昼休み。
教室。
マコトは机の横に小さな紙袋を並べてる。
「なにそれ」
りりが覗き込む。
「お土産」
「旅行?」
「家族で」
「珍し」
いつもの三人も集まる。
「どこ?」
「山のほう」
「渋」
マコトは袋を一つずつ渡す。
「はい」
「ありがとう」
「かわいい」
「お菓子?」
「そう」
りりの分。
「……重」
「詰めた」
「愛?」
「量」
席に座る。
「で」
ナナが聞く。
「なにしたの」
「食べて」
「歩いて」
「温泉」
「修学旅行みたい」
「家族旅行」
マコトは少し考えてから続ける。
「はやてが」
「弟くん」
「朝」
「寝坊して」
「置いていかれそうになった」
「あるある」
「必死で走ってきた」
りりが笑う。
「想像できる」
「ジャージ?」
「ジャージ」
「だろうね」
ミオが言う。
「ハルは?」
「連れてった」
「優勝」
「旅館で」
「看板犬と」
「即友だち」
「芝犬界隈」
りりは袋を開ける。
「ねえ」
「なに」
「楽しかった?」
「……楽しかった」
少し間。
「珍しく即答」
「うるさい」
マコトは続ける。
「夜」
「星が綺麗で」
「寒かった」
「父が」
「ずっと解説してた」
「空?」
「星座」
「理科教師か」
「趣味」
ナナが笑う。
「マコトの家」
「平和そう」
「普通」
「いい普通」
チャイムが鳴る。
「ごちそうさま」
「まだ食べてない」
「あとで」
りりが言う。
「ありがと」
「なに」
「話」
「聞かせてくれて」
マコトは少しだけ照れる。
思い出は、
お土産より軽くて、
渡すとちゃんと残る。
それを知ってる顔が、
目の前にいた。
ーーーーーーーーーーー
冬。
マラソン大会の日。
「寒」
「無理」
「走りたくない」
いつもの三人が文句を言ってる横で、
マコトは黙ってゼッケンを直してる。
りりが見る。
「マコト、平気そう」
「まあ」
「強がり?」
「走るのは嫌いじゃない」
「意外」
「球技以外なら」
「その但し書きやめて」
スタート前。
「目標は?」
ユイが聞く。
「完走」
「低」
「安全第一」
りりは笑う。
「あたしは」
「なに」
「マコトについてく」
「やめて」
「ペース乱れる」
「大丈夫」
号砲。
走り出す。
最初は団子。
「速っ」
「人多っ」
少しずつばらける。
マコト、一定。
呼吸、一定。
フォームも変わらない。
りりが横にいる。
「ねえ」
「今話すな」
「余裕じゃん」
「黙って」
ユイが後ろから。
「はやっ」
「追いつけない」
「マコト、なにこれ」
「いつもの散歩」
「犬基準やめて」
折り返し。
風が冷たい。
りり、少し息が荒い。
「……ちょっと」
「なに」
「速い」
「言った」
「置いてかないで」
「自分のペースで」
「それがきつい」
マコト、少し落とす。
「……ありがとう」
「礼はいらない」
ゴール。
マコト、淡々。
りり、少し遅れて。
三人も帰ってくる。
「疲れた」
「死」
「水……」
順位表。
「え」
「マコト、上じゃん」
「中の上」
「十分」
りりが言う。
「ね」
「なに」
「運動神経ないって言ってたよね」
「球技限定」
「マラソン、強」
「普通」
「普通じゃない」
マコトは息を整える。
走るのは、投げないし、
当てられないし、
来る方向も予測できる。
だから、得意。
りりが肩をぶつける。
「犬、貸して」
「なにに」
「練習」
「本気で言うな」