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夕方。
住宅街。
ハルが先頭。
相変わらず元気。
「ハル、引っ張るな」
「聞かないよね」
「知ってる」
マコトとはやて。
いつもの散歩コース。
「……あ」
前から来る人影。
「マコト」
「こんばんは」
ミオ。
「久しぶり」
「この前ぶり」
自然。
ハルが気づく。
「!」
一直線。
「ちょ、ハル」
「覚えてる」
ミオ、しゃがむ。
「はいはい」
「また会ったね」
ハル、全力で尻尾。
「やっぱこの子さ」
「人懐っこすぎ」
「顔覚えてる」
「覚えてない」
「覚えてる」
はやてが言う。
「前もすごかったですよね」
「ね」
「一瞬で距離詰めてきた」
「反則」
ミオが立ち上がる。
「はやてくんも」
「こんばんは」
「こんばんは」
「この前より背伸びた?」
「気のせいです」
「成長期」
マコトはリードを持ち直す。
「散歩、日課?」
「ほぼ毎日」
「いいな」
「羨ましい」
ミオが笑う。
「りりに言ったら」
「言うな」
「『また会った』ってだけ」
「それも言うな」
「無理」
ハルがまた動く。
「ほんと」
「この子」
「主役だよね」
「自覚ない」
少し一緒に歩く。
他愛ない会話。
学校のこと。
購買のこと。
「じゃ」
「またね」
「また」
別れ際。
「マコト」
「なに」
「いい生活してる」
「意味わからない」
「でもいい」
去っていく背中。
はやてが言う。
「知り合い多いね」
「増えた」
「いいことじゃん」
「……まあ」
ハルが前を向く。
日常は、
一度会った人が
何度もすれ違うことで
できていく。
その輪の中に、
もうハルとはやても
ちゃんと入っていた。
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翌日の昼休み。
マコトは席でノートを見てた。
「ねえ」
影。
「……なに」
顔を上げると、りり。
腕組み。
「昨日さ」
終わった。
「散歩」
「うん」
「ハル」
「うん」
「はやて」
「……うん」
「三点セットで」
「……会ったって」
マコトは視線を逸らす。
「……誰から」
「本人」
「やっぱり」
りりは机に肘をつく。
「しかもさ」
「なに」
「『また会った』って」
「言い方」
「完全に日常扱い」
「誤解」
「誤解じゃない」
りりはニヤニヤしてる。
「ねえマコト」
「なに」
「ハル、あたしのことも覚えてる?」
「覚えてる」
「でしょ」
「餌くれる人は」
「それ理由なの?」
りりは満足そうに頷く。
「で」
「なに」
「はやて」
「なに」
「相変わらず?」
「相変わらず」
「顔いい?」
「うるさい」
「礼儀正しい?」
「うるさい」
りりは少し声を落とす。
「でもさ」
「うん」
「こういうの聞くの」
「好き」
「……なにが」
「マコトの生活」
「静かそうで」
「ちゃんと人いて」
「犬いて」
「弟いて」
「……」
「なんか安心する」
チャイムが鳴る。
「また行くから」
「どこに」
「散歩」
「予告しないで」
りりは席に戻る。
マコトは思う。
告げ口は、
責めるためじゃなくて、
共有するためのものだった。
たぶん。