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昼休み。
教室。
りりは机に座って、スマホをいじってる。
マコトは少しだけ迷ってから、近づく。
「りり」
「んー?」
「話がある」
りり、顔を上げる。
「なに、改まって」
「重くない」
「重い前振りじゃん」
マコトは一瞬視線を逸らしてから言う。
「昨日」
「うん」
「ラーメン屋で」
「うん?」
「ユイに会った」
「へー」
ここまでは普通。
「……で」
「で?」
「デカラーメン食べてた」
一拍。
「は?」
りりの動きが止まる。
「誰が?」
「ユイ」
「え?」
「え?」
「ちょっと待って」
りりは身を乗り出す。
「もやし山盛り?」
「山」
「チャーシュー?」
「複数」
「完食?」
「してた」
「……」
りり、口を押さえる。
「やば」
「やばい」
「それ」
「うん」
「ハンバーグ案件じゃん」
「違う」
「同じ」
「違う」
りりは笑いを堪えきれない。
「なにそれ」
「あたしたち、でかいもの食べる集団?」
「集団にしないで」
「静かに食べてた?」
「静かだった」
「想像できる」
「やめて」
りりは満足そうに頷く。
「なるほどね」
「なにが」
「マコトがハンバーグで」
「ユイがラーメンで」
「バランスいい」
「なにの」
「秘密の暴露率」
「低くして」
マコトは小さく息を吐く。
「……言わないでって言われた」
「なにを」
「笑われるって」
「笑うけど」
「……」
「悪い意味じゃない」
りりはそう言って、少し声を落とす。
「だってさ」
「うん」
「そういうとこ知れるの、嬉しいじゃん」
「……そういうもの?」
「そういうもの」
チャイムが鳴る。
「ね」
「なに」
「次」
「うん」
「五人でラーメン行こ」
「嫌な予感しかしない」
「デカいやつね」
「やめて」
りりは笑って、自分の席に戻る。
マコトは思う。
秘密は、
隠すより先に、
話したほうが軽くなることもある。
特に、
相手がりりなら。
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放課後。
駅前のラーメン屋。
「ここ?」
「ここ」
「マジ?」
「本気」
のれんをくぐる。
五人横並びのカウンター。
「圧」
「匂い強い」
「楽しみ」
りりがメニューを見る。
「ねえ」
「なに」
「デカいの、ある」
「当然」
「誰がいく?」
一瞬、沈黙。
全員、マコトを見る。
「違う」
「主役」
「前科あり」
「ラーメン前科」
「やめて」
ユイが手を挙げる。
「じゃあ、あたし」
「経験者」
「強者」
もう一人。
「普通で」
「賢明」
りり。
「あたし?」
「行きそう」
「行かない」
「え」
「今日は観測者」
全員、マコトを見る。
「……普通」
「逃げた」
「逃げてない」
「じゃあ、替え玉する?」
「しない」
注文。
待つ。
「マコトさ」
ナナが言う。
「一人でラーメン行けるの強いよね」
「ファミレスも行く」
「それが強い」
来る。
「うわ」
「本物」
「山」
デカラーメンが置かれる。
「写真撮る?」
「撮る」
「やめて」
食べ始める。
静か。
でも全員、ちらちら見る。
「減ってる」
「早くない?」
「慣れてる」
マコトの普通ラーメンも来る。
食べる。
「……うま」
「聞いた!」
「ニ回目」
「うるさい」
りりが言う。
「ね」
「なに」
「こういうのさ」
「うん」
「みんなで来ると」
「うん」
「楽しいね」
「……まあ」
完食。
「ごちそうさま」
「腹いっぱい」
「満足」
店を出る。
夜風。
りりが言う。
「次」
「なに」
「でかつけ麺」
「聞いてない」
マコトは思う。
一人で行く場所は、
誰かと行っても、
ちゃんと同じ場所だった。
ただ、
笑い声が増えただけ。