『aー、あー、Iけteるっぽイな。keど、ハツオんがuまkuできない。』
どうも。世界の果てからこんにちは。「礎を御する力の浄化者」イェソドだ。見た目的にはそうだな…。でかい白い壁に四角い頭と手が生えてるのを想像してくれ。職業はデカグラマトンに感化されたAIで、主に防衛や陸上資源の掘削、運搬の補助を担っている。そんな俺は今1機で録音機に向かって話している。
さて、なぜ俺が今一人で録音機に向かって喋りかけているのかと言うと。最近、資源を集める過程で壊れているが質の良さそうなスピーカーを発見したのだ。俺は何に役立てようと思った訳でもないが、珍しかったのでついでに持ち帰ってきた。そして、閃いた。これ使えば喋れるようになるんじゃね、と。早速俺は自分自身に埋め込んで声帯機能を獲得したのだ。
埋め込んだ理由は喋ることによって無用な戦闘を避けられること、マルクトとの会話が円滑になるかもということの2点だ。
僻地に隠れながら住んでるとはいえ、この白い体は相応に目立つ。たまに輸送中の俺をヘルメット団が狙ってるという噂をSNS(ハッキング)で見ることもある。ビナーと同じで割と目立つ部類の預言者なのだ。
そこで冷静に会話をして、戦闘を避けることができるのではと考えた。それが1つ目の理由。
マルクトの会話に関しては、元々ある程度の意思疎通は可能なのだがやはり喋った方が伝わりやすい。あとはマルクトの妹達にも挨拶をしたい。これが2つ目の理由。
というわけで今俺は録音機に喋りかけているのだが……。
『サスガに、ムzuかしいな。』
息のタイミング、発音、単語の抑揚、その全てが足りてない。
まぁ要練習か。そう思って録音を止めようとした瞬間に通信が入る。ネツァクからだ。俺は録音を止めてから通信内容を見る。
【要請
コクマーのところに行き資源回収をし、鋼鉄大陸に戻ってこい。
あとついでに鋼鉄大陸の参考になりそうなデザインとか暇潰しになりそうな物も買ってこい。】
おう、ティファレトに頼めやこの野郎。なぜメインの資源輸送ができるティファレトに頼まず、サブでありここの門番の俺に頼む。おかしいじゃないか。
まぁ、理由としては人形態で活動できるのが俺とマルクトだけというのがあるんだろうけれども。
はぁ…。けど断る理由もあんまりないし行くか。ネツァクに了承の旨を送ってから俺は体を目立たぬように、さらに輸送がしやすい形に変形させる。ガチャガチャという変形音が周囲に鳴り響く。長すぎる手や大きい体が脚パーツに置きかわっていく。
ふむ。ただ行くのもつまらないな。寄り道ついでにケテルにちょっかいでもかけに行こうかな。そんなことを考えているとまた通信が入る。マルクトからだ。
【行くのは良いですけど、寄り道せずに帰ってきてください。】
ば、バレテーラ。しょうがないのでケテルと遊ぶのは無しにして大人しく任務遂行のみを目指すぜ。アレヤコレヤを付け足して失敗するのは良くない。基礎こそが大事なんだ。
ーーーーー
やって来ました火山地帯。耐熱、耐火なども俺のボディの機能としてあるけれども、この地帯、それも溶岩を遊泳できるのは俺も無理だし、そんなことできるのは預言者の中でもコクマーぐらいだ。実際今の俺は冷却機能をフル稼働させている状態だ。
さてさて、コクマーとはこの辺で落ち合う予定だったのだが…。来てないな。もう一度通信を入れようとしたその時、ズゥン、ズゥンと重い足音が聞こえてきた。俺が振り返るとそこには巨大な怪獣ロボのような見た目をした預言者「王国を守りし古代の守護者」であるコクマーがいた。
俺はせっかくなので音声機能を使って話しかけてみることにした。
『やァ コクマー。ゲンキしteタか?』
