VS「基礎」イェソド   作:夜間営

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続いたー!!
前話への感想・評価ありがとうごさいました!

友人とは2時間程の通話の果てに和解しました。


宵の明星

『え!そンなこト出来nの!?』

「うん。ネツァクとの相談もしなきゃだし、手探りにはなるけどね。どうする?やる?」

『ォネがいするよ!』

 

どうも、珍しく鋼鉄大陸内に出てきて、マルクトの妹を名乗る三姉妹の一人、ソフちゃんと話している預言者イェソド…。いや、今は人間形態なので機家ソドか…?機家ソドだ。本機に防衛を任せてまで、わざわざ内陸まで上がってきた理由は、この形態に関わることでもある。

 

【いやー。けど楽しみだな!()()()()()

「シームレスに会話手段が切り替わるね。忍耐力ないんじゃないの?」

【痛いところをつくねぇ。君らとの会話ならこっちの方が円滑だからね。ついつい頼ってしまうんだ。】

「ふーん。まぁいいけどさ。」

 

そう!この人間形態での武器を作ってもらうためなのだ!前回任務で、特に何事もなく無事に帰ってこれたと喜んでいた俺だが、唯一武器だけを紛失した。これは、前々から浮き彫りになっている問題である。基本的に俺はガンショップや銃砲店などの店でセールになってる武器をまとめ買いしたものを使っていたのだが…如何せん脆く、弱く、使いにくい。

 

もちろんそれはしょうがないことなのだが、そのせいか前回の投擲しかり、俺の銃の扱いが荒くなってしまっている。これが続くようなら、しっかりとした専用の武器を精製し、使用した方が良いのではないのか、とマルクトに言われてしまったので早速我らが誇るエンジニアに相談しに来たのだ。

 

【そういえば他の子らは?】

「アインはお姉さまのところ。オウルは…わからないけどコードでも書いてるんじゃない?」

 

休んでるなどとの返答が来るかと思ったが、真面目に働いてて少し驚いた。しかし、少し考えて納得した。今は鋼鉄大陸を全力で拡大させる必要がある。大陸と名乗ってはいるが小さめの島ぐらいの面積しかないからな。

 

いや、それでもだいぶ広いし、預言者が全員集まれるスペースはあるんだが。入れると言うだけで作業スペースや戦闘場所、居住区などを考えるともっともっと面積が欲しい。目指せ、デカグラマトンシェアランドである。

 

そのために預言者総出で働いてるのだ。当然マルクトも。そして、マルクトに心酔する彼女らが働かない訳がなかった。個人的にはもう少し皆休んでも良いとは思うのだが…。彼女らも大切な仲間であることに相違はないが、俺らに比べるとか弱い生命なんだから。

 

まぁでも、過労死ラインのチェックは保護者代表マルクトがやってくれるか。そう信じて思考を止めて、本筋の製作する武器について考える。

 

「言っておくけど、そんな複雑なものは作れないからね。精々がミニガンとか固定タレットくらい。」

 

それは充分複雑ではとも思ったが彼女を始めとするエンジニアからしたら単純明快なものなんだろう。さて、どんな武器が良いか。瞳を閉じて視界いっぱい、思考領域いっぱいに武器の選択肢と設計図を並べて考える。

 

まず、遠距離よりも近接の方が望ましい。遠距離には一応セール銃とはまた別のお気に入りである愛銃を持っているし、俺の力を最大限に活かすなら近接の方が良い。となると銃はそもそも選択肢から外れる。思い浮かべていた重火器類の選択肢をまとめて消去する。

 

となると、打撃か斬撃か…。打撃の方が良いかな。打撃ならばどんな敵にも一定のダメージは入るが、斬撃は機械相手だと装甲の関係上通りにくいし、手入れが大変そうだ。似たような理由で複雑な機構を組み込んだ打撃武器も止めておこう。デリート。

 

あとは形状…。小型よりも中型、大型の方が好ましいな。威力が高い。ハンマー…、三節棍…、バット…、鉄棒…、メイス…、ツルハシ…。

 

