真奈「なぁ、宏?」
宏「…なんだ?」
真奈「お前のスキルって便利だよな…」
宏「…へ?」
夜道を歩いていると。ふと、真奈に唐突にそんな事を言われた。
宏「急にどうしたお前?頭でも狂ったか?」
少し怖くなったので、ガチめに心配する。
真奈「狂ってないわ!!……いやただな、お前のスキルって格闘スキルじゃん?身体能力や体力が向上するからいいなって思ってさ…」
「私は昔から体が少し弱かったから、あんまり運動が得意じゃないし……だから、そのお前のスキルが羨ましいって思って……」
宏「ん?でも、お前の魔法スキルの方が、よっぽど使い勝手が良さそうに思うけどな?」
空も飛べるわけだしな。だからこそ僕は、そのままの疑問をぶつけた。
真奈「でも、このスキル案外使い勝手が難しいんだぜ」
宏「えっ?……そうなの?!」
真奈「この魔法スキルはな、魔力がある限り魔法を放てるんだが……。魔力が無い時に無理矢理にでも魔法を使うと代わりに体力を消費しちまうんだ。まあ、私はこれでも割と体力がある方だから、そこまで問題は無いが……全力を出すために体力まで使ってしまった場合、私はしばらく戦闘不能になる」
宏「いや、そこは頑張って魔力とか体力を温存できるように調節しろよ」
真奈「そっそうだけどさ。フルパワーで放つなら、全部出し切った方が強いだろ?」
宏「それで倒しきれなきゃ本末転倒な気もするけど?」
真奈「別にいいじゃねぇか!大業ってのは強ければ強いほどいいだろ!」
宏「いやまあ、そうだけど……。でも、そうか……」
…初耳だった。まさか真奈の持つ魔法スキルには、そんなデメリットがあったとは…。どうやら僕は、大きな思い過ごしをしてしまっていたようだ。足りない魔力を補うために体力を消費するというデメリット……。まあ、話聞く限りでは調整ができないというわけではなさそうなので、どう考えても真奈の方に問題があるなこれは……。
宏「まあでも、真奈のそれは3年前に得たばかりのスキルだろ?いい加減、配分の調節とか覚えろよ。僕の格闘スキルは5年も前に得たけど、使いこなすのに一ヶ月掛からなかったぞ」
真奈「宏の力は、魔力的なパワーの概念がねえだろ。あれは身体能力とか依存のもので、格闘術のできる宏だからあっさりできたんだよ」
宏「でも、体力とか犠牲にして動けなくなるのはどう考えてもデメリットだ。もっとコンロールを上手くしろ」
真奈「まあそうだな。わかった、すぐに極めて見せるから。宏も、たまには自分のスキルを磨けよな!」
宏「いで?!」
真奈は二ヒヒと笑いながら、少し強めに僕の背中を叩く。真奈がこんなにも力強い理由を説明すると、真奈にはもう一つの技能を持っていて、その力は怪力スキルという怪物並みの力を出せるものなのだ。なので、いくら身体能力や体力が無い彼女でも、とんでもないほどの筋力がいざという時の武器になる。まあ、体力切れを起こした場合、そのスキルがあっても動けなきゃ意味がないんだけどな。因みにその筋力だが、例えるなら……それはまるでゴリラのような力だ。なので、怒らせると怖いです。
真奈「今私のこと、ゴリラ見たいって思ったろ?」
圧を掛けながらこちらを睨みつける真奈に、僕は顔を背けながら鼻歌を歌った。
なんでわかるんだよエスパーかよ。
真奈「違うよ、魔法で読んだぜ!」
宏「なんだと!?」
真奈「なんと、嘘だよ!」
宏「だろうな。何年の付き合いだと思ってんだ?そんなの勘でわかるよ」
真奈「流石は宏、よくわかってるー!」
宏「まあな」
ナチュラルにまた心読まれたことを横目で流しながら得意げに言った。
真奈「…まあ、それは置いとくとして………。そういえばなんだけどさ……」
宏「…ん?」
真奈「どうして、当たり前のようにスキルがあるんだろうな?私たちが生まれた時から元々あったから、違和感がなかったけど…今さら考えるとなんでこんな漫画みたいな力が私たちにあるんだろうな?」
宏「……さあな、発言し始めたのは20年近く前らしいけど、その頃にはもう当たり前だったしな。それに、結局何一つとしてわからなかったんだろう?だったら、僕らが考えたって意味ないだろ…」
そう、スキルというものは、僕たちが生まれた時から存在している、不思議な力だ。
スキルというのは、大まかに言うと能力みたいなもので、ひとりの人間にいくらでも保有することができるものだ。だからこそ、色々と問題があるわけなのだが…。
真奈「………まあ、それもそうだな」
宏「なんで急にそんな話したんだよ?」
真奈「いや、この前レアリーに話を聞いた時にそんな話題になってさ。だから、宏にも聞いてみようかなっと思って……と、話している間にどうやら着いたようだな」
と談笑を交わしているうちに、いつの間にか僕らはその家の前まで来ていた。
宏「…時間の流れってものは早いもんだなー。真奈と話してると、こんな長い道も短く感じるよ」
真奈「へへ、それは嬉しいぜ!」
と、いつものような満面な笑顔を浮かべる。それに釣られて、僕の顔も少しばかりニヤける。
真奈「ほら、早く入ろうぜ!私らの家に!」
そう言って僕の手を強く掴んで引っ張る。僕はまた少し、顔をニヤつかさせて、こう言葉を返すのだった。
宏「ああ、帰ろう……僕らだけの家族の家に…」
□□□
僕と真奈には、似たような過去を持っていた。所謂似た者同士といったものである。
僕は15年前のあの日に、家族全員を失った。あの時の僕はまだ三つで、一人で生きるのにはあまりにも厳しくて、辛い毎日だった。
そして、真奈も同じで、家族を失った過去を持つ人間の一人だ。真奈も僕と同じように、10年前に家族を失っている。そして、守ると誓ってくれた兄でさえも、8年前に他界。だから僕らは、とっても似ているのだ。
だからこそ……。
宏「ほら、ご飯できたぞ!」
真奈「…おおー!美味しそー…!」
宏「こら、食べる前に手を洗ってきなさい!」
真奈「はいはい、わかってるって!と、その前に少しだけ……」
宏「あっ、こらー!ご飯直前につまみ食いすんな!」
真奈「ごめん宏、お腹が空きすぎて我慢できなくて……」
宏「はぁ……全く。ほら、早く洗って飯にするぞ」
真奈「はーい!」
僕らは共に、家族のように接して、お互いの傷を舐め合っている。僕は彼女に、彼女は僕に依存している形で、そんなwin-winな関係の“偽りの家族”を。