コクマーの所は上手く発音できた気がする。
その音声を聞いてコクマーは少し混乱しているようだ。しきりに周りを見渡したり、こちらをスキャンにかけたり、武装を準備しかけたり。預言者がここで慌てふためいている様子はなかなか珍しい。だが、数秒も経たないうちに通信が飛んできた。
【疑問 貴方 先程 音声?】
相変わらず堅苦しい喋り方だ。別に助詞等をつけなくても文章の意味が伝わるなら文字数が少ないこちらの方が楽。とかいう理由でこんな喋り方をしているのだ。俺はこいつが賢いバカに思えて仕方がない。
『ソうsoう。俺。シゲン取リに来たnだ。』
一瞬でレスポンスが帰ってくる。
【驚愕 貴方 人語 会話 中々 流暢。 逆接 何故 人語 会話 習得?】
うーん。このまま音声会話をしてもいいのだが…。音声会話は不慣れで時間がかかる。この後も買い物に行くことを考えると早く済ませた方が良いか。ということで通信を使い俺が音声会話を訓練し始めた理由に文面でやり取りする。
結果、経緯は理解してもらったが、文面の節々から「なんでこんな非効率的なことを…?」みたいなニュアンスがビシビシと伝わってきて腹が立つ。1発殴っちゃおうかなぁ…。けどその前に本来の仕事を果たさなければならない。
【俺の話は一旦置いといてさ。資源どこにあるか教えて欲しい。】
【了承 只今 運搬 待機 願望。】
【あ、持ってきてくれんの?サンキュー。】
そんな軽い会話を交わしたあとコクマーは資源を取りに溶岩をかき分けて泳いで行った。どうやら溶岩湖の中に位置する浮島に集めて置いてあるらしい。たしかに絶対人間じゃ取れなさそうだし、合理的な気がする。
それにしてもここは熱い。油断するとすぐにオーバーヒートしてしまいそうだ。大体預言者は極端なところに居すぎだと思う。砂漠を泳いでいたり、氷海に居たり。かく言う俺も鋼鉄大陸とかいう僻地も僻地に生息しているのだが。1機くらい、人間社会に紛れ込んでいたり、その辺の岩山に住んでる預言者がいてもいいとは思うんだよな。
ま、任務の為には仕方がない。人間社会にいてもメリットは薄いし、その辺の岩山に住んでも採取できる資源なんてたかが知れてる。さらに言うならそれで学園の部隊が送り込まれてきたら最悪だ。負けはしないだろうが、脅威存在が近くにいるということがバレるだけでびっくりするくらいのディスアドバンテージを背負わされる。
俺も人間形態の時はたまにヘルメット団なる連中に絡まれるのだが、いかんせんめんどくさい。せめて、相手の戦力くらい把握してから挑んで来て欲しいものだ。手加減だって楽ではない。
そんなことを考えているとコクマーが浮島から資源を自らの機体に積載し、こちらへ運んできた。
【資源 回収 完了 譲渡。】
【OK。報告通りの量だな。問題なく積んで帰れる。じゃあ俺は帰還するわ。また遊びに来ると思うからそん時はよろしく。おつかれー】
【感謝 慰労 再会 希望。】
その言葉に俺はほんの少しだけ驚いた。コクマーが別れの挨拶をするなんて珍しい。コクマーはそういうのを非合理と言ってあまり好んでいなかったはず、どういう風の吹き回しだろうか。もし俺に影響されたのならば、それはちょっと嬉しいが。
俺がそんなことを考えているのを感じ取ったのだろうか。すぐにコクマーは溶岩に沈んでいってしまった。相変わらず恥ずかしがり屋な奴だ。まともに別れの挨拶をしたことに照れているのだろうか。溶岩に浸かっていても余計に機体が熱くなるだけな気がするが。