ふむ、この中なら威力と長いリーチを両立出来そうなのはハンマーか鉄棒か…。ハンマーは両手が埋まりそうだし、戦闘の幅を残すという意味でも、鉄棒が最適解な気がする。あとは棍棒に似せて握りやすいように少しくぼませる形が望ましいか。

 

 

だが、そうしてしまうと攻撃に使える部分が減ってしまう。せっかく人外の可動域と視野を持っているのだから、どこで殴ろうが威力が変わらず、なおかつ長物が良い。思考領域内の脳内設計図をさらに練っていく。

 

この人に近い手でも握りやすく、扱いやすい形状にするためにもう少し細長くしたところで、図面を生成する。

(うん。これが良い。)

そうやって預言者のCPUをフル稼働させ完成させた図面は、あまりにシンプルすぎて、「真面目に考えた?」などと言われてしまいそうな純白な鉄の棒であった。

 

そのデータを通信によってソフちゃんに送信すると同時に瞼を開ける。眼前には雪国でもないのに白い世界が広がっていた。無意識下で武器の配色に影響を受けていたのかと思ってしまい、否が応にもこの世界で武器を持った自分の姿を想像してしまう。

 

送られたデータをネツァクにも転送して相談していたのだろう。さっきまでの俺のように瞳を閉じていた彼女は目を開けてから、

「うん。いいんじゃない。」

と声を発した。その声には、ほんの少しの喜の感情が込められていた。

 

どうやら俺が作った図面は、エンジニアの二人のお眼鏡にかなったらしい。シンプルすぎる、などのお小言もないあたり、これが俺なりの最適解なんだと理解してくれているようで、少し気分が高揚した。

 

「じゃあ、これ作るからね。期間は三日間くらい見ておいて。」

【了解。本当にありがとう。】

俺はネツァクにも感謝の気持ちを送信し、浮足立った気分でその場を離れた。

 

 

その背中を少女は見送り、気合いを入れ直した。

「ーーさて、仮にも預言者の一角が持つ武具、全力で仕上げないとね。」

ソフが呟いた言葉にはモノづくりに携わるものとしての溢れんばかりの矜持が込められていた。

 

ーーーーー

 

三日後、俺は鋼鉄大陸の中でも最深部に位置する場所へ向かっていた。そこに至るまでの通路はぼんやりとした蛍光灯で照らされていて薄暗く、明らかに普段俺がいる表層部の整頓されすぎた雰囲気とはまた異なる不気味さが漂っていた。

 

ここに来るのはいつぶりだろうか。思い出そうとして、止めた。そもそもそんなことはどうでもいいことに違いないのだから。輪郭すら曖昧になってしまうような廊下に響くのは蛍光灯から発せられるカチカチ、となる異音と、人もどきの足音だけだった。

 

そのまま階段を下ったり上がったり、右折、左折をひたすら繰り返す、まるで迷宮のような地下廊下をひたすらに歩いていると、重厚な扉の前にたどり着いた。その扉の前に立つと、いよいよ湧き上がる少年のような好奇心を抑えきれなくなっていた。そのままほんのわずかな時間、静止していると扉はひとりでに開いた。認証システムが俺を預言者の一機であると正常に認識したのだ。

 

何のためらいもなく中に入ると、そこには青白い光に照らされたモニターとそれに付随する形で操作盤とそれを扱うのであろうアームが存在した。一見すると、そこはただの操作室や管理室のように見えるかもしれない。しかし、そこに漂う異様な圧が部屋全体が普通ではないことを示していた。何を隠そう、この部屋そのもの。

 

それ自体が、7番目の預言者、「勝利」ネツァクなのである。

尤も、この部屋が本体という訳ではなく。本体はこの部屋のモニターのさらに奥に鎮座しているらしいが。

 

【やぁ。ネツァク。調子はどうだい?】

【やぁ。イェソド、遅かったな。おかげで随分と休めてしまったよ。】

【いつも通りの口の悪さだ。安心するねぇ。】

【ははは。何を言う。私ほど品行方正な預言者もいるまい。】

 

モニターに文字が表示される。スピーカーから人工音声が流れる。そして通信でのやり取り。意味もないことをしながら、軽口を叩き、毒を吐く。それがネツァクという預言者の性格だ。「機械である我々だからこそ無駄を愛すべきなんだ」という考えを持って行動する、預言者一の自由人でありながら、預言者一職務に忠実な奴でもある。

