昨日の大嵐が嘘のように、日の上がった空は蒼く透き通っていた。
黒雲もすでに散り散りに消え去り、綿飴のような純白の雲が、遠くにわずかに見える程度。理想的な、快晴の天気。
だけど、地上はひどい者だった。
丁寧に手入れされた植木や花畑は嵐によって散り散りに乱れ、折れた枝やどこからか飛んできたゴミで庭はぐちゃぐちゃ。おまけに水たまりだらけで長くつがなければ歩くのも億劫。これを元に戻すにはどれぐらいかかるか、考えてすずかは軽く鬱になった。
何より、目の前の小さな花壇。
「やっぱり……」
かがみ込んで手をのばす。やっと土に馴染んで、柔らかく蕾を膨らませていた小さな花達は、昨晩の嵐に耐えきれずそのほとんどが倒れ、べっちゃりと地面に張り付いていた。それらを一本一本丁寧に手で起こしていくが、どれもくたり、としおれてしまう。おそらく、数日も立てば枯れてしまうだろう。
「せっかく育ったのに……。ごめんね、ごめんね」
それでも、もしかすると生き残る芽があるかもしれない。すずかはその希望にかけて、一本一本手を延ばしていく。やがて、すべての苗をお越し終えた。
これ以上は、すずかにできる事はなにもない。草木の生命力に、かけるしかない。
「…………さて、と。ファリンやノエルは危ないっていってたけど、やっぱり庭も見回らないと。ファリン、今、手あいてるかな」
専属メイドのスケジュールを脳裏に浮かべながら。すずかはは、屋敷へと戻ることにした。
「やっぱり、こっちもひどいな……」
びちゃ、びちゃ。長靴が雨にぬかるんだ泥地に音をたてて、小さな足跡を刻んでいく。陰鬱なリズムを刻みながら、すずかは荒れてしまった森を見渡した。今の彼女の格好は、アウトドアにでるような長袖にジーパンに長くつ、そして肩から下げたカバンとうってかわって活動的な姿だ。これが、自分の家の庭を歩くために用意されたという事実を、人はどう受け止めるだろうか。
月村家の領地はかなり広い。文字通りの小さな山を、そのまま裏庭にしているのだ。そのため防犯上の問題もあって、森そのものはよく手入れされている。藪や低木は業者によって可能な限り除去されており、生い茂る木々とは裏腹に見通しがよいのが常だった。だが、昨晩の雨は、山の地盤をふやかし強風は木々をあおった。結果。傾いてしまったり、最悪おれてしまった木々が、視界を塞いでいる場面が多々みられた。
先ほどまで付き添っていたメイドのファリンは、そういった事を予想していた姉にして侍女長のノエルから必要なチェックをまかされていたらしく、今はすずかが少し歩き疲れてきたのを幸いとそちらに向かっている。……先ほど目の前で転んで泥だらけになってしまった姿をみた後だと、果たして大丈夫かと逆にすずかが心配する状態ではあったが。
それにすずかにはもう一つ、気がかりがあった。家で飼っている猫達の事だ。
月村家の館は、通称、猫屋敷と呼ばれるほど、たくさんの猫を飼っている。その多くは、すずかが捨てられていた野良猫達を連れ帰った者達だが、そのうちかなりの数が、今朝から姿を見せていないのだ。嵐の夜は、当然全員を家にいれ、その顔も確認しているのに、嵐がさった後朝になってみたら、いつのまにか姿を消していたのだ。
今、鳴海町は嵐のせいでどこもにたような有様だ。それでも、町にでかけていったのならまだいい。町には、人がいる。だが、こんな、何が危険かもわからないような森に遊びにでて、怪我をして動けなくなっていたら。
「どうしよう……」
戸惑いが思わず口からこぼれて、すずかはぎゅ、と手にした救急セットのカバンを握りしめた。
本当なら、すぐにでも森を探して回りたい。だが、ファリンにきつくここで待っているように言い含められているし、そもそも森にこれたのも保護者同伴前提の話だ。勝手な考えで、勝手に動き回る訳にもいかない。
