マイペースとギャル   作:5734589

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元気すぎ

昼休み。

 五人は窓際に集まって座ってる。

 

 机を寄せて、コンビニの袋を広げる。

 

「それ、どこのパン?」

 

「駅前」

 

「やっぱ?」

 

「甘すぎなくていい」

 

 りりが言う。

 

「マコト、最近パン率高くない?」

 

「楽」

 

「理由が生活」

 

「犬飼ってる人の発言」

 

「関係ある?」

 

「ある」

 

 ナナが笑う。

 

「てかさ」

 

「なに」

 

「マコトって、最初静かだったよね」

 

「今も」

 

「いや、違う」

 

「今は、ツッコミ担当」

 

「なってない」

 

「なってる」

 

 りりがストローを噛む。

 

「あたしさ」

 

「うん」

 

「マコトのぼそっとしたやつ、好き」

 

「急に」

 

「三人も思ってる」

 

「思ってる」

「普通に面白い」

 

 マコトは少し目を逸らす。

 

「褒められてる?」

 

「褒めてる」

 

「慣れてない」

 

「知ってる」

 

 ミオが言う。

 

「最初、正直さ」

 

「うん」

 

「りりと合うと思ってなかった」

 

「失礼」

 

「今は?」

 

「今は、セット」

 

「セットってなに」

 

「昼の」

 

「犬の散歩にも使われてる」

 

「それはハル」

 

 りりが言う。

 

「でもさ」

 

「なに」

 

「この感じ、楽じゃない?」

 

「楽」

 

「気使わない」

 

「それな」

 

「それ」

 

 チャイムが鳴る。

 

「もう終わり」

 

「早」

 

「また集まろ」

 

「毎日集まってる」

 

「それもいい」

 

 立ち上がる。

 

 マコトが言う。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「この時間、わりと好き」

 

 一瞬、静かになる。

 

 りりが言う。

 

「知ってる」

 

「なんで」

 

「顔」

 

 四人で、笑う。

 

 雑談は、関係の完成形だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

選択授業の美術室は、窓が多い。

 午後の光が床に広がってる。

 

「ここ座ろ」

 

「うん」

 

 マコトとユイ、二人だけ。

 

「りりと一緒にいないの、珍し」

 

「体育」

 

「元気すぎ」

 

 今日の課題は、静物デッサン。

 机の上に、よくわからない瓶と布とリンゴ。

 

「地味」

 

「美術だし」

 

「でも嫌いじゃない」

 

 ユイが言う。

 

「意外」

 

「集中すると楽しい」

 

「わかる」

 

 鉛筆を走らせる音。

 

「マコトさ」

 

「なに」

 

「美術、上手そう」

 

「普通」

 

「その普通、信用ならん」

 

「期待しすぎ」

 

 少し覗かれる。

 

「え、影いいじゃん」

 

「そう?」

 

「静かに上手いタイプ」

 

「褒め方が地味」

 

「マコト向き」

 

 マコトは少し笑う。

 

「そっちは?」

 

「見ないで」

 

「見る」

 

「やめて」

 

「色使い大胆」

 

「雑って言え」

 

「言わない」

 

 先生が通り過ぎる。

 

「いい集中だね」

 

「今、褒められた?」

 

「二人で?」

 

「レア」

 

 また描く。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「りりといるとさ」

 

「うん」

 

「会話の速度、速いじゃん」

 

「確かに」

 

「今、遅い」

 

「悪い?」

 

「良い」

 

 ナナは筆を止める。

 

「マコトってさ」

 

「うん」

 

「誰とでも、ちゃんと違う顔してるよね」

 

「自覚ない」

 

「でも、疲れてない」

 

「それはたぶん」

 

「たぶん?」

 

「相手が勝手に合わせてくれてる」

 

「責任転嫁」

 

「事実」

 

 完成の時間。

 

「見せて」

 

「どうぞ」

 

「……好き」

 

「軽」

 

「いや、本気」

 

「ありがとう」

 

「りりに見せる?」

 

「見せる」

 

「絶対なんか言う」

 

「うるさいやつ」

 

 二人で片付ける。

 

「また一緒になったらいいね」

 

「選択、来年も?」

 

「たぶん」

 

「じゃ、また」

 

「また」

 

 美術室を出ると、廊下が少し騒がしい。

 

 静かな時間は、関係を別の角度から見せてくれた。

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