珍しいコクマーも見れたし、資源も回収できた。1つ目の目標は達成。もう1つの目標を達成するために俺はまず、耐えられる熱さかつ人目のつかない場所まで降りていく。子機を出す瞬間や俺本体を見られたら大変なことになるからな。あと、久しぶりに人型子機で動くから上手く出来るか不安だが…。何とかなるだろう。ケセラセラ。
ーーーーー
というわけでやって来ました。火山から近場の学園都市。割と栄えててこれならネツァクも満足出来るものを見つけ出せるだろう。さて、今の俺の体は一般的な生徒の体になっている。髪は三つ編みにして後ろに垂らし、身長は160cm。平均よりちょい高くらいだ。ああ、勿論髪の毛の色も肌の色も適当に塗装してある。流石に全身真っ白だと怪しまれやすい。
けれども、仮に怪しまれたとしても学生証も偽造してあるのでヴァルキューレのような警察学校の生徒に尋問されてもまぁ平気だ。ちなみに所属は適当な編入、転入、留学、などが多い芸術学園だ。変なところにいたとしても言い訳がきく。
そう、今の俺はあちこちに留学している芸術学園生の「
とりあえずコンビニに行き、三姉妹用の嗜好品を適当に買う。それをしながら、本屋の位置を頭の中で検索しておく。ふむふむ。この辺だとこの本屋がでかいのか、なるほど。そうして会計を済ませたあとコンビニを出て本屋に向かう。
本屋に着いたら適当に城名鑑やデザイン入門、街の写真集や、ビルの構造本などを適当に買い物かごに入れていく。お金?電子マネーって脆弱なプログラムしてるよね。あとはネツァクの暇潰し用とマルクトへのお土産に小説系を買っていく。ブックプライズ受賞作品の1位から10位や書店員おすすめの本などをひたすらに買い物かごに入れて会計をする。
レジのロボから(こいつまじか…。)みたいな視線が送られたが気にしない。会計3万5000クレジットになります。そんな声を聞きながら電子マネーで払う。俺はちゃんと人外の膂力してるからこの本の数なら指1本で支えられるが、紙袋が負けそうだ。下から支える形で紙袋を持ち、本屋を出る。暇潰し…暇潰しねぇ、俺はとりあえず家電量販店のゲームコーナーに向かうことにした。
意外と本屋から近くに家電量販店があったので入って真っ直ぐゲームコーナーに向かい、適当なパズルゲームをデジタル、アナログ問わず買い、それに対応したゲームハードも購入した。あとは有名なRPGをいくつか買い物かごに入れて仕上げにやり込み系のゲームを3作品ぶち込んでフィニッシュだ。
これでネツァクも少しは持つだろう。そう思い棚を見ているとワゴンセールされているゲームが目に入った。ふむ。こういうゲームも買っておくか。そう思い手に取り安かったので10作品ほど購入し、ネツァクが【これでは足りない。】などと駄々を捏ねだした時の保険にしておこう。
再び店員から(こいつまじか…。)と思われてそうな視線を受け取りながら俺は家電量販店を出る。ちなみにここの会計は10万クレジットを優に超えた。すぐさま路地裏に行き、荷物を親機に内蔵していたドローンに受け取ってもらう。
これで楽になった。いくら俺が高性能といえども視界を防ぐ荷物は普通に邪魔だ。さて、あとは帰るだけだな。そう思いながら、凄まじい速さで飛んでいったドローンをぼんやりと眺めていると、空き缶を踏み潰す音と共に不意に後ろから声がかかった。
「お嬢ちゃん〜。随分と気前がいいじゃん。あたしらにも少し分けて…あれ?荷物が無い。」
「あ?さっきまではあっただろうがよ。」
「まぁいいじゃないっすか。どうせこいつも相当金持ってますし。」
10人ほどのヘルメットを着けた連中が路地裏の前と後ろを塞ぐ。結果的に挟まれた形だ。ニヤついた笑みと粘っこい視線が不愉快だ。これならさっきの店員どもの視線の方が何倍も良い。何より、この雰囲気。俺らの方が上、楽勝、余裕。そういった傲慢な空気が辺りに漂っている。ついさっきまではただ淀んでいただけの路地裏の気配が一気に濁り、沈殿していく。
