、非現実な所に思える。……そう...何かの夢のような。

 

【私のミスでした……】

 

 !!!? どういうことだ? さっきまでは確実に居なかった!

 

【私の選択、そしてそれによって招かれたあのすべての状況】

 

 俺が少し目を離した隙に俺の向かい側の席に一人の女性が現れた。

 見ると、その女性の腹から赤いモノが流れている。……間違いなく血だろう。

 心配になって駆け寄ろうにも、金縛りにあったように体がいう事を聞かない。

 

【結局、あの結果にたどり着いて初めて、貴方のお兄さんが正しかったことを悟るだなんて……。】

 

 何を言ってるんだこの女は、俺たちは……少なくとも俺はお前と初対面の筈だ。

 そんな俺の気持ちとは裏腹に、女の語り口調は穏やかだった。まるで大切な人と別れの言葉を紡いでいるかのようだった。

 

【今更図々しいでしょうが、お願いします。】

 

 見知らぬ他人に訳の分からない事を一方的に話されているのだが、何故だか不思議と嫌悪感などは無い。

 

ハルキ先生】

 

【きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。】

 

【何も思い出せなくても、貴方なら同じ状況で、あの人と同じ選択をされるでしょうから。】

 

 何も思い出せない? どういうことだ?

 そんな疑問を考える暇も無く、言葉は紡がれていく。

 

【ですから……大事なのは経験ではなく、選択。】

 

【あなたにしかできない選択の数々。】

 

 そう、彼女が告げると、頭の中に様々な光景が浮かび上がる。

 

 

 まず浮かんだのは、白色の髪を持つ少女に抱き着く、ブロンドヘアーの少女にその二人を見守るピンク色の髪の少女。

 

 次に浮かんだのは、"風紀委員"と書かれた腕章をつけている少女たちと、椅子に座っている長い白い髪を持った蝙蝠の様な羽の生えた少女。

 

 さらに浮かんできたのは、大きな建物の見える道路の上を歩く4人組の姿だ。

 リーダーっぽい少女は、銀髪のお嬢様の様な風貌で、先ほどの椅子に座ってる子の様な羽を持っていた。

 

 また浮かんで来た情景は、夜の空を背後に如何にも、アウトローっぽい4人組の姿だ。

 

 最後に浮かんできたのは、4人の少女の姿だ。

 4人とも、胸に太陽? の様なマークのカードを付けている。

 その背後に見えるのは砂漠か?

 

 

 どの情景に浮かぶ子も楽しそうだった。少なくとも苦しそうな子や悲しそうにしている子はいなかった。

 しかし、こんな、知りもしない少女たちの姿を見せて何がしたいんだ。

 俺には、何の関わりも無い。

 

【責任を負うものについて、あの人と話したことがありました。】

 

【あの時の私には分かりませんでしたが。……今なら理解できます。】

 

 そう語る彼女の声色には、どのような思いが含まれているのだろうか?

 後悔か、自嘲か、諦めか、そんなことが俺には分かるわけが無かった。

 

【大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あの人の選択。】

 

【それが意味する心廷えも。】

 

【ですから"ハルキ先生"】

 

 先生……か。

 

【私とあの人が信じられる大人である、貴方になら】

 

【この捻じれて歪んだ先の終着点とは、別の結果を……。】

 

【そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。】

 

 やはり、この女は俺に確かな信頼を向けている。

 猶更、意味が分からない。

 

【だからハルキ先生、どうか……。】

 

 この夢で分かったのは、とんでもなくヤバい案件を任されたって事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い」

 

「……先生、起きてください。」

 

 優しい声色だ、なおの事寝たくなる。

 

「先生!」

 

 少しばかり、強く起こされる。

 

 "……?”

 

 誰だろうか? この人は。

 目を覚ますと、少し豪華な待合スペース? だった。

 

「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。

 中々起きない程に熟睡されるとは。」

 

 黒髪ロングで眼鏡をかけた少女が"私"に話しかけている。

 "私"はそういえば何でここにいたんだっけ?

 ふわふわとした意識の中。現状を思い出そうと、脳を働かせる。

 

「……夢でも見ていらしたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。」

 

 少女の口ぶり的に"私"は呆れられたらしい。にしても夢?

 夢の事を思い出そうにも、……何も思い出せない。

 

「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。」

 

 …………だんだんと、ここに来る前の事を思い出してきたかもしれない。

 

「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です。」

 

「そしてあなたはおそらく、私達がここに呼び出した先生……のようですが」

 

 そうだ、私はこの学園都市キヴォトスの先生として呼ばれたんだった。

 このような大切な事をすっかり忘れていたとは、不甲斐ない限りだ。

 しかし、何故リンは推察形で語ったのだろうか?

