SNSの運営をAIから解放したい……みたいな~。
ずっと後になって、筏の上にあるペンの小さな小屋では、全てが平和の絵のようだった。
窓から光が差し込み、歓喜の声が響いていた。
トレスクとメスクはボウルの中でゆったりと体を揺らしていた。
ジャスミンの腕に抱かれたクリーは、慎重に治癒の翼を試していた。
ヴァージニア、ワソ、リーフ、バルダ、ジャスミンは、
ペンと笛吹きと共にストーブの周りに座り、筏の住人達の歓声が耳に響いていた。
五人の間には、モリスクの肉を盛った大きな皿と温かいパンの入った籠が置いてある。
フィリはジャスミンの肩に座り、海のベリーをかじっていた。
小さな鼻は驚きと喜びでしわくちゃになっていた。
イラダチとキラメキさえも、檻の中で並んで静かに横たわっていた。
アラクとの遭遇は、五人の戦いの賢明さについての考えを変えたようだった。
五人は共に、想像を遥かに超える恐ろしい怪物、アラクに立ち向かったのだ。
今のところ、五人は平和が恵みだと考えていた。
「そうか。アラクは元の洞窟に戻ったのじゃな」
笛吹きの男は肉を美味しそうに齧りながら言った。
「光と寒さに耐えられなかったんだ。ペン、そうするって言っただろ」
「あのウネウネよりは遥かにマシですけど……」
ペンはヴァージニア、ワソ、リーフ、バルダ、ジャスミンを一瞥した。
彼女の料理は皿の上で味見もせずに残っていた。
少なくともペンは、まだ心が安らかではなかった。
リーフは、二人の間に漂うこの問題を言葉にすれば、ペンも安堵するだろうと分かっていた。
オーロン島の割れたガラスの山から回収したピラの笛の胴体が、
まさに今、笛吹きの男のローブの中にしっかりと押し込まれている事を、
リーフはよく分かっていた。
今、笛吹きの男を怒らせるのは賢明ではないとリーフは分かっていた。
しかし、皆のためにも、自分の考えを言わなければならなかった。
「君が僕達を利用したのか。
最初、ピラの笛の胴体を手に入れるための道具として
僕達を利用しているのではないかと疑っていた。
でも、実際にはそれ以上の事をしていた。
ドームを破壊するための武器として僕達を利用していたんだ」
「我が民の命を吸い取っているものを破壊するためか?」
笛吹きの男は指を舐めながら穏やかに言った。
「ああ、そうした。デルトラのためにも同じ事をするんだ」
「もちろんそうするでしょう、リーフ」
ジャスミンは鋭く言った。
「王国の利益のために必要だと信じれば、あなたは冷たくなれるわ」
「どういう意味だ、ジャスミン?」
リーフは、突然の、苦々しい声色に驚いて叫んだ。
ジャスミンは肩を竦めた。
「例えば、秘密は守るべきだと思うなら、守るわよね。たとえそれが仲間のものであってもね」
リーフの視線を避けるために、ジャスミンは自分の手を見下ろした。
ジャスミンは自分に腹を立てていた。
あんなに軽率に口にしたつもりはなかった。
ジャスミンは、影の王国に囚われている妹のフェイスの事を考えないようにしていた。
リーフはフェイスの事を隠そうとしていた。
ヴァージニアとワソはきょとんとしていた。
リーフが密かに城に連れてきて王妃にしようとした、
高貴な生まれのトーラ族の娘の事も考えないようにしていた。
大抵は上手くいった。
しかし、時折、ジャスミンは思い出し、その記憶が槍のようにジャスミンの心を突き刺し、
怒りと苦痛に苛まれ、暴言を吐いてしまう。
リーフは顔が熱くなるのを感じた。
島でジャスミンが軽率に言った言葉を思い出していた。
ジャスミンが、自らの犠牲を払って守ってきた秘密を、
まるで押し潰されそうなほど重荷を背負っていた秘密を見抜いていたなんてあり得るだろうか。
(ジョーカーはあんなに用心深かったのに)
(みんな、喧嘩してますわよ……)
リーフはバルダを一瞥した。
しかしバルダは、静かな通りで何か興味深い出来事が起こっているかのように、