でもファリン、いつもどってくるのだろう。そんな風に考えて、一本の木の下で悩んでいたすずかの前を、ふぃ、と小さな影が横切った。ちりん、という鈴の音と共に。
「あっ」
思わず声をあげたすずかに、その小さな猫は驚くでもなく。なつっこく振り返ると、にぃ、と小さく鳴くと、とてとてと歩き去っていく。泥に、小さな小さな肉球の後を残しつつ。
「ま、まって、アイン!」
その後を、あわててすずかが追う。先ほどまでのおぼつかない妄想と違って、目の前には現実に探していた猫の一匹。ファリンの言いつけを破るのはためらわれたが、あの小さく柔らかな命を今の森の中を歩かせる訳にはいかない。すぐ捕まえて戻るから、と遠くにいるはずのファリンにあやまって、すずかは小さな足跡を追いかけた。
そして、すずかは出会った。
その場所は、森の中で一番大きな木が生えている広場だった。木々の影で藪が育たぬよう、業者が丁寧に手入れをした結果、元々その下でほかの苗木が育たないほど大きく広い枝を延ばしていた事もあって、自然と広場になったのだ。
だが、その大木も昨晩の嵐の中、雷に撃たれて無惨な姿をさらしていた。幹は半ばで縦に避け、枝葉は雷光と風に散らされてすでに死に体。その結果、遮られていた日光が広場に降り注ぎ、穏やかな暖かさを持ち始めていた。
その、光指す奇跡の庭に。
大きな、大きな何かが、微睡んでいた。
砕けてしまった木の根本に、まるでよりかかるようにして巨大な存在が躯を丸めて、ゆっくりとその全体を揺り動かしている。深い緑色で、その表面は無数の光沢を帯びた欠片がびっしりと覆っているかと思えば、重なるようにして上質なビロードのような質感を持った膜が張られている部分もある。何か複雑な構造をしているようにも見えるが、すずかの視点からでは全体が把握できない。それほどに巨大だった。
その緑色の巨大な何かのふもとに、見慣れた姿がいくつもある。まんまるな、色とりどりの毛玉達。うち一つは、すずかをこの場所で誘った、あの小さな子猫だった。
「アイン……?」
おっかなびっくり、抜き足差し足で忍び寄るすずか。静かに蠢く緑の何かを気にしながらも、小さな子猫に手を延ばす。正体不明の何かに対して、あまりにも度胸があるというべきか。それは子猫達も同じで、すっかり安らいだ様子で緑色によりそっていたアインは、飼い主に抱き上げられてくすぐったそうににゃあ、と一声鳴いて躯を起こした。
「貴方、これを私に見せたかったの?」
「にー」
問うが、答えが帰ってくるはずもない。だけどすずかは、子猫はその目的で姿を見せたのだと、なんとはなしに悟ってはいた。不可思議な感覚で確証はないが、そう感じたのだ。
「貴方は……」
みれば、猫達は皆、この巨大で得たいの知れない何かに、完全に心を許しているようだった。もしもこの緑色が足下を気にせずに動き出せば、猫達なんてあっさりと踏みつぶされてしまうのに。それどころか、全体も把握できないこの存在によじ登り、上で微睡んでいる子も目にする事ができた。まるで、この緑色は自分たちを傷つけない、そう知っているかのように。
「…………誰なの?」
どこか焦点のぶれた、あいまいな問い。
だけども、”それ”は、彼女の言葉に答えた。
言葉ならぬ、声。
「え…………?!」
わからない。でも理解できる。言葉や意味を通り越して、意志だけがはっきりと心に響く。鼓膜ではなく、心を直接ふるわせる、どこか遠い世界の言葉。その圧力に追いやられるようにして一歩後ずさったすずかの前で、それはゆっくりとその全貌を露わにした。
