技能英雄 スキルヒーロー   作:松花 陽気

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第五話 騒動

 

真奈「いや〜、ありゃ絶品だったな…!宏ご馳走さん!」

 

宏「うっ、うん…。喜んでくれたならよかった…」

 

さよなら、僕の狭い懐の金。

真奈の手口により、喫茶店のスイーツを奢ってやると、僕の懐は一瞬にして儚く消え去っていった。ていうか、真奈ってあんなにたくさん食べれたっけ?デザートは別腹だと言うが、アレは流石に食べ過ぎだと思う。

 

宏「まだ使う予定あったのに……」

 

真奈「御愁傷様(笑)」

 

宏「誰のせいだと思ってるんだ…!」

 

そう真奈に対して睨みつけながら怒号を浴びせる。

 

真奈「…いや、お前が悪いだろ?」

 

宏「すいませんでした!」

 

ん?なんで僕、論破されてんの?そんなことを思いながら、僕たちは次の場所へと向かうのだった。

 

宏「……はあ、まいったな〜」

 

真奈「んっ、どうかしたのか?なにか困ったことがあるなら言ってくれていいぜ?なんでも聞いてやるからさ!」

 

真奈のせいで悩んでるんだけどな!と言いそうになるが、なんとか押し黙る。

 

宏「…うん、ありがと真奈。だけど大丈夫。僕にはまだ、奥の手が残ってるからさ…」

 

そう、まだ僕には奥の手が残っている。

これだけは僕自身、あまりこの手は使いたくはなかったが致し方ないだろう。

 

宏「……よしっ!」

 

僕はそう覚悟を決めて、ある場所へと足を運んだ。そして、やがて目的地へと到着する。

その場所とは……。

 

真奈「…ATM……?」

 

真奈はその場所を訪れるや否や、そう一言言葉を漏らす。

 

宏「そうだけど、なんだ?」

 

真奈「奥の手ってこれ……なのか?」

 

宏「…おう。あまり使いたくはなかったんだけどな……とりあえず、お金下ろしてくる」

 

そう言って僕は、今まで貯金してきた金の少しを引き出すのだった。あっという間に引き出しが終わり、すぐに真奈のところに戻った。

 

宏「お待たせー」

 

真奈「……お前貯金してたんだな。初めて知ったぜ…」

 

宏「うん、まあ……。もしもの時のために貯めて置いたんだ」

 

真奈「ふ〜〜ん…。因みにいくら貯めてるんだ?」

 

宏「いや、言わねえよ?」

 

真奈「……さすがにか?」

 

……と、そんな何気ない会話をしながら、続いてショッピングを楽しむのであった。

こういう大型店舗は特定の用事が無い限り行く事がない為、大体買うものというのは決まっている。僕は主に生活に必要な物を買い、真奈に関しては魔法の研究かなんかに使う道具なんかを購入した。

 

宏「いやー、良い買い物ができた」

 

真奈「私もお陰で次の魔法薬に使えそうなのが手に入ったぜ!」

 

宏「まあそれ、結局僕が払うんだけどね」

 

真奈「いつもありがとな宏!今度なにかで御礼するから」

 

宏「しょうがないな。じゃあ、楽しみにしとくよ。そうだ、折角だし少し店の中を散歩するか?」

 

真奈「いいね!こういうとこは見ているだけで新鮮だしな!そうと決まれば、行こうぜ宏」

 

宏「あっ、じゃあ代わりに荷物持つよ」

 

色々と買い物をしているうちに、もうだいぶ日は落ちかけていて、気づいたら時刻は夕方になっていた。

 

真奈「久しぶりだな、二人で遠くに買い物したの」

 

宏「そう言われたら、確かにそうだな」

 

ここ最近、勤めてるバイト先が忙しかったためあまり一緒に外出する機会が少なかった。

 

真奈「でも、楽しい時間ってあっという間だな…」

 

宏「結構長居してたからな……そろそろ帰るか?」

 

真奈「うん。もうすぐでお腹も空いてくるだろうし。今日の夕飯は何にするんだ?」

 

宏「今日はねーー」

 

 

と、言いかけたところで僕の声は大きな爆発音により掻き消されるのであった。

とてつもない轟音が、この広いショッピングモールの中で強く響き渡る。同時に、店の中の人達が一斉に悲鳴を上げだし、一瞬にしてその場はパニックへと陥った。

 

真奈「うわー!??」

 

宏「なっ、なんだ!?」

 

そう声をあげたのも束の間。ふと、天井の方に目をやると、いくつもの大きな瓦礫が一気に頭上から押し寄せてきた。僕らはその光景に、思わず腰を抜かしてしまい、動くこともできず……そして。次々に落下してくる瓦礫によって、僕達は下敷きになってしまったのだった。

 

□□□

 

宏「…あれ?ここは?」

 

目を覚ますと、そこには身に覚えのない光景が広がっていた。だけど、その景色にはどこか面影があったので、すぐに気づいた。

 

宏「あっ!そうだ思い出した、ここはショッピングモールだ!」

 

どうりで身に覚えがあると思った。だけど、なんでこんな廃墟みたいに崩壊しているのだろうか。確か、真奈と一緒に買い物をして、帰ろうと思った矢先に屋根が倒壊して……。

 

宏「そうだ、真奈は?!真奈は無事なのか?!」

 

僕は真奈のことが心配になり、寝そべった体を起こそうとした、だがその時だった。

 

宏「いだ!?」

 

立ち上がろうとした瞬間、片足が何かに潰されているかのような激痛が走る。

自分の足に目をやると、左足が血で濡れながらそのまま瓦礫に挟まっているのが見えた。

 

