マイペースとギャル   作:5734589

26 / 34
ギャップ禁止

体育館。

 蒸し暑い。

 

「今日はバスケな」

 

 先生の声。

 

「終わった」

 

 誰かが言う。

 

 マコトは、ボールを見る。

 

「……嫌な予感」

 

 チーム分け。

 

 りり、ミオ、ナナ、ユイ、マコト。

 

「いけるっしょ」

 

 りりは軽い。

 

「マコト、パスね」

 

「……うん」

 

 試合開始。

 

 りりがドリブル。

 

「マコト!」

 

 来た。

 

 ボールが飛ぶ。

 

 マコトは受け取ろうとして――

 

 落とす。

 

「え?」

 

「今の取れない?」

 

「取るつもりだった」

 

 次。

 

 また来る。

 

 今度は取る。

 

 が。

 

 投げる。

 

 変な方向。

 

 床。

 

 壁。

 

「おい」

 

「マコト?」

 

「球技、苦手?」

 

「……限定で」

 

「限定とは」

 

 守備。

 

 相手が突っ込んでくる。

 

 マコト、動く。

 

 遅い。

 

 足がもつれる。

 

「うわ」

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫」

 

 でもボールは取れない。

 

 シュート。

 

 リングに届かない。

 

「え」

 

「近いのに」

 

「力配分が」

 

 りりが寄ってくる。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「もしかして」

 

「なに」

 

「運動神経、ない?」

 

「ある」

 

「球技だけ」

 

「それ言い訳に聞こえる」

 

 交代。

 

 ベンチ。

 

 ナナが言う。

 

「マコトさ」

 

「うん」

 

「走るのは普通じゃん」

 

「うん」

 

「でもボール持つとバグる」

 

「否定しない」

 

 試合終了。

 

「マコト」

 

 りりが肩を組む。

 

「正直」

 

「なに」

 

「可愛い」

 

「やめて」

 

「必死なのに当たらないの」

 

「やめろ」

 

「ギャップ」

 

「その言葉禁止」

 

 マコトは息を整える。

 

 静かで、本読んで、

 犬と散歩して、

 球技だけ、致命的に下手。

 

 全部含めて、

 もう隠れなくなってた。

 

 りりが言う。

 

「次、ドッジボールね」

 

「休む」

 

「逃がさない」

 

「やめて」

――――――――――

 

 体育館。

 前より空気が軽い。

 

「次、ドッジボールな」

 

 ざわっとする。

 

 マコトは少しだけ安心する。

 

「……避けるだけなら」

 

 りりが横を見る。

 

「なに?」

 

「独り言」

 

 チーム分け。

 

 また同じ。

 

「投げるのは?」

 

「無理」

 

「避ける係ね」

 

「係にするな」

 

 開始。

 

 ボールが飛ぶ。

 

 速い。

 

 マコト、動く。

 

 避ける。

 

 すっと。

 

「今の」

 

「え?」

 

「避けた?」

 

 次。

 

 二方向から。

 

 マコト、半歩下がって、かわす。

 

「は?」

 

「ちょっと待って」

 

「当たらなくない?」

 

 りりが叫ぶ。

 

「マコト!」

 

「なに」

 

「今のどうやった」

 

「来ると思った」

 

「感覚?」

 

「うん」

 

 ボールが集中する。

 

「狙われてる」

 

「的」

 

「的、動きすぎ」

 

 相手チーム。

 

「当たんないんだけど」

 

「なんで?」

 

 マコトは息が乱れてない。

 

 目だけ動く。

 

 避ける。

 

 転ぶ。

 

 起きる。

 

 また避ける。

 

「無理無理」

 

「残機多すぎ」

 

 最後。

 

 コートに残るのは、マコトだけ。

 

「一人?」

 

「投げられないのに?」

 

 りりが笑う。

 

「最強じゃん」

 

「違う」

 

「逃げ性能MAX」

 

 先生が笛を吹く。

 

「はい、終了」

 

 マコトはその場に座る。

 

「疲れた」

 

「投げてないのに?」

 

「集中力」

 

 りりが水を渡す。

 

「あたしさ」

 

「なに」

 

「マコトの才能、わかってきた」

 

「なに」

 

「当たらない才能」

 

「褒めてない」

 

「褒めてる」

 

 マコトは水を飲む。

 

 向いてないことは多い。

 でも、向いてることは、

 ちゃんと変。

 

 りりは楽しそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。