マイペースとギャル   作:5734589

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弟と天然

――――――――――

 

 昼休み。

 教室の後ろ。

 

 五人で集まってる。

 

「ねえマコト」

 

 ナナがスマホを見ながら言う。

 

「これ」

 

「なに」

 

「一年生の中にさ」

 

「めちゃくちゃ顔いい子いない?」

 

「いる」

 

「いるよね」

 

 りりが首を傾げる。

 

「誰」

 

「バスケ部」

 

「あー」

 

「背高い」

 

「爽やか」

 

 チラリと見て、マコトの動きが、止まる。

 

「……」

 

 りりが気づく。

 

「マコト?」

 

「なに」

 

「なんか知ってる顔?」

 

「……弟」

 

 一瞬。

 

「は?」

 

「弟?」

 

「弟!?」

 

「マジで?」

 

 三人、前のめり。

 

「ちょっと待って」

 

「名字同じ?」

 

「確かに!」

 

「え、似てる?」

 

「似てない」

 

「似てる」

 

「どっち」

 

「方向が違う」

 

 りりが見る。

 

「写真ある?」

 

「ない」

 

「あるでしょ」

 

「ない」

 

「絶対ある」

 

 マコトは渋々スマホを出す。

 

「……これ」

 

 全員、覗き込む。

 

「え」

 

「やば」

 

「イケメン」

 

「想像の三倍」

 

 りり、真顔。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「血、どうなってるの」

 

「失礼」

 

「弟くん」

 

「呼ぶな」

 

「モテるでしょ」

 

「知らない」

 

「絶対モテる」

 

「告白されてそう」

 

「興味ないと思う」

 

「余計にモテるやつ!」

 

 ユイが笑う。

 

「マコトの弟って」

 

「うん」

 

「ちゃんと高校生っぽい」

 

「どういう意味」

 

「マコトは」

 

「なに」

 

「落ち着きすぎ」

 

「年齢詐称」

 

「してない」

 

 りりが腕を組む。

 

「あたしさ」

 

「なに」

 

「弟くんに会ったら」

 

「やめて」

 

「『お姉さん可愛いですね』とか言われたい」

 

「言わない」

 

「言いそう」

 

「言わない」

 

 チャイム。

 

「今度紹介して」

 

「無理」

 

「絶対」

 

「約束してない」

 

 マコトは思う。

 

 弟がイケメンだと、

 なぜか自分がいじられる。

 

 理不尽。

 

 でも、

 悪くない騒がしさだった。

――――――――――

 

 昼休み。

 購買前。

 

「人多っ」

 

「無理」

 

「パン取れない」

 

 三人とりり、マコト。

 

 列に並ぶ。

 

「マコト」

 

「なに」

 

「今日も弟の話されてたよ」

 

「知ってる」

 

「人気者」

 

「やめて」

 

 そのとき。

 

「……マコト?」

 

 後ろから声。

 

 マコト、振り返る。

 

「はやて」

 

 一瞬、空気が止まる。

 

 制服。

 背、高い。

 爽やか。

 

「マジだ」

 

「本物」

 

「顔いい」

 

 はやては普通に言う。

 

「購買?」

 

「そう」

 

「混んでるね」

 

「毎日」

 

 りりが一歩前に出る。

 

「えっと」

 

「あたし、りり」

 

「マコトと仲良くしてもらってる」

 

 はやて、軽く頭を下げる。

 

「はじめまして」

 

「弟の、はやてです」

 

「うわ」

 

「礼儀」

 

「好感度高」

 

 三人も続く。

 

「同じクラス?」

 

「一年生」

 

「バスケ部?」

 

「そう」

 

 質問が飛ぶ。

 

 マコトは小さくため息。

 

「……詰めすぎ」

 

「だって」

 

 はやては笑う。

 

「姉がいつもお世話になってます」

 

「言うな」

 

「事実」

 

 りりがニヤッとする。

 

「ねえ、はやて」

 

「はい」

 

「マコトのこと」

 

「学校でなんて呼んでる?」

 

「マコトです」

 

「ほら」

 

「名前呼び」

 

 マコトは睨む。

 

「やめて」

 

「可愛いじゃん」

 

 はやては首を傾げる。

 

「変ですか?」

 

「普通」

 

「普通です」

 

 購買の順が近づく。

 

「じゃ」

 

 はやてが言う。

 

「先行くね、マコト」

 

「うん」

 

「あとで連絡する」

 

「しなくていい」

 

 去っていく背中。

 

 静寂。

 

「……」

 

 次の瞬間。

 

「やば」

 

「想像以上」

 

「マコトの弟って感じしない」

 

「感じする」

 

 りりが腕を組む。

 

「あたしさ」

 

「なに」

 

「今、理解した」

 

「なにを」

 

「マコトがモテる理由」

 

「モテない」

 

「血だわ」

 

「関係ない」

 

「でもさ」

 

 りりは笑う。

 

「マコトの『はやて』呼び」

 

「……」

 

「姉って感じ」

 

「言うな」

 

 マコトはパンを取る。

 

 家族は、

 学校に持ち込むと

 必ず話題になる。

 

 そして、

 弟は思ったより

 危険だった。

 

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