「なぁ、君が金出しとるんやろ?」
その男は、真横に居た。
まだハイスクール程度の年齢の青年は私の机の上で当たり前のように腰を乗せていた。
「君、天元様に対しての同化に否定的やろ?まぁ教典に忠実言うたら敬虔な信徒なんかもしれんけどな」
その青年は次の瞬間、掻き消えたように移動をしたのか私を椅子に座らせ、上から覗き込んでいた。
「あんまりおいたしたらあかんと思うねん。」
私はドアの前に立っていた、青年は、私の肩に手を置いて少し前に突き飛ばした。
「お前、この写真何やねん」
「皆のもの!こいつをつまみ出せ!」
見せられたのは星漿体の子供の顔写真、私の資産で殺しを依頼するために信徒に撮らせたその写真を、青年は持っていた。
気付けば私は床に背中が当たるような姿勢になっていた。
青年が足を壁に押し付け、言いようのない圧を纏い、一言言った。
「ガキ1人殺すのに大枚はたいて何様のつもりじゃカス」
壁が爆発したような衝撃と共にひび割れて行った。
信徒達が青年を見つけ、各々の手に持つ武器を振り回して突撃を開始する。
次の瞬間には次々と倒れ込んでいく信徒達が居た。
「答えろ」
本部に居た信徒達はまだ数百人はいる、数が多ければ1人を取り押さえることなど当たり前のようにできる、そのはずなのに。
私を引きずって広い部屋へと移動した青年は私を部屋の中心まで投げ飛ばす。
「お前が、呪術師・・・!」
「おう、禪院家の次期当主、禪院直哉や、覚えんでええで、みじめに死んでけや」
「ふ、ふざけるな!!!天元様は進化なされるお方だ!星漿体の穢れた身体と同化するなど!断じて許されぬ!」
「ここまでボロボロになっといてまだ虚勢張れるんは立派やけどさ、ガキ一人に何ムキになっとんねんなっさけないわぁ」
青年、いや、禪院直哉はどこからか椅子を持ってきて座る。
「それにしてもあんたもやる事はやってるんやなぁ」
空中に現れたのは私の資産状況、この盤星教の運営実態、その他の裏の世界に関する帳簿なども上乗せされていた。
「見てたけど人身売買とかまでやっとるやん?呪詛師の繋がりとかも見えたしこっちからしても大義名分はあるんよ」
とくにこの韓国人ブローカーとか、そこの繋がりもある程度探れるやろ、と言葉を続ける禪院直哉に恐怖を覚える。
「もう分かるやろ?詰みや」
私の目の前が、真っ暗になっていくのを感じる。
「ごめんちゃい、コレ公開されたくなかったら今から言う事やってくれん?」
禪院直哉の言葉が、信じられないほど私の頭にすっと入り込んでいった。
「そんな事が、信じられるとでも思っているのか?」
「縛りや、呪術師にとっては縛りは絶対に騙されない明文化された契約書に等しいんや。」
「ならば、結ぶ、何の縛りだ」
「お前はコレから縛る内容を覚えられない、縛りの内容はお前が必ずやり遂げなければならないと使命感を抱く」
私の意識は、今度こそ闇に沈んだ。
非術師から見た術師ってこんな感じなんだろうなって。