 

そもそも、職務に忠実じゃなかったら、こいつはここを抜け出してキヴォトス中を飛び回っていたことであろう。そんな奴がこの薄暗い地下室に大人しくとどまっている時点で奇跡のようなものである。そんなことを考えていると、ネツァクが再びモニターの文字やらなんやらの操作を始めた。

 

【本題に入ろう。君の武器が完成した。今からそちらに渡すから受け取ってくれ。】

ガシャンと大きな機械音が鳴ると同時に地面から出てきたのは、俺の背丈ほどのポットだった。その中には三日前に俺が考えていた通りの純白の鉄棒が浮いていた。ネツァクが再び喋り出す。

 

【主な材料はコクマーが採掘した希少鉱石の合金と各地で発見されたオーパーツだよ。一応、鉄も合金の中には含まれてはいるが…、鉄棒というにはふさわしくない品になってしまったね。あ、あと開発者権限でソフ嬢と一緒に銘を考えさせてもらったよ。】

 

ネツァクの言葉がどこか遠くに感じた。一刻も早く、あの自分のための武具を手に取りたいと思った。しかし、伸ばす手は慎重に、さながら読書家にとっての本のように、バイオリニストにとってのバイオリンのように俺は、純白の鉄棒を慈しむように手に取ったのと、ネツァクが銘を言ったのは同時であった。

 

【その合金棒の銘はツァディー、星を意味する言葉だよ。】

 

「ツァディー…、ツァディー。」

未だにうまく会話ができないこの声帯であったが、その言葉はやけにあっさりと発音できた。その声色はまるで吟遊詩人が恋人に睦言を囁く時のように、ゆったりと柔らかいものであった。俺にとってそれは運命の出会いで、俺に必要なものであったのだろう。乙女にとっての初恋のような、旅人にとってのポラリスのような。

 

「あリがとう、ネツァク。」

【礼ならソフ嬢に言うといい。彼女はツァディーの製作に心血を注いでいたからね。このクオリティに仕上がったのは間違いなく彼女のおかげ。私は少し手伝ってあげただけさ。】

「ソッか。必ずソフチャんにも御礼を言うよ。あレ?そういえばそのソフちゃンは?」

 

そこまでツァディーに全力を尽くしてくれた彼女だ。このお披露目会にも来ると思っていたのに…。

 

【ああ、彼女は今頃マルクトに強制的に休められているだろう。完成直前と言ったところで突然現れたマルクトに連行されていった。】

「oh…。後でソトに出taトキに何か買ってイッテあげよう。」

【お、それなら私も欲しいものがあるんだが構わないね。】

そろそろ声帯が上手く使えなくなってきたので通信に切り替える。

 

【ああ、勿論!何が欲しいんだ?】

【クソゲー。】

【え?】

【クソゲーが欲しいんだ。】

【…マジで?】

【私は何時だって真剣だよ。】

 

そのままネツァクは熱心に語り始める。

 

【素晴らしいよね!バグまみれだったり、テクスチャが歪んでいたり、ストーリーやゲーム性が薄すぎるゲーム。所謂クソゲー!いやこの呼称は失礼ということを承知で使わせてもらうが、私は感動したんだ。たしかに我々機械が作った方がはるかに良いゲームが作れることであるだろう。しかし、しかしだよ!嗚呼、嗚呼!痛いほど伝わってくるんだ。彼彼女らがこのソフトに託した祈りが!情熱が!愛情が!これらを端的に表すなら、そうだな…魂であると言えよう!無論、それ以外のゲームにも魂や拘りはいっそ狂気的に伝わってくる。だがね。拙いことを承知で好きを世界に届ける葛藤や矛盾。これが味わえるのはクソゲーだけなんだよ。だからクソゲーを集めてきてくれ。】

 

要約するとこういう感じのことを言っていた。要約してこの長さだ。迂遠な表現や難解な例えなどを多用していたせいで、文字数がだいぶかさ増しされていた。だが、それもネツァクとの付き合いが長い俺にとっては充分理解できるものであった。

 