 

「ああ。推察形でお話したのは、私も先生が此処に来た経緯をを詳しく知らないからです。」

 

 成程。しかし、幹部が私が来た経緯を知らないというのは、それはそれで問題では?

 思っていても口に出すことは無く、心のうちにとどめた。

 

「……混乱されてますよね。分かります。」

 

「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも、今はとりあえず、私に付いてきてください。」

 

 このような状況?

 少し頭を捻って考えてみるも、思い当たる節は浮かんでこなかった。

 

「先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」

 

「学園都市の命運を賭けた大事なこと……ということにしておきましょう。」

 

 足早に歩みを進めるリンを後ろから追いつつ、リンの発言を思い返す。

 私は先生として呼ばれたが、この都市の命運を握る存在に気づいたらさせられたことに困惑しつつも、足を運んでいくと……

 

"おお、凄い!"

 

[ウィィィィン__」

 

 全面に広がるは、全面ガラス張りのエレベーター。

 そのガラスの先には、見渡す限りの高層ビルが立ち並んでいる都市が目に飛び込んできた。

 

 学園都市なのだから、この都市は学生が実権を握って動かしているのだろう。

 

 見た限り、この都市では大きな問題は起こってなさそうに思える。

 

「キヴォトス」へようこそ。先生」

 

「キヴォトスは数千もの学園が集まってできている学園都市です。これから先生が働く場所でもあります。」

 

「きっと、先生がいらっしゃった所とは色々な事が違っていて。最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……」

 

 

「でも、先生ならそれほど心配しなくてもいいでしょう。」

 

 その言葉からは、私への信頼……ではなく、何か別の存在への信頼を感じられた。

 例えば【……さんの息子だから】【……君の親友だから】みたいなものに近いモノをリンの言葉からは感じられた。

 

「あの【連邦生徒会長】が、お選びになった方ですからね。」

 

 当たり……か

 

[チン]

 

 そう、確信すると同時にエレベーターは目的の階に着いたようだ。

 

 

 

 

 

 

(ざわざわ)

 

 エレベーターから出てしばらく歩き続けると、エントランス?らしき所に出た。

 

 何やらざわついている。何かあったのだろうか?

 

 ざわめきの中心を捉えると、そこから数人の少女が此方に向かってきた。

 一番その少女たちに語ることが在るとすれば、銃を平然と所持している所だろう。

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ、連邦生徒会長を呼んできて!」

 

 まず此方……いやリンか、に話しかけてきたのは、藍色の髪とその同様の色の瞳の少女だ、SMGを平然と所持している。持ち物検査とかはしないのだろうか?

 

 そんな疑問をよそに、少女は怒気を言葉に含ませてリンを問い詰めていた。

 

「うん? その、隣の大人の方は?」

 

 少女の気が、少しこちらに向いたが……

 

「主席行政官、お待ちしておりました。」

 

 大きな羽の生えた黒髪の背の高い…………ついでに胸も大きい、少……女? が話の軌道をリンへの質問に切り替えたため、私は会話から消え失せる運びとなった。

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況に納得のいく回答を求められています。」

 

 腕に"風紀委員"と書かれた腕章を付けた女の子が、淡々とした口調でリンに問い詰める。

 

「ああ……面倒な人達に捕まってしまいましたね。」

 

 えぇ……3対2でこっちは丸腰であちらは、銃を持っているにも関わらずこの発言、肝が据わりすぎでしょ。

 

「こんにちは、各学園から態々ここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」

 

 更に、嫌味たっぷりの追撃。少なくとも心臓に毛が生えてるとして、その心臓に生えてる毛、剛毛過ぎませんかね。

 

「そんな暇そ…………大事な方々が此処を訪ねてきた理由は、よく分かっています。」

 

 本音!本音!出かかってるって。

 

「今、学園都市に起きている混乱の責任問うために……でしょう?」

 

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」

 

 リンの返しもとい、嫌味に触れることも無く青髪の子がリンに次々まくしたてる。

 

「幾千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

「連邦矯正局で停学中の生徒達について、一部が脱走したという情報もありました。」

 

「それに、スケバンや不良などの生徒により、登下校中に襲われるといった報告も最近は急激に増えています。

 さらに、出所不明の戦車や火器などの不法流通も2000%以上増加しています。

 このままでは、正常な学園生活に支障をきたしています。」

 

 なんか思ってたより不味い事になっている予感がする。

 不法流通がについて言ってたが、2000%ってなんだよ! 20倍じゃねぇか! そのデータを現すグラフの角度は凄いことになってそうだ。

 

「…………」

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ合わして!」

 

 確かに、ありとあらゆる問題が起こっているというのに何故、連邦生徒会長からの音沙汰が無いのだろうか?