緑色の巨体が、ゆっくりと浮かび上がる。浮き上がった躯と地面の間には、しっかりと大地を踏みしめる丸太のような太い足。しっかりと大地に食い込んだ鈍く光り爪は、泥に食い込んでも躯を支えている。続けて、微風を起こしながら、大きな膜が取り払われた。太陽光を透かして薄緑色に光膜には、いくつもの太く頑丈な芯がある。そこでようやく、すずかはこの膜が巨大な翼膜である事に気がついた。ただ蝙蝠のそれとは違い、鉄さえもあっさりと引き裂きそうな巨大な爪がそれには備わっている。右の翼には痛々しい傷が刻まれ、可憐な文様の浮かぶ膜が無惨に裂けてはいたが、それすらも決してその強大な存在感を損なうことはない。またその上に乗った猫を落とさぬよう、慎重にゆっくりと広げられていく様子からは、ただ強大なだけでなく、それ以上の深い慈しみを感じる事もできた。
翼が取り払われると、その下で丸まっていた躯が、ほぐすようにして起きあがる。長い長い尻尾がゆっくりと延ばされ、猫達の髭を揺らす風を生みながら二度、三度、確かめるようにして振り払われた。
そして、胸元につっこむようにして丸められていた首が、空に向かって延びた。首は高く高くすずかのはるか頭上まで持ち上がると、大きく裂けた口が欠伸をするように開かれる。そうやって全身を広げ終えたその存在は、最後に全身を力ませて硬直したあとゆっくりと力を抜いていき、その両眼を解き放った。
深い、深い英知を秘めた深淵な輝きが、頂から小さな少女を見下ろす。
「…………」
その視線を頭上から浴びながらも、すずかはその場から動けずにいた。ただ、見開いたその小さな瞳に、その大きな存在を焼き付ける。
「ど……どらご……」
言葉にならない、とはこういう事をいうのだろうか。少女は意識の片隅で小さくつぶやく。でもそれは本当にわずかな感情で、すずかの意識の大半は麻痺したように動かないまま、その存在を示す言葉をただ知識の中からすくい上げた。そしてそれは、無意識のうちに舌に乗せて口ずさまれる。
「どらごん……」
すずかの言葉に答えるようにして、”それ”は低く喉の奥で唸りを上げた。肯定のようにも聞こえるそれに、すずかが呆然とする。そして動けないでいるすずかの頭の前まで、今度はゆっくりとその首を卸すと、その存在はすずかと同じ目線で彼女と視線をあわせた。
見られている。
このどらごんが、私を見ている。
それを理解した時、怒濤のように止まっていた時間が動き出した。遠ざかっていた心臓の音、血流の流れが今更のように耳で鳴り始め、ようやくこの瞬間、すずかは自分の状態を把握した。全身に冷や汗とも脂汗ともつかぬものが浮かび上がり、手足の筋肉がひきつった。
理性は全力で警鐘を鳴らしている。逃げるべきだ、いますぐ逃げろ、と。この得体の知れぬ強大すぎる存在から、一歩でも遠くへ。自分を簡単に捻りつぶす事のできる、力そのもの。
だけども。すずかの心は、違う事を訴えていた。
「…………」
幼い少女のふるえる手。その柔らかい指でしっかりとカバンを手に、すずかは一歩、竜の元へと踏み出した。
「ん、しょ」
きゅ、と包帯の終わりを軽くひっぱり、巻きを引き締める。そうしてはりつめた包帯の終わりを、テープでしっかりと止める。……本当は、結んで終わりたかったが、手当の対象が大きすぎて、手持ちの包帯では足りなかったのだ。軟膏も、消毒液も、量がぜんぜん足りなくて、果たして効果があるのかもわからない。そもそも、この存在にそんなものが必要なのかもわからなかった。
それでも、しっかりと包帯を巻き終えたすずかは、軽く息を吐いてゆっくりと竜から離れた。
傷つき、無惨に翼膜の破れてしまった右の翼。それを上から覆う、真っ白な包帯を見上げつつ。
「これで、いい、かな……?」
自信なさげにつぶやく。猫の手当はなれたものでも、竜の手当などわからない。そもそも、この世界に竜の手当なんてしたことのある人間はいるのだろうか。確信のもてない不安に、すずかの表情に影が差す。もしかすると、よけいなことをしたのではないのか、と。
