片割れの呪術師   作:Haruyama

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第14話 過去編_証拠だけが残った

 

 

《傑。

こんな形で伝えることになって、ごめんね。

 

私、傑のこと――ずっと好きだったよ。

高専に入学して、これから先どうなるかわからなかったけど、初めて人を好きになることが出来た。

 

もちろん、気づいてくれなくてもいい。

片思いで終わってもいい。

そう思ってた。

 

傑のことを好きになったところを、はね。

 

傑はよく褒めてくれて、頭を撫でてくれた。

私ね、両親を早くに亡くしていて……大人の人に頭を撫でられたこと、なかったから。

すごく嬉しかったんだ。

 

目が合うたび、あなたは笑ってくれた。

沢山面倒も見てくれたし、呪術のことも教えてくれた。

 

――……

 

傑。

1年半という短い時間だったけど、本当に楽しかった。

 

ごめんね。

卒業まで、傍にいることが出来なくて。

 

3日前に、傑と話したこと、覚えてるかな。

 

私は――信念を貫くことにする。

その人を助けに行ってくる。

 

そして……もし、生きて帰って来られたら。

その時は、返事、聞かせてね。

 

今までありがとう。

さようなら――傑。

 

君のことが、大好きでした》

 

 

 

 

 

 

 そこで、音声メッセージは終わっていた。

 

 表示された時間は、3日前。

――つまり、任務に出発してすぐ、このメッセージを残したのだろう。

 

 

「……葉月、まさか……」

 

 

 私には、この音声が――遺書のように聞こえた。

 

 前半は、ほとんど私への告白。

 後半は――覚悟の言葉だ。

 

 彼女は、何か強い信念を抱き、それを全うするために、全てを捨てて行動した。

 それが―― 一般人を皆殺しにすることだなんて。

 

 あまりにも、葉月の性格からかけ離れている。

 

 

「……だけど、もしあの話が事実なら……葉月は……本当に?」

 

 

 翌日。

 悟たちと、夜蛾先生と共に、葉月の任務先へ向かうことになった。

 

 真実を確かめるために。

 葉月が――何をしたのかを、この目で見るために。

 

「……葉月。死んだら、告白の返事も出来ないじゃないか」

 

 

 

ずるいな、君は。

 

私の気持ちも知らないまま、先に告白して。

君は、こうなることを予想していたのだろうか。

 

ねぇ、葉月。

教えてくれ。

君の声を、もう一度――。

 

---

 

 

 

 

―翌日―

 

 

 夜蛾先生の運転する車で、俺たちは任務先の地区に到着した。

 

 そして、目に入った光景に、言葉を失う。

 

 地面は抉られ、建物は全壊、もしくは半壊。

 遠目からでも分かるほどの破壊痕。

 「立ち入り禁止」と書かれた黄色いテープだけが、無機質に風に揺れていた。

 

 現場検証を終え、誰もいなくなった静寂の中。

 不気味な風が、瓦礫の間を吹き抜ける。

 

 俺たちは柵沿いに歩き、歪んだ隙間から地区の中へと足を踏み入れた。

 

 

「……な……」

「これ……本当に……葉月が……?」

 

 

 血に染まった外壁。

 無造作に転がる、小さな子供の靴。

 

 家屋は、まるで呪霊の大群に蹂躙されたかのように崩れ、

 地面は人の血と砂が混ざり、血黒く変色している。

 

 それも、最初からその色だったかのように。

 

 

 

「……ねぇ、これ……」

 

 硝子が、何かを拾い上げた。

 それを見た瞬間、呼吸が止まった。

 

 

――高専の制服のボタン。

 

 

「……認めざるを得ない、か」

「先生!!」

 

 認めたくなかった。

 だが、証拠は揃っている。

 

 この場に残る残穢も――間違いなく、葉月のものだった。

 

「葉月が一般人を殺す理由は何だ!!脅されて、やらされたんじゃないのか!?」

 

 必死に考える。

 彼女なら、きっと何か理由があったはずだと。

 

 

 

「悟」

 

 傑が、俺を制した。

 

「……葉月は、もう戻ってこない」

「……」

「制服のボタンが、何よりの証拠だ。それに……悟だって、もう分かっているだろう?」

「……だけど!!」

 

 

 認めたくなかった。

 でも、夜蛾先生も、硝子も、傑も――事実を受け入れようとしていた。

 

 

 証拠は、あまりにも十分すぎた。

 

 

「葉月は呪詛師だ。呪詛師は、殺さなければならない。

どんな理由があろうとも……一般人を殺した以上、規定通りだ」

「――」

「……もう、葉月が無実だと信じるのは、難しいんだな」

 

 

 

 

 

俺は、何も出来なかった。

ただ、叫ぶことしか――出来なかった。

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