 

 そんな私たちの疑問の答えをに握るリンは重苦しい口調で語った。

 

「連邦生徒会長は今、その席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」

 

「……え!?」

 

「……!!」

 

「やはりあの噂は……」

 

 私を呼んだ人行方不明なんだけど…………なんで?

 そんな私の疑問をよそに、リンは説明を続ける。

 

「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」

 

 ……え?……結構まずくね?

 というか【行政制御権を失う】is 何?

 一人いなくなっただけで、行政制御権無くすの?

 連邦生徒会長さんに依存し過ぎでは?

 

「認証を迂回する方法を探していましたが……先ほどまでそのような方法は見つかていませんでした。」

 

「それでは、今はその方法があるということですか、主席行政官?」

 

「はい」

 

 へえ、いままで認証を迂回する方法が見つかっていなかったのに、そんな急に都合のいい方法見つかるもんなのかな?

 それにしてもそんな認証って迂回できるのか?できていいのか? 結構セキュリティーガバくね?

 

「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」

 

「「「!!??」」」

 

"私が!?"

 

 突然、彼女らの話に私の名前が出てきたことに驚きを感じた。

 今まで話から放り出されていた自分に、そんな大層な役ができるとは思えない。

 このキヴォトスに来たばかりの私に何ができるのだろうか?

 

 青髪の少女が、リンの言葉を上手く咀嚼できていない様子でリンに問いかける。

 

「ちょっと待って。そういえばこの先生はどなた? どうしてここにいるの?」

 

 黒髪の、少……女?は合点の言った様子で言葉を紡ぐ。

 

「キヴォトスではない所から来た方のようですが……先生だったのですね。」

 

「はい。こちらの先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」

 

 連邦生徒会長……か。

 私は「連邦生徒会長の指名した人」なのか...

 

 正直、気に食わない。私が何を成し遂げても【連邦生徒会長の選んだ人なのだから当然】と思われたり、逆に何も成さないと【あの連邦生徒会長が選んだ人なのに】と思われるのだろう。そう思うと...胸の奥がモヤッとする。

 

 いや……少々悲観的過ぎるか……決めつけは良くないな。

 

 

「行方不明になった連邦生徒会長が指名?……ますますこんがらがってきたじゃないの……」

 

 ああ……まあ、一先ず自己紹介でもしとこうかな。

 

"こんにちは!"

 

 青髪の少女は大人である私を前にして緊張しているのだろうか?

 少し、言葉を詰まらせながら……

 

「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……」

 

「い、いや、挨拶なんてどうでもよくて……」

 

「そのうるさい方は気にしなくてもいいです。続けますと……」

 

 おいおい、緊張ながらでも見知らぬ大人である私に話しかけてくれた子に、厳しすぎじゃないリンちゃん?

 

「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生!」

 

 リンの嫌味にも屈せず自己紹介をしてくれた。

 成程、早瀬ユウカさんか。

 

 少し落ち着きのない所があるものの、それを加味しても私は彼女の事を好意的に思ったのだった。

 

"よろしくね"

 

 話の腰を折ってしまったが、リンが話を私の仕事に戻す。

 

「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。その部活の名は連邦捜査部【シャーレ】。これは単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。

連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすら可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことが可能です。」

 

 リンの話を一通り聞いたが、どうも……大した物を私に残したようだ。

 自治区……よく分からないがその学校の支配できる領地みたいな感じか?

 だとしたら、この"学園"都市の中ならとんでもない力なのではないか?

 

「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのか分かりませんが……。」

 

 確かに。会ったことも無い人間にいきなり託す土産としては、大きすぎるな。

 

「シャーレの部室はここから約30キロメートル離れた外郭地区にあります。

 今はほとんど何も無い建物ですが、連邦生徒会長の命令で、地下に【とあるもの】を持ち込んでいます。

 先生をそこにお連れしなければなりません。」

 

 気になることずくめだな、だけどそこに行けば連邦生徒会長とやらが私を呼んだ理由も少しはわかるだろうか?

 

 私が物思いにふけっていると、リンがスマホを取り出した。

 誰かに電話を掛けるのだろうか?

