体育館。
蒸し暑い。
「今日はバスケな」
先生の声。
「終わった」
誰かが言う。
マコトは、ボールを見る。
「……嫌な予感」
チーム分け。
りり、ミオ、ナナ、ユイ、マコト。
「いけるっしょ」
りりは軽い。
「マコト、パスね」
「……うん」
試合開始。
りりがドリブル。
「マコト!」
来た。
ボールが飛ぶ。
マコトは受け取ろうとして――
落とす。
「え?」
「今の取れない?」
「取るつもりだった」
次。
また来る。
今度は取る。
が。
投げる。
変な方向。
床。
壁。
「おい」
「マコト?」
「球技、苦手?」
「……限定で」
「限定とは」
守備。
相手が突っ込んでくる。
マコト、動く。
遅い。
足がもつれる。
「うわ」
「大丈夫?」
「大丈夫」
でもボールは取れない。
シュート。
リングに届かない。
「え」
「近いのに」
「力配分が」
りりが寄ってくる。
「ねえ」
「なに」
「もしかして」
「なに」
「運動神経、ない?」
「ある」
「球技だけ」
「それ言い訳に聞こえる」
交代。
ベンチ。
ナナが言う。
「マコトさ」
「うん」
「走るのは普通じゃん」
「うん」
「でもボール持つとバグる」
「否定しない」
試合終了。
「マコト」
りりが肩を組む。
「正直」
「なに」
「可愛い」
「やめて」
「必死なのに当たらないの」
「やめろ」
「ギャップ」
「その言葉禁止」
マコトは息を整える。
静かで、本読んで、
犬と散歩して、
球技だけ、致命的に下手。
全部含めて、
もう隠れなくなってた。
りりが言う。
「次、ドッジボールね」
「休む」
「逃がさない」
「やめて」
――――――――――
体育館。
前より空気が軽い。
「次、ドッジボールな」
ざわっとする。
マコトは少しだけ安心する。
「……避けるだけなら」
りりが横を見る。
「なに?」
「独り言」
チーム分け。
また同じ。
「投げるのは?」
「無理」
「避ける係ね」
「係にするな」
開始。
ボールが飛ぶ。
速い。
マコト、動く。
避ける。
すっと。
「今の」
「え?」
「避けた?」
次。
二方向から。
マコト、半歩下がって、かわす。
「は?」
「ちょっと待って」
「当たらなくない?」
りりが叫ぶ。
「マコト!」
「なに」
「今のどうやった」
「来ると思った」
「感覚?」
「うん」
ボールが集中する。
「狙われてる」
「的」
「的、動きすぎ」
相手チーム。
「当たんないんだけど」
「なんで?」
マコトは息が乱れてない。
目だけ動く。
避ける。
転ぶ。
起きる。
また避ける。
「無理無理」
「残機多すぎ」
最後。
コートに残るのは、マコトだけ。
「一人?」
「投げられないのに?」
りりが笑う。
「最強じゃん」
「違う」
「逃げ性能MAX」
先生が笛を吹く。
「はい、終了」
マコトはその場に座る。
「疲れた」
「投げてないのに?」
「集中力」
りりが水を渡す。
「あたしさ」
「なに」
「マコトの才能、わかってきた」
「なに」
「当たらない才能」
「褒めてない」
「褒めてる」
マコトは水を飲む。
向いてないことは多い。
でも、向いてることは、
ちゃんと変。
りりは楽しそうだった。