放課後。
駅前。
マコトは一人で歩いてた。
今日はまっすぐ帰るつもり。
「……」
前の方、少し騒がしい。
近づいて、気づく。
ミオ。
隣に、男。
手、繋いでる。
距離、近い。
「……あ」
目が合う。
「あっ」
一瞬、固まる。
「マコト!」
「こんばんは」
彼氏も軽く会釈する。
「友だち?」
「うん」
「同じクラス」
ミオは笑う。
「今から?」
「デート」
「見ればわかる」
「言うな」
彼氏が言う。
「いつも話聞いてます」
「……え」
「ミオから」
「マコトさんですよね」
「はい」
「優しいって」
「……ありがとうございます」
ミオが腕を絡める。
「ね」
「余計なこと言わないの」
「事実」
少し、気まずい。
「じゃ」
「邪魔した」
「またね」
「うん」
歩き出す。
背中。
距離。
声。
「マコトー!」
振り返る。
「なに」
「りりには」
「言うな」
「言う」
「やめて」
笑ってる。
マコトは一人で歩く。
誰かの幸せは、
突然、目の前に現れる。
羨ましいわけじゃない。
でも。
世界は、
ちゃんと進んでた。
ーーーーーーーーーーーーーー
翌日の昼休み。
教室。
りりは机に座って、ストローでパック飲料を潰してる。
「……ねえ」
マコト。
「なに」
「昨日」
「昨日?」
「駅前で」
りり、嫌な予感。
「……だれ」
「ミオに会った」
「あー」
「彼氏と」
りりの手が止まる。
「え」
「マジ?」
「手、繋いでた」
「うわ」
「距離、近かった」
「うわうわ」
りりは一気にテンションが上がる。
「で?」
「どうだった?」
「なにが」
「彼氏!」
「顔!」
「雰囲気!」
「普通に優しそう」
「ほらー!」
「やっぱ!」
マコトはパンを一口食べる。
「名前も呼ばれてた」
「呼び捨て?」
「呼び捨て」
「完全に彼氏」
「完全に」
りりは少し黙る。
「……なんかさ」
「うん」
「実感湧くね」
「うん」
「付き合ってるって」
「うん」
りりはマコトを見る。
「マコト」
「なに」
「変な気分?」
「……少し」
「だよね」
りりは笑う。
「でもさ」
「なに」
「幸せそうだったなら」
「それでいいじゃん」
「……そう」
マコトは頷く。
「ちゃんと」
「世界が進んでる感じがした」
「重」
「事実」
りりは肩をすくめる。
「あたしらも」
「なに」
「そのうち」
「なにが」
「なんかあるって」
「適当」
「でも、今は」
「今は?」
「ファミレスとか」
「ラーメンとか」
「犬とか」
「それでいい」
マコトは少しだけ笑う。
「同意」
チャイム。
「ありがと」
「なにが」
「報告」
「義務」
「友だちの」
「……そう」
恋の話は、
噂より、
本人から聞くほうが静かだった。
それを一緒に受け止める相手が、
ちゃんと隣にいた。
――――――――――
放課後。
駅前。
りりは一人、歩いてる。
目的地は明確。
「……いた」
少し先。
ミオと彼氏。
並んで歩いてる。
りり、迷いなく近づく。
「おつかれ〜」
「うわ!」
「りり!?」
「タイミング悪っ」
彼氏も驚いてる。
「あ、こんにちは」
「こんにちは〜」
りりはにこにこ。
「聞いたよ」
「なにを」
「昨日」
「駅前で」
「マコトに会ったんでしょ」
ミオ、察する。
「……言ったな」
「言うに決まってる」
りりは二人を見る。
「仲良さそうじゃん」
「手、繋いで」
「距離近」
「はいはい」
「見せつけないで」
「見せつけてない!」
彼氏が苦笑する。
「いつも話聞いてます」
「りりさんですよね」
「そうそう」
「マコトから?」
「いや、本人から」
「昨日の今日で」
「情報早」
りりは腕を組む。
「で?」
「どう?」
「彼氏」
「優しい?」
「普通に」
「いい人」
「ふーん」
じっと見る。
「……なに」
「いやさ」
「マコトがさ」
「『普通に優しそう』って」
「言ってたから」
「そのまんまだなーって」
「やめろ!」
ミオ、顔赤い。
「ほんと」
「あの子」
「淡々と爆弾落とす」
「知ってる」
りりは満足そう。
「じゃ」
「邪魔したね」
「デート続けな」
「ありがとう?」
「あと」
振り返る。
「マコト」
「なに」
「安心してた」
「言うな」
「言う」
りりは手を振って去る。
二人、しばらく沈黙。
「……りり」
「嵐」
「マコトの友だち」
「納得」
少し離れたところで、りりはスマホを出す。
〈報告〉
〈ちゃんと幸せそうだった〉
〈茶化してきた〉
すぐ返事。
〈最低〉
〈ありがとう〉
りりは笑う。
茶化すのは、
距離を壊さないための
優しさだった。
たぶん、
マコトもわかってる。