ピピピピピピピピピピッ!!!
と、けたたましい目覚まし時計の音が鳴ると同時に、僕はベッドから起床する。
宏「ふぁ〜、もう朝か?」
今の時刻は5:30。僕の朝は早い。理由は色々とあるが……、主に言うと家事になる。
一応、真奈とある程度家事を分担をしてはいるのだが、料理や洗濯ということはできないので、そこは僕がやっていた。
朝起きてすぐ顔を洗い、寝ぼけた顔を覚ます。目がシャキッとしたら、髪をハーフアップに結んで。それからすぐに日課のトレーニングを行う。
トレーニングの内容は至ってシンプルで、まずランニングをしてから、軽く筋トレを行うといったもの。ちなみにランニングは、大体いつも30キロくらいの距離を体感1時間かけて走っている。筋トレも、腕立てや腹筋、スクワットを100回ずつ。
これを日課で毎日やっている。
宏「よし!今日のトレーニングも終わり!さぁ〜て、服着替えて朝ごはんの準備するか」
トレーニングも無事終わり、今日の家事を始める。今日の朝ごはんは、中にチーズとほうれん草を入れたオムレツにしよう。
何を作るか決めると早速作業に取り掛かる。
数十分して、ご飯の準備ができ、それを食卓へと並べた。
真奈「ふぁ〜…おはよ〜宏」
宏「おはよう、真奈」
と、丁度いいタイミングで真奈が二階から降りてきた。
宏「もうご飯できてるから、さっさと顔洗ってきな」
真奈「よっしゃ!おっ…この匂いは」
宏「あぁ、コーヒーも注いでおいたよ」
真奈「やったぜ!宏の入れるコーヒーは美味いからな。いつもありがとう」
宏「どういたしまして」
真奈「ついでに、私の顔もかわりに洗ってくれないか?」
宏「自分でやれよ」
真奈「冗談だよ。それじゃ、すぐ洗ってくる」
そんないつものくだらないやりとりをして、僕らは朝食を頂くのだった。
真奈「…あ〜〜…、うめぇー。幸せだわ〜…」
幸せそうな顔をして、次々にご飯やおかずに手をつけていく。そんな顔で次々に自分の作ったご飯を美味しそうに頬張る姿は、見ていて実に気持ちがいい。横目に彼女を見ながらニコッと笑みを作り包丁を研ぎ続ける。
そうして、真奈は完食すると同時に、僕も包丁を研ぐ作業を終えた。
真奈「ごちそうさま。洗い物よろしく〜♪」
使い終わった食器を台所に運んでくると、軽いノリでそう頼まれる。
宏「はぁ、たまには自分でやって……」
そう愚痴を溢しかけたところで……
宏「いや。やっぱり、いいや…」
咄嗟にある事を思い出し、途中で口をつくんだ。真奈の家事のセンスが壊滅的に皆無だからだ。前に料理をご馳走させてもらった時、魔法で料理しようとして爆発した事例がある…。一応あの後台所はなんとかなったが、あの時の僕はとてもヒヤヒヤした。しかも、できあがった料理は食べ物かもわからないダークマターだった。一瞬、魔法の研究の産物かと思ったが本人は自慢げに料理だと言い張っていた。一応食べては見たが。案の定、気絶してから後の記憶は全くない。
真奈「ん?なんだ??皿洗いか?」
宏「いっいや、別にそんなことはいってないよ!?」
真奈「もしかして、料理ができないからって皿洗いすらもできないと思ってるだろ〜?」
宏「うっ……ベツニーオモッテナイヨ」
真奈「何でカタコト??」
宏「まあ、皿洗いは自分でやるから真奈は自由になんかやってて」
面倒にならないように真奈にそう促すが、すると彼女はこんな事をいい出した。
真奈「じゃあ、私は皿洗い手伝うよ」
宏「えぇ!!?」
思っていない返答に思わず声を出して驚いた。そして、真奈は僕を無理矢理動かしながら横に並んで洗剤のついた食器に手を取り水で流し出す。
真奈「これなら、近くにお前がいるから何かあっても安心だろ?」
宏「だ、大丈夫か?」
真奈「心配し過ぎだって、これくらいできるよ。小さい頃によく謙三兄さんと一緒に洗ってたからよ」
なるほど。そうだったのか、真奈の兄さんの時からか。それなら最初から皿洗いくらいしろよ。と思ったが、あえて言わないことにした。
真奈「そういえば宏?」
宏「…んっ、なんだ?」
真奈「お前のスキル、どれくらい向上したんだ?」
僕はその問いに、こう答える。
宏「全然だけど…」