と、ふいにすずかの視界に陰がさした。反射的に見上げると、見下ろすようにして竜が首を延ばしてきていた。その瞳はしっかりとすずかを捉え、薄く開かれた口からは熱い吐息がこぼれている。それが、すいっとすずかへと迫ってくる。
食べられちゃう?! そう思ってすずかは反射的に目を閉じて縮こまるが、覚悟していた、想像した痛みはいつまでたってもやってこない。
代わりに、暖かくて湿っていてざらざらとした何かにべろりと頬をなめられて、すずかはキャアと悲鳴を上げて地面にひっくり返った。
「な、何……?」
なめられた頬に手を当てて竜を仰ぐ。竜はすずかの困惑にかまうことなく再び顔を近づけると、口から赤くて細長い器官……どうみても舌のようなものを延ばして、ふたたびすずかの顔をべろり、となめた。その様子が、どこか家でかっている猫のそれににていて、すずかはいろんな事にこらえきれなくなってきて、ぷ、と吹き出した。
控えめな笑い声は、それからもしばらくの間、広場から途絶えることはなかった。
「へえ……、そうなんだ。ご主人様と、はぐれちゃったの……?」
穏やかな日差しの中。まどろむようにして、すずかは竜の足に躯を預ける。その膝の上には何匹もの猫達が丸まっていて、その毛並みをなでながら、すずかは心に届く意識に耳を傾けていた。そんな彼女をよそに、竜はのどの奥で低くうなるようにしながら首を丸めている。まるで眠っているようであるし、間違いなく言葉らしきものは発していないのだが、それでもあの不可思議な心に届く意志はすずかに様々な事を語っていた。すずか自身も、それをうまく説明する事はできない。マンガでよくでてくるテレパシーに近いのだろうか。だが、マンガの表現のように誰かの声が頭の中で聞こえる、といったはっきりとしたものではない。もっと原始的で単純な、そう、イメージだけを届けられているといえばいいのか。心の中にある、言語や映像で具現化される前の、あらゆる生物に共有するもの、それを直接届けられるという事は、竜の心をのぞいているような錯覚も感じる。
「……だいたい、君の事情は理解できたよ」
ちょっとまってて、と竜に語りかけ、すずかは脳裏に降り積もった情報の整理を始めた。
竜の伝える彼の境遇は危機的なものだ。知らぬ世界に主と二人きて、その矢先に謎の襲撃者によって撃墜された竜は、主と離ればなれになってしまったのだという。かろうじてこの森に不時着した竜は、翼を損傷したため主を探しに行く事もできず、ただひたすら気をもみながらこの広場で躯を休めていたのだった。ところが、どこから嗅ぎつけたのか、気がつけば一匹、二匹と猫達が集まってきて、自分の周りでくつろぎだした彼女たちをむげに蹴散らす訳にもいかずにいるとさらに増える猫達に、ほとほと困り果てていた。そこにやってきたのが、すずかという訳だったらしい。
そして、こうやって語り合い、身を休めている間にも、竜の心のかたすみでは、常に主への心配と焦燥が渦巻いている。人ならば見に持て余すほどの情動であるそれを、竜は堅く心の奥底に封じ込めているのだ。今、竜にできる事はなにもない。それを理解しているが故に。
それでも、彼の焦りと不安が消え去るわけではない。欠片でも自分の心をふるわすそれを感じ取って、すずかは辛そうに目を細めた。
「貴方の気持ち、少しだけわかる……。今すぐ、ご主人様を探しに行きたい、けどできない。そのジレンマで、心が焼けてしまいそうなのが」
膝の上で眠る猫達をゆっくりと持ち上げて地面におろし。自由になったすずかは、立ち上がると振り返り仰ぐように竜を見上げた。巨体をもつ竜は、腰を落ち着けていても視線がすずかの上にある。その竜の視線をまっすぐと見つめ返して、すずかははっきりと自分の意志を告げた。
「ねえ。私に、手伝える事はない?」
竜の目が、軽く見開かれる。竜が、感情らしきものを示すのは初めてだった。そういえば己の苦境を語る間すらも、竜は表情は帰ることはなかったな、とすずかは思い返す。
