宏「なあ、真奈?」
真奈「………」
宏「そう怒んなって……、な?」
真奈「……ふんっ」
そっぽ向かれてしまった。
あれからずっとこんな感じである。普通に話しかけても聞く耳持ってくれないし、下手に出てみても無理だしで、本当に困った状況だ。どうにかして機嫌を直して欲しいが、このままでは埒があかなさそうだ。
宏「ん〜………」
どうしようかと、彼女の機嫌を直す方法を必死に頭を悩ませて考える。考えた結果。僕はある策が頭の中に浮かび上がった。うまくいくかはわからないが、一か八かやってみることにしよう。
そう決心を固めると、僕は真奈にある提案を持ちかける。
宏「アイス奢るからさ、それに免じて許して頂けないでしょうか?」
真奈「まあ、考えてやらんこともないぞ?」
えっ、ちょろ?!
あまりにもあっさりいったので、思わず唖然としてしまう僕。
まさか、こんなあっさりうまくいくとは思ってもいなかった。そういえば、真奈は昔から甘い物に目がなかったからな。それもそのはずだろう。
真奈「ほら、そうと決まれば、早速出発だー!」
そう言って真奈は、いそいそと出かける準備をして、先に家を出て行ってしまった。
宏「てっおい!ちょっと待てって!?」
僕もそれに続いて、慌てて準備をし、真奈の後をおいかけるのだった。
□□□
真奈「やっぱり、買い物って言ったらここだよな」
宏「…だな」
僕たちが訪れた場所は、この街に唯一ある大きなショッピングモールだ。別にここ以外にもデパートはあるのだが、ここでしか売ってない物もあるので、ここに来たわけなのだ。ここの店は結構品揃えが豊富で、飲食店や喫茶店、呉服屋などもあり、この街に住む人ならば必ず立ち寄るであろう場所だ。
宏「さて、まず何から買おうかな〜…」
と、ぼーっと考え込んでいると。
真奈「おい。アレのこと忘れてないだろうな?」
ギクッ!?
その言葉につい反応してしまう。
宏「そんなわけないだろう(汗)ちゃんと覚えてるって…!」
嘘である。
さっきまで完全に頭から抜けてました…、なんて言えるはずもないため、僕は必死で真奈に弁解する。
真奈「まあ〜いいけど……。それに、まだ私許してないしな…」
宏「………はっ??」
そんな素っ頓狂な声が、僕の口から自然と流れ出た。
宏「えっ!?許してくれたんじゃないの!?」
真奈「私は一言も許すなんて言ってないぜ?“考えてやらんこともない”って、言ったんだぜ?なので、厳密にはまだ許してませ〜ん」
宏「…ぐぬぬぬ……」
ぐうの音も出なかった。どうやら僕は、まんまと、真奈の口車に乗ってしまっていたようだ。真奈はしてやったりと言わんばかりのにやけ顔をしながらクスクスと笑っていた。
完全にやらかした…。
と、心中でそう悔やむ。
真奈「まあ…、ここの喫茶店のスイーツを奢ってくれたら…、確定で許してやるぜ」
そう言って、スマホのマップからここ近くのデパートにある喫茶店を指差す。
宏「えっ…えー……。でも、ここちょっと値段が高いから…ね?」
真奈「あっ!いいのかな〜?こうなったらあの人に言いつけてやろうかな〜!」
宏「わかりました奢ります」
彼女に言いふらされたら、完膚なきまでに怒られて死んでしまう。そうなりたくないという恐怖ゆえか、あっさりと僕はそれを承認してしまった。これ、もはや脅迫だよな?そう思わずにはいられなかった。
さーて……。お金……、大丈夫かな?