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昼休み。
教室の後ろ。
五人で集まってる。
「ねえマコト」
ナナがスマホを見ながら言う。
「これ」
「なに」
「一年生の中にさ」
「めちゃくちゃ顔いい子いない?」
「いる」
「いるよね」
りりが首を傾げる。
「誰」
「バスケ部」
「あー」
「背高い」
「爽やか」
チラリと見て、マコトの動きが、止まる。
「……」
りりが気づく。
「マコト?」
「なに」
「なんか知ってる顔?」
「……弟」
一瞬。
「は?」
「弟?」
「弟!?」
「マジで?」
三人、前のめり。
「ちょっと待って」
「名字同じ?」
「確かに!」
「え、似てる?」
「似てない」
「似てる」
「どっち」
「方向が違う」
りりが見る。
「写真ある?」
「ない」
「あるでしょ」
「ない」
「絶対ある」
マコトは渋々スマホを出す。
「……これ」
全員、覗き込む。
「え」
「やば」
「イケメン」
「想像の三倍」
りり、真顔。
「ねえ」
「なに」
「血、どうなってるの」
「失礼」
「弟くん」
「呼ぶな」
「モテるでしょ」
「知らない」
「絶対モテる」
「告白されてそう」
「興味ないと思う」
「余計にモテるやつ!」
ユイが笑う。
「マコトの弟って」
「うん」
「ちゃんと高校生っぽい」
「どういう意味」
「マコトは」
「なに」
「落ち着きすぎ」
「年齢詐称」
「してない」
りりが腕を組む。
「あたしさ」
「なに」
「弟くんに会ったら」
「やめて」
「『お姉さん可愛いですね』とか言われたい」
「言わない」
「言いそう」
「言わない」
チャイム。
「今度紹介して」
「無理」
「絶対」
「約束してない」
マコトは思う。
弟がイケメンだと、
なぜか自分がいじられる。
理不尽。
でも、
悪くない騒がしさだった。
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昼休み。
購買前。
「人多っ」
「無理」
「パン取れない」
三人とりり、マコト。
列に並ぶ。
「マコト」
「なに」
「今日も弟の話されてたよ」
「知ってる」
「人気者」
「やめて」
そのとき。
「……マコト?」
後ろから声。
マコト、振り返る。
「はやて」
一瞬、空気が止まる。
制服。
背、高い。
爽やか。
「マジだ」
「本物」
「顔いい」
はやては普通に言う。
「購買?」
「そう」
「混んでるね」
「毎日」
りりが一歩前に出る。
「えっと」
「あたし、りり」
「マコトと仲良くしてもらってる」
はやて、軽く頭を下げる。
「はじめまして」
「弟の、はやてです」
「うわ」
「礼儀」
「好感度高」
三人も続く。
「同じクラス?」
「一年生」
「バスケ部?」
「そう」
質問が飛ぶ。
マコトは小さくため息。
「……詰めすぎ」
「だって」
はやては笑う。
「姉がいつもお世話になってます」
「言うな」
「事実」
りりがニヤッとする。
「ねえ、はやて」
「はい」
「マコトのこと」
「学校でなんて呼んでる?」
「マコトです」
「ほら」
「名前呼び」
マコトは睨む。
「やめて」
「可愛いじゃん」
はやては首を傾げる。
「変ですか?」
「普通」
「普通です」
購買の順が近づく。
「じゃ」
はやてが言う。
「先行くね、マコト」
「うん」
「あとで連絡する」
「しなくていい」
去っていく背中。
静寂。
「……」
次の瞬間。
「やば」
「想像以上」
「マコトの弟って感じしない」
「感じする」
りりが腕を組む。
「あたしさ」
「なに」
「今、理解した」
「なにを」
「マコトがモテる理由」
「モテない」
「血だわ」
「関係ない」
「でもさ」
りりは笑う。
「マコトの『はやて』呼び」
「……」
「姉って感じ」
「言うな」
マコトはパンを取る。
家族は、
学校に持ち込むと
必ず話題になる。
そして、
弟は思ったより
危険だった。