目立たず静かに生きたいだけなのに、 呪い付きモブとして転生した結果、 五つの学園を練り歩く最下位スタート生活になりました。 作:やっくん。
気軽に一話ずつ読んでいただけたら嬉しいです。
村の外れに小さな看板が出ていた。剣と盾の絵。武器屋だ。
「……こんな所に、武器屋なんてあったか?」
フツーノ村はAFAでは何度も通った。
ただ、武器屋があった記憶はない。
……俺の記憶違いか?
とりあえず剣は必要だ。
扉を押すと、乾いた鈴の音が鳴った。
村に一軒だけある武器屋は、思ったより小さかった。
壁に掛けられた剣は、たった二本。
「いらっしゃい! 坊主、見ない顔だな。剣でもお求めかい?」
店の奥から、腕の太いおじさんが顔を出した。
「ええ、まぁ……お隣の剣術学園の転入試験を受けようかと」
「ほう、そりゃ運がいい。坊主、これを見ろっ!さっき仕入れた業物をっ!」
おじさんが指さしたのは、左に置いてある剣だった。
銀色に輝く刀身。柄には青い宝石。鍔には翼を模した飾り。
「ブレイブソード! 今、若いやつらに一番人気の剣だ! 見ろよ、この輝き! この造形。これを持ってりゃ合格間違いなし――」
店の主人の熱弁は続いている。
「――というわけよっ! これをいっぱしの冒険者の仲間入りよぉ! 買うなら今しかねぇ! そして、値段は驚きの九十ゼニーだぁ!」
いや、こっちの右の剣だな。
地味だし。
「 ――ああ、そっちはただの鉄の剣だ。値段は同じ九十ゼニーだが、正直、誰も買わ――」
「これにします」
「……は?」
「これにします」
「いや、同じ値段だぞ!?ブレイブソードのほうが軽いし、強いし、見た目もいいぞ!」
「いえ、こっちにします」
おじさんは、しばらく口を開けたまま固まっていた。
九十ゼニーを渡し、鉄の剣を受け取る。
所持金、残り十ゼニー。
「……変わった坊主だな。まあいい。あとこれも持っていけ」
渡されたビラを見る。
【オリヴィア国立剣術学園 転入試験のご案内】
会場、費用、持ち物――細かい文字がびっしりと並んでいる。
ざっと目を走らせて、ある一行で止まった。
「試験日は……二日後!?」
思わず声が出た。
視界の端の赤い数字を見る。
ふと視界の端で、赤い数字が静かに減り続けている。
【■■■■の呪い】
死へのカウントダウン:残り70時間48分(進行中)
けっこうギリギリ……か。
「受付は明日の夕方までだから、受けるなら早めに行くこったな」
ここの店主は親切だな……また来よう。
「ありがとうございました」
店を出るとき、背中越しにオジさんの声が聞こえた。
「あの剣を選ぶやつがいるとは……な。見る目あるじゃねぇか……」
「ん?」
振り返ったときには、店主はもう店の奥へ引っ込んでいた。
ぼそりとした独り言は、扉のきしむ音にかき消されてよく聞き取れなかった。
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