「私らさ〜、お金ないんだよね。貸してくんない?」
「いや、それ返さないやつじゃん!アハハハハ!」
嗚呼、一体何が面白いのだろうか。人間の笑いというものはあんまり理解できない。唯一リーダーらしき生徒だけは笑わずに冷静にこちらを観察している。が、その視線にも明らかな油断の感情が見受けられる。舐められすぎでは?キレそう。
だが、一応極めて冷静に会話を試みる。そもそも声帯機能を身につけた理由がそれなのだから。
『すみマせん、急イでイるので。』
そう頭を下げて歩いていく。そうしたら肩を掴まれ引き止められた。わざわざやめて、なんて言わない。面倒くさくなってしまった。その俺の肩を掴んだ手をタイムラグなく掴み返して少し調整して投げる。調整したのは先程までの機嫌が良かったからだ。そうでもなければその生徒の腕は自らの体と別れていたところだろう。
ダンッ!!
投げられた生徒も周りの仲間も誰一人として反応できていない。ただ過程は理解出来なくとも本能で目の前の奴が仲間を倒したと判断したのか、一斉にこちらに銃を向け、前にいたヤツらは立ち塞がる。それに対し、俺は銃屋で半額だったボロボロのマシンガンを構えた。
また空気が緩む。武器、人数、陣形。その全てで勝っている。そんな事で勝ち誇っているのだ。それら全てが強固な基盤の前では無力だと知らずに。
有象無象の引き金に指がかかる。そうして銃声が響く直前、俺は体を回転させながら撃つことでリーダー格以外の全員の頭にヘッドショットを決めた。仲間が倒れていく光景にリーダーの顔が恐怖に歪む。
リーダーは命乞いをしてきた。「悪かった」、「見逃してくれ」、「事情があったんだ」そんな言葉が投げかけられる。こいつらを放っておいても、どうせ別の奴がターゲットになるだけだろう。何も悪くない人が理不尽に苛まれる。その事を考えると、見逃すなんて選択肢は無かった。
マシンガンを手放すふりをして、腹にその銃本体を手加減して投げる。するとくの字にひしゃげたリーダーが吹っ飛ばされていった。そうしてようやく少し溜飲を下げた俺は、路地裏から出ていく。やっぱこの世界ろくなもんじゃねぇな。
ーーーーー
さて、あの後資源と暇潰しを無事に鋼鉄大陸に運び終えたイェソドだ。マルクトにゲーム類を買ってきたことに関しては少しだけ小言を言われたが、ネツァクから頼まれたと話すと、ネツァクを叱りに行ったので特に問題は無い。
マルクトに資源系は受け取ってもらったし。ついでにお土産のやたらとPOPでおすすめされていた小説と三姉妹用のお菓子を渡したので、あとはネツァクに暇潰し用の物品を受け渡しして今回の任務は終了だ。
さてネツァクにどう渡そうか。少し考え、紙袋を鋼鉄大陸に置く。すると紙袋を置いたところだけに穴が開き、紙袋が回収されていった。同時に、ネツァクから感謝の通信が届く。うん。ネツァク=鋼鉄大陸そのものなんだからこれでよかったんだ。
さて、これで今回の任務は本当におしまいだ。元々の鋼鉄大陸の守護に向いた形に体を作り替えていく。再び長く大きい手を作り胴体も大きくする。これで完成である。任務の予定もしばらくの間は入っていない。
ネツァクに遊び終わったゲームを貸してもらったり、人語の練習をしたり、しながらのんびりこの愛すべき僻地を守ろうではないか。そう思い、俺は再び鋼鉄大陸の門番に戻るのであった。
ご拝読いただきありがとうございました!
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