マイペースとギャル   作:5734589

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もやし山盛り?

――――――――――

 

 昼休み。

 教室。

 

 りりは机に座って、スマホをいじってる。

 マコトは少しだけ迷ってから、近づく。

 

「りり」

 

「んー?」

 

「話がある」

 

 りり、顔を上げる。

 

「なに、改まって」

 

「重くない」

 

「重い前振りじゃん」

 

 マコトは一瞬視線を逸らしてから言う。

 

「昨日」

 

「うん」

 

「ラーメン屋で」

 

「うん?」

 

「ユイに会った」

 

「へー」

 

 ここまでは普通。

 

「……で」

 

「で?」

 

「デカラーメン食べてた」

 

 一拍。

 

「は?」

 

 りりの動きが止まる。

 

「誰が?」

 

「ユイ」

 

「え?」

 

「え?」

 

「ちょっと待って」

 

 りりは身を乗り出す。

 

「もやし山盛り?」

 

「山」

 

「チャーシュー?」

 

「複数」

 

「完食?」

 

「してた」

 

「……」

 

 りり、口を押さえる。

 

「やば」

 

「やばい」

 

「それ」

 

「うん」

 

「ハンバーグ案件じゃん」

 

「違う」

 

「同じ」

 

「違う」

 

 りりは笑いを堪えきれない。

 

「なにそれ」

 

「あたしたち、でかいもの食べる集団?」

 

「集団にしないで」

 

「静かに食べてた?」

 

「静かだった」

 

「想像できる」

 

「やめて」

 

 りりは満足そうに頷く。

 

「なるほどね」

 

「なにが」

 

「マコトがハンバーグで」

 

「ユイがラーメンで」

 

「バランスいい」

 

「なにの」

 

「秘密の暴露率」

 

「低くして」

 

 マコトは小さく息を吐く。

 

「……言わないでって言われた」

 

「なにを」

 

「笑われるって」

 

「笑うけど」

 

「……」

 

「悪い意味じゃない」

 

 りりはそう言って、少し声を落とす。

 

「だってさ」

 

「うん」

 

「そういうとこ知れるの、嬉しいじゃん」

 

「……そういうもの?」

 

「そういうもの」

 

 チャイムが鳴る。

 

「ね」

 

「なに」

 

「次」

 

「うん」

 

「五人でラーメン行こ」

 

「嫌な予感しかしない」

 

「デカいやつね」

 

「やめて」

 

 りりは笑って、自分の席に戻る。

 

 マコトは思う。

 

 秘密は、

 隠すより先に、

 話したほうが軽くなることもある。

 

 特に、

 相手がりりなら。

――――――――――

 

 放課後。

 駅前のラーメン屋。

 

「ここ?」

 

「ここ」

 

「マジ?」

 

「本気」

 

 のれんをくぐる。

 

 五人横並びのカウンター。

 

「圧」

 

「匂い強い」

 

「楽しみ」

 

 りりがメニューを見る。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「デカいの、ある」

 

「当然」

 

「誰がいく?」

 

 一瞬、沈黙。

 

 全員、マコトを見る。

 

「違う」

 

「主役」

 

「前科あり」

 

「ラーメン前科」

 

「やめて」

 

 ユイが手を挙げる。

 

「じゃあ、あたし」

 

「経験者」

 

「強者」

 

 もう一人。

 

「普通で」

 

「賢明」

 

 りり。

 

「あたし?」

 

「行きそう」

 

「行かない」

 

「え」

 

「今日は観測者」

 

 全員、マコトを見る。

 

「……普通」

 

「逃げた」

 

「逃げてない」

 

「じゃあ、替え玉する?」

 

「しない」

 

 注文。

 

 待つ。

 

「マコトさ」

 

 ナナが言う。

 

「一人でラーメン行けるの強いよね」

 

「ファミレスも行く」

 

「それが強い」

 

 来る。

 

「うわ」

 

「本物」

 

「山」

 

 デカラーメンが置かれる。

 

「写真撮る?」

 

「撮る」

 

「やめて」

 

 食べ始める。

 

 静か。

 

 でも全員、ちらちら見る。

 

「減ってる」

 

「早くない?」

 

「慣れてる」

 

 マコトの普通ラーメンも来る。

 

 食べる。

 

「……うま」

 

「聞いた!」

 

「ニ回目」

 

「うるさい」

 

 りりが言う。

 

「ね」

 

「なに」

 

「こういうのさ」

 

「うん」

 

「みんなで来ると」

 

「うん」

 

「楽しいね」

 

「……まあ」

 

 完食。

 

「ごちそうさま」

 

「腹いっぱい」

 

「満足」

 

 店を出る。

 

 夜風。

 

 りりが言う。

 

「次」

 

「なに」

 

「でかつけ麺」

 

「聞いてない」

 

 マコトは思う。

 

 一人で行く場所は、

 誰かと行っても、

 ちゃんと同じ場所だった。

 

 ただ、

 笑い声が増えただけ。

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