それはそうと、モニターに凄い勢いで表示される文字と、先程よりも何倍も速く読み上げられる人工音声。メモリを結構食われてしまった。疲労困憊だ。訴訟。

 

けれども、数少ない友からの、しかもこんなに素敵な贈り物をくれた友からのお願いだ。喜んで引き受けよう。

【もちろん。頼まれたことはきちんとやるよ。】

【頼んだよ我が友よ。最高の物を持ってきてくれ。】

 

【ああ、それとせっかくの武器だ。振り回したいだろう?部屋を出てから右左上右の順で曲がった先に広間を作っておいた。何体かは戦闘用ロボも置いてあるから試しに戦ってみてくれ。戦闘データが欲しい。】

 

【君気が効きすぎじゃないか?】

本当に良い友人を持った。ネツァクに改めて礼を行ったあとワクワクで教えられた場所へ向かう。気持ちがはやり、自然と歩幅が大きく、足取りが早くなっていく。そのおかげで数分とかからず、その急拵えの戦闘部屋に着いた。

 

ドアを開けた瞬間5体の戦闘用ロボに一斉に銃を向けられた。シンメトリーのような陣形を組んでいて1番外側にアサルト2、その内側にマシンガン2、1番内側かつ中央にショットガン1だ。

 

おそらくは一歩でもこの空間に踏み入ったら一斉に射撃を開始するのであろう。上等だ。俺はあえてゆっくりとその場に足を踏み入れた。瞬間、飛来する銃弾たち!俺はそれを姿勢を低くしながら大きく横っ跳びすることで避ける。

 

壁に跳弾した銃弾が耳障りな騒音を奏でる。その音すら置き去りにするような速さで俺は右の壁面に更に跳んで、重力に引かれて地面に落ちるより早く駆ける。こうなると銃弾は角度の関係でほぼ一方向からの銃弾になるので、ツァディーを軽く回すだけで十二分に対処出来る。

 

アサルトの真横少し手前まで走ったところで壁を蹴りつつ、ツァディーを振り下ろす。すると、銃の照準を合わせるのが間に合わず、銃を撃たれることなく攻撃できた。金属が金属を叩いたにぶい音が周囲に響くかと思われたが、あまりにも強度やエネルギーが違いすぎて、めり込むような形で頭部パーツがぐしゃ、とへこんだ。

 

だが、こうなっても機械類は動くので、振り下ろした勢いそのままに一回転してタックルを仕掛ける。そのまま奴さんを抱えて反対側の壁まで走る。他のロボはそれを察知して避けてから、再び銃撃するが、ほんの少し俺の方が速かった。俺は銃撃を全て避けつつ相手を壁に押し付ける。

 

壁と相手が衝突する寸前に俺は手を離しそのままジャンプしてロボの頭を壁と挟みこむ形で両足を揃えて踏み潰した。その時にツァディーを起点にして回転。その勢いを利用してまた別のロボに挑みかかる。

 

ああ、楽しい。思いっきり力を振るえるこの感覚が、瞬く間に己の一部として馴染んでいくこの武器が、今はどうしようもなく心地いい。まだ、遊び相手は4体いる。全力で遊ばせてもらおう。

 

結局、俺がこの模擬戦を終えるのには1分もかからなかった。

 

 

ーーーーー

 

「アハは!Iいネ!」

夕焼けの残り火に照らされつつ、ただ、ツァディーを振るう。データベース内に入っている実力者たちを仮想敵としながらひたすらに振るう、時間を忘れるほど振るう。しなやかかつ丁寧に、だが、力を込めて振るう。

 

(すごい。一振りごとに深まっていく感覚がする。)

しばらくの間はデータベース上の強者と立ち合うだけで、素晴らしい自己研鑽が出来そうだ。それに、銃撃や拳を織り交ぜたり、本機と同時操縦する際のコンビネーションなど試してみたい内容は山ほどある。

 

(これは本当にネツァクやソフちゃんには感謝しかないな。)

そう思いながら宙を見上げる。そこには、インクをぶちまけたような漆黒の天幕の中に、意志を貫き通すような一番星が静かに淡く、輝いていた。




ネツァクからイェソドなのでツァディー。
捻りのない名前と石を投げられてしまいそう…。

ご拝読ありがとうございました!
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