宏「くそ…。このままじゃ動くこともままならねえ…」

 

どうしようかと悩んでいると、ある一つの案が頭の中に思い浮かんだ。ただこれは、逆にそれをしてしまう事で後から違う瓦礫が落ちてきて、より酷い結果になる可能性がのあるので運次第のところがある。普通であればここで救助が待つのが正しいだろう。でも、今の僕は真奈のことで頭がいっぱいで、自分のことを考える余裕はなかった。

 

宏「もう片方の足で、酷くならない程度に足を挟んでる瓦礫を壊すしかなさそうだな…」

 

もうこれしかない。

そう悟り、僕は意を決して力強く挟まっていない方の右足でそれを蹴る。

すると、ピンポイントに一部だけ瓦礫が壊され、安全にそこから足を引き抜くことができた。

 

宏「…よし!足は抜けた……けど」

 

しかし、左足は脹脛から足首にかけて血だらけになっており、じんじんと痛んでうまく足を動かすことができそうになかった。幸い骨は折れていなかったので、表面だけの怪我で済んだ事は不幸中の幸いだった。

 

宏「だけど、これじゃまともに走ることもままならないな……。でも、真奈が心配だ。足が痛かろうが、この程度どうってことない!」

「いっててててて!!」

 

そう強がってはみたものの、案の定と言うべきか凄い痛みがきた。まあ、そりゃ当然だろう。あの高さから落ちてきたのだ、そりゃこれぐらいの痛みが来て当たり前だった。

膝をつきそうになってしまうが、なんとか堪えて再度立ちあがろうとした……その時だった。

 

??「宏ー!」

 

聞き覚えのある声が、こちらに近づいてきた。僕は一瞬で、その人物が誰なのかすぐにわかった。

 

真奈「宏、無事か?!」

 

僕は真奈が無事な姿を見て、思わず胸を撫で下ろした。

 

宏「あぁ、大丈夫だ」

 

真奈「いやいや、この足の何処が大丈夫なんだよ?!」

 

宏「だって、骨折してるわけじゃないし…」

 

真奈「……いやでも、血が出てるんだぞ!早く失血しないとヤバいだろ!全くお前は、もうちょっと自分の体を大事にしてよ!」

 

怒られてしまった。ここまで怒る真奈は、久しぶりに見た気がするな。

 

宏「…ごめん」

 

真奈「とりあえず、治療するから座ってくれ…」

 

宏「……あぁ」

 

言われた通り、その場に座る。

 

真奈「今から治癒魔法かけるぞ」

 

宏「お前、いつの間にそんな便利な魔法覚えてたのか?」

 

真奈「覚えといた方が楽だろ?今みたいに……」

 

真奈は皮肉っぽくそう告げると手から治癒魔法っぽい光を出すのだった。

 

真奈「心配したんだぞ宏、目覚めたらお前の姿が消えてて。怖かったよ、また家族を失っちゃうんじゃないかって。不安だった」

 

宏「……そう、だよな」

 

そうだった。真奈にとっては、僕は大切な家族だ。そう、たった一人のかけがえのない家族。前にも言ったが、僕らは偽りの家族だ。それでも、僕たちの家族愛はとても深い。

だから真奈と同じように、僕にとっても真奈は大切な家族だ。だからこそ、僕は自分の命よりも彼女を優先する。

だってもう、あんな思いは…………。

 

真奈「でもよかった、宏の顔見たら安心しちゃった。生きてくれてありがとな!」

 

宏「あぁ……こちらこそ」

 

真奈「……そういえば聞こうと思ってたんだけど、魔法をかけられるのってどんな感覚なんだ?」

 

宏「唐突だな。そうだな、体が整っていくようですごく気持ち良いかな」

 

真奈「へ〜、宏でもそう感じるんだな。良いデータが取れたぜ」

 

宏「お役に立てたようでよかったよ」

 

それにしても、回復魔法というのはとても便利だ。少しずつ痛みが綺麗に引いていくのがわかる。

だけど……、当の本人は、だいぶ体力を使ってるみたいだな。前に真奈から説明されたが、魔法スキルは魔力が切れると代わりに体力を使ってしまうと。さきほど箒で飛んでいた時は生き生きとしていたが、気付けば肩で息をする程に消耗していた。

やがて治療が終わると、真奈は疲れた顔でその場にベタっと座りこんだ。

まだちょっと足が動かしにくいが、だいぶ痛みが引き楽になった。

 

真奈「一応、念のためこうしとこう」

 

そう言うと真奈は、いきなり自分の服の袖をちぎって、それを包帯代わりに足に巻き付けた。

 

真奈「これで……応急処置が、できただろう……」

 

宏「真奈、大丈夫か?息が荒いぞ?」

 

真奈「…大丈夫、だ…。まだ、体力は残って…」

 

本人は余裕そうに言っているが、目の感じからしてだいぶ疲れているのがすぐにわかった。すると、案の定真奈がそこで気絶し始めたので、後ろに倒れぬようすぐに彼女を自分の胸に抱き抱えた。

 

宏「おい、大丈夫か?」

 

真奈「へへ…、どうやら……魔力を、使いすぎちまった、みたいだ……」

 

真奈「少しだけ、お前のそばで……寝てもいいか?」

 

宏「ああ、もちろん…。ぐっすり寝てくれ…」

 

彼女にそう答えると、真奈は安心してそのまま眠り始めた。

その寝顔を見ていると、ついほのぼのとしてしまいそうになる。

 

宏「お前はよく頑張ったよ、ゆっくり休みな……」

 

僕は再度、ほのかな笑みを向けながら、眠った彼女にそう静かに語りかけるのだった。

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