「私は無力だけど、この町で生まれ育って地理には詳しいし。それに、歩いて探す事なら私にもできるから……」
そこまで言って、しかしすずかは自分が竜を手伝う事はできない事をわかっていた。なぜなら、はなしている間に感じるのだ。一瞬の動揺からたちなおり、感謝と、しかし謝罪の意志を伝えてくる竜の心を。
「どうしても、だめ?」
すずかが重ねて問うも、竜の意志は頑なだった。申し訳なさそうに目を細めていても、その心の奥にある決定は小揺るぎもしない。すずかは引き下がろうとも思った。どうしても、この奇跡のような出会い、それを意味あるものにしたかったのだ。
だが、竜の拒絶はただすずかの身を案じるだけのものではない。違う世界に生きる者としての常識、世界の安定を守る者としての秩序、そして何より、竜とその主の誇りにかけて、すずかの提案を受け入れる事はできない、そういうことであった。そしてそれを、当然すずかはわかっていた。
ただのわがままなのだ。手伝いたいというすずかの意志は、竜の持つ責任を、上回るものではない。
だから、結局は。すずかがおれるしかなかったのだ。
「…………ごめんなさい。わがままを言って」
しゅん、としおれる小さな少女。彼女はどこか頑ななところがあるが、道理をわきまえぬほど幼くもない。自分の申し出が、竜にとってはおせっかいどころか迷惑であることを悟っては、それ異常申し立てることもなかった。
そんな少女に、竜は低く唸ると、ぶるぶる、と身を震わせた。それは背中に乗る猫達を落とさないように気を使ったささやかなものではあったが、その動きに反応するようにして鱗が一枚、彼の躯から抜け落ちた。鱗といっても、竜の巨躯だ。たった一枚の鱗が、小さな掌ほどもある。その、首あたりから抜け落ちた一枚を竜は器用に口でくわえ上げると、そっと、すずかに向けて差し出した。
あげる、と。
「え……?」
きょとん、とするすずか。そんな彼女に、竜は笑うように喉の奥で低くうなって、続けて優しく心を響かせた。
親愛の証。親切な少女に、私からできる贈り物。
うけとって、欲しい。
「あ…………。ありがとう……」
おずおずと、手を差し出して鱗を受け取る。あわせた両の掌に落とされた鱗は、五角形に近い形をしていて、表面はごつごつとしているのに裏側は見入るほどに艶やかで滑らかだった。色は当然、竜の纏う黒に近い緑色だが、鱗一枚で見るとかすかに光を通しているのかもっと明るい色に見える。そして、ほのかに暖かかった。
そして、すずかはそこで竜と分かれた。そろそろファリンが戻ってくるであろうことを考えれば、これ以上長居はできない。
竜の話だと、この広場は不思議な状態になっており、おそらくファリンやノエル、忍達がやってくることは不可能であるという。今回も、猫達の主で子猫のアインが自らつれてこなければ、すずかも招き入れるつもりはなかったのだという。でも、鱗を手に入れたことでもうすずかは自由に入れるとのこと。竜が翼を癒し旅立つまでの数日間、またあう事を約束して、すずかは自分達の世界へと、常識の世界へと帰って行った。
この広場での出来事、異世界との接触は、ほんの僅かな期間。奇跡のような出会いと、わずか数日の逢瀬で終わりを迎えるだろう。だが、すずかはそれで満足していた。竜の手助けにはなれなかったが、世界は自分が思っているよりも、広くて素敵な事に満ちているのだと知る事ができたから。だから、寂しさはあっても不満はなかった。
そう。少なくとも、この時は、まだ。
という訳で、この話はユーノ君の学園時代の友人が余計な気を利かせてしまったばかりに変質を始めた再構成ものなのでした。
もともとは、ユーノ君が学園出身だという設定を見て、友人の一人ぐらいいるんじゃないの? みたいに思ったのがきっかけでした。