 

「モモカ、シャーレの部室に直行できるヘリが必要なんだけど……。」

 

【シャーレの部室って?】

 

 

 

 

「オラオラァ!」

 

 硝煙と黒煙。響き渡る爆発音と怒号がそこでは響き渡っていた。

 

 

 

【……ああ、外郭地区の? そこ、今大騒ぎだけど?】

 

「大騒ぎ……?」

 

 

 

≪キャリキャリキャリ≫

 

 キャタピラの駆動音が聞こえる。

 どうやら、奴ら戦車まで持ち出したようだ。

 

 

 

【矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。】

 

 

 

 全く……どこからそんなものを持ってきたんだよ?

 ……そんなことを考えている暇は無いな。

 市民が逃げるまで時間を稼がなきゃな……

 なんでこれだけの兵力を…………奴ら、ここら一帯を更地にでもするつもりか?

 

 

 

【連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼野原にしてるみたいなの。

 巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?】

 

 

 

 これだけの大事を引き起こせる人間はそう多くは無と思うけど。

 矯正局を抜け出した人らの内の誰かかな?

 

 

 

【それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしているらしいの。

 まるでそこに何かあるような動きだけど?】

 

 

 

 それにしても、何故ここを狙ったんだ?

 こんな外郭地区には奴らの目につくようなモノは無いはず。

 

 ドガァーン!

 

 戦車の主砲の発砲音が鳴り響き、先ほどまで俺が居た地面が赤い炎に覆われる。

 このままでは僕も限界か……

 

 

 

【まあでも、もうとっくにメチャクチャな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね!】

 

【ブツッ】

 

 

 

 

 

 

 ~少し前~

 

 

 

 ダダダダダッ

 

「クッソ! どんだけいんだよ!」

 

 スズミと一緒に連邦生徒会長に直談判しにDUまで来たってのに。

 ……この騒ぎに巻き込まれた。

 

 大量の不良どもが、ここら一帯で暴れまくってる。

 この騒ぎを放っておく訳にもいかないので、今は障害物となる車を盾に銃撃戦に勤しんでいる。

 

「キリがありませんね……」

 

 これじゃあ、ぶっ倒してもぶっ倒してもキリがないぜ。

 スズミもこれには苦言をていする。

 弾にも限りがある、俺の得意な接近戦に移ろうにも高低差の激しく色々な建物の屋上などからも狙撃されている現状では少し厳しいものがある。

 それに、俺の愛銃の"M1911ハンドガン"じゃあライフル相手に射程が心許ない。

 

「市民の方々が逃げ出すまでは時間を稼がなくては……!」

 

 確かに、このどんちゃん騒ぎから逃げ遅れた市民も数多く居る。

 戦えない人がいるのだ。代わりに俺達が戦わないと!

 市民のために頑張るスズミを見て俺も警察組織に務める者として決意を固める。

 

 ……あれは!

 

 俺の目に映ったのは巡航戦車だ。

 あの黒色の装甲にキャタピラ……を纏った鋼鉄の獣その名も戦車。あのデザイン……もしかしてカイザーのヤツか?

 

 ……!

 

 目を凝らしていると、【カンカン!】何処からか飛んで来た鉛玉が戦車の装甲にぶつかり、甲高い金属音が鳴った。

 不良の流れ弾などではなく、しっかりと戦車を狙ったものだ。

 

 俺達以外にも不良どもに立ち向かってくれるヤツがいるとは!

 

【ウィーン】

 

 砲塔が銃弾の飛んだ源である乗用車に照準を合わせる。

 恐らくあそこに不良と戦っているヤツが居るのだろう。

 

 あのまま撃たせたらマズイ!

 

「くっ、間に合ってくれ!!」

 

 偶然とはいえ、折角一緒に戦ってくれている人が居るんだ...助けないと!

 車の影から一気に飛び出る。

 

「え!ちょっと待ってくだ……」

 

 スズミの制止を振り切って、一気に協力者がいるであろう車の影へ駆け出す。

 

「これで!」

 

 腰に取り付けていたフラッシュグレネードを戦車と協力者のいるであろう車の間にぶん投げる。

 

 これなら、照準が付いてしまった次の砲撃は食らうかもしれないが、砲手の目を眩ませれば追撃の砲撃は協力者には当たらないハズ。

 次の砲撃で戦闘不能になるかもしれないが、更なる砲撃による怪我は防げる筈!

 

 バン!

 投げたフラッシュグレネードは音を立てて炸裂し刹那白い閃光が辺りを包み込んだ。それと同時に戦車の主砲が火を噴く。

 

ドカァーン

 

 その次に瞬きをすると砲弾が炸裂! ……悲鳴とかは聞こえないし、戦ってた人は助かったのかな?