真奈「はぁー!?」
急に大声を上げるものなので、思わず手に持っていた食器が手からすり抜けるが、間一髪のところで受け止める。
真奈「じゃあせめて、技は増えたか?」
僕に僅かな期待を宿しながら、それを目で必死に訴えかける。が、それでも僕の答えは何一つ覆りはしなかった。
宏「…いや、ないけど」
そう一言告げると、真奈は残念そうに肩を下ろした。
真奈「うっ、嘘だ…」
宏「紛れもない真実だ」
そんなバカな、と言わんばかりに顔を下にして残念がる真奈。そんなに残念なのか??と思いながら僕はそれを無表情で見つめた。なんでそんなにも落ち込む事なのか、僕には何一つとして理解ができなかった。
そして、数秒とたたない内に真奈はかおをあげると。
真奈「お前それで大丈夫なのか?」
突拍子にツッコミを入れられてしまう。とは言っても、ツッコミの点数は残念だが…。
真奈「ん〜〜……どうすれば〜」
と、真奈が頭を悩ませている間に、パパッと皿洗いを終わらせて。ソファーの方に向かいながら、今日届いた新聞を手に取り広げる。なんとなく日課になっているが、元々は暇を紛らわすために読んでいた。いまではそれが、いつの間にか癖になっている。そのため、毎朝いつも新聞を広げては、最後まで読みふけっていると。
ふと、ある記事が僕の目に止まった。
その記事とは……。
立て篭もり事件、誰かが即解決?!
『隣町の○○市の〇〇街のデパートで、最近勢力を募らせているリネイガーと名乗る集団の一部が、立て篭もる事件がありました。ですが、警軍陣が現場に到着した時には、既に何者かによって撃退されていました。14名の集団を現行犯逮捕することができましたが、残り一人の仲間が逃亡していたもよう。その逃亡者の消息は不明であり、身元も不明となっています。現在仲間を取調べ中とのこと』
と、記されていた。
真奈「隣町で立て篭もり事件……か」
僕が真剣にその記事を読んでいると、真奈が後ろからひょっこりと、覗いて来ていた。そして、ちょうど僕が読んでいた記事に興味を向けてきていた。
真奈「ん〜っと、なになにー?」
真奈がその記事を詳しく読もうとして近づくと、僕の背中に体を密着させてきた。
宏「…!??」
その瞬間、僕の思考は一瞬にして白に染め上がった。ん………これは??背中からは、何やら柔らかくて言葉では表しにくいなにかが当たっていた。そこから“とくっとくっ”と心臓の音が体に伝わってくる。これはもしや………全てを理解すると、僕の顔は一気に赤くなった。これは、本人に教えてあげたほうがいいのだろうか?とそうしばらく模索して、ある答えを導き出す。
真奈「…ふーん…。他の記事の内容もだいぶ荒れたものばかりだな。やっぱりスキル関係の事件は絶えないもんだな……」
宏「……真奈?」
真奈「ん、どうした?」
こうなったら仕方ない、言うしかない。そう心に決めた僕は、一拍を置いてからこう告げるのだった。
宏「その……胸、当たってるよ……」
真奈「……」
その瞬間。この場の空気が一変した。真奈は思考が停止したかのように、しばらく固まっていたが、即座に僕から距離を取り頬赤らめながら叫んだ。
真奈「…なっななな何を考えてるんだお前〜!」
真奈は困惑して、並程度の胸を隠して後ずさった。
宏「いや、僕まるで悪くないよね?ただの事故だよ?!僕はただ教えてあげただけで…」
真奈「うっさい!やましいこと考えてる時点で変態なのよアンタは!!」
宏「お前の思考回路おかしいだろ!なんでそんなことになるんだよ!…それに、お前なんか口調変わってるぞ…??」
僕は、真奈の口調が少し変わっていることを冷静に指摘した。だが、今のこの状況には、一切合切関係がなかった。
真奈「う、うっさい!この………変態!!」
ベチンッ!!っと
強めの平手打ちが僕の頬に直撃した。
……理不尽。
この言葉が、今の状況に一番当てはまるだろう。
宏「…なん、で??」
そのまま倒れ込んだ僕の意識は、だんだんと朦朧としていって、やがて気絶するのだった。
あぁ……、なんで僕がこんな目に遭わなきゃならないんだ。こんなことなら言わなきゃよかった、と思う早朝の一コマなのであった。