激重感情を向けてくるヒロインたちが全員メンタル崩壊して病んでしまったので、ひたすら甘やかすことで修羅場を回避するしかなくなった~ヘラったヒロインには飴が効く~   作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!

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第5話『メンヘラの予兆』

 薬を飲んだあとの天宮は、落ち着いた顔で眠りについた。

 その後、母親が帰宅したタイミングで挨拶を済まして、俺は天宮家をお暇する流れに。

 日が落ち切る前に家に帰れたのは助かった。妹との約束を破るわけにはいかないからな。

 家の扉を開けると、心愛が廊下で待ち構えていた。

 

「おかえり、お兄ちゃん」

「ただいま」

「ちゃんと帰って来てくれた」

「なんだそれ」

 

 心愛の目に潤みが帯びる。

 

「私にはお兄ちゃんしか話し相手いないから……」

 

 はいはい、わかってますよ。

 俺は玄関に上がり、安心させるように心愛の頭を撫でた。

 

「大丈夫だって」

「お兄ちゃんがいなくなったら、私、死んじゃうかも」

 

 物騒なこと言うなよ……。

 

「いなくならないよ」

「嘘つかない?」

「つかない」

 

 心愛がふにゃっと頬を緩ませる。

 満足した様子で、くるりとリビングの方に振り返った。

 

「じゃあ、私はみんなのご飯作るから。お兄ちゃん、お風呂沸いてるからね」

「ありがとな」

 

 では、お言葉に甘えて風呂に入るとしよう。

 服を脱いで浴室へ。

 体を洗ってから俺は湯船に浸かる。

 熱湯が体の芯まで染み渡っていく中、ぼんやりと温度調整のモニターを眺める。

 目を閉じると、瞼の裏に浮かび上がるのは天宮の姿だ。

 パジャマの襟元から覗いていた鎖骨。

 熱に浮かされた頬。

 俺を見つめる、とろけるような瞳。

 

「……っ!」

 

 なに考えてんだ俺は!

 水面に顔を突っ込む。

 ブクブクと泡を吐き出しながら、煩悩を洗い流す。

 

「ぶはっ!」

 

 息を求めるように顔を上げる。

 これでは天宮の思う壺じゃないか……。

 

 

          *

 

 

 入浴後、心愛の作った夕飯を家族で食べて、俺は2階の自室に戻った。

 ベッドにダイブしてスマホをチェック。

 案の定、天宮からのメッセージが大量に溜まっていた。

 文面こそ違えど、内容は全部『ありがとう』と『大好き』の無限ループだ。

 既読だけつけて返信はしない。キリがなくなるから。

 ――ブーブー。

 と、天宮のメッセージを確認していたところで別のメッセージが届いた。

 

『要』

『ちょっといい?』

 

 依織だった。連絡が来るのは週に一度あるかないかの頻度で、大体は『今なにしてる?』とか『テスト勉強してる?』みたいな当たり障りのない内容だ。

 今日はなんだろう。

 トーク画面を開き、『なに?』と返信を打とうとする。

 瞬間、次のメッセージが届いた。

 

『今日、来夢ちゃんの家に行ったって本当?』

 

 えっ。なんで知ってんの。

 

『来夢ちゃん、すごく嬉しそうにわたしに報告してきた』

『青鳥が看病してくれた、って』

『手を握ってくれた、って』

『優しくしてくれた、って』

『あれほど甘やかしちゃ駄目って言ったのに』

『なにしたの?』

『高校生だよ、わたしたち』

『まさか変なことしてないよね?』

 

 ちょ待っ……メッセージ止まらないんだけど……。

 

『要は昔からそうだよ』

『なんでそうやって誰これ構わず優しくするの?』

『そういうの八方美人って言うんだよ?』

『知ってる?』

『わたしがどれだけ心配してるか知ってる?』

『来夢ちゃんがどういう子か、ちゃんとわかってる?』

『あの子と友達になったのだって要のためなのに』

『だから友達のフリして近づいたのに』

『要を守るために』

『なのに要は自分から来夢ちゃんの家に行くなんて』

『なに考えてるの?』

『あの子に取り込まれたいの?』

 

 トーク画面が異常な速度で流れていく。

 

『わたし、ずっと見てたよ』

『要が来夢ちゃんに振り回されてるの』

『それで学校で孤立してるのも』

『でも、なにも言わなかった』

『要が自分で気づくと思ったから』

『信じてたから』

『けど全然気づかない』

『むしろ来夢ちゃんに優しくしてる』

『生徒会長さんにも』

 

 ……これ、本当に依織か?

 

『なんで?』

『なんでわたしじゃないの?』

『わたしの方が先に要と出会ったのに』

『わたしの方が要のこと理解してるのに』

『なんで来夢ちゃんなの?』

『可愛いから?』

『美人だから?』

『守ってあげたくなるから?』

『わたしだって守って欲しい』

『わたしだって優しくして欲しい』

 

 ああそうか。

 たぶん友達とかと一緒にいて悪ふざけのターゲットに……。

 

『今、読んでるよね?』

『既読ついてるから読んでるよね』

『無視しないでよ』

『わたし、おかしいこと言ってる?』

『言ってないよね?』

『当然のこと言ってるだけだよね?』

『幼馴染なんだから』

『特別なはずでしょ?』

『なのになんで他の女の子の家に行くの?』

『しかもふたりきりで』

『お母さんいなかったんでしょ?』

『来夢ちゃんが言ってた』

『お母さんが気を利かせて出かけてくれた、って』

『最低だよ』

『信じられない』

『要も来夢ちゃんも最低』

『最悪。みんな最悪』

 

【依織からの着信です】

 

「ひっ……!」

 

 思わず悲鳴が漏れる。

 出たくない。出られるわけがない。

 着信が切れた。

 ホッとしたのも束の間、すぐにまた鳴る。

 切れて、鳴る。切れて、鳴る。エンドレス着信地獄。

 

『不在着信』

『不在着信』

『不在着信』

【依織からの着信です】

 

 いつまで経ってもスマホは鳴り止まない。

 俺は間違えて応答を押さないよう、慎重に依織の連絡先を開いた。

 ブロックボタンを押す。

 それでやっと静かになった。

 ……人間誰しも変になってしまうときはある。顔を突き合わせないと真意などわからないし、次の学校でちゃんと話そうと思う。




【天宮来夢】
依存度:★★☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆
病み度:☆☆☆☆☆

【綾倉夜美】
依存度:★☆☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆
病み度:☆☆☆☆☆

【音塚依織】(変動あり)
依存度:☆☆☆☆☆→★☆☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆→★★☆☆☆
病み度:☆☆☆☆☆→★★☆☆☆

【青鳥心愛】
依存度:★★☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆
病み度:★☆☆☆☆

主人公視点による現時点のヒロイン認識度です。こういうのあった方が直感的に読めるかなと思い、最後に記載していくことにしました。
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