 

「……あれそういや今の俺って……まあまあヤバくね。」

 

 射線の通った道路の真ん中...そして目の前には黒い装甲を持つ鋼鉄の戦車……そして、【チャキ】そんな俺に向く……複数の銃口……導き出される結果は……

 

「こんなにデカい隙を晒すなんてな! 打て!ハチの巣にしてやれ!」

 

ダダダダダダダッ  ズガンズガン! ダンッダンッダンッ

 

「やべッ!!」

 

 近くにあった車に急いで飛び込む!あっぶね!【バリンッ】っと窓が割れる音がしたり、【カンカンカン】と銃弾が車のボディに着弾する音がするが気にしない。それにしても助けに行った俺が戦闘不能にされたんじゃ意味ないぜ。

 

「ひー、ヒヤッとした!」

 

 とはいえ、盾替わりの車も、戦車が居たら速攻で廃車にされちゃうぜ。

 遮蔽物には限りがあるし、戦車にぶっ壊され続けられたら、リソース不足でじり貧負けだ。

 

 トントン……

 突然肩を叩かれた。

 スズミか?

 

 後ろの方を振り向くと...

 

「こんちわ~」

 

「!?……誰だアンタ!」

 

 振り返ると、俺の瞳に映ったのは見知らぬ男。

 背格好は俺と同じぐらいの男っていうか、俺と同じ学生。それも男子生徒

 

 黒髪で革ジャンにジーパン。持ってる武器は……右手にアサルトライフルに……左手にはサブマシンガン!へえ、中々変わった武器チョイスだな。

 

「あっ驚かせちゃった?さっきのフラッシュグレネード君のでしょ、助かったよ。」

 

「ああ、そっちも無事で良かった!」

 

 思ったより気さくに話しかけてくれるな……この様子だと協力できそうだな、ありがたいぜ。

 

 協力者と合流を果たしたが、これからどうするかな。

 

ドカーン「うおッ」「っと!」

 

 思考をしていると突然、爆裂音が鼓膜に響き渡る。

 容赦なく主砲を撃って来やがる。

 乗用車がかわいそうだと思わねぇのかよ!

 

「クソッ戦車をぶっ壊さないと勝負にすらならねぇ!」

 

 遮蔽物(乗用車)も無限じゃないんだ、さっさと決着付けないとな!

 新しい障害物(乗用車)に二人で飛び込む。

 

「チッどうするよ?」

 

「……!それじゃあアレが使えそうじゃない」

 

 彼の眼差しの先にあったのは…………成程、確かに使えそうだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいッ何を手こずってんだよ!」

 

 狭い戦車の車内に怒鳴り声が響く。

 たった二人の生徒にここまで手を焼いているのだ。無理もないだろう。

 

「けどアイツら虫みたいにすばしっこいんだよ~」

 

 素早い動きで主砲が当たらない。

 一時期はこちらが押していたのだが、いきなり乱入してきたもう一人の所為で状況を立て直された。

 こっちにも歩兵も居るには居るが、少しずつ数が減らされたいる。

 だが……

 

「でもさ~アイツらにはうち等の戦車をどうにもできないじゃん」

 

「そうそう、遮蔽物だって無限じゃないしアイツらも時間の問題じゃないの?」

 

 戦車がある限り私達の勝利は揺るがない。

 

「こっちの、弾も無限じゃないんだぞ!

 それに私たちは貧乏なんだから打ち切ったら大赤字だ!」

 

「確かに、赤字はマズイね~ねえ、どうするの?」

 

 すっかり忘れてた。

 私達の弾も無限じゃないんだった。……だったらさっさと決着つけよっかな。

 

「じゃあ……ちょっと無理しよっか」

 

「へ?」

 

「い~じゃん!盛り上がって来たね!」

 

「えい」

 

 エンジン全開でお二人相手に突っ込む。

【キャリキャリキャリ!】

 めんどいし、さっさと寝てくれないかな。

 

「ちょ!?」

 

「行く!」

 

「いっけ~」

 

 全速力で走る戦車に、慣性で私たちは後ろに引っ張られる。

 

ドカーン

 壁にに激突しちゃった……うっかり。

 

「ばっか!何やってんだ!」

 

「ごめん、ちょっとミスった。」

 

『ウィィィィィィン』

 

「?」

 

 この高く鳴く回転音。……まさか!

 

 音の正体に感づいた私は急いでバックしようとするも……

 

『バゴォン!』

 

「お邪魔しまーす」

 

 ハッチの方向から物凄い音が聞こえてきた。おどけた声が耳に入ってきたがもう時すでに遅し。

 次の瞬間には発砲音が車内に響き渡り、私たちは意識を失った。

 

 




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