ハリー・ポッターと嵐の舞う丘 作:奪われ泣き叫ぶヒンドリー
2 入学許可証
あれから3年。
キャサリンは10歳、ヒンドリーは12歳、ヒースクリフは11歳になっていた。
あとで孤児院とかにつれていけばいい――サマンサはそう思っていたが、エドワードがあまりにも彼を溺愛するのだ。
サマンサは放ったらかしのキャサリンとヒンドリーを育てるので手一杯で、ヒースクリフを怒鳴って放り出すほどの残酷さもなかった。
ダラダラと家においていき、気づけば3年が経っていたのである。
戸籍については、わからなかった。
戸籍自体自己申告ベースな魔法界で、こんな捨て子に戸籍があるとは思えなかった。
去年、ヒンドリーはホグワーツに行った。
ホグワーツというのは魔法使いの学校で、彼はスリザリンというところに配属されたらしい。
4つある寮の一つとかエドワードは言っていたが、ヒースクリフは理解できなかった。
しかしヒースクリフは、内心かなり喜んでいた。
なにせヒンドリーという最大の障壁が、次の夏休みとまでとはいえ消えたのである。
口には出さなかったとはいえ、内心高笑いしていた。
ヒンドリーがホグワーツに行っている間、ヒースクリフはキャサリンと親交を深め、互いに「キャシー」「ヒース」と呼び合う仲になっていた。
しかし――
「またイチャイチャしてるのか? リア充だな」
6月の終わり、ヒンドリーが帰ってきたのだ。
彼は仲良しになった二人を見て嫉妬し、二人が仲良く呼び合っているところに、毎回冷や水を浴びせるようになったのだ。
とはいえ、それは二人の絆をより強固にする行為だった。
「雨降って地固まる」ということわざをヒンドリーは知らなかったし、知っていたとて信じなかったはずだ。
9月1日、ヒンドリーがホグワーツに行く時まで耐え忍べばいい――ヒースは、そんな計画を持っていた。
――そう、その日までは。
▽ ▽ ▽
7月も終わろうとしていたある日の朝、ネリーが手紙をもってきた。
ネリーというのは、アーンショウ家の住み込みメイドである。
たいていの魔法貴族は「
ネリーは同じ魔法使いであり、対等な給料と衣食住を契約に、ここワザリング・ハイツで働いていた。
ネリーはいつも通り、エドワードに手紙を渡す。
まずエドワードが宛名を確認し、それから妻や子どもたちに渡すというのがアーンショウ家のルールだった。
エドワードが分厚く黄色みがかった羊皮紙の封筒を見た瞬間、彼の顔が固まった。
しかし、すぐに喜びを隠せなくなり――満面の笑みを浮かべながら、ヒースクリフにその手紙を渡した。
「なんだよ……そんなニヤニヤして……」
ヒースクリフはそういうが、エドワードはその手紙を彼に見せた。
「――っ!」
その手紙に、ヒースクリフは見覚えがあった。
去年、ヒンドリーがホグワーツに行くことが決まった時、ヒンドリーのところに来たものだ。
宛名こそ「サミュエル・ヒースクリフ」になっていたものの、デザインはすべて同じだった。
「ヒースクリフ――お前も、魔法使いだったみたいだな?」
「いや、みたいだなって言われても……そんなの、オレもわからねーよ」
魔法使いの子供は、幼少期にしばし魔力を暴走させる。
大抵はそれで魔法使いだとわかるし、親も期待できる。
しかしアーンショウ家には、子供が3人もいるのだ。
「誰かが」魔法を暴発させたって、「誰が」に絞ることはできない。
とはいえ、彼はダイアゴン横丁――魔法使いしかこれないところ――に捨てられていたのだ。
論理的に考えて、魔法使いである方が普通だろう。
「とりあえず、開けてみろ」
エドワードが急かすので、中を見ることにした。
封を破り捨て中を覗くと、そこには二枚の手紙が入っていた。
そこには聞いたこともない長い肩書を持った校長の名前から始まり、彼にホグワーツ魔法魔術学校への入学が許可されたことや、学用品は魔法の杖や呪文の本であることが書かれていた。
(ホグワーツ――ヒンドリーがいったところじゃないか)
ヒースクリフは舌打ちした。
ヒンドリーが絡みそうになったが、エドワードが遮り話を続けた。
「いやいや、ホグワーツが悪いところってわけじゃないんだ――いいところはたくさんあるし、私もホグワーツを卒業した」
その話で、ヒースクリフの誤解は解けた。
ホグワーツが悪いってわけじゃない、ヒンドリーが悪いんだ。
「――どうだい、いくか?」
エドワードが尋ねた。
ヒースクリフは少し考え、それから決断を下した。
「……まぁ、行ってもいいぜ」
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