窓の外を見ていた。
ヴァージニアとワソはお互いに疑い合っている事に心配だった。
ジャスミンはただ秘密があるのではないかと疑っているだけ、とリーフは自分に言い聞かせた。
彼女は、常に真実を語り合ってきた四人の間に、隠された知識が常に生み出す壁を感じている。
リーフ自身もそれを感じ、そしてそれを憎んだ。
彼はその壁を壊したいと切望した。
こんな時に感じる、酷く苦しい孤独を終わらせるために。
しかし、リーフはそれができない事を知っていた。
全てが安全になるまで、デルトラの未来を守り切るまで。
リーフは笛吹きが好奇心を持って自分を見つめている事に気づき、リーフの赤面は深まった。
「指導者は、時にはやりたくない事をしなければならない事もある」
笛吹きの男は、まるで自分自身に話しかけるように言った。
「時には、皆のよりよい利益のために、自分の願い、
さらには心の奥底にある切望さえも脇に置かなければならぬ。
それは……決して楽しい事ではない。
特に、自分の行動が大切な人達を怒らせる時はな」
ジャスミンは頭を上げなかった。
しかし、リーフは彼ャスミンが聞いている事が分かった。
リーフも理解していることを祈った。
「お主はきっと、わしが邪悪だと思っているのじゃろう」
「えっ?」
笛吹きの男は、いつもと同じ落ち着いた口調で続けた。
「ペンがわしの命令でお主を騙したと思っているのか?
ドームを破壊するための道具としてお主らを利用したと思っているのか?
わしがお主らの命や、
島に住んでいたかもしれない人々の命など気にしていなかったと思っているのか?」
「確かにその通りだ」
バルダは冷淡に言った。
笛吹きの男は細い肩をすくめた。
「確かに、可哀想なペンに無理矢理そうさせたのは事実じゃ」
笛吹きの男は頭を下げた歴史記録係を一瞥しながら言った。
「ペンはその仕事に酷く苦しんでいた。
筏の住人皆と同じように、ペンは何よりも真実を重んじる。
わしはペンに、わしらの歴史をお主に読んでもらうように提案した。
そうすれば、ペンはそれを語る必要はなくなるだろう」
「でも、歴史は完全じゃありませんでしたわ」
「ペンがくれた二枚の羊皮紙は破れていた。一枚目は下、二枚目は上だ。
かつては同じ文書の一部だったと思う。
物語を僕達に伝える前に、真ん中から少し破った。違うのか?」
「……はい」
ペンは悲しそうに頷いた。
何も言わずに這い上がり、吊り下げられた籠の方へ歩み寄った。
籠の一つの裏から羊皮紙の切れ端を滑り込ませ、ストーブに戻ってリーフの手に押し付けた。
しかし、ドームは、その中の誰もが幻影を信じ、
疑念を一切遮断する限り、無傷のままでいられるだけだった。
島がピラの島である事を否定し、洞窟とドームについて声高に語ったため、
私達の祖先はドームの存在を絶えず脅かしていた。
「もしペンに羊皮紙全体を見せさせていたら、お主はわしらを助けてくれたのか?」
笛吹きの男は冷たい小さな目をリーフに向けた。
リーフは躊躇った。
「ピラの笛の胴体が必要だったんだ。
たとえ真実を知っていたとしても、ドームに入っていただろう」
「そうかもしれぬ。
じゃが、お主があまりにも慎重に発言していたら、ドームは閉じたままだったかもしれない。
そして、我が民は暗闇の中で暮らし続けていただろう。そんな危険は冒せなかった。
だから、お主がわしに突きつけた最初の罪は、わしが負う事になる。
しかし、他の者達の罪はわしにはない」
笛吹きの男は籠からパンを少し取り、かぶりついた。
「ドームの住人達がお主を傷つけるはずはない、ドームの中では血を流してはならぬからな」
笛吹きの男は口いっぱいにパンを詰めながら、考え深げに言った。
「それに、お主や他の誰かがアラクと対峙する事になるとは思ってもみなかった。
ドームが砕け、洞窟に光が戻り、
アラクはすぐに洞窟の薄暗がりへと逃げ去るだろうと思っていた」
