途中までしか執筆が完了しておらず、より優先すべき執筆対象もあるのでどれぐらいの速度でアップできるかわかりませんが、まあ暇つぶしにでもどうぞ。
その日、鳴海町は季節はずれの嵐に見舞われていた。
黒い雲が空を覆い、嵐が木々を揺らし、雷鳴が町を影で黒く染める。咲いたばかりの花々が、風に千切れて空を舞い、小鳥達は雨を逃れて身を寄せ合っている。
気象庁によれば、数年に一度という大嵐だった。そんなものがある日突然巻き起こったのだから、人々に備えがあるはずもない。すでに夕刻は過ぎているとはいえ、通りには人っ子一人いない。皆、家の中に籠り、嵐が過ぎ去るのをただ待ち望んでいる。
そんな暴風吹きすさぶ空を、自室の窓から見上げる少女が一人。明かりのない室内から揺れる窓ガラスを見上げる瞳が、雷に照らされて怪しく光る。
ふんわりとした、ロングの黒髪。白いカチューシャに、質素でしかし品のよい部屋着のワンピース。年の頃は十より前、やわらかな頬は桜色。深窓の令嬢、というにはやや幼い感じではある。
その少女、月村すずかは、鳴り止まない雷を目に陰鬱につぶやいた。
「せっかく、咲いたのに……」
思い返すのは、裏庭の花畑。メイドのファリンと一緒に、長年世話をしてきた小さな花が、ようやく咲くはずだった。だけど、この嵐ではその花もしおれてしまうだろう。悲しいけど、仕方がない。
「そう、しょうがないよね……」
世の中にはどうしようもない事がいくつもある。生まれだとか、天気だとか。そんな事にあらがっても、どうしようもない。悲しい事は、悲しいけれど。結局、それだけなのだ。
それにしても、酷い嵐だ。黒い雲には幾重にも雷光がのたうち、まるで竜が暴れているようだ。雷と嵐を竜の訪れと言った昔の人の気持ちもうなずける。特に、そう。あの渦巻いている所なんて特に、まるで何かが潜んでいるようにすら見える。
その時の事だった。
ひときわ大きな雷光が、地に墜ちた。それは森の一番大きな木に墜ちて、その幹を縦に引き裂く。世界を一瞬七色に染める程の、すさまじい閃光。その光に照らされて、雲に浮かび上がる影があった。
細長い、蛇のような躯に、蝙蝠のような翼。そんな、異形のシルエット。
「……え?」
雷光に目をしばたたかせながらも、すずかは一瞬移った影に、空を食い入るように見上げる。だけど、視界には先ほどの光が焼き付いていてよく見えず、空の雲はあらゆる透視を拒むかのように暗い。先ほどのシルエットは、すでに見えなかった。
「え、えと……?」
半信半疑な興奮。すずかは戸惑ったように、求めるように、ずっと渦巻く嵐の空を見上げていた。
ごっつ短いですが、これはあれです。極東の本気具合が別次元なだけ。
リリカルは基本世界設定がある程度しっかりしてるのですっげー書きやすいです。
それだけに俺ツエーになりやすいんですが……。