「しかし、そうはならなかった」
バルダはぶっきらぼうに言った。
「オーリスが呪文を唱えていた。
奴はドームが損傷していたにもかかわらず、意志の力の限りを尽くしてその場に留めていた。
奴が死んで、魔法が解けたんだ」
「その通りじゃ」
笛吹きの男は肩を竦めた。
「そんな事は想定しておらぬかった。
でも、何が起こったのかを理解するとすぐに、ペンとわしは衛兵を呼んだ。
それから、衛兵が到着する前に、
わしらはドームに入り、お主を助けるためにできる限りの事をした」
笛吹きの男はパンをもう一口食べ、ペンを一瞥した。
「わしらが何の役に立ったか、わしには分からぬ」
笛吹きの男はパンを噛みながら言った。
「ペンに言ったように、わしらはほぼ確実に死に向かっていた。じゃが、ペンは譲らなかった。
幸いにも、オーリスという男が犠牲になって、皆を救ってくれた」
リーフはオーリスの恐ろしい死の光景が目の前に浮かび上がり、身震いした。
彼は嫌悪の眼差しで笛吹きの男を一瞥し、そしてその冷たさに反感を覚え、目を逸らした。
それでも、リーフは思った。
一見無関心な言葉遣いとは裏腹に、笛吹きの男はドームに入ってしまった。
自らの命を危険に晒してしまったのだ。
リーフは再び、小柄で皺だらけのオーロン族を見た。
笛吹きの男は楽しそうにパンを噛んでいた。
どんなふりをしようと、笛吹きの男に感情がないわけではない。
名誉も勇気もないわけではない。
笛吹きの男はただ、感情を内に秘めておく事を好む存在だった。
それが笛吹きの男なりの生き残り方だったのだ。
「島にたった一人しか残らないなんて、夢にも思いませんでした」
ついに沈黙を破り、ペンが口を開いた。
「しかし、大勢ではない事は分かっていました。
ドームに住むコロニーが繁栄する事は決してなかったでしょう。
先祖が部族を去った時でさえ、部族に生まれる子供はどんどん減っていました」
「……」
ヴァージニアは怪物の事もあって、何も言わなかった。
笛吹きの男は唾を飲み込みながら頷いた。
「子供は嘘をついて生きるのが下手じゃ。エネルギーがありすぎて、せっかちで質問ばかりする」
笛吹きの男はジャスミンを狡猾そうにちらりと見た。
「確かに、子供時代を過ぎてもこうした性質を持ち続ける人もいる。それは良い事だと思う。
じゃが、彼らを愛する人にとっては、必ずしも心地よい事ではない」
その後の緊張した沈黙の中、笛吹きの男は静かに食事を終えた。
それから手についたパンくずを払い、ローブの襞を探った。
「ピラの笛の胴体じゃ」
笛吹きの男はそう言うと、小さな木片を取り出し、リーフにさりげなく手渡した。
「好きに使えばいい。目的を達成したら返してもらうが、今はなくても大丈夫じゃ」
リーフは震える手で笛の胴体を受け取った。
触れた途端、全身がゾクゾクし、笛の音が耳に響いた。
シャツの内ポケットから吹き口を取り出し、二つのパーツをねじで留めた。
「ありがとう」
「どういたしまして。実際、大した犠牲ではない。
ピラの笛の持ち分を長い間、失っていたのじゃからな。
今は、全てのオーロン族に宿り、今やわしらの手に渡った魔法で十分じゃ。
お主のおかげで、この島を取り戻した。これ以上、何を求めるというのじゃ?」
リーフの心の中で、甘美で切ない思いに満ちた音楽が高低を繰り返した。
彼はヴァージニア、ワソ、バルダ、ジャスミンを見上げた。
ヴァージニア達の目が自分の手の中の魔法の物体に釘付けになっているのを見て、
リーフはその力を感じ取っている事を悟った。
あと一歩の努力……あと一歩の冒険で、ピラの笛は完成する。
そして、リーフは思った。
「準備は万端だ。そうすれば、幸か不幸か、影の王国へ向かえる」
次回は第2部の最終章「影の王国」が始まります。
影の大王に捕らえられた人々を、リーフ達は救